不動産投資では運用スタイルや節税効果などを踏まえて、どの程度の予算を組めるかを考えることが大切です。とくに海外不動産は、今後値上がりが期待できるエリアもあれば、すでに不動産価格が高騰している地域もあり、購入する前にそれぞれの物件価格や利回りなどについて詳しく調べる必要があります。

この記事では、海外不動産投資で人気の東南アジアやアメリカについて、その特徴から物件価格・利回りなどをご紹介するので、海外不動産はいくらから購入できるのかを知りたい方など、投資判断の参考にしてみてください。

1 各国の不動産の価格と利回り

現地に住んでいない非居住者が、不動産投資目的で物件を購入できるおもな投資対象国(カンボジア、マレーシア、フィリピン、タイ、アメリカ)の不動産価格と利回りを、首都や人気エリアごとに見ていきます。なお、単価は㎡当たりの価格(米ドル:2019年6月の為替相場から108円で計算)で記載しています。

1-1 カンボジア不動産

カンボジアの不動産は価格単価が安いため、利回りは広いタイプの物件ほど大きくなります。首都プノンペンでの平均物件単価は1平米当たり2,913ドル(約31万4,000円)で、65㎡の場合、$220,155(約2,377万6,000円)です。

広さ

65㎡

120㎡

購入価格

$220,155

(単価$3,387)

$349,560

(単価$2,913)

月額家賃

$800

$1,553

利回り

3.27%

5.33%

Global Property Guideより)

なお、カンボジアの賃貸収入は源泉徴収税の対象になり、税率は10%となります。売却した際に生じたキャピタルゲイン税は20%です。物件の購入時にも、資産譲渡税として物件の評価額と売買価格の高いほうに対して4%、また毎年固定資産税として物件評価額の0.1%がかかります。このように不動産投資ではコスト面のチェックも大事になります。税金に関しては国によって大きく違うため注意しましょう。

1-2 マレーシア不動産

マレーシアの首都クアラルンプールの物件平米単価は$3,441(約37万1,000円)で、1ベッドルームタイプの場合、$169,297(約1,828万4,000 円)となります。利回りは4.24%で、1年間の物件価格上昇率は4.09%となっています(2018年第1四半期時点)。

タイプ

1ベッドルームタイプ

4ベッドルームタイプ

購入価格

$169,297

$494,750

月額家賃

$598

$1,940

利回り

4.24%

4.70%

Global Property Guideより、以下引用元同じ)

一方、高級住宅街としてヨーロッパ人に人気のエリア「バンサー(Bangsar)」の不動産価格と利回りは次のとおりです。

タイプ

1ベッドルームタイプ

2ベッドルームタイプ

購入価格

$197,650

$254,157

月額家賃

$741

$950

利回り

4.50%

4.49%


同じく高級住宅街で日本人にも人気のエリアであるモントキアラ(Mont Kiara)の不動産価格・利回りは次のとおりです。

タイプ

1ベッドルームタイプ

2ベッドルームタイプ

購入価格

$165,921

$236,637

月額家賃

$711

$895

利回り

5.14%

4.54%


クアラルンプールのコンドミニアムは㎡単価で$1,800〜$2,000ほどとなっています。マレーシア全体を見ると人口密度が低いため、都市部のクアラルンプールやバンサー、モントキアラなどが不動産投資先として有力候補に挙がるでしょう。利回りは低下傾向にありますが、それでもほかの国と比較すると遜色ありません。物件価格も順調に上昇しています。

なお、マレーシア不動産投資では、売却時における不動産譲渡益税に注意が必要です。保有期間によって税率が異なり、短期間の保有だと税率はかなり高くなります。以下は取得日からの年数に応じた税率です。

不動産の保有期間
不動産譲渡益税
~5年目

30%

6年目以降

10%


このほか賃貸収入による所得税は税率26%と高めです。税金によるコストも考慮して取得計画を立てる必要があるでしょう。

1-3 フィリピン不動産

日本人や日系企業も多いマニラ市を中心とした首都圏メトロマニラにおける物件単価は$3,952(約42万6,000円)で、1年間の物件価格上昇率は10.07%となっています(2018年第2四半期時点)。

広さ

45㎡

購入価格

$131,310

(単価$2,918)

月額家賃

$767

利回り

7.01%

Global Property Guideより、以下引用元同じ)

メトロマニラ内でも南端のケソン市「イーストウッドシティ」地区の場合、部屋が広くなっても不動産価格は下がり、利回りは上がります。

広さ

50㎡

購入価格

$98,850

(単価$1,977)

月額家賃

$611

利回り

7.41%


フィリピンでの不動産投資は利回りの高さが特徴的ですが、税金が高いことでも有名です。滞在期間が180日未満の非居住者の場合、賃貸収入の25%を不動産収入税として支払う必要があります。滞在期間が180日以上の場合には5%~32%になります。また物件売却時のキャピタルゲイン税は売買価格の6%です。このような高い税金を、日本での確定申告の際にどれだけ控除できるかがポイントになるでしょう。

1-4 タイ不動産

首都バンコクにおける物件価格の単価は$3,952(約42万6,000円)で、40㎡のコンドミニアムで$135,440(約1,462万7,000円)、利回りは6.36%になります。1年間の物件価格上昇率は6.33%です(2018年第2四半期時点)。

広さ

40㎡

120㎡

購入価格

$135,440

(単価$3,386)

$436,560

(単価$3,638)

月額家賃

$718

$1,837

利回り

6.36%

8.05%

Global Property Guideより、以下引用元同じ)

タイの不動産利回りは、広いタイプで高くなるのが特徴です。バンコクの中心部でもコンパクトな物件より広い物件のほうが利回りは高くなります。投資用物件に入居するのは駐在員や外国人のほか、近年は平均所得の向上により現地の人も多くいます。なお、タイにおける不動産所得には、所得税が発生します。税率は累進課税により0%~35%となっています。

1-5 アメリカ不動産

移民による人口増加が顕著だったニューヨークの不動産単価は$17,191(約185万6,000円)です。1年間の物件価格上昇率は6.47%となっています(2019年6月時点)。ニューヨーク・マンハッタンのStudioタイプ(仕切りのない1Rのような間取り)で、$514,114(約5,552万4,000円)、利回りは6.28%です。

タイプ

Studioタイプ(約50㎡)

1ベッドルーム(約69㎡)

購入価格

$514,114

(単価$10,151)

$933,811

(単価$13,498)

月額家賃

$2,689

$3,436

利回り

6.28%

4.15%


ニューヨークの物件は小さなユニットのほうが利回りが高くなる傾向です。部屋が広くなるほど購入単価は高くなり、利回りは低下します。アメリカ不動産市場は2019年までの数年間好調でしたが、6月現在では減速感も出始めており、2018年の住宅販売数は前年同期比で10.2%減少しています。キャピタルゲイン狙いというよりも、節税目的での購入を検討するのも良いでしょう。

2 物件が安い人気の不動産投資4カ国

東南アジア3カ国(フィリピン・カンボジア・ベトナム)とハワイは、比較的物件が安く、利回りが高いことから人気です。高い経済成長率も維持していることから、今後の不動産価格の上昇も期待できます。一部では過剰供給気味のエリアも出始めていますが、郊外で大規模開発が予定されている地域などを選ぶことで大きなキャピタルゲインを狙うことも可能です。

なお、東南アジア3カ国の実質GDP成長率と物価上昇率を比較すると次のようになります。

・実質GDP成長率の比較(カッコ内は1人当たりの名目GDP)。


フィリピン

カンボジア

ベトナム

2016年

6.9% ($2,924)

7.20% ($1,168)

6.2% ($2,215)

2017年

6.7% ($2,976)

7.04% ($1,278)

6.8% ($2,389)

2018年

6.2% ($3,104)

6.95% ($1,390)

7.1% ($2,587)


・物価上昇率の比較


フィリピン

カンボジア

ベトナム

2016年

2.2%

1.22%

2.7%

2017年

2.9%

3.05%

3.5%

2018年

5.1%

2.89%

3.5%

(JETROより)

2-1 フィリピン

フィリピンの利回りは高く、物件価格は安いのが特徴的です。ローンを組んでも家賃利回りの高さでカバーできるため、少ない資金でレバレッジを使った不動産投資が可能です。2018年のフィリピン経済は実質GDPが6.2%ほど拡大するなど経済が堅調に推移していることもあり、賃貸利回りが期待できます。

不動産利回りについては、コンパクトなタイプよりも広いタイプのほうが高くなります。コンパクトサイズのコンドミニアムは供給過剰であるため、今後、フィリピンで不動産投資を始める場合は、広めのコンドミニアムを検討してみるのも良いでしょう。

2-2 カンボジア

カンボジアは、経済成長率の高さから今後の不動産市場の拡大に期待できます。リサーチ会社「CBRE Research」の調査によると、プノンペンにおけるコンドミニアムの㎡単価は2018年第3四半期で約1,400ドルで、前年同期から5%の上昇でした。

物件の買い手としては中国・香港・マレーシア・シンガポールがほとんどですが、生活水準が向上していることを背景に、地元住民の購買意欲も増してきています。ただしコンドミニアムの供給が過熱気味であることから、賃貸利回りは低下傾向にあります。広いタイプのコンドミニアムと比べると、コンパクトなサイズの物件は賃貸利回りの面で期待できます。

2-3 ベトナム

ベトナム経済が堅調に推移していることもあって、2017年第4四半期におけるホーチミン市のアパートメント価格は前年比で3.6%上昇しました。さらにヴィラとタウンハウスは13.6%上昇と、不動産市場が活発に動いています(不動産サービス「Jones Lang LaSalle」より)。

ホーチミン市のアパートメントの利回りは、2017年下半期で5.8%ほどでした。さらに新築物件の供給量も前年比で15%減少と、土地の供給制限により少なくなっています。そのため投資用物件としての希少性が高まるとの見方もあります(リサーチ会社「Savill World Research」より)。

2-4 ハワイ

アメリカの主要都市では、1億円を超える物件も増えてくるなど不動産価格が相当高くなっており、平均的な収入では購入するのが難しい場合もあります。しかし、ハワイでは1ベッドルームタイプの平均物件価格で$400,000(約4,320万円)、2ベッドルームで$529,000(5,713万2,000円)コンドミニアムで$499,000(5,389万2,000円)となります(Zillowより)。

ハワイの物件情報を提供しているZillowは、ハワイ不動産価格は2019年も好調に推移するとし、住宅供給が制限されているホノルルでも依然として新しいアパートメントは必要とされていると見ています。ハワイ経済も堅調に推移しており、実質GDP成長率は2020年と2021年で1.4%増加するとの見方です(不動産会社「managecasa」レポートより)。

不動産に関する税率は州によって違いますが、ハワイは固定資産税率が低いことでも知られています。アメリカ不動産投資を検討している方は、主要都市だけではなく、お手頃な物件が多いハワイにも目を向けてみると良いでしょう。

3 まとめ

東南アジアには不動産を安く購入できる国があり、経済成長率の高さから、これからの不動産価格の上昇も見込めます。アメリカでもハワイなどのようにエリアを絞ることで、手頃な物件を見つけられるでしょう。

なお海外不動産投資では、ある程度まとまった現金を用意する必要があるため、融資込みで相談できる不動産会社を見つけると購入までスムーズに進めることができます。この記事を参考に、お手頃で安く買える物件を検討してみてください。