ここ数年、中国政府は「住宅は住むためのものであり、投機のためのものではない」というスタンスを取っており、中国国内の不動産取引においては、購入制限や不動産税、高めのローン金利など、様々な規制がかけられている。そのため中国のバイヤーや投資家の目は海外の不動産に向けられるようになり、昨年はアメリカにとって代わり、世界最大の海外(国境を越える)投資国となった。
アメリカやイギリス、カナダ、オーストラリアなどの先進国の市場は、ほぼ飽和状態となっており、投資家の関心は東南アジア諸国に集まっている。
東南アジアの住宅価格は、1㎡当たり11,382元(約17.6万円)(マレーシア・クアラルンプール)~32,104元(約49.7万円)(タイ・バンコク)程度であり、後者の価格は中国の中規模の都市における物件と同程度とあって、中国人投資家にとってはリーズナブルに感じられるという。
また東南アジア諸国の物件は、高利回りが期待できる点も大きい。マニラやプノンペン、バンコクなどの都市は、ROI(Return on Investment:投資利益率)5%以上で推移しており、投資家からの注目度も高くなっている。
中国人バイヤーの多くは30~49歳の年齢層となっているが、彼らは投資の枠に収まらず、教育や退職といった局面から海外物件を購入することもあるという。国際的な教育を求めるバイヤーや、気候や生活費の安さに惹かれる多くの中国人がビザ(タイのSRRV、マレーシアのMM2H等)を申請し、家族で東南アジアに移住している。
中国の海外不動産取引プラットフォームであるUooluによると、通貨の強さなどからタイの人気が根強いという。タイ・バーツは、東南アジア諸国の通貨で群を抜いて強く、この状況は今後も続くと見られている。
また「一帯一路」構想で、中国政府は東南アジア諸国のインフラプロジェクトに多額の投資を行っている。中国とのパートナーシップは、地域内における今後の不動産市場の発展を後押しするものとなっている。さらに東南アジアの国々は、海外からの投資や海外企業の市場参入を促進するため、優遇税制など制度が導入されている。
タイのメディアによると、バンコクにおけるバイヤーの5人に1人は中国人であるという。人口や観光客の多さなどから、バンコクの賃貸市場は常に注目されている。
2014年以降、タイの建設業GDPは550億バーツ(約1,978億円)から770億バーツ(約2,769億円)へと成長を遂げた。建設業界の急速な発展は不動産産業の強固な基盤となり、観光業と並ぶ主要産業となった。
最近では、中国通信機器大手のファーウェイ(Huawei)が次世代ネットワーク「5G」用のインフラやテストセンター開発を援助するため、タイの通信会社と協業することで合意している。タイの不動産は、中国人投資家の間でますます高まりを見せている。
【参照】Why Southeast Asian real estate markets remain attractive to Chinese investors
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