資産運用は、長期的な目線を持って運用することで利益を狙いやすいと言われています。とはいえ、長期投資によって、どのようなメリットを得られるのか気になる方も多いのではないでしょうか。

本記事では、資産運用における長期投資のメリットに加え、長期投資に適した商品を紹介します。また、長期投資の成功させるために重要なポイントもまとめているので、今後の資産運用に活かしてみてください。

資産運用での長期投資とは?

長期投資とは、金融資産を長期にわたって運用することです。具体的な期間は定義されていないものの、一般的に10年以上を目安としています。目先の値動きや、経済状況に捕らわれるのではなく、資産価値・利益が出るまでじっくりと待つ手法です。

長期投資と短期投資の違い

長期投資と短期投資は、運用期間に加え、さまざまな点が異なります。長期投資では、企業や商品そのものの潜在価値を重視し、数年〜数十年の期間を空けながら高値で売却します。一方で、短期投資は、1日、1週間といった短期間での値動きを重視し、購入・売却を繰り返すことで、利益を狙う方法です。

 長期投資短期投資
運用期間
10年以上
1日〜1ヶ月
重視するポイント
企業や商品そのものの価値
短期間における値動き
手法
安値で購入して、高値で売却する
細かい価格変動で利益を狙う
おすすめの投資商品
株式投資、投資信託、不動産投資など
株式投資、先物取引、FXなど

資産運用における長期投資のメリット

資産運用では、短期で運用するよりも、長期で運用した方がメリットが多いとされています。長期投資によるメリットを3つ紹介します。

資産運用初心者でも取り組みやすい

長期投資は、資産運用を始めたばかりの初心者でも取り組みやすい手法です。短期投資の場合、細かい値動きを予測する必要があることや、短い期間で売買を繰り返すことで利益を狙うスキルが求められます。

一方、長期投資では、10年以上の期間で保有することを前提としているため、短期的な値動きに対する意識を減らせます。各投資商品に関する難しい知識も不要なため、目先のことを気にせずに資産運用を継続できます。

リスク分散につながる

資産運用における長期投資は、リスク分散にもつながります。短期投資では、細かい値動きで売買を繰り返して利益を狙う方法であるため、予期せぬ値動きが生じた場合に、損失額が膨らむ危険性があります。

前述したとおり、長期投資は、10年〜数十年といった期間での利益獲得を目指すことから、仮に短期間で値下がりした際にも、狼狽売り(株価の急落によって、慌てて株式を売却してしまうこと)のような事態を避けられます。短期投資に偏るのではなく、長期投資も同時に行うことで、リスク分散が可能となります。

複利効果を期待できる

複利効果とは、資産運用で得た収益を再び元本として運用に回すことで、さらなる利益を狙う方法です。たとえば、5000万円の資産を元手に、年利5%で単利・複利運用すると、以下のとおりとなります。

シミュ−レーションのように、5年後は131万円、10年後は644万円、20年後は3266万円、30年後には9109万円の差が生じます。1年ごとに単利で運用するのではなく、数十年単位で複利運用することで、利益を伸ばせる可能性が高まります。

利回り1年後5年後10年後20年後30年後
5%(単利運用)
5250万円
6250万円
7500万円
1億円
1億2500万円
5%(複利運用)
5250万円
6381万円
8144万円
1億3266万円
2億1609万円
利益の差
0円
131万円
644万円
3266万円
9109万円

資産運用での長期投資におすすめの商品

資産運用で長期投資を行う場合には、長期投資に向いている商品を厳選する必要があります。5つの商品を紹介するので、今後の資産運用に活用してみてください。

株式投資

株式投資とは、配当金や売却益を得る方法です。たとえば、株価1000円の銘柄を500株購入し、1500円まで株価が上昇したあとに全株売却すれば、(1500円-1000円)×500株=25万円の売却益を得られることとなります。

株式投資は、短期投資・長期投資いずれの方法でも用いられます。長期投資で株式投資による利益を狙う方は、長期的に保有して配当金を獲得することや、低価格で購入した株価を保有し続け、高値になったときに売却することで利益を狙えます。

投資信託

投資信託は、長期投資に適した方法です。長期にわたって定期的に投資信託の商品を購入し、複利運用で利益を狙っていきます。

また、投資信託では、積立NISAと呼ばれる少額投資非課税制度を活用できます。最長20年間における運用益が非課税になる制度で、少額で積み立てられることから、初心者の方にもおすすめの方法です。

外貨預金

外貨預金とは、金融機関で外国の通貨を預金することです。日本国内の金融機関でも、外貨の普通預金・定期預金サービスを展開しており、長期で運用できます。

外貨預金では、為替相場の変動と、金利による利益を狙います。たとえば、1ドル=100円のときに100ドル分(1万円)購入し、1ドル=120円のときに日本円にすべて換金することで、2000円のリターンを得られます。

また、各金融機関では、外貨預金で高い金利を設定しています。三井住友銀行の1ヶ月定期預金で0.002%、楽天銀行は0.02%、住信SBIネット銀行で0.02%である一方、米ドルで1ヶ月の定期預金を行う場合、2022年7月現在で、三井住友銀行は0.01%、楽天銀行は0.4%、住信SBIネット銀行は0.9%と高い金利となっています(※1)。

国内/海外REIT(リート)

REITとは、「Real Estate Investment Trust」を略したもので、「不動産投資信託」とも呼ばれています。投資信託のように、投資家から集めた資金をコンドミニアム、商業施設、オフィスビルといった不動産に投資し、利益を投資家に還元する方法です。

JREIT(日本国内のREIT)の過去10年間における平均予想分配金利回りは3〜6%と高く、長期投資にも適しています(※2)。

国内/海外不動産

不動産投資は、長期投資を代表する投資商品です。マンションやアパートなどを購入したあとに、第三者に貸し出すことで、長期間にわたって家賃収入の獲得を期待できます。

また、日本国内の不動産だけでなく、人口増加や経済発展が続く東南アジアの不動産にも注目してみてください。世界中の不動産投資に関するデータを公表している「Global Property Guide」によると、フィリピン不動産の平均利回りは6.13%、カンボジアは5.33%といった数値が出ています(※3)。さらに、将来的に不動産価格が上昇することで、キャピタルゲインも狙えます。

資産運用で長期投資を成功させるためのポイント

資産運用では長期投資が推奨されていますが、いくつかのポイントを押さえる必要があります。長期投資を成功させるためにも、次の4つのポイントを確認しておきましょう。

運用年数でシミュレーションを行う

資産運用で長期投資を始める前に、運用年数でのシミュレーションを行います。具体的には、元手の金額や予想利回りに応じて、何年後にどれくらいの利益が得られるのかを分析しましょう。

例として、3000万円、5000万円、1億円で複利運用した場合のシミュレーションについて、利回りごとに表をまとめています。今後の資産運用にご活用ください。

3000万円の運用シミュレーション

利回り1年後5年後10年後20年後30年後
3%
3090万円
3477万円
4031万円
5418万円
7281万円
5%
3150万円
3828万円
4886万円
7959万円
1億2965万円
7%
3210万円
4207万円
5901万円
1億1609万円
2億2836万円

5000万円の運用シミュレーション

利回り1年後5年後10年後20年後30年後
3%
5150万円
5796万円
6719万円
9030万円
1億2136万円
5%
5250万円
6381万円
8144万円
1億3266万円
2億1609万円
7%
5350万円
7012万円
9835万円
1億9348万円
3億8061万円

1億円の運用シミュレーション

利回り1年後5年後10年後20年後30年後
3%
1億300万円
1億1500万円
1億3400万円
1億8000万円
2億4200万円
5%
1億500万円
1億2700万円
1億6200万円
2億6500万円
4億3200万円
7%
1億700万円
1億4000万円
1億9600万円
3億8600万円
7億6100万円

分散投資・積立投資を組み合わせて運用する

次に、分散投資・積立投資を組み合わせて運用することです。長期投資を含む3つの手法を組み合わせることで、資産運用における利益を狙える可能性を高められます。

分散投資は、1つの商品に対して集中的に投資するのではなく、株式投資や不動産投資などをバランスよく分散して買い付ける考え方です。資産価値が下落するリスクを分散させる効果があり、長期投資で不可欠な手法といえます。

また、積立投資は、一度の資金を投入するのではなく、毎日・毎週・毎月といったように一定期間に分けながら、コツコツと買い付ける考え方です。まとまった資金が不要になることや、長期的な複利効果による利益獲得を期待できます。

元本割れのリスクに注意する

長期投資でも、元本割れのリスクに注意が必要です。短期投資同様に、資産価値が下落し続ける可能性もあり、最終的に損失が膨らむことも考えられます。

たとえば、日本国内で不動産投資を行っている場合、日本経済の停滞や人口減少などに伴い、不動産価格が下落するリスクが存在します。資産価値の下落を防ぐために、不動産価格の上昇が見込まれる東南アジア諸国を狙うことも選択肢に入れてみましょう。

投資商品の特徴を理解する

最後に、各投資商品の特徴を理解したうえで、長期で保有することです。株式投資であれば、株式を発行する企業の経営状況や業界などを細かく分析します。

とくに注意したいのが、自分自身だけで調べることが難しい商品についてです。たとえば、海外不動産は、現地との言語が異なることもあり、最新情報や信頼できる情報を入手しにくい点に注意が必要です。各商品の専門家にも相談し、徹底的に調べるようにしましょう。

まとめ

長期投資は、資産運用の成功に欠かせない手法です。リスク分散や複利効果につながり、利益を増やしていくだけでなく、多額の損失を被る危険性を回避するのにも役立ちます。

また、長期投資を成功させるためにも、株式投資や、投資信託、国内・海外不動産などの商品を分散して購入したり、積立投資をしたりしながら、資産を形成するようにしましょう。

※1:各金融機関円預金金利、外貨預金金利

三井住友銀行:円預金金利外貨預金金利

楽天銀行:円預金金利外貨預金金利

住信SBIネット銀行:円預金金利外貨預金金利

※2:J-REIT分配金利回り(10年間)

※3:GlobalPropertyGuide「Rental Yields in Asia