日本から不動産投資が可能な外国はたくさんありますが、どこに投資するのが1番良いかわからないという人も多いのではないでしょうか。
この記事では、日本から海外不動産投資が可能な国について、どこがおすすめなのか、データを用いて比較します。
海外不動産投資おすすめ国:キャピタルゲインや空室リスクで比較
GDP成長率が高くキャピタルゲインを狙える国は?
経済成長豊かな国では、物価上昇などに伴う将来的な物件の売却益を期待できます。また、物価上昇とともに国民所得が増加することで、家賃の値上がりも見込めます。国別のGDP成長率は以下グラフの通りです。
※参照:IMF
すでに経済規模が拡大している先進国では、新興国と比較するとGDP成長率が低くなるのが一般的です。このため、東南アジアの新興国と比較すると、日本やアメリカなどの予測GDP成長率は低くなっています。
2025年の予測値を見ると、日本やアメリカなどの先進国では成長率が下がる見通しです。また、先進国に近づきつつあるマレーシアでも同様の傾向が見られます。
その一方で、特にベトナムやカンボジアなどの新興国では、5年後も経済成長率を維持すると予測されており、経済発展が長期的に継続する見通しです。
なお、5年後にはその勢いが少し衰えるものの、フィリピンも高い水準を維持すると予測されています。フィリピン・ベトナム・カンボジアなどの国では、他の国よりも割合の大きなキャピタルゲインを期待できる点が特徴的です。
人口増加中でキャピタルゲインを狙える国は?
不動産投資においてカギとなる指標は、経済と人口に関するものです。人口や年齢の面から各国を比較します。
人口が増加している国では住宅需要が強くなるため、不動産の値上がりを期待できます。また、賃貸運用する上でも空室率の低い投資を実現可能です。
2015年〜2020年における、各国の平均人口増加率は以下グラフのようになっています。
※参照:国際連合
人口増加率についても、GDP成長率と同様に先進国であるほど低下する傾向があります。7ヶ国間の比較で最も人口増加率が高いのはカンボジアです。そして、フィリピン・マレーシアがカンボジアに続いています。
ベトナムは、経済成長率は安定していますが、人口増加率ではカンボジアやフィリピンよりも低くなっています。また、日本ではすでに人口減少が始まっており、7ヶ国間では唯一人口増加率がマイナスです。
そのほか、タイは東南アジア各国の中では人口増加率がかなり低くなっており、他の新興国と比較すると、社会的に成熟へ向かっている様子が伺えます。
東南アジアの中で統計を比較すると、タイは空室リスクや不動産の値下がりリスクなどが大きい部類に入ります。
人口増加率の比較では、カンボジア・フィリピン・マレーシアの3ヶ国は特に、空室リスクの低い投資を期待できるほか、キャピタルゲインの期待も大きいと言えます。
国民の年齢が若く賃貸需要が旺盛な国は?
つづいて、各国の年齢中央値を比較します。
※参照:The World Factbook 2021. Washington, DC: Central Intelligence Agency, 2021.
中央値は平均値とは違った数値であり、最低値と最高値とのちょうど真ん中にあたる数値のことを指します。年齢中央値が20代の国では特に、賃貸住宅に住む働き盛りの人が多く賃貸需要も旺盛です。
タイの年齢中央値は、すでにアメリカを上回っています。また、ベトナムの年齢中央値も30歳を超えており、東南アジア諸国の中では比較的高めです。
その一方で、フィリピンは人口増加率が高いうえに年齢中央値もまだかなり低いので、発展の余地を大きく残していると言えます。
年齢中央値がまだ20代のマレーシア・フィリピン・カンボジアなどの国では特に、旺盛な賃貸需要を背景に効率的な投資を期待可能です。
空室リスクが低い国は?
海外不動産投資では、外国人による土地の取得が規制されている場合もあります。規制があるため、所有権が建物のみのコンドミニアムが投資対象となることも少なくありません。
コンドミニアムに入居者を入れる難易度を比較するためには、人口密度の比較が役立ちます。各国の人口密度は以下グラフの通りです。
フィリピンはすでに日本よりも人口密度が高くなっています。また、ベトナムの人口密度も東南アジア諸国の中では高い部類に入ると言えるでしょう。
統計を分析する上では、フィリピンとベトナムの両国では、他の国と比較すると空室リスクが低いと考えられます。
アメリカの人口密度が低くなっているのは、国土が広いためです。アメリカでは外国人が土地を所有できることもあり、一部のエリアを除き、コンドミニアムよりも戸建住宅の方が投資対象としてメジャーと言えます。
その一方で、マレーシアやカンボジアなどは7ヶ国間の比較では人口密度が低いため、特に人が集まっている首都で物件を選ぶなどの戦略を立てないと、空室リスクが上がる点に要注意です。
海外不動産投資における国別のメリットとデメリット
GDPや人口などに関するデータを見ると、フィリピンやカンボジアなどは特に、今後発展する可能性を持っていると言えます。ここからは、各国に関するメリットとデメリットについて解説します。
アメリカ
アメリカ不動産投資のメリットは、比較的低リスクで安定した収益を狙える点です。アメリカはすでに世界最大規模の経済を持っているため、GDP成長率などは新興国と比較すると低くなります。
しかし、確実に経済成長を続けているほか、日本とは違って人口もまだ増加中です。国としての今後の成長は緩やかであるものの、安定した投資をできるのがアメリカ不動産投資の特徴と言えます。
一方で、エリアによっては利回りがかなり低いのが、アメリカ不動産投資のデメリットです。ハワイやニューヨークなどは世界的に見ても物件価格が高いため、利回りは特に低くなります。
アメリカ不動産投資でインカムゲインを狙うのであれば、州別の特徴を捉えることが重要です。
アメリカは州別にエリアの特徴が大きく異なるため、ミクロの視点でメリットやリスクを把握できないと、空室リスクや物件の売却に関するリスクなどを軽減できなくなります。
マレーシア
マレーシア不動産投資のメリットは、東南アジア諸国の中では比較的発展が進んでいる点にあります。
経済的にはすでに中進国と言えるところまで発展が進んでおり、マレーシア政府も2025年までに先進国入りを目指すべく経済政策を進めてきました。
マレーシアでは、日本やアメリカと比較すると現地人の所得などは劣ります。しかし、経済発展に伴う所得の増加から、投資の出口戦略として、今後は現地人への物件売却も検討できるようになると予測されます。
その一方で、マレーシア不動産投資のデメリットは、外国人に対する物件購入価格の規制があることです。マレーシアでは、外国人は基本的に100万RM(2,700万円:1RM=27円換算)以下の物件を購入できません。
2021年時点では、インカムゲインを狙った投資をするよりは、立地を厳選してキャピタルゲインを狙う方が利益を狙いやすい環境になっていると言えるでしょう。
タイ
タイ不動産投資のメリットは、日本人にも馴染みやすい不動産市場にあります。外務省が発表している在留邦人数統計によると、タイに住んでいる日本人は2019年時点で約80,000人です。
東南アジアの中では在留邦人数が最も多く、現地で不動産業を営む日本人もいます。海外不動産投資において、日本人のエージェントを介して物件運用できるのは、大きなメリットです。
不動産エージェントとのコミュニケーションが円滑になることで、入居者募集や修繕の対応を放置されるなどのリスクがなくなります。
一方で、タイ不動産投資のデメリットは、他の国と比較すると成長性が低い点にあります。タイのGDP成長率は他の東南アジア諸国と比較すると低めです。
また、年齢中央値が高く人口増加率も周辺諸国より低いため、今後どこまで住宅需要が拡大するか不透明と言えます。キャピタルゲインを狙うのであれば、統計的に将来性を期待できる他の国を選ぶのも1つの戦略です。
フィリピン
フィリピン不動産投資のメリットは、空室率の低い投資を期待できることです。フィリピンの人口密度は日本より高く、人口自体も1億人を超えています。
また、経済成長率も高いので、今後キャピタルゲインを期待できます。
その一方で、フィリピン不動産投資のデメリットは、経済の一部が海外に依存していることです。フィリピンでは、海外へ渡航した出稼ぎ労働者による仕送りがGDPの中で大きな割合を占めています。
世界銀行の統計によると、2019年に仕送り額がフィリピンのGDPの中で占めた割合は9.3%です。このため、出稼ぎ先の国で景気が悪化すると、連動してフィリピンのGDPが下がってしまいます。
GDPや物価の低下などは不動産価格にも直接的な影響を与えるため、フィリピン不動産投資では、世界的な景気動向次第で不動産価格が上下動しやすい点に要注意です。
ベトナム
ベトナム不動産投資のメリットは、有事にも強い成長性にあります。コロナウイルス感染症が世界中に拡散した2020年でも、ベトナムはGDP成長率がプラスで推移しました。
日本では台湾の感染症対策などが大きく報道されていますが、ベトナムも経済に対するコロナの影響を抑え込んでいるという点で、対策に成功していると言えるでしょう。
その一方で、外国人に対する不動産投資の規制が緩和されたばかりで、注意すべき規制がまだ残っている点はベトナム不動産投資のデメリットです。
また、ベトナムでは通貨の海外持ち出しが規制されているため、収益の利用方法について工夫が必要になります。
ベトナムは社会主義国家であることもあいまって、自国民を保護する政策が採用されやすい点にも要注意です。外国人に対する規制内容が急に変更されるリスクもあると言えます。
カンボジア
カンボジア不動産投資のメリットは、インカムゲインとキャピタルゲインをバランスよく狙えることです。GDP成長率は今後5年間で高水準を維持すると予測されているほか、人口増加率も東南アジアの中でトップクラスです。
カンボジア不動産投資では、住宅需要の高まりによるキャピタルゲインと、空室率の低い投資を期待できます。
その一方で、カンボジア不動産投資のデメリットは、不動産業者の見極めに注意を要することです。急速な発展の最中にあるカンボジアの不動産市場は未整備な点も多く、質の良くない不動産業者も少なくありません。
また、新興国では特に、個人の投資家による情報収集は難しいものです。不動産会社に関するリスクを下げるためには、実績と企業規模を持った日系不動産企業を選ぶことが必要になります。
海外不動産投資でリスクが低いのはどの国?
海外不動産投資で物件を購入できる各国についてメリットやリスクを解説しましたが、結局リスクが低いのはどの国なのか、気になる人もいるのではないでしょうか。
アメリカなどの先進国は比較的低リスク
不動産投資に関するリスクを比較する上では、アメリカを中心とした先進国は総じてリスクが低いと考えられます。
アメリカは新興国と比較して不動産取引に関する法整備が進んでいるため、取引の過程におけるトラブルが少ないものです。
また、新興国と比較するとアメリカ人の所得は高いため、物件周辺のアメリカ人も入居者のターゲットになります。
新興国では入居者のターゲットが外国人に偏ることも多く、世界経済が落ち込むと空室リスクが上がる一面も否めません。
ただし、アメリカなどの先進国は新興国と比較して物件価格が高いため、自己資金の捻出がハードルになりがちです。また、新興国と比較すると利回りも低くなります。
利益を多少犠牲にしても、幅広くリスクを抑制したい場合には先進国で投資するのがおすすめです。
東南アジアの新興国では先進国よりリスクの許容が必要
フィリピンやマレーシアなどを中心とした東南アジアの新興国では、先進国と比較すると空室リスクなどの許容が必要になります。
既に解説したとおり、新興国では現地住民の所得が上昇しているところなので、投資物件に住める現地住民はそれほど多くありません。
新興国での入居者ターゲットは外国人駐在員や移住者などがメインであり、地元住民の入居も狙えるアメリカなどと比較すると、入居者のターゲットが少なくなります。
そのほか、不動産取引に関する法律や中古不動産市場の整備についても道半ばの国が多いため、新興国では取引に関する全般的なリスクに要注意です。
しかし、新興国では不動産価格の上昇に加えて家賃水準の上昇も期待できます。先進国と比較すると、新興国における将来的な利益拡大の期待は大きいものです。
長期的な計画に基づいて大きな利益を狙っていきたい場合は、新興国での投資が適しています。なお、各種リスクをケアするためには、日系不動産会社の手を借りることが有効です。
まとめ
東南アジアの新興国は、多少のリスクを取っても効率の良い不動産投資をしたい人に向いています。特にフィリピンやカンボジアなどでは、インカムゲインとキャピタルゲインとをバランスよく狙った投資が可能です。
その一方で、アメリカなど先進国の不動産投資は、投資効率を下げてもリスクの低い投資をしたい人に向いています。
利回りとリスクとについて、どのようにバランスを取って投資をしていきたいか、優先順位を決めてから国を選ぶことが、海外不動産投資成功の近道です。