海外不動産投資は、購入金額自体が大きく現金を多めに用意する必要があるため、二の足を踏む方もいるのではないでしょうか。しかし経済成長が続く新興国では、都市部の高級コンドミニアムなどを除けば安く購入できる物件がまだまだ残されています。

そこで、この記事では少額から投資できる海外不動産について、対象国、物件を見つける具体的な方法、海外不動産投資の注意点を詳しく解説しますので、興味がある方はご参考ください。

1 少額から不動産投資できる国

経済成長が好調な東南アジアの新興国は、物価上昇に伴って不動産価格も上昇しています。ただ一方で首都近辺を中心にインフラ整備や建設ラッシュが続いた結果、一部では物件の過剰供給状態となっており、借り手探しに苦労するエリアも出始めています。

また、マレーシアなど金利の高い国では、為替手数料などを考慮すれば家賃収入によるインカムゲインを期待するのが厳しいため、物件を安く買って高く売るキャピタルゲイン狙いが中心になります。なかでも手頃な価格で物件が手に入るカンボジア、バングラデシュ、フィリピンについて見ていきます。

1-1 カンボジア


カンボジアの物価上昇率は、IMF(国際通貨基金)による2018年測定値では、3.6%となっています。GDPも順調に増加を続け、経産省によると2020年は予測で290億USドルに達すると見られています。首都プノンペンの人口も増加を続けています。2000年は114万9千人、2010年は151万人で、2020年には197万9千人になると見込まれています(経産省より)。

このような経済成長と人口増加からカンボジアのコンドミニアムは投資用物件として期待できます。価格は手頃なもので、プノンペンで㎡当たり1,400ドル(2018年第3四半期時点、Global Property Guideより)、50㎡のコンドミニアムなら約750万円で取得できます。利回りは3~5%です。

新興国のコンドミニアムの場合、外国人が投資目的で購入するケースが多くなりますが、カンボジアでは現地人の購入需要も伸びています。この点は、すでに供給過多とも言われる新興国において転売における需要確保という面でプラス材料となるでしょう。

世界銀行の分類によれば、カンボジアは長い間ASEAN10ヵ国のなかで「低所得国」でしたが、安い人件費に注目が集まり世界各国のメーカーが生産拠点を置いて輸出が急激に伸びた結果、2015年には「下位中所得国」に昇格しました。国全体の市場規模はまだ小さく、電力インフラが十分に整備されていない点も、発展余力があると判断できます。

1-2 バングラデシュ


バングラデシュの経済成長率は2018年度で7.68%と高い数値を維持しています(バングラデシュ統計局/財務省より)。さらに消費者物価指数上昇率も、バングラデシュ中央銀行の発表によると2018年度で5.78%となっています。

首都ダッカの人口は2000年に1,028万人、2010年に1,473万人、そして2020年に2,098万人になると予測されています。また2020年の名目GDP予測も3,417億ドルと、経済規模も相当に大きくなることが見込まれています(経産省より)。

バングラデシュは1971年にパキスタンから独立したばかりの新しい国です。人口密度が高く、ダッカには総人口の1割ほどが集まっています。若者が多いのも特徴となっており、総人口の約6割が25歳未満で、国民の平均年齢は24歳です。

海外からの直接投資はまだ少なく、日本企業も進出しているのは中小企業が80%ほどを占めている状況です。製造業やインフラにかかわる投資が多く、電力・エネルギー・交通のインフラ整備は未だ不十分といった状況です。

逆に言えば、海外投資を背景にこれらのインフラが整備されることで、不動産市場はさらに拡大し価格上昇も見込めます。労働生産人口も多く、都市部に海外企業の拠点が移動してくればさらに期待できるでしょう。

1-3 フィリピン


フィリピンの経済成長率は2018年で6.2%(IMF発表)、物価上昇率は同じく2018年で5.2%(フィリピン国家統計局発表)と高い数値です。GDPは2018年で3,309億USドルです。フィリピンの不動産価格は2010年から2018年にかけて、132%ほど上昇しています(global property guideより)。

首都圏メトロマニラの高級住宅が立ち並ぶロックウェルセンターでは、3ベッドルームのコンドミニアム平均価格は㎡あたり4,650ドル(約50万円)となっていますが、南東に約10㎞進んだフォート・ボニファシオなら㎡あたり3,908ドル(約42万円)となります。利回りはメトロマニラのコンドミニアムで7%(2016年時点)です。

英語の普及率が高く消費市場としても特徴あるフィリピンには、日系企業も多く進出しています。不動産市場も今後はさらに期待できると言えるでしょう。

2 新興国の物件を見つける5つの方法

新興国の不動産市況に関する情報は、一般にはなかなか流れてきません。では、どのようにすれば新興国の物件を見つけることができるのでしょうか。

2-1 セミナーに参加する

不動産会社が主催するセミナーに参加すれば、手軽に海外物件を紹介してもらうことができます。現地の見学会なども行っているので、目当ての物件や周辺状況などを直接目で見て確かめることも可能になります。

多くの海外不動産投資セミナーは一般的な現地情報から、対象国の経済動向や政治体制、税制、外国人投資家に対する規制、おすすめ物件の紹介といった内容で展開されます。さらに物件購入の具体的な手続きや、あるいはローンの紹介をしてもらったりもできます。

海外不動産投資では信用のない外国人がローンを組むのは難しいため、提携する金融機関がある不動産会社のセミナーは役に立ちます。

また購入後の賃貸管理なども行う会社もあります。新興国では賃貸に関するマーケットも十分に整備されていないので、現地法人などで管理できる不動産会社に任せると便利でしょう。

海外不動産投資が初めての方にとっては、海外物件の探し方から苦労することもありますが、セミナーでは物件選びと海外不動産投資に関する知識も同時に得られるため、参加を検討してみると良いでしょう。

2-2 ポータルサイトから探す

海外不動産投資セミナー情報を掲載している国内の不動産ポータルサイトには、海外の物件情報も豊富に掲載されています。すでに海外不動産投資を始めていて、物件の買い増しを検討している方にもおすすめの探し方です。

新築のコンドミニアムを検討する場合、利回りが把握しにくく初心者の方が物件探しをするには難しい場合もありますが、様々な情報に触れることでエリアごとの相場を把握できるようになります。また、新築が多く建設されるエリアの場合、需給関係から購入後の値上がりなどある程度の投資価値がわかるので参考になります。

2-3 エージェントを利用する

個人で活動する海外不動産投資のエージェントに紹介してもらう方法もおすすめです。様々な国に精通しているエージェントや、国を限定して現地情報に精通しているエージェントなどは、ブログやSNSを通して活動内容を積極的に発信しています。

実際に海外不動産投資をした成功例や失敗例も目にしているので、予算や運用方法などを伝えれば、的確なアドバイスを受けることもできるでしょう。現地の少額で投資できるおすすめ物件やエリアも教えてくれるので、セミナーに参加したり自分で調べたりする時間が確保できない方に特におすすめです。

また、現地の有能なエージェントなどは不動産会社に紹介してもらうこともできます。海外物件を豊富に取り扱う不動産会社は、現地の優秀なエージェントとも提携しています。物件の価格や利回りといった基本的な情報から、周辺の開発状況など不動産価格の上昇につながる貴重な情報を入手できることもあります。

2-4 利回りをチェックする

具体的に予算に見合う物件が見つかったら、細かなチェックに移ります。物件売却によるキャピタルゲインか家賃収入のインカムゲインを狙うかによって、保有の仕方や支払い方法、さらには物件の選び方自体も変わってきます。

ただし、いずれにしてもある程度の利回りが確保できる物件を選ぶことが重要です。例えばプレビルドのコンドミニアム(完成前に有利な条件の価格で購入できる物件)を検討する場合でも、完成後のキャピタルゲインを狙うから利回りは関係ないと判断するのは早計です。

完成後の転売時に購入する人(=買い主)の多くは、その物件の価値を「利回り」で判断します。それも表面利回り(単純に物件価格と家賃だけで算出するもの)ではなく、運用費用などを考慮した実質利回りで評価します。そのため自身で賃貸運用するのか、あるいはすぐに転売するのかにかかわらず、利回りの高い物件を選ぶことがポイントです。

2-5 需要を常に確認する

海外不動産投資は賃貸収入を得て転売した時点で、最終的に利益を出せる物件である必要があります。そのためには、まず賃貸需要と購入需要を調べます。セミナーに参加したり、あるいはエージェントから情報を得たりすることで、検討する国やエリアにおける需要はある程度チェックできます。

しかし、新興国の不動産市場は変化が早いため注意も必要です。例えばコンドミニアムが多く建設されるエリアは、近い将来供給過剰になり、賃貸需要にも影響が及ぶ可能性があります。できればセミナーなどには継続して参加し、できる限り多くの現地情報を得るようにしましょう。

不動産会社によっては、同じ国に関するセミナーを何度も開催することもあるため、その都度参加することで、検討するエリアの相場感も掴めます。

3 海外不動産投資の注意点

少額から投資できるとはいえ、海外不動産投資では注意すべき点が様々あります。

3-1 新築コンドミニアムは未完成リスクに注意

新興国の新築コンドミニアムは、建設の前に販売するプレビルド方式で購入することで、比較的安く手に入ります。しかしデベロッパーの資金力によっては、建設するコンドミニアムが完成しない可能性があります。これは、プレビルド方式での販売により得たお金を建設資金に充てることが主な原因です。

想定した戸数が売れなければ、建設を続けるための資金が集まりません。結果、コンドミニアムが完成せず、最悪の場合、お金が戻ってこないこともあります。

3-2 出口戦略を立てておく

少額で投資できる新興国の場合、経済成長に期待する投資マネーが流入し続けることによって、不動産価格も大きく上昇し、キャピタルゲインが狙えます。しかし一部の首都圏ではコンドミニアムの建設ラッシュとなっており、借り手がなかなか現れない物件もあります。

さらに外国人を対象としたコンドミニアムの売却相手は現地人ではなく、同様の外国人投資家になるなど数が限られます。そのため供給量の多い場所でのキャピタルゲインはどの程度見込めるのかを検討したうえで、出口戦略を立てる必要があります。

またローンを組んで購入する場合には、返済による金利負担も大きくなります。売却時の収益を圧迫することがないように資金計画を検討することが大切です。

3-3 新興国は土地を所有できない

新興国では基本的に、非居住者は土地の所有を認められていません。地価は経済成長や物価上昇に伴って上昇しますが、建物の価値は年数の経過によって低下します。非居住者が所有できるのは「建物分のみ」となる点に注意が必要です。

非居住者が保有するコンドミニアムなどの資産価値は、購入者の需要によって決まるということにも留意します。

4 まとめ

新興国はインフラ整備など発展の伸びしろが多く残されていることから、不動産市場の拡大が期待できます。エリアを選べば少額で購入できて価格上昇が見込める物件もあるため、今後の海外不動産投資では情報収集力が問われます。

少額で購入できる海外物件に興味が湧いた方は、この記事を参考に効率よく探してみてください。