海外不動産の購入を検討されている方の中で、物理的な距離が近いことや親日国ということもあり、シンガポール不動産に注目している方は多いでしょう。

この記事ではそんな、シンガポール不動産の魅力についてお伝えしていきます。シンガポール不動産が気になっている方はぜひ参考にしてください。

シンガポールとは?主な特徴を紹介

まずは、シンガポールとはどのような国なのかを、人口や政治などいくつかの観点からご紹介します。

人口、国土、文化

シンガポールの人口は約569万人、国土は720平方メートルとなっており、東京23区と同程度の大きさを持つ国です。東京23区の人口が1,000万人弱なので、人口密度はシンガポールの方が約半分低くなっています。

シンガポールの国民は中華系70%、マレー系15%、インド系5%、その他5%となっており、それぞれの民族で独自の文化を形成しています。したがって「シンガポールの文化」というものはあまり存在しないのが特徴です。

ちなみにシンガポールの公用語は英語ですが、民族ごとに中国語やマレー語などを話している人が多くなっています。

政治、経済、GDP

シンガポールの政治は立憲共和制なので、国民が選出した大統領が国を統治しています。一院制のため、政府機関の素早い意思決定が特徴です。

主要経済は製造業であり、日系企業も多く進出しています。IMF(国際通貨基金)が公表しているデータによれば、シンガポールのGDP(国内総生産)の世界ランキングは第38位となっています。

出典:GDP, current prices|INTERNATIONAL MONETARY FUND

富裕層の移住先第5位

日本人投資家がシンガポール不動産に注目している理由の1つが、「富裕層の移住が多い」ということです。実は、シンガポールはAFRASIA銀行が公表している世界の富裕層移住先ランキングにて第5位を獲得しています。

2019年における富裕層の移住数増加率
オーストラリア12,000人3%
アメリカ10,800人0%
スイス4,000人1%
カナダ2,200人1%
シンガポール1,500人1%
イスラエル1,400人2%
ニュージーランド1,400人1%
アラブ首長国連邦1,300人2%
ポルトガル1,200人3%
ギリシャ1,100人3%

出典:Global Wealth Migration Review 2020 | AfrAsia Bank

東南アジアの経済拠点にもなっているシンガポールには、さまざまな魅力を感じて多くの富裕層が集まっているのです。

シンガポール不動産の魅力とは?

シンガポール不動産の主な魅力は6つあります。以下にご紹介するのが、多くの個人投資家がシンガポール不動産に魅力を感じている理由です。

メリット1. キャピタルゲイン税、相続税が非課税

キャピタルゲイン税とは、不動産や金融商品を売却することで得られる利益に課せられる税金のことです。相続税とは言わずもがな、相続にかかる税金を意味します。

日本ではキャピタルゲイン税が一律20.315%かかり、相続税は累進課税で最大55%もの税金が課せられます。

一方、シンガポールではキャピタルゲイン税も相続税も完全非課税です。つまり、不動産や金融商品を売却しても、どんなに多くの遺産を相続しても税金はかかりません。シンガポールは年々少なくなりつつあるタックスヘイブン(租税回避地)の1つです。

ただし、日本の居住者である限りキャピタルゲイン税も相続税も日本で課税されるため注意してください。

メリット2. 生活拠点にするアジア人富裕層が多い

シンガポールはアジア全土を含めて、非常に治安が安定しており、年間の犯罪発生件数が日本よりも少ない国です。

この治安の良さや、税金を回避できるといった理由からシンガポールに生活拠点を置くアジア人富裕層が多いのです。したがって、シンガポールでは高額不動産の賃貸・売却により、不動産収益を得られる可能性が大いにあります。

最初にまとまった資金は必要ですが、しっかりとした不動産収益を得たいという方にシンガポール不動産はおすすめです。

メリット3. ホテルコンドへの投資もできる

近年、観光地を中心として人気が高まっているのが「ホテルコンド投資」です。ホテルコンドとは、ホテルの一室を所有し、宿泊客に利用されると宿泊料金が得られるという投資方法です。

通常のコンドミニアムとは違い、ホテル側が清掃や顧客管理、集客などを管理・実施してくれるため、手軽な不動産投資として人気を集めています。

ホテルコンドと聞くとハワイなどの観光地が中心ですが、シンガポールでもホテルコンドへの投資が可能となっています。

東南アジアや世界のビジネス拠点になっているシンガポールではホテルの利用率が高いため、有効な投資方法の1つです。コロナ禍以前のシンガポールでは、ホテルの平均稼働率は82〜94%ほどで推移していました。

出典:シンガポールのホテル平均稼働率51%に(20年2月)

メリット4. 国家や金融機関の信用性が高い

海外不動産を購入する上で大切なことは、「国や金融機関の信用性を重視すること」です。とくに注意すべきは通貨が安定的かどうかであり、その国の通貨が大きく下落すれば海外不動産投資において大きな損失を被ることになります。

では、シンガポールの国家としての信用性や、金融機関の信用性はどうかというと、「世界的にトップクラス」というのが大きな魅力です。日本格付研究所が2020年12 月 に発表した資料によると、「外貨建長期発行体」の「自国通貨建長期発行体」の安定性はAAA(トリプルエー)となっています。

出典:シンガポール共和国|株式会社日本格付研究所

アジアにおいては日本に並ぶトップクラスの信用性を誇っています。

メリット5. GDP成長率7.2%で今後の経済回復に期待できる

経済の将来性を表すGDP成長率において、2021年通年のシンガポールのGDP成長率は7.2%となっています。2020年は新型コロナウイルス感染症拡大を受け、マイナス5.4%と大幅下落したものの、1965年の独立以来の大幅落ち込みであり、例年成長を続けていました。

出典:2021年のGDP成長率は7.2%、経済回復で物品サービス税引き上げへ(シンガポール)JETRO

また、MTI(シンガポール貿易産業省)の発表によると、2021年の分野別GDP成長率は建設業が18.7%増と、製造業を引き離して高い成長を見せています。消費意欲の回復に伴ない、今後はシンガポール不動産の建設・購入ラッシュが起きる可能性もあります。

メリット6. 資産の分散投資でさまざまなリスクを回避できる

シンガポールのように海外に不動産を購入することは、日本人投資家にとって大きなリスク回避となります。

とりわけ不動産投資に精力的な個人投資家の中には、日本の災害リスクを恐れている方も多いのではないでしょうか?南海トラフ地震や首都直下型地震など、日本の主要な不動産投資先は常に地震のリスクに晒されています。

実は、シンガポールは世界の中でも稀にみる「自然災害がほとんど発生しない国」です。アジアは地震の影響を受けやすい地域ですが、シンガポール(加えてマレーシア)はその影響をほぼ受けない国です。

したがって日本に不動産を所有するよりも、シンガポール不動産を所有する方が災害リスクが少なく、安心した資産運用が望めます。

シンガポール不動産を購入する課題

シンガポール不動産には多くの魅力がある一方で、購入するにあたって課題があることも忘れてはいけません。ここでは、シンガポール不動産を購入する2つの課題をご紹介します。

課題1. 基本的に現地エージェントとのやり取りが必要になる

シンガポール不動産に限った話ではありませんが、基本的には現地エージェントとのやり取りを経て、不動産取得や維持・管理を行う必要があります。この現地エージェントとのやり取りは、さらに2つの課題に分けて考えることができます。

1つ目の課題は「言語の壁」です。シンガポールの公用語は英語ですが、必ずしもシンガポール人全員が英語を話せるわけではありません。また、ネイティブレベルの方からすると、「シンガポール人の英語は聞き取りにくい」ということもあるようです。

2つ目の課題は「信頼できる現地エージェントを見つけるのが難しい」です。シンガポール不動産の購入などは個人エージェントが扱っていることが多いのですが、音信不通になるエージェントもおり、すべてのエージェントが信頼できるわけではありません。

課題2. 賃料相場は高いが、不動産価格が上がっているためまとまった資金が要る

URA(シンガポール都市開発機構)が2022年4月に発表したデータによれば、2022年の住宅価格上昇率(郊外住宅地)は約10%となっています(2021年と2022年第1四半期を比較した場合)。

出典:Release of 1st Quarter 2022 real estate statistics|URA

シンガポール不動産の価格が上がることは、日本人投資家にとって良いことではあります。賃料相場が上がることで家賃収益も増えますし、不動産売却によるキャピタルゲインにも期待できます。

一方で、不動産価格の上昇により、シンガポール不動産を取得するためにまとまった資金が必要となります。日本の金融機関からの融資を受けることも難しいため、シンガポール不動産は収益性は高くとも購入難度が年々上がっているのです。

シンガポール不動産の選び方を6つのポイントでチェック

それでは最後に、シンガポール不動産の選び方を6つのポイントでご紹介します。シンガポール不動産購入を検討されている方は、まずは以下のポイントを押さえておきましょう。

シンガポールの人気エリアを知る

シンガポールでは学校やオフィスへのアクセス利便性、その他の周辺環境によって人気エリアがいくつかに分かれています。代表的な人気エリアは次の通りです。

エリア特徴
CBD(Central Business District)大手企業や金融機関が集合しているエリア。シンガポール経済の中心地。周辺には大型ショッピングモールやハイクラスホテルが建ち並ぶ。
サウスエリア(クイーンズタウン)シンガポール国立大学やインターナショナルスクールなどが集合しているエリア。都市開発が進み、新しい住宅地として人気のブオナ・ビスタなどもある。
オーチャード(セントラル)チャンギ国際空港が位置し、中心部周辺までの海沿いにある国立公園が人気のエリア。中心部に比べて住宅価格が安価なので人気が高い。
ウエストエリア日系企業が多数進出している郊外のエリア。幼稚園から中学校までの日本人学校があり、通学バスが停車するコンドミニアムも多数存在する。

シンガポール不動産の価格相場を知る

シンガポール不動産の価格は、東京の不動産価格を100としたとき「96」とされているため、東京の不動産価格とほとんど変わらないのが特徴です(マンション購入)。また、マンション賃料は東京を100としたときシンガポールは「95」となっており、これもほとんど変わりありません。

したがって、シンガポール不動産の価格相場は「東京並み」と考え、資金計画を立てることが大切です。

出典:日本不動産研究所 「2020年10月東京元麻布地区」|一般社団法人 日本不動産研究所

組織的な仲介エージェントを選ぶ

前述のように、シンガポール不動産では個人エージェントが多いのですが、信頼できる個人エージェントは非常に限られてしまいます。そこで、組織的な仲介エージェントを選ぶことをおすすめします。

ただし、必ずしも「組織的な仲介エージェントだから安心」というわけではありません。可能であれば日本の不動産投資エージェントを通じて、現地の仲介エージェントを紹介してもらうのが安全な取得方法です。

紹介手数料などは高めと心得る

シンガポール不動産の取得や維持・管理は、ほとんどの場合現地の仲介エージェントを介して不動産管理会社と契約を進めます。当然ながら仲介エージェントに対し、諸々の手数料を支払う必要があります。

手数料は個人エージェントよりも組織的な仲介エージェントの方が高いのですが、信頼性を考慮すれば後者との取引が最善です。したがって、「シンガポール不動産の取得・維持にかかる手数料は高い」と心得ておく必要があります。

築10年未満を1つの基準にする

「シンガポールには自然災害リスクがほとんどない」と前述しました。ただし、シンガポールは高温多湿な気候なので、「住宅が傷みやすい」という特徴もあります。

シンガポールの住宅は鉄筋コンクリートが基本なので、木造住宅ほど劣化は進みにくいですが、それでも住宅によっては傷みやすいことがあります。シンガポール不動産を購入する際は「築10年未満」を1つの基準にしてみましょう。

現地に足を運んで自分の目で見る

シンガポール不動産の購入は、日本国内の不動産購入に比べて情報量が圧倒的に少ないため、最終的には現地に足を運んで自分の目で物件を確認し、購入可否を判断することが大切です。

ネット上の情報や仲介エージェントからの情報だけを頼りに購入し、後悔したというケースが多数ありますので十分注意してください。

シンガポールなら片道6〜7時間で済み、1泊2日の渡航も可能なのでぜひ現地に足を運び、自分の目で物件を確かめてから購入可否を判断しましょう。

まとめ

本記事ではシンガポール不動産の魅力や課題、選び方のポイントについてお伝えしました。シンガポール不動産は、日本人投資家にとって非常に魅力的な投資対象です。しかし、課題もあることは事実なので、本記事でご紹介した課題や選び方のポイントを参考に、シンガポール不動産の購入についてぜひ考えてみてください。