新たなキャリアや老後の生活に向けて、海外移住を検討している方も多いのではないでしょうか。日本国内での移住と異なり、海外移住は「どの国に移住するべきか」、「移住先で仕事はあるのか」、「どれくらいのコストがかかるのか」といった悩みが出てきます。 

本記事では、日本人が海外移住する際におすすめの国をご紹介するとともに、海外移住のメリット・デメリットについても解説します。また、どのような手順を踏めば、海外移住の失敗を防ぎやすくなるのかもまとめているので、ぜひ参考にしてみてください。 

参考記事:老後の海外移住におすすめの国 TOP10:費用や移住のポイントは?

日本人におすすめの海外移住先5選

東南アジア諸国の国旗

日本人にとって、どういう国が移住先に適しているのでしょうか。これから、海外移住を検討している方向けに、日本人におすすめの海外移住先5選をご紹介します。

マレーシア

マレーシアは温暖な気候と物価の安さから、リタイア層に人気の移住先です。首都クアラルンプールは近代的で、日本食レストランや日本語対応の医療機関も充実しています。

長期滞在ビザ「MM2H」プログラムを利用すれば、スムーズに移住が可能です。また、ロングステイ財団が恒例の「ロングステイ希望国・地域2023」によると、マレーシアは日本人が移住したい国1位に15年連続1位を獲得しました。(2019年〜2022年は休止)

日本との時差
1時間(日本より1時間遅い)
主な移住向けビザの種類
MM2H、就労ビザ、デジタルノマドビザ
在留邦人数
約2万人(2023年)
為替レート
1RM=約34円(2025年2月現在)
1ヶ月の家賃
約4〜10万円(コンドミニアム)

参考記事:【リアル体験談】マレーシア移住の魅力!注意点やビザについても紹介

出典:外務省「マレーシア」一般財団法人ロングステイ財団「ロングステイ希望国・地域2023」

タイ

タイは物価の安さと日本人コミュニティの多さから、多くの日本人が移住しています。外務省によると、タイの在留邦人数は約7.2万人で世界でも5番目に多いです。(1位アメリカ、2位中国、3位オーストラリア、4位カナダ)

首都バンコクや第2の都市チェンマイでは、日本語対応の病院やスーパーもあり、快適な生活が可能です。最近では、フリーランス向けのビザが新設されたほか、富裕層向けに長期間滞在に対応したビザを販売しており、世界的に見ても移住しやすい国の1つといえます。

日本との時差
2時間(日本より2時間遅い)
主な移住向けビザの種類
タイランドエリートビザ、ノマドビザ、就労ビザ
在留邦人数
約7.2万人(2023年)
為替レート
1バーツ=約4.6円(2025年2月現在)
1ヶ月の家賃
約4〜10万円(コンドミニアム)

参考記事:タイ移住のメリット8選!老後や40代・50代からの移住は可能?

出典:外務省「海外在留邦人数調査統計」

ベトナム

ベトナムは急成長する経済と低い生活コストが魅力の移住先です。ホーチミンやハノイではインフラ整備が進み、日系企業も多く進出しています。

また、急速な円安が進むなかで、ベトナムドンのレートは若干円安に傾いているものの、現地の物価自体が安いため、円安による影響を感じにくいのがポイントです。物価が安いことから、欧米からのリモートワーカーも長期滞在しています。

日本との時差
2時間(日本より2時間遅い)
主な移住向けビザの種類
観光ビザ(電子ビザで最長3ヶ月)就労ビザ
在留邦人数
約7.2万人(2023年)
為替レート
10,000ベトナムドン=約6円(2025年2月現在)
1ヶ月の家賃
約3〜7万円(コンドミニアム)

 参考記事:ベトナム移住のメリット・デメリット:ビザについても解説!

出典:外務省「ベトナム」

アメリカ

アメリカは多様なライフスタイルが可能で、ビジネスチャンスも豊富な国です。ニューヨークやロサンゼルスは日本人移住者も多く、日本食レストランや日本人でも住みやすい賃貸があります。

 ただし、円安や物価上昇に伴い、生活コストが非常に高い点がデメリットです。また、地域によって生活環境が大きく異なることから、試しに旅行で滞在してみるのもおすすめです。

日本との時差
14〜16時間(日本より遅い)
主な移住向けビザの種類
Bビザ(B1商用、B2観光)
在留邦人数
約41万人(2023年)
為替レート
1ドル=約155円(2025年2月現在)
1ヶ月の家賃
約10〜30万円

 参考記事:ベトナム移住のメリット・デメリット:ビザについても解説!

出典:外務省「海外在留邦人数調査統計」

オーストラリア

オーストラリアは治安の良さと高い生活水準が魅力の移住先です。世界で3番目に在留邦人が多く、シドニーやメルボルンには日本人コミュニティがあり、移住後も比較的馴染みやすい環境が整っています。

また、長期滞在や移住向けビザの種類が多く、条件を満たしていればワーキングホリデーも活用できます。南半球にありながら日本との時差も1時間で、日本からのリモートワークにも最適です。

日本との時差
1時間(日本より1時間早い)
主な移住向けビザの種類
e600ビザ、PR(永住)ビザ、観光ビザ、ワーキングホリデービザ
在留邦人数
約10万人(2023年)
為替レート
1豪ドル=約95円(2025年2月現在)
1ヶ月の家賃
約10〜20万円

 参考記事:オーストラリア移住のメリットとは?生活費やビザのことまで解説!

出典:外務省「海外在留邦人数調査統計」

海外移住のメリット

海外移住には、生活コストの削減やワークライフバランスの向上など、さまざまなメリットがあります。物価の安い国では、少ない収入でも快適に暮らせるだけでなく、新しいビジネスチャンスを得る可能性も広がります。

生活コストの削減

海外移住の大きなメリットの一つは、日本よりも生活費を抑えられやすいことです。たとえば、マレーシア、タイ、ベトナムといった東南アジアの国々では、家賃や食費、交通費が日本の半分以下になる可能性があります。

ただし、北米・欧州・オーストラリアなど先進国に移住を希望する場合、円安やインフレによる物価高の影響で生活コストが逆に圧迫されます。生活コストの削減を求めて海外移住する場合には、移住先国の選定が重要です。

ライフワークバランスの改善

海外の中には日本よりも労働時間が短く、休暇をしっかり取る文化が根付いている国も多いです。たとえば、ヨーロッパやオセアニアでは週休2日制が当たり前で、有給休暇も取得しやすい環境です。

 また、リゾートや自然が豊かな場所に移住すれば、仕事終わりにリラックスする機会も作れます。心身の健康を保ちやすく、ストレスの少ない生活につながります。

新しいビジネスチャンスの獲得

海外移住は、これまでにないビジネスの可能性を広げるチャンスでもあります。東南アジアをはじめとする発展途上国では、まだまだ競争が少ない分野で起業することで成功しやすい環境が整っています。

特に、日本人滞在者が多いエリア(タイ・バンコク、マレーシア・クアラルンプール、アメリカ・ロサンゼルス)などでは、日本人を対象としたビジネスにも期待できます。ただし、日本と現地における法律・税制の違いを理解し、事前にしっかりリサーチしましょう。

海外移住のデメリット

海外移住には多くのメリットがある一方で、多くの課題も伴います。言葉の壁や現地での就職の難しさ、社会保障や医療制度の違いは、海外移住者が直面する問題です。

言語の壁がある

海外では一部のエリアを除いて日本語が通じないため、現地の言語を習得する必要があります。英語圏なら比較的ハードルは低いですが、東南アジアを含む非英語圏では日常会話や役所手続きに苦戦します。 

言語のハードルをなるべく回避したい場合には、日本人移住者が多いエリアを狙いましょう。とはいえ、現地語を学習することで、移住後の生活をより良いものにできます。

現地就職先が少ない

移住先によっては、日本人が就ける仕事が限られていることがあります。就労ビザの取得が厳しい国では、現地採用のハードルが高くなる傾向があるので注意が必要です。

専門スキルや現地語の能力がなければ、希望する仕事に就くのは難しいかもしれません。そのため、就職先を確保しやすい移住先を選ぶことや、日本からリモートワークすることも検討しましょう。

社会保障や医療制度の脆弱さ

日本の手厚い社会保障や医療制度と比べると、海外では十分なサポートが受けられない可能性がある点に注意が必要です。主に発展途上国では、公的医療制度が整っておらず、高額な民間医療保険への加入が必要となるケースもあります。

また、年金や失業保険の適用が限定的な国も多く、老後の生活設計にも注意が必要です。将来的な自身の健康状況を考慮したうえで、どこに移住するのか、いつまで海外移住するのかを計画しておくと安心です。

海外移住の準備や手順

海外移住を成功させるためには、事前準備が重要です。移住先の選定からビザの取得、住居や仕事探しまで、計画的に進めることでスムーズに移住先での新生活をスタートできます。

海外移住先の選定

海外への移住先を決める際は、生活費や治安、気候、ビザの取得難易度などを総合的に考慮する必要があります。たとえば、物価の安い東南アジアはリタイア層に人気があり、欧米はキャリアアップを目指す人に適しています。

また、現地の日本人コミュニティの有無も、移住後の快適さを得るために重要です。日本語が通じやすいエリアは飲食店や日本人向けスーパーも多く、生活ハードルも低くなることから、日々の精神的なストレスを和らげられます。

海外移住用ビザの申請

国ごとにビザの種類や申請条件は異なるため、移住目的に合ったビザを確認することが重要です。マレーシアの「MM2H」や、タイの「リタイアメントビザ」など、長期滞在向けの制度が適用するか確認してみてください。

ただし、移住向けビザの取得には一定の資産証明や収入要件が求められる場合が多いです。移住先の候補を一覧化したうえで、どのようなビザ制度があるのかを調べましょう。

居住地や就職先探し

移住後の生活を安定させるためには、住居と仕事を確保することが重要です。住居探しでは、現地の治安や交通の利便性を調べ、オンラインの不動産サイトやエージェントを活用するのが便利です。

また、仕事に関しては、現地の日系企業の求人を確認したり、フリーランスやリモートワークの選択肢を検討するのが有効です。安定した収入源を確保することで、移住後の生活の不安を軽減できます。

海外移住で失敗しない方法

海外移住を成功させるためには、準備と現地での適応が欠かせません。移住前に生活費や住環境、文化の違いをリサーチし、現地の人とつながることで、スムーズな移住が実現できます。

現地滞在者に相談する

実際に移住している日本人の経験談は、インターネットやガイドブックでは得られない貴重な情報源です。生活費のリアルな相場や文化の違い、治安状況などを直接訪ねてみることで、移住前に具体的な準備ができます。

また、SNSや現地の日本人コミュニティを活用して人脈を形成することは、移住後の不安を軽減します。移住先現地の実情を把握しておけば、スムーズな移住と快適な生活を送るきっかけとなります。

移住後の生活ルーティンをイメージする

移住後に後悔しないためには、日常生活を具体的にイメージし、環境とのギャップを最小限に抑えることが重要です。通勤や買い物、医療機関の利用、娯楽施設の有無など、普段の生活に必要な要素を事前に調べておきましょう。

生活のなかでも、食事の選択肢や交通手段、気候の違いは、生活の快適さに大きく影響します。日本からのリモートワークで仕事をする方は、日本と現地の時差を調べておくのも大切です。

移住前に長期旅行で滞在する

イメージだけでなく、短期間でも実際に移住先で生活してみることで、理想と現実のギャップを把握しやすくなります。また、観光ではなく、日常生活を意識しながら滞在することで、食事や気候、治安、インフラの利便性など、重要なポイントを確認できます。

また、現地の人々との交流を通じて、文化の違いや習慣に慣れておくことも大切です。こうした経験を積むことで、後悔の少ない決断につながります。

海外移住の体験談

最後に実際に海外へ移住された方の体験談をご紹介させていただきます。

少しでも移住する際の、参考にしていただければと思います。

マレーシア移住のAさん

マレーシアは日本人にとって移住しやすい国だと思います。他の東南アジア諸国(タイやベトナム)と比べて英語でコミュニケーションを取れる人が多く、日本食レストランや日本語対応の医療機関も充実しています。

まずは気になる物価ですが、私のマレーシア現地での生活費は以下の通りです。

(※)為替レートは2025年2月時点でのRM1=34円で計算

項目
相場(月額)
水道代(上下水道)
約1,500円
電気代(2人暮らし)
約9,000円
携帯代(データ利用無制限プラン)
約1,500円
食費(外食メインの場合)
約25,000円
家賃(首都圏)
約40,000円

 月の生活費をまとめると、家賃なども全て込みで約10万円程度になります。このくらいの生活費であれば、豪遊はできずとも不自由ない生活が送れると思います。

このようにマレーシアの物価は日本と比べても安いですが、お酒好きの方は要注意。私はビールが大好きなのですが、マレーシアはイスラム系国家なこともあり酒税が高く、500mlの缶ビールが600円以上します。

マレーシアは熱帯雨林気候の国で、日中の気温は30度前後が日常です。マレーシアの気温に慣れてくると朝晩は部屋の天井に付いている大きなファンで充分になりますが、最初は熱くてエアコン無しでは生きていけませんでした。

またマレーシアには突然短時間の雨が降る「スコール」があります。主に雨季のシーズンに限りますが、時間帯は大抵が夕方4時頃〜6時頃で、降水時間は30分程度なことが多いため、その時間帯は気をつけていました。

食事に関してはマレーシアでは多民族が入り混じった文化を感じられます。マレー系のスパイシーかつココナッツが用いられた料理から、中国系移民がもたらした本格的な中華料理、インド系移民のもたらした伝統的なカレーやナンなどが代表的です。個人的にはどれも美味しいと感じますが、辛い食べ物が苦手な人は食の選択肢が少し狭まるかもしれません。

その他に、日常生活で注意すべきポイントは交通インフラです。人口が急激に増加している新興国においてはありがちですが、車社会のため、時間によっては交通渋滞がひどいです。マレーシアは車社会ですが、モノレールや地下鉄などの公共交通機関がかなり整備されているため、電車での移動もおすすめです。

最後に医療についてですが、マレーシアには日本人が経営する病院やクリニックが複数あります。また、そうでなくても日本語通訳が在籍している病院もあるため、現地で体調を崩した際や通院が必要となる際も安心できます。 

私も現地で蚊に刺されてデング熱にかかった時は現地の病院にお世話になりましたが、診療や治療はとてもスムーズで適切だったことを覚えています。

アメリカ移住のBさん

アメリカには観光・商用を目的とする訪問者ビザ(B)、投資/駐在員ビザ(E-2)、企業内転勤ビザ(L-1)、専門職ビザ(H-1)など様々あります。結婚を機に渡米した私は、永住資格の証明となるグリーンカードを取得しました。 

手続きが複雑だと耳にしていたので、信頼できる移民弁護士に全てお任せし安心できました。アメリカは法治国家であり、正確な手続きが不可欠です。政権交代でビザ政策が変わることがあるため、最新情報を定期的に確認することをおすすめします。

物価と生活費に関して、私の住む地域では1ベッドルームの家賃が月$2,500ほどかかります。また食料品の価格も高く、例えば卵は12個入りで$7です。

さらにアメリカでは日本のような国民皆保険制度がなく、企業経由か個人で民間保険に加入する必要があります。医療費は驚くほど高く、我が家は健康上の問題がなくても、4人家族で月$1,000払っています。 

私は5年前に婦人科系の病気で簡単な手術を受けたことがありますが、保険がなければ$150,000かかっていたと言われました。アメリカは日本と比べて収入が高い傾向にありますが、それに比例して生活費も非常に高額です。

より詳細にイメージしていただくために、生活費を表にまとめてみました。私の家庭(大人2人、子供2人)での生活費は以下の通りです。

(※)為替レートは2025年2月時点でのUS$1=155円で計算

項目
相場(月額)
水道代(上下水道)
約17,250円
電気代(4人暮らし)
約31,000円
携帯代(データ利用無制限プラン)
約31,000円
食費(外食メインの場合)
約124,000円
家賃(首都圏)
約434,000円

アメリカに移住してから、いくつかの文化的なギャップを感じました。 

まずは食事の量の違い。例えばレストランで出される食事の量は日本の2倍以上と、一度に全部を食べきることは困難です。しかし食べきれなかった分は持ち帰ることができるので、これには大変助けられています。

また個人主義が強いアメリカでは自己主張が求められる場面が多く、日本のような暗黙の了解が通じにくいことがありました。一方で多様性を受け入れる雰囲気やフレンドリーな人が多い点は心地よかったです。慣れるまでは戸惑いましたが、新しい視点を得られたのは貴重な経験となりました。

最後に移住後に特に気をつけていた「車の運転」について紹介します。アメリカでは日常生活に車が欠かせないものの、日本とは車線が逆のため、とにかく反対方向に走らないよう気をつけていました。周りに他の車がいるときはそれほど問題なかったのですが、誰もいない道路を走っていると最初のうちは車線の方向が一瞬わからなくなることがありました。今ではすっかり慣れ、慎重に運転することで安全に過ごせています。

移住は大きな決断ですが、現地の生活に順応できるよう事前にしっかりと準備をすることで、より充実した生活を送れます。 振り返ると、不安だったこともすべて貴重な経験となっています。

まとめ

海外移住は生活費の削減やワークライフバランスの向上、新たなビジネスチャンスなど多くのメリットがあります。しかし、言語の壁や就職の難しさ、医療制度の違いといった課題も伴うため、事前準備が欠かせません。

今回紹介した5カ国(マレーシア、タイ、ベトナム、アメリカ、オーストラリア)は、それぞれ特徴が異なります。自身のライフスタイルや目的に合った国を選び、移住前にリサーチや現地でのシミュレーションを行うことが成功の鍵です。

海外移住は大きな決断ですが、適切な準備と柔軟な適応力があれば、理想の暮らしを実現できます。新たな環境での生活を楽しみましょう。

 

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