2019年10月、日本で消費税が10%に増税されました。ヨーロッパでは、税率20%を超える国も珍しくありません。では、アメリカの消費税の税率はどれくらいなのでしょうか。実はアメリカには消費税がなく、代わりに小売売上税という税金があります。なぜ消費税がないのか、小売売上税とはどういうものなのか、解説していきます。

【関連記事】知らないと難しい、アメリカ不動産に投資する際のローンの組み方

【無料】海外不動産セミナーはこちら

1 アメリカに消費税がない理由

アメリカでも1960年代から、消費税の導入に関する議論が行われてきました。しかし2020年現在、導入には至っていません。その理由はなぜなのでしょうか。

1-1 消費税は企業の経営悪化を招く?

アメリカで消費税が導入されていないのは、「間接税が良い制度ではない」と評価されているからです。アメリカは自由かつ独立心の強い風土のため、ベンチャー企業が次々と設立しています。そういった新しい企業や、現時点で経営が上手くいっていない企業、設備投資などをして資金繰りが苦しい企業にも消費税を課すと、当然のように財務状況が悪化します。最悪、倒産に至ってしまいます。すると、アメリカの経済自体が低迷します。そういった事態は避けたい、という考えから、消費税を導入していないのです。アメリカでベンチャー企業が続々と生まれ、成功を収めることも多いのは、こういった税制の仕組みも影響していると考えられています。

ちなみに日本では、設立3年以上が経ち、売り上げが1000万円を超える企業は、消費税を納めないといけません。公平性がある一方、それによって経営が圧迫されることも少なくないのです。

1-2 免税や軽減税率が適用しづらい

消費税には、免税や軽減税率が適用しづらい、という側面もあります。例として、生肉は免税の対象、ソーセージなど加工肉は課税の対象だとしましょう。畜産業者や卸業者が、生肉を小売業者に販売。小売業者はそれをソーセージに加工し、お客さんに販売します。では、小売業者が畜産商社や卸業者から生肉を買う際、支払う消費税は免税になるのか、通常通り課税されるのか。その辺りが曖昧で分かりづらいとされているのです。

1-3 アメリカの消費税は特殊

アメリカに「消費税はない」と書きましたが、「Excise Tax」という税金があります。これは直訳すると消費税になるのですが、日本のそれとは異なります。タバコやお酒、タイヤ、石油製品、トレーラーなど、限られた商品にのみ課せられるのがExcise Taxなのです。そのため、私たち日本人が「消費税」と認識している仕組みと同様の消費税は、アメリカには存在しないという風にとらえてください。

2 小売売上税とは何か?

アメリカで、消費税の代わりに導入されているのが「小売売上税」です。どちらも間接税という点ではよく似ていますが、課せられる対象や仕組みに大きな違いがあります。具体的に見ていきましょう。

1-1 消費税と小売売上税の違い

先ほどと同じく、生肉とソーセージを例に挙げます。ソーセージは畜産業者、卸業者、小売業者などさまざまなプロセスを経て、消費者の手に渡ります。消費税はこのすべて、「畜産業者」「卸業者」「小売業者」「消費者」にそれぞれ課税されます。一方の小売売上税は、「小売業者」が「消費者」に販売するときのみ課税されます。つまり、小売売上税を支払うのは消費者のみなのです。これが消費税と小売売上税の大きな違いとなります。

納税の仕組みも消費税とは異なります。消費者から小売売上税を徴収するために、小売業者は税務署が発行する「再販許可証」を取得しないといけません。その上で、預かった売上税を各州に納税するのです。小売売上税の税率は、州・郡・市ごとに変わります。この辺りはのちに詳しく説明します。

1-2 使用税とは?

小売売上税には、「使用税」という税金もあります。例えば消費者が、ニューヨーク州で商品を購入したとします。ただし、実際に使うのは他の州の場合、ニューヨーク州に「使用税」を支払わないといけないのです。税率は、購入した州の税率と、使用する州の税率の差額分です。

アメリカでは、エリアによって小売売上税の税率が変わるとお話しました。すると、税率が低い州に消費者が集まってしまいます。それによる州ごとの格差をなくすため、「使用税」があるのです。

1-3 小売売上税のエリアごとの税率

小売売上税の税率は、エリアによってどのくらい変わるのでしょうか。最も高いのが、カリフォルニア州ロサンゼルスのサンタモニカ市で、税率は9.5%です。イリノイ州、マサチューセッツ州、テキサス州は6.25%、フロリダ州は6%。ニューヨーク州やハワイ州は4%です。ちなみにアラスカ州、デラウェア州、モンタナ州、ニューハンプシャー州、オレゴン州は0%です。

ハワイ州の税率は基本的に4.35%ですが、首都ホノルルがあるオアフ島のみ4.4%となっています。ちなみにハワイで、小売業者は税金を徴収する義務がありません。これは「ジェネラルエクセサイズ」という制度と呼ばれています。

エリアごとの税率について、さらに詳しく知りたい方は、アメリカ政府による「Sevice and Information」をご覧ください。すべて英語になりますが、政府発表の情報なので確実です。

https://www.usa.gov/state-taxes

1-4 小売売上税の減免措置は

日本の消費税は、減免措置として、飲食料品や新聞などに軽減税率が適用されています。アメリカでも品物ごとに、小売売上税の減免措置があります。代表的なのが、飲食料品や薬、衣服など生活必需品です。例を挙げると、イリノイ州の税率は6.25%ですが、食料品と薬はわずか1%という風に、減免措置がされています。生活必需品だけでなく、不動産やソフトウェア、サービスなどでも減免措置が適用されています。

1-5 ホテルやレストランでも税金がかかる

エリアによっては、「ホテル税」「外食税」と呼ばれる税金がかかることもあります。ホテル税は、ニューヨークでは14.375%+3.5ドル、ワシントンDCは14.5%、ロサンゼルスは14~17%です。外食税は、平均10%かかります。

ただし、税率や課税のルールは変動する場合もあり、特定の条件のときのみ発生することもあります。さらに、アメリカではチップもあるため、買い物や宿泊、外食の際にいくら支払えばいいのか、慣れないと戸惑うこともあるかもしれません。

しかしこれらは、前述したように、アメリカの経済を発展させるために導入されている税金です。長い目で見れば、アメリカに移住を考えている方、長期滞在予定のある方、不動産購入を検討している方などの支えになるので、ぜひ前向きにとらえてください。

4 まとめ 

日本のように比較的シンプルな税率とは違い、アメリカではエリアや商品など様々な条件により、小売売上税の税率が変わります。すべてを覚えるのは難しいですし、その必要もありません。ただし、移住や不動産購入などを考えているエリアについては、できるだけ情報を集めておくと良いでしょう。生活や投資をしていく上で、きっとお得かつ便利になるはずですから。

【無料】海外不動産セミナーはこちら