近年、カンボジアへの投資が注目されていますが、気になるのはリスクです。本記事を読めば、カンボジア投資に関する安全性とリスクが分かります。カンボジアへの投資を始めるために知っておくべき情報をまとめました。ぜひ最後まで読み進めて、カンボジアについて理解して投資を始めて下さい。

カンボジアに投資する前に知っておくべき、カンボジアの基本情報

カンボジアへの投資を考えるのであれば、カンボジアの歴史を理解する必要があります。カンボジアは元々フランス領でしたが、1993年に独立した立憲君主制国家です。人口1,700万人、面積181,000 km²と日本の約半分程度の面積の小国となります。首都はプノンペン、人口の90%がクメール人とされており、言語もクメール語です。

1970年代にポル・ポト政権によって引き起こされた大量虐殺によって、平均年齢は27.04歳と非常に若いことが特徴です。2020年こそ経済成長率がマイナスとなりましたが、2010年以降平均して6~7%と高い数値を維持してきました。

自国の通貨は「リエル」と言いますが、カンボジアでは商用取引の大半は「米ドル」が利用されています。歴史的背景もありますが、「リエル」は1リエル約0.028円(2022年2月27日現在)と価値がとても低いため、「米ドル」に依存せざるを得ない状況です。

カンボジアには非居住でも銀行口座の開設が可能なうえ、海外への送金規制がほとんどないため、海外に米ドルで資産を作ることができる国の1つとなります。金利に関してはシェア率No.1のカナディア銀行において、1年の定期預金で4.75%と日本とは比較にならない高金利です。

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カンボジア株・投資信託による投資

カンボジアの証券取引所は実はまだ設立されたばかりです。高い経済成長率から今後の発展に期待できる一方で、その浅い歴史がリスクにもなり得ます。

2010年に設立され、まだ黎明期

カンボジア証券取引所が設立されたのは2010年2月とまだまだ最近です。2022年2月時点での上場企業はプノンペン水道公社、グランドツィンズインターナショナルなど計16社あります。

中でもプノンペン水道公社はカンボジア証券取引所で初めて上場した企業です。発展途上国であるカンボジアはインフラが整っておらず、今後も上下水道の普及のための活動が期待されます。

また、アクレダ銀行はカンボジア証券取引所の現金決済代理店となっており、銀行口座を開設できる上場企業です。三井三友銀行が18.1%、オリックス株式会社が12.12%の株を保有しており、日系企業が多くの株を保有している銀行です。手数料は必要ですが、アクレダ銀行は郵送で銀行口座と証券口座の開設が可能なため、日本にいながら口座を開設できます。

JS Land Plcは2022年2月に上場したばかりの企業で、コンドミニアムの企画から販売までをメイン事業としています。

カンボジア証券取引所に不動産会社として初めて上場した、今後が楽しみな企業です。

リスクは歴史の浅さ

カンボジアは1993年に誕生したばかりの発展途上の国です。発展途上であり高い経済成長率を誇るが故に投資の価値があると言えますが、裏を返すとリスクでもあります。投資の世界ではこのような現在の経済水準はまだ低いものの、高い成長性を秘めた国々の事を新興国と呼びます。

新興国への投資は利回りが高い一方、価格変動が大きく商品によってはハイリスクな可能性があります。カンボジアもまさに新興国であり、情報が少ないため信頼できる証券会社で取引を行うことが大切です。

カンボジアにおける日系唯一の総合証券会社であるSBIロイヤル証券や、アセアン株式を取り扱っている数少ない証券会社である楽天証券がおすすめです。

カンボジア不動産投資の基本情報

カンボジアで不動産投資をするのであれば以下の情報は必ずおさえておきましょう。

魅力は米ドル建てとキャピタルゲイン

カンボジアは米ドル決済ができる東南アジア唯一の国です。米ドル決済ができるということは通貨の価値が急変するリスクが低いので、安定した投資が可能です。

カンボジア以外の東南アジア諸国の不動産は自国通貨建てです。自国通貨建てだと新興国は通貨の価値が安定しないため、投資が不安定になります。米ドル決済であれば通貨価値に収益を左右されることが少ないため、安心して利益を上げることができます。

もう一つの魅力がキャピタルゲインです。キャピタルゲインとは株式や債券など、保有している資産を売却することによって得られる売買差益のことです。現在カンボジアでは法人が不動産を売却した場合には20%のキャピタルゲイン税が課せられますが、個人には課されていません。

2022年1月より個人に対するキャピタルゲイン税の導入が予定されていましたが、新型コロナウイルス感染症などの影響によって2024年1月まで延期が決まっています。

住宅/一軒家の価格相場は、プノンペンの中心地で1平米当たり3,000~4,000ドルほど(1,000万円前後で購入可能)

カンボジアでは外国人の不動産所有権について以下の制限があります。

  • 土地所有権

外国人が土地を所有することは禁じられています。

  • 不動産所有権

アパートやコンドミニアムなど、集合住宅の2階以上の上層階部分(地上階および地下階を除く)については、外国企業または個人の所有が認められています。該当建物の総占有面積の70%が上限とされています。

引用元:カンボジアの不動産関連情報 - 国土交通省

つまり、土地を購入して値上がりを待つということはできません。我々が狙うことができるのは主にコンドミニアムや集合住宅の分譲住宅となります。

カンボジアは首都プノンペンの一等地であっても、諸費用合わせて1,000万円台で物件を購入できるほど不動産が安いです。

プノンペン以外にはコンドミニアムが少ないので、基本的に投資の対象外となります。さらに、プノンペンでもボンケンコンというエリアは外国人が多く、多くの大使館が存在しておりおすすめです。

家賃相場は1平米当たり18-20ドルほど

カンボジア人の比較的貧しい世帯が利用しているアパートの家賃相場は1ヵ月40ドル程度です。外国人が住むには環境的に適していませんのでほぼ現地の人が住んでいます。プノンペンで人気のエリアで借りると家賃は400~500ドル程度必要です。1平米当たりで換算すると18~20ドル程度となります。

家賃の平均利回りは5.0%前後であり、所得税などのコストを考えるとカンボジアの利回りが良いことが分かります。また、カンボジアは東南アジアで唯一米ドルでの賃料を受け取ることができる国です。

米ドル建て銀行預金で高金利預金ができるので実質の利回りは10%以上となることもあります。現地通貨が安定していることがカンボジア投資のメリットです。通貨が安定しているため為替リスクを低く抑えることができます。

融資は基本的に不可

日本国内で融資を受けることはできますが、海外不動産に対する融資は一般的にハードルが高くなっています。

以下の金融機関は海外不動産投資への融資を行っています。

  • オリックス銀行(不動産担保ローン)

担保は国内の不動産に限られます。金利は3.3~3.675%、年収700万円以上の方限定となります。

  • 東京スター銀行

金利はおよそ2.8%で、年収1,000万円以上の返済能力がある方に限られており、また、オリックス銀行と同様に担保に入れられるのは基本的に国内不動産です。

自己資金があれば良いのですが、融資が必要な場合はまずは資金調達の方法を考える必要があります。

カンボジア不動産投資の詐欺やリスクについて

新興国への投資にはリスクがつきものです。必ずリスクを理解したうえで投資を行いましょう。

詐欺にあう危険性や物件が竣工しないリスクがある

カンボジアは不動産取引に関する法整備が不十分であり、供託制度がありません。供託制度とは不動産会社が予め供託所へ供託金を支払っておくことでトラブルによって買主に不利益が生じないようにするための制度です。

また、建設途中で資金繰りが悪化して工事が中止されてしまうリスクがあります。カンボジアではプレビルド方式での不動産の購入が一般的です。プレビルド方式とは竣工前に不動産を購入することで、信頼できるディベロッパーを選ぶことは非常に重要と言えます。大手のディベロッパーや日系のディベロッパーを選びましょう。

また、カンボジアの人口は約1,700万人と少なく、物件の供給過多も注視しなければなりません。ただ、首都プノンペンの人口は約230万人と日本の大都市と同等の規模であり、エリア選びもカンボジアでの投資を成功させるために重要な要素の1つです。

リスクを最小限にするためには、適切な業者選びと物件選びがポイント

リスクを減らすためには信頼できるパートナーを見つけることです。ある程度の規模で運営している日系の不動産会社が安心です。

カンボジア投資に限らず、完全に業者任せでは騙されるリスクが高くなります。オーナー自らが最低限の知識は保有しておき、業者を選定しましょう。

竣工までのリスクについては上述しましたが、竣工すれば大丈夫ということではありません。例えば、カンボジアには「ソフトタイトル」と「ハードタイトル」の2種類の登記済証が存在しますが、ソフトタイトルは所有権の証明にはなりません。必ずハードタイトルの取得が必要です。この辺りの説明がきちんとできる不動産会社を選びましょう。

また、いくら安くて良い物件が手に入っても、入居者がいないところでは収益が出せません。ここでポイントになるのがエリア選びです。コンドミニアムに住む富裕層や外国人が多くいるエリアを選びましょう。

  • ボンケンコン(Boeung Keng Kang)

治安が良く医療や教育施設もある人気のエリアです。多くの大使館がボンケンコンに存在します。

  • ダイアモンドアイランド(Diamond Island)

王宮の南に位置する一等地です。多くの商業施設が軒を連ねる地価の高いエリアになります。

  • トンレバサック(Tonle Bassac)

大使館も多い閑静な住宅街で、2014年にはイオンモールがオープンしました。イオンの近辺にはプノンペンの新名所と呼ばれる「コンテナナイトマーケット」があり、平日の夜も若者で賑わっています。

カンボジアの銀行定期預金による投資

カンボジアの銀行預金は金利が高く条件は良いですが、リスクを理解して運用しましょう。

金利が高く、カンボジアから日本への送金が簡単

カンボジアの預金金利は1年でも4%以上、5年だと5%を超える高い金利が魅力です。現地通貨リエルではなく米ドル建てで預金ができるため、為替リスクを抑えた状態で預金することができます。

海外の銀行口座運用におけるデメリットは口座開設と送金の手間です。カンボジアの銀行はカンボジアに居住していなくても口座開設可能です。さらに、銀行によっては郵送での手続きも可能なため、日本にいながら口座の開設が可能となります。

おすすめなのがカナディアン銀行とアクレダ銀行です。

  • カナディア銀行

カンボジア国内最大手の金融機関です。本店には日本語対応可能なスタッフが常駐しており安心です。また、便利なインターネットバンキングが利用できます。定期預金の金利は以下の通りです。

期間1ヵ月3ヵ月6ヵ月12ヵ月24ヵ月
金利1.00%2.00%3.0%4.75%5.25%

日本と同様に、定期預金の途中解約はできないのでご注意ください。

  • アクレダ銀行

こちらもカンボジア国内で大手の銀行です。三井住友銀行、オリックス株式会社が多くの株を保有しています。インターネットバンキングも利用可能で、定期預金の金利は以下の通りです。

期間3ヵ月6ヵ月12ヵ月24ヵ月
金利1.25%3.0%4.50%4.75%

カンボジアは国際送金に関してほとんど制限がないため、容易に日本とカンボジア間での送金が可能です。

リスクとして、銀行が破綻した場合の保証がなく、銀行選びが肝心

カンボジアの銀行定期預金のリスクとしては預金保険制度がないことがあげられます。預金保険制度とは、万が一金融機関が破綻した時に預金が保護される制度のことです。金融機関が破綻するということは日本では考えられないかもしれませんが、発展途上国では起こり得ることで、リスクを最小限に留めるためには、金融機関選びが重要となります。カンボジアの銀行では、先ほどご紹介しましたカナディア銀行とアクレダ銀行がおすすめです。

カナディア銀行、アクレダ銀行がカンボジアで1,2の大手銀行であり、日本の金融機関も業務提携や株の保有をしていることも信用できる要素となります。

まとめ

カンボジア投資に必要な基本情報とメリット、リスクについて解説しました。カンボジアは米ドル建てができることから、為替リスクが少ない数少ない新興国です。不動産会社や銀行選びをきちんと行い、安心できるパートナーを見つけましょう。