9月6日、国際通貨基金(IMF)により「カンボジアの包括的成長の前進に向けて」と題するレポートが発表された。レポート内では、地方インフラの拡充の財源確保のため、不動産税の増税などについての提言がまとめられている。

カンボジアのGDPにおける不動産税収が占める割合は、0.1%と非常に限定的である。これは東南アジア諸国連合(ASEAN)加盟国の中でもかなり低い割合であり、0.6%程度にまで引き上げることで経済成長につながると促されている。

現在のカンボジア不動産部門は、EUとの「Everything But Arms(EBA)」(武器以外の全品目に対する無関税、数量制限なしの原則)の措置撤廃(*1)などといった懸念要素により、岐路に立たされていると言える。(*1:EUはカンボジア政府が人権と労働基本権を向上させなければ、EBA措置を取り消すとしており、カンボジア政府側はEU側に冷静な再考をするよう要請している。)

政府は税額計算のため不動産ベース価格の見直しを行ったが、現在の4%の資産譲渡税も高いとみなされており、このタイミングで増税を行うことは難しいと考えられる。

レポートでは、固定資産税、付加価値税(VAT)、所得税の引き上げ効果について触れられている。地方インフラが拡充されれば、主に地方における市場アクセスや移動手段が改善され、収入アップにつながるとされている。さらに首都圏と地方の格差を是正するためにも役立つと述べられている。

カンボジアの歳入動員については、ここ数年で大幅に改善されている。2007年にはGDPにおける税収が占める割合は10%に満たなかったが、その年のうちに17%まで割合が増加している。ASEAN諸国の中でもトップレベルであるが、財源の内訳は付加価値税(VAT)と輸入税に大きく偏っている。(61%をVATが占めている。)

カンボジア国内では、今は不動産税を上げるときではないとの見方が広まっている。現在のカンボジアにおける不動産税は、大きく分けて不動産の所有と譲渡に関するもの2タイプに分けることができる。今年6月に資産譲渡税は引き上げられたものの、固定資産税については2012年以来変わっていない。

現在の税制においては、25,000ドル(約270万円)以下の不動産に関しては、固定資産税は免除される。一方の資産譲渡税はすべての不動産にかかる。固定資産税を上げるとなれば、ベース価格を上げて市場価格に合わせるか、課税ラインを25,000ドルから50,000ドル(約538万円)に引き上げるなどの対応が必要になる。

IMFの提言に従い増税を行えば、税収は増えることになるが、市場に与えるマイナスの影響も避けられないであろう。

【参照】IMF calls for an increase in property taxes

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