マレーシア半島最南端に位置するジョホール州では、新しい街づくりが盛んに行われている。2006年にはジョホール州を大開発するプロジェクト「イスカンダル計画」が始まり、住宅、産業、農業など様々な分野での開発が進められている。

マレーシア政府は、データを活用した新しい街づくりを目指しており、住宅需要や水質保障、公共交通網の構築などでのデータ活用を見込んでいるという。

不動産部門においては、「イスカンダル・マレーシア・都市観測所(IMUO)」が、東南アジアのオンライン不動産ポータル事業を展開する「iProperty」と提携し、求められている住宅タイプやコスト、ロケーション等についての動向を把握し、需要と供給を一致させることを目指す。

また水質保障の問題にも、データ活用が必須となる。

過去には、水源であるジョホール川で高濃度のアンモニアが検出され、9ヵ月間水処理プラントがストップするという事態が発生している。安全な水を確保するため、政府は州の灌漑排水局(DID:Department of Irrigation and Drainage)と連携し、対応に当たっている。

集められたデータから、ある村の浄化槽から下水がそのまま川に流出し、汚染につながっていたことがわかった。DIDはIMUOと連携し、150の浄化槽の洗浄を行い、環境省も参画する形で浄化槽の管理・監督を行っている。

公共交通網については、「イスカンダル地域開発庁(IRDA:Iskandar Regional Development Authority)」が、バス高速輸送システム(BRT)の開発を計画しており、ルート計画や遅延のない運行実現のためデータを活用していくという。

イスカンダル計画で地域内の人口増加が見込まれており、2005年に150万人であった人口が2025年までに300万人に到達すると見られている。現時点では、300万人が乗用車を活用できるほどの道路は整備されていないため、公共交通網の開発が急がれる。

さらにIRDAは、主要道路におけるバスと連携できる「スマート信号」の導入を予定している。街の中心部などでは、どうしても渋滞が避けられない。そのためバスが優先的に走行可能にできるような、「スマート信号」の導入が必要になるという。BRTは最終的に、マレーシアの90%をカバーすることを目指している。

このような広範囲にわたるリアルタイムのデータ活用には、5G(第5世代移動通信システム)ネットワークの整備が必要不可欠である。IRDAはマレーシアにおける5G戦略開発のタスクフォースメンバーでもあり、5Gの使用事例や、必要となるインフラ、スペクトル管理や規制管理などについて検討を行っている。今後スマートシティ、公共の安全、医療、農業、教育、メディア、運輸等様々な面で5Gの実現が期待される。

「イスカンダル計画」が始まった2006年以来、ジョホール州には710億ドル(約7兆6,460億円)を超える投資が集まっている。データの活用で、こうした投資が適切なプロジェクトに正しく割り振られることも期待できる。

【参照】Johor's plan to build a city powered by data

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セカイプロパティ編集部
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