世界人口の増加に伴い、エネルギー消費や供給が懸念される中、世界中で注目を浴びている「スマートシティ・プロジェクト」。カンボジアにおいても、複数の都市が「スマートシティ」化を目指しているが、前途洋々とはいかないようだ。

ASEANスマートシティ・ネットワーク(ASCN)では、ASEAN内26地域がパイロット都市として指定され、カンボジアからは首都プノンペン、北西部のシェムリアップ、西部のバッタンバンの3都市が選ばれている。

ベトナムやシンガポール、韓国、日本など技術に強いとされる諸外国との協力体制は期待できるものの、カンボジア側が統制のとれたプランや方針を準備し、適切なガイドラインを実行できなければスマートシティ化の実現は難しい。

計画・投資不足
カンボジアのスマートシティ開発においてネックとなっているのが、土地区画や建築基準法等の整備である。プノンペンの一部の地域では、住宅街と工場地帯が同じエリアに建ち並び、工場からの廃棄物が水路に流出しているところもあるという。
またスマートシティ・プロジェクトの資金繰りについても曖昧で、政府主導とするのか、民間部門や民間協力体制で進めていくのかという部分もはっきりしていない。資金繰りについての明確なルールがないことが、中国以外からの投資獲得を難しくしているとも言える。しかし、今年前半で前年比+48.5%となる52億ドル(約5,530億円)相当の投資が承認されたとの発表もあり、カンボジアにおける投資家信頼が徐々に高まっているとも言えるだろう。

諸外国との協力体制
プノンペンとベトナムのホーチミン市は、交通渋滞や廃棄物管理、環境汚染、犯罪等の対応において相互協力の体制をとっていくことに合意している。またシアヌークビルのスマートシティ化においては、韓国も大きな役割を果たしている。3月にはシンガポールの仮想通貨デベロッパー「Pundi X」が、プノンペンにて電力供給網や交通網システムにブロックチェーン技術を活用するスマートシティ計画を進めていくことを発表している。日本もスマートシティの設計やインフラ設備などのノウハウを提供していく計画である。

管理体制の改善、効率的な制度
競争力のある経済、生活の質の高さと並び、持続可能な環境もASCNが目指す成果の一つである。これらの実現のためには、前述のとおり統制のとれたマスタープランと開発が必要不可欠である。世界銀行も、「組織的かつ効率的な都市開発を可能にするため、カンボジアは制度や管理運営体制を強化していく必要がある」とコメントしている。
プノンペンがそれを実現できる可能性は大いにある。しかし決して簡単な道のりではなく、今後政府と国民が一丸となってプロジェクトを進めていく必要があるだろう。

【参照】Cambodia needs a smart plan

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セカイプロパティ編集部
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