オーストラリア最大の都市であり、南半球を代表する世界都市「シドニー」。

今回は、現在シドニーで計画されている、オーストラリア最大規模の都市開発プロジェクト「西シドニー空港都市(エアトロポリス)」についてご紹介させていただきます。

1 西シドニー空港都市の概要

西シドニー空港都市は、シドニー中心部から約50km離れたニューサウスウェールズ州に立地し、総面積が11,200ha(千代田区の約10倍)にも及ぶ、オーストラリア史上最大の都市開発プロジェクトになります。

現在シドニーへの人口集中は顕著であり、道路渋滞や電車の混雑等の都市問題が生じている背景から、ニューサウスウェールズ州政府はシドニー中心部への一極集中を解消するための3大都市圏構想を打ち出し、2036年までに整備を完了させる予定です。

そして、上記の構想における中核事業として、西シドニー空港都市計画が推進されています。こちらのプロジェクトでは、新国際空港を中心に鉄道の新設・延長、高速道路の新設等のインフラ整備が計画されています。それに加え、住宅・病院・学校等を建設するほか、高度科学技術と関連する航空宇宙・防衛産業を中心とした企業の誘致も行われることから、約 20 万の雇用を創出され、こちらのプロジェクトが行われるウエスタンパークランド市では、20年間で40万人以上の人口増加が見込まれています。

2 西シドニー空港都市の4つのポイント

2-1 新国際空港建設予定

出典:https://westernsydney.com.au/your-airport/sydneys-new-airport

このプロジェクトのメインとなる新しい国際空港が2026年に開港予定になっています。

シドニー中心部から約8kmの場所にある現在の空港は、近年の利用客の大幅な増加に伴い混雑が深刻になっており、2037年までに収容限界を迎えると言われています。しかし、現在の空港の周辺は住宅街になっていることから、離発着時間に制限があることに加え、これ以上の用地拡張も困難になっています。

そこで、オーストラリア政府は50億オーストラリアドル(約3750億円)で、新しい国際空港をニューサウスウェールズ州に建設することを決定しました。こちらの空港には最新鋭の機能と設備を備えられることに加え、離発着制限がなく毎日24時間稼働することが可能であることから、多くの乗客が利用することが予想されます。そして、2056年までには年間利用者数が、ロンドンのヒースロー空港の現在の年間利用者数に匹敵する8000万人に達する見込みとなっております。

また、こちらの空港だけでも2031年までに約28,000人の雇用を生み出すと言われていることから、経済面においても大きな影響を与えることでしょう。

2-2 新鉄道・新高速道路の建設

西シドニー空港都市へのアクセス向上させる目的として、鉄道の新設と延長・高速道路の新設が計画されています。鉄道に関しましては、シドニー中心商業地区と新国際空港を結ぶ「シドニーウエストメトロ線」など、既存都市とつながる新たな鉄道路線を3つ整備する予定となっており、総事業費は300億オーストラリアドル(約2兆2500億円)に上ります。

また、36億オーストラリアドル(約2700億円)の投資を行いながら、周辺エリアと接続する2本の高速道路の新設などの道路整備も同時に進める計画となっています。そして、鉄道と道路が新たに整備されることにより、モノやヒトの流れがより活発になり、エリア全体により発展をもたらすことになるとと思われます。

2-3 多くの産業が集積

西シドニー空港都市の中でも、エアトロポリス・コアやノーザン・ゲートウェイと呼ばれる場所が中心となって、雇用創出のためのエリアとして位置付けられており、多くの産業が集まることが見込まれます。

エアロトロポリス・コアでは、特に西シドニー地区における中心地として位置づけられ、高度科学技術と関連する航空宇宙・防衛産業を中心とした産業の育成が求められています。また、ノーザン・ゲートウェイは、空港の玄関口として、教育やハイテク、R&D拠点として位置付けられるほか、農業の加工・輸出産業の育成が求められているエリアとされています。その他にも、多くの産業が西シドニー空港都市に集まることが予想され、さらなる雇用の創出や経済の発展につながりそうです。

2-4 複数の日本企業が参画

かなり大規模なプロジェクトになることから、サムスングループやシーメンスなど世界中から多くの大企業が参画しています。日本からも複数の企業が参画しており、現時点では、UR都市開発・三菱重工業・日立製作所・三井住友銀行の4つの企業がこちらのプロジェクトに参画しています。

また、総合的な都市開発に伴う人口増加により、小規模なものも含めたあらゆる分野でビジネスチャンスが生まれることが見込まれるので、より多くの企業が西シドニー空港都市に進出することが予想されます。

3 まとめ

出典:https://www.woodsbagot.com/news/new-world-trade-centre-sydney-proposal-focuses-on-mobility-and-sustainability/

新たなシドニーの玄関となる国際空港を中心に、様々な分野の産業が集まる西シドニー空港都市。

人口増加や経済面での発展などの可能性を大いに期待できると思いますので、もしこの記事を読まれてみて魅力を感じていただけたのであれば、これを機に西シドニー空港都市への投資などを行ってみてもいいかもしれませんね。