中東有数の経済大国であるサウジアラビアは、2026年1月より施行の新法(※1)により、非イスラム教徒の外国人による不動産所有が解禁されました。

規制緩和に加え、国家戦略「Vision 2030」による大規模な経済改革と都市開発を背景に、不動産投資先として急速に注目を集めています。

人口増加と都市集中、若年層の厚い人口構成、政府主導のインフラ投資が重なり、住宅・賃貸需要の中長期的な拡大が期待される市場です。一方で、外国人による不動産購入には独自の制度やリスクも存在します。

本記事では、サウジアラビア不動産の市場概要をはじめ、投資メリット・デメリット、購入方法、注意点、そして有望な投資エリアまでを体系的に解説し、投資判断に必要なポイントをわかりやすく整理します。

 

サウジアラビアの概要

サウジアラビアの風景

 

項目 概要
人口 3,530万人(※2)
言語 アラビア語
宗教 イスラム教
主要産業 石油(原油生産量1,138.9万B/D(2023年、Energy Institute統計))、LPG、石油化学
為替 1リヤル=41.90円(2026年2月時点)
在留邦人数 628人(2024年1月時点)

サウジアラビアは中東最大の国土面積を持つ国家であり、G20にも加盟する世界有数の経済大国です。長年、石油・天然ガス産業を基盤として成長してきましたが、近年は国家戦略「Vision 2030」により、産業構造の転換と都市開発が急速に進められています。

人口は約3,600万人と若年層が厚く、都市部への人口集中が続いている点は不動産市場にとって重要なプラス要因です。加えて、女性の社会進出促進、観光ビザの解禁、娯楽産業の拡大など、社会制度面でも大きな変革期にあり、居住・商業・観光すべての不動産需要が中長期的に拡大すると見込まれています。(※2)

サウジアラビア不動産のメリット

サウジアラビア風景

サウジアラビアの不動産市場は、新興国ならではの成長性と、国家主導の安定感を併せ持つ点が大きな特徴です。

以下では、投資家目線で注目すべきメリットを詳しく解説します。

国家主導の経済改革と大規模都市開発

サウジアラビア不動産最大の魅力は、政府が主導する長期経済戦略「Vision 2030」によって、不動産需要が構造的に創出されている点です。

同政策では、石油依存からの脱却を目的に、金融、IT、観光、エンターテインメント、物流など幅広い分野での産業育成が進められています。

これに伴い、新都市開発、ビジネス地区の拡張、住宅供給の高度化が同時並行で行われています。

とくに、首都リヤドでは、政府機関の集約や多国籍企業の誘致が進み、オフィス・高品質住宅の需要が急増しています。

サウジアラビアのような、「国家政策と直結した不動産需要」は、短期的な市況変動に左右されにくく、中長期で安定した市場成長を期待できる点が大きなメリットです。

若年人口を中心とした賃貸需要

サウジアラビアは人口構成が若く、30歳未満が人口の約6割(※3)を占めています。

この若年層の多さは、結婚・独立・就職といったライフステージの変化に伴う住宅需要を継続的に生み出します。

都市部では、分譲住宅だけでなく賃貸住宅への需要が底堅く、空室リスクを抑えやすい環境が整っています。

さらに、石油・建設・IT・医療分野を中心に多くの外国人労働者が居住しており、一定水準以上の賃料を支払える層が厚い点も特徴です。

企業が住宅手当を支給するケースも多く、家賃滞納リスクが比較的低いことから、インカムゲインを重視する投資家にとって魅力的な市場といえます。

税制面における高い優位性

不動産投資において重要な要素の1つが税制ですが、サウジアラビアは中東諸国の中でも投資家にとって有利な制度を持っています。(※4)

サウジアラビアでは、個人所得税が課されないため、賃貸収入に対する税負担が軽く、実質的な手取り利回りを高めやすい点が強みです。短期的な価格上昇を狙うキャピタルゲイン投資だけでなく、長期保有による安定収益モデルが成立しやすくなっています。

ただし、収益が事業所得・法人所得として扱われる場合などはスキームにより取扱いが異なるため、投資形態に応じた確認が必要です。

資産価値上昇が狙える市場構造

サウジアラビアの不動産市場は、すでに成熟した欧米市場とは異なり、今後の都市成長と人口動態の変化を背景に、資産価値の底上げが期待できるフェーズです。

地下鉄や高速道路、空港拡張などのインフラ整備に伴う都市機能の高度化が進み、立地条件の良いエリアでは不動産価値の上昇余地が残されています。

また、政府が住宅取得を促進する政策を打ち出している点も、市場の下支え要因となっています。

市場構造が安定することで、サウジアラビア不動産は「高成長・高リスク」ではなく、「成長性と安定性のバランスが取れた中長期投資先」として評価されています。

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サウジアラビア不動産のデメリット・リスク

サウジアラビア国旗

成長性の高いサウジアラビア不動産市場ですが、海外投資である以上、一定のリスクが存在します。

以下では、日本人投資家が注意すべき主なリスクを解説します。

不動産データの透明性と入手難易度

サウジアラビアの不動産市場は急速に整備が進んでいるものの、日本や欧米の成熟市場と比較すると、取引価格や賃料、空室率といった詳細データを入手しにくい市場です。

公的な不動産登録制度やデジタル化は進展していますが、エリア別・物件タイプ別の統計情報は限定的で、投資判断に必要な情報を個人で収集するのは難しいのが実情です。

 

結果として、想定利回りや将来の賃料水準を過度に楽観視してしまうリスクがあります。特に海外投資家の場合、アラビア語の理解や、市場感覚がつかみにくいため、販売資料や仲介業者の説明に依存しがちです。

不動産市場の理解を深めるためにも、過去の実績データや周辺物件の賃料水準を慎重に確認することや、実績のある不動産会社や管理会社を通じて情報の妥当性を検証することが重要です。

原油価格と政府政策に左右されやすい市場構造

サウジアラビア経済は多角化が進んでいるとはいえ、依然として国家財政は原油収入の影響を大きく受けます。

原油価格が長期的に下落した場合、政府の公共投資や都市開発計画が見直され、不動産需要の減速につながる可能性があります。また、政府主導プロジェクトに依存するエリアでは、計画の遅延や縮小が価格・賃料に影響を与えるリスクも少なくありません。

政策面においては、補助金制度や住宅取得支援策などの変更が、市場心理に影響を及ぼす点にも注意が必要です。投資家としては、単一の大型開発や短期的な政策効果に期待するのではなく、人口流入や雇用創出といった「実需の強さ」を重視したエリア選定を行うことが、リスク軽減につながります。

不動産市場の流動性が低く短期売却には不向き

サウジアラビアの不動産市場は、長期保有を前提とした取引が主流であり、日本や欧米の一部都市のように活発な短期売買が行われているわけではありません。

そのため、売却までに一定の時間を要するケースが多く、急な資金回収が必要になった場合には不利になる可能性があります。

特に外国人投資家の場合、購入時と同様に売却時にも手続きや制限が発生することも多く、流動性の低さが一層顕著になる点は注意が必要です。

流動性が低いリスクを踏まえ、サウジアラビア不動産は「短期転売益を狙う投資」ではなく、「中長期で安定収益を確保する資産運用」と位置づけることがポイント。

不動産購入前に出口戦略を明確にし、賃貸運用による収益確保を前提とした計画を立てることが重要といえます。

文化・商習慣の違いによる運用リスク

サウジアラビアは宗教や文化が生活・ビジネスに深く根付いており、日本とは大きく異なる商習慣が存在します。

契約交渉の進め方や意思決定のスピード、書面よりも人間関係を重視する慣習などに戸惑う投資家も少なくありません。

加えて、祝祭日やラマダン期間中は業務が停滞することもあり、スケジュール管理に注意が必要です。

上記の文化的要因は、物件管理や賃貸運営にも影響を及ぼします。

現地事情に精通した管理会社を活用し、オーナー自身が細かな運営に関与しすぎない体制を構築することが対策となります。

サウジアラビア不動産の購入方法

サウジアラビアにおける不動産購入は、日本国内とは大きく異なる法制度・手続きが存在します。そのため、流れを正確に理解し、各ステップでの注意点を把握することが重要です。

以下では、外国人投資家が一般的に踏む購入プロセスを段階的に解説します。

不動産所有形態や購入可能エリアを調べる

サウジアラビア不動産購入の第一歩は、「外国人が合法的に購入できる物件かどうか」を確認することです。

2026年1月施行の新法により、外国人の不動産購入権利は飛躍的に拡大しました。

新法では、指定されたエリア内において、外国人が土地および建物の100%所有権(フリーホールド)を取得することが認められました。従来のリースホールド(借地権)中心の運用から、より資産価値の高い「永久所有」が標準となります。

なお、首都のリヤドなどは不動産購入が可能な一方で、イスラム教の二大聖地であるメッカ(マッカ)およびメディナ(マディーナ)とその周辺については、引き続き非イスラム教徒の外国人による直接的な不動産所有が制限されています。

購入資格の取得と政府認可手続き

物件が確定した後、多くの場合で必要となるのが、外国人購入者としての資格取得および政府機関からの認可です。

これはサウジアラビア特有のプロセスであり、購入者の国籍、滞在資格、購入目的(居住・投資)などが審査対象となります。

手続きには一定の書類提出が求められ、内容に不備があると審査が長期化するケースもあります。

海外投資家の場合、書類の翻訳や公証が必要になることが多いため、事前準備が重要です。この段階では、現地弁護士や法務コンサルタントを活用することで、時間的・法的リスクを大幅に軽減できます。

売買契約の締結と支払い条件の確定

政府認可の目処が立った後、売主との間で正式な売買契約を締結します。

サウジアラビアでは、契約内容が重視されるため、価格だけでなく、支払いスケジュール、引き渡し条件、キャンセル時の扱いなどを細かく確認する必要があります。

特に新築・開発物件では、分割払い(プログレスペイメント)が採用されることが多く、工事進捗と支払いが連動します。

この点を十分に理解せず契約すると、資金繰りに影響が出る可能性があります。日本とは契約慣行が異なるため、必ず専門家による契約内容のチェックを行うことが、安全な投資につながります。

登記手続きと物件引き渡し

売買契約と支払いが完了すると、最終段階として不動産登記と物件引き渡しが行われます。サウジアラビアでは、登記が完了して初めて正式な所有者として認められるため、このプロセスは重要です。

登記完了後は、賃貸運用や自己使用が可能となりますが、外国人オーナーの場合は物件管理を現地業者に委託するケースが一般的です。管理体制を事前に整えておくことで、購入後のトラブルや空室リスクを抑えられます。

不動産購入はゴールではなく、運用まで含めた計画を立てることが、サウジアラビア不動産投資成功のポイントです。

サウジアラビア不動産を購入する際の注意点

海外投資として サウジアラビア 不動産を検討する際は、利回りや価格上昇だけでなく、「制度・運用・文化」という日本とは異なる前提条件を理解することが不可欠です。

以下では、購入前に必ず確認すべき代表的な注意点を解説します。

サウジアラビア特有の税制を理解する

サウジアラビアの不動産税制は、他国と比較して非常にシンプルかつ投資家に有利な設計となっています。以下、主要な税制になります。

税制 税率・概要
不動産取引税(RETT) 5%(購入時・一律)
ザカート(Zakat) サウジアラビア国民向け。外国人の個人の不動産保有・売却時には基本的に適用外
VAT(付加価値税) 15%。物件価格そのものはVAT免除ですが、仲介手数料や管理費などの「サービス」に対して課税。
 

2026年時点の制度では、個人の不動産売却益に対する直接的なキャピタルゲイン税は課せられていません。ただし、事業として不動産を転売する場合は法人税の対象となる可能性があるため注意が必要です。

デベロッパー・売主の信頼性を見極める

サウジアラビアでは新規開発プロジェクトが多く、市場拡大と同時に事業者の質にもばらつきがあります。

知名度の低いデベロッパーの場合、工期の遅延や仕様変更、最悪の場合は計画自体が頓挫するリスクも否定できません。特にプレビルド(完成前販売)物件では、この点が投資リスクを大きく左右します。

購入を検討する際は、過去の開発実績、政府との関係性、資本力などを多角的に確認することが重要です。また、支払い条件が工事進捗と連動しているか、返金条項が明確かどうかも必ずチェックすべきポイントです。

為替変動と資金移動リスクを考慮する

サウジアラビアの通貨サウジ・リヤルは米ドルと連動していますが、日本円との為替変動リスクは依然として存在します。購入時と売却時で為替レートが大きく変動すると、現地通貨ベースでは利益が出ていても、円換算では損失になる可能性があります。

また、海外送金や資金回収のルールも日本とは異なり、手続きに時間がかかるケースがあります。

短期的な為替差益を狙うのではなく、長期視点での資産形成を前提に投資判断を行うべきでしょう。

賃貸管理・運営体制を購入前に確立する

外国人投資家にとって、物件購入後の賃貸管理は大きな課題の1つです。

サウジアラビアでは、文化や商習慣の違いから、日本と同じ感覚での運営が難しい場面も少なくありません。入居者対応、家賃回収、メンテナンスなどを個人で管理するのは現実的ではないため、信頼できる管理会社の選定が不可欠です。

購入前に管理費用、対応範囲、トラブル時の対応フローを明確にしておくことで、購入後のストレスや予期せぬコスト増を防げます。物件価格や利回りだけでなく、「管理のしやすさ」も投資判断の重要な指標として考慮すべき点です。

サウジアラビアのおすすめ投資エリア3選

サウジアラビアは国土が広く、都市ごとに経済的役割や不動産需要の性質が大きく異なります。

ここでは、外国人投資家にとって比較的理解しやすく、将来性が見込まれる代表的な3エリアを紹介します。

リヤド|行政・ビジネスの中心で首都

リヤドはサウジアラビアの首都であり、政治・行政・経済の中枢を担う都市です。日本で例えるなら「東京」に近い存在で、政府機関、大企業本社、多国籍企業が集中しています。

駐在員や専門職向けの中〜高価格帯住宅の需要が高く、賃貸市場が安定している点が最大の特徴です。

また、地下鉄建設や新ビジネス地区の開発が進み、都市機能が急速に近代化しています。生活インフラも整備されつつあり、外国人居住者にとっても住みやすい環境が整ってきています。

リヤドの中でも、KAFD(キング・アブドラ・フィナンシャル・ディストリクト)という名のエリア(※6)は、国内屈指のビジネス街です。政府機関や外資系金融機関の移転が加速しており、この地区内および周辺のレジデンスは、高所得層の「職住近接」ニーズを一手に引き受けています。

投資面では、急激な価格上昇よりも「空室リスクが低く、長期的に安定収益を狙えるエリア」として評価されており、初めてサウジアラビア不動産に投資する層に向いています。

ジェッダ|観光と商業が融合する紅海沿岸の国際都市

ジェッダは紅海に面した港湾都市で、古くから貿易と巡礼の玄関口として発展してきました。

現在は観光・商業都市としての色合いが強く、開放的な雰囲気を持つ点が他都市との大きな違いです。海沿いの再開発エリアでは、高級レジデンスや複合施設の建設が進んでおり、都市景観も大きく変化しています。

不動産投資の観点では、観光関連需要や短期・中期滞在者向け賃貸の可能性がある点が魅力です。背景としてはイスラム教の聖地が近いため、世界各国から巡礼目的での観光客数が多い点が挙げられます。

リヤドに比べると価格水準が抑えられているエリアもあり、将来的な価値上昇余地を狙った投資にも適しています。

NEOM|国家プロジェクトとして注目される次世代型メガシティ

NEOMは、サウジアラビア北西部で進行中の未来都市構想で、総工費5,000億ドル超の国家プロジェクトです。

再生可能エネルギー、AI、スマートインフラを前提とした都市設計が特徴で、

「THE LINE」に代表される革新的な都市モデルが世界的な注目を集めています。

投資エリアとしては、完成後のインパクトが大きい一方で、開発の進捗や制度面の不確実性も残るため、リスク許容度の高い投資家向けといえます。たとえば、2026年時点で、全長170kmの巨大高層都市「THE LINE」の計画が大幅に修正され、現状は全長2kmの目処がたったのみの状況です(※7)。

ただし、国家の威信をかけたプロジェクトである点から、長期的に成功した場合の資産価値上昇は極めて大きく、ポートフォリオの一部として検討する価値は十分にあります。「安定性重視」ではなく、「成長性重視」の投資戦略に適したエリアです。

まとめ

サウジアラビア不動産は、国家主導の経済改革と都市開発を背景に、中長期的な成長が期待できる新興投資市場です。若年人口の多さや都市部への人口集中、政府によるインフラ投資が、不動産需要を構造的に下支えしています。

一方で、外国人投資家にとっては制度面や市場特性を十分に理解したうえでの慎重な判断が求められます。

総じて、サウジアラビア不動産は「高成長×高リスク」の投機的市場ではなく、成長性と安定性のバランスを重視した海外不動産投資先と位置づけるのが現実的です。

制度理解とエリア選定を適切に行うことで、ポートフォリオ分散の一環として有力な選択肢となるでしょう。

 

出典一覧:

※1 JETRO 『サウジアラビア、外国人・外資企業に不動産市場を開放

※2 外務省『サウジアラビア王国基礎データ

※3 外務省『日本・サウジアラビア外交関係樹立70周年 日サウジ関係は次の章へ

※4 JETRO『サウジアラビア|税制

※5 JETRO『不動産取引税の改正版施行、税率は据え置き

※6 visit saudi『キング・アブドゥッラー金融地区 (KAFD)

※7 PRESIDENT Online『「全長170kmの巨大ビル」を本気で造るはずが…サウジアラビアの"150万人が暮らす都市計画"の悲惨な末路

 

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