貿易摩擦やイランとの緊張関係が続く中、今年11月に大統領選という大きなイベントを控えるアメリカだが、専門家は2020年の不動産市場について、大きな変動はなく昨年同様安定した形で推移すると予想している。失業率の低さや賃金の上昇など、不動産市場にとって良いとされる経済指標が見られるものの、大統領選は大きく影響しないものと見られている。

住宅不動産については昨年、ロサンゼルスにおける高級住宅や戸建ての価格は下落し、反対に比較的価格が低いエリアについては価格上昇の動きが見られた。高級住宅地の物件に若者は手が届かなくなり、彼らが他の都市へ移りそのエリアの価格を上昇させるという市場の均衡が見られたためであり、2020年も同じような値動きになると考えられている。

またロサンゼルスの仲介業者は、大統領選の前に取引を希望するオーナーが増えるため、2020年前半はコンドミニアムなどの集合住宅の取引が増加すると見ている。新しく集合住宅や複合型施設が建設されることで、中古物件のリノベーションも進み、家賃上昇につながっているという。

集合住宅市場の一番の課題は、売り手側と買い手側の思惑が一致しないことである。カリフォルニア州では、継続的な需要が物件の価格を押し上げているため、バイヤーは納得する価格の物件を見つけることが困難になっている。

カリフォルニア州では、家賃高騰問題に対応するため、今年1月1日よりレントコントロール(家賃値上げ制限)が施行されているが、こちらも市場に大きな影響を与えるとは考えられていない。

商業不動産については、歴史的に高い家賃と空室率の低さで工業不動産が最も堅調に推移すると見られている。ロサンゼルスでは、工業不動産施設の建設が急速に進んでいるが、最終的には投資家(企業)は価格が手ごろなインランド・エンパイア(カリフォルニア州南部のリバーサイド市とサンバーナーディーノ市を中心とするエリア)に流れるのではという見方もある。

昨年順調であったカリフォルニア州の産業市場は、今年も衰えを見せる気配はない。しかし歴史的に高くなった賃料などの影響で、空室率は若干増加し、賃料も1平方フィート当たり数セントほどではあるが若干下落すると見られている。

また商業不動産市場においては、電子商取引(eコマース)が今後重要な役割を果たしていくことは間違いなく、小売業はその対応を余儀なくされていくことだろう。中にはうまく対応ができずeコマースの波に飲み込まれてしまう小売り業者も少なくないが、例えばオンラインで注文し、店舗で商品を受け取るという形であれば、生き残ることは可能だろう。

オフィスついては、経済が好調なのにも関わらず空室率は増加傾向にある。多くの仕事が自動化され、物理的なオフィススペースの必要性がなくなったという点が大きいだろう。そのため2020年は新しいオフィス建設については減少すると見られている。実際にダウンタウンではオフィス物件は減少し、代わりに住居やホテルなどを併設した複合建設が増えているという。

小規模なオフィス物件については、2019年は中小企業用のローンを利用して物件を購入し、リースとして貸し出すという形が目立った。価格上昇を受けて物件の売り上げは減少しており、市場が落ち着くのを待つ企業からのリース需要はしばらく続くことが予想される。

【参照】2020 real estate market torends to mimic 2019 across all sectors, experts forecast

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セカイプロパティ編集部
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