将来の資産形成や節税対策のためにアメリカ不動産への投資を検討される方も増えてきたものの、資金調達に苦労して断念する方は少なくありません。国内不動産の購入で融資を受けるケースと比べて、海外不動産投資でローンを組むのは、様々な理由から難しいのが実情です。
そこで、この記事ではアメリカ不動産投資を検討している方のために、アメリカ不動産投資でローンを組む方法について詳しく説明しますので、参考にしてみてください。
1 なぜアメリカ不動産投資が注目されている?
アメリカ不動産投資に注目が集まる理由として、物件売却によるキャピタルゲインを見込めることや節税効果などが挙げられます。以下で詳しく見ていきましょう。
1-1 キャピタルゲインが期待できる
今後の日本国内は、少子高齢化と人口減少から不動産需要の増加を期待するのが難しい状況にあります。経済産業省が公表した「住宅取引と住宅産業の動向」(平成28年3月)によると、新築マンションの契約率は低下し、在庫が増加しているとしており、需要が細れば不動産相場の上昇は見込めません。
一方、不動産価格の上昇が著しいアメリカでは人口増加や経済成長が続いています。また海外の投資マネーも流入し続けることにより不動産相場も上昇しています。
不動産は国の経済成長に伴って値上がりしたときに売却すればキャピタルゲイン(=売却益)が狙えます。アメリカ不動産投資は人口増加や経済成長の恩恵を預かれるため、注目度が高まっています。
1-2 アメリカ不動産投資では高い節税効果が見込める
インカムゲイン(=家賃収入)や節税対策のためにアメリカ不動産を購入するケースは多く見られます。日本国内の不動産投資でも節税効果はありますが、減価償却の対象となる建物価格の土地価格に対する比率が低く、また築年数が経過するほど建物価値も低くなることが難点になります。
一方、アメリカの不動産は土地に対する建物価格の比率が高く、築年数が経過しても日本と比べて物件価格が下がりにくいため、日本の不動産よりも減価償却費を多く計上でき、所得税を圧縮する効果に加えて、売却時に取得価格に近い金額で取引しやすいことや流動性の高さなどが期待できます。
2 アメリカ不動産投資でローンを組むのが難しい理由とは
不動産の購入資金を全額現金で用意できる人を除けば、多くの場合、銀行などの金融機関から融資を受けることになります。
例えば日本で投資用の中古物件を購入する際は、頭金をある程度用意した上で銀行などの金融機関に申し込めば、投資用ローンを組むことができます。融資額や期間などの諸条件は融資を受ける人の属性にもよりますが、対象不動産が担保となるため、事業計画をきちんと用意すれば問題なく融資が受けられます。
レバレッジを使って少ない資金で不動産投資を考えている人にとって国内不動産投資は利点があります。
2-1 国内金融機関は海外不動産を担保に融資をしない
しかし、アメリカ不動産の購入では、海外にある不動産の担保評価が難しいという理由もあり、国内金融機関のほとんどが海外不動産を担保にした融資をしていません。一部、海外不動産投資でローンを組める銀行もありますが、その場合もアメリカの不動産を担保に設定できるわけではありません。
そのため、アメリカ不動産投資でローンを組みたい場合、購入する現地の不動産を担保にするのではなく、自身の信用スコアや支払い能力を担保に借りる「フリーローン」という方法を選ぶことになります。
ただし、その場合もしっかりした事業計画書を作る必要があるなど、借り入れ条件は厳しくなります。さらに、過去に事業融資を受けたことが無かったり、自宅のローンを返済中だったりすると、返済能力が不十分として融資を受けられない場合もあります。
2-2 現地銀行でローンを組むのも難しい?
アメリカ不動産投資で現地銀行から融資を受けるケースでは、まずアメリカ国内での課税所得があることがローンを組むための条件となっています。少なくとも2~3年の安定収入と雇用を証明する必要があります。さらにアメリカ国内でのクレジットスコア(信用履歴)が必須です。最低2年間ほどのクレジットカードの利用履歴は必要となります。
そのため、非居住者がアメリカ不動産を購入するために、いきなり現地銀行でローンを申し込んでも門前払いを受けるでしょう。このように信用力で劣る非居住者が、現地銀行でローンを組むにはさまざまな難しさが伴います。
3 アメリカ不動産投資をする際のローンの組み方
アメリカ不動産投資を事業として展開する場合や、国内不動産を担保とする場合に、融資を受ける方法があります。「国内金融機関から借りる方法」と「海外銀行から借りる方法」にわけて見ていきます。
3-1 国内金融機関から融資を受ける方法
海外不動産投資に対して融資をしている国内金融機関の一つに、事業融資・創業融資でメジャーな日本政策金融公庫が挙げられます。
日本政策金融公庫から借りる
日本政策金融公庫は、海外で事業展開する人を支援するために、7,200万円までを限度額として、海外不動産投資を検討する人にも融資をしています。融資条件として、①国内においてすでに不動産事業を行っていること、②海外に進出する正当な理由があると認められること、などを設けています。
このため、初めて不動産投資をする方が日本政策金融公庫から融資を受けるのは難しいでしょう。すでに国内で同様の事業(この場合は不動産事業)を営んでおり、その延長として海外展開する場合に、しっかりした事業計画書を作成して、担当者に相談すると良いでしょう。
日本政策金融公庫で組めるローンの融資限度額は7,200万円(運転資金の4,800万円含む)、返済期間は20年(運転資金は7年)です。利率は条件により異なりますが、担保を提供する場合は、2.16~2.23%(基準利率)、無担保・無保証人の場合は、2.51~2.58%となります。
オリックス銀行から借りる
オリックス銀行も海外不動産投資のローンを用意しています。こちらは不動産担保ローンという商品で、融資額は1,000万円以上2億円未満、融資期間は最大35年間、金利は3.300〜3.675%となります。
融資条件は、①首都圏・近畿圏・名古屋市・福岡市に居住用不動産を所有しており、担保として提供できること、②借入時の年齢が30歳以上60歳未満、最終返済時年齢が80歳未満であること、③前年度の年収が700万円以上(自営業の場合は所得)で、返済期間中安定した収入が見込めること、④同一勤務先に3年以上勤務していること、あるいは自営業なら事業開始から3年以上経過していること、などになります。
なお、担保となる居住用不動産は、マンションの場合なら専有面積40㎡以上、戸建ての場合なら土地面積が60㎡以上といった細かい条件があります。検討する場合は、借り入れ条件についてよく目を通しておきましょう。
3-2 海外銀行から融資を受ける方法
アメリカ不動産投資では現地以外の海外銀行を利用する方法もあります。例えば、イギリスに本社を構えるHSBC(香港上海銀行)は、非居住者向けに世界各国で住宅ローンを提供しています。融資対象国としては、以下の国を挙げています。
- イギリス
- アメリカ
- カナダ
- フランス
- オーストラリア
- マレーシア
- フィリピン
- ベトナム
- シンガポール
- インド
- アラブ首長国連邦
ただし、日本人向けにこれらすべての国に対応しているかどうか、不動産投資目的の住宅ローンが利用できるかなどについては、個別に問い合わせて確認するのが確実です。頭金はある程度用意することが必要です。
4 まとめ
アメリカ不動産投資は日本国内の不動産にはない利点があるものの、購入する際、購入資金をいかに用意するかが課題になります。またシリコンバレーなど近年の価格上昇により、現金で物件を一括購入するのが難しいエリアも出始めています。
ローンを組む手段としては、日本政策金融公庫や海外銀行のHSBCなどが候補となるでしょう。要求される融資条件は厳しいのですが、融資が下りればキャピタルゲインや安定したインカムゲインを狙える物件を、減価償却による節税メリットを享受しながら運用することができます。
アメリカ不動産の購入で、資金不足を理由に断念されていた方は、この記事を参考に様々な資金調達方法を検討してみてください。