リトアニアは、あまり馴染みのない国かもしれません。しかし、日本人にとって誇るべき人物、「東洋のシンドラー」と呼ばれた元日本外交官の杉原千畝氏が赴任していた国なのです。

第二次世界大戦中、同国のカウナス領事館の領事代理であった杉原氏は、ナチス・ドイツの迫害から逃れてきたユダヤ人を中心とした6,000人以上の避難民にビザ発給し、救ったことで知られています。このような歴史的貢献から、リトアニアは親日国の1つとなっています。

今回は、そんなリトアニアの不動産事情にスポットを当て、不動産市場の動向から、不動産価格や推移、不動産を購入するのにおすすめのエリアなどを紹介していきたいと思います。

リトアニアってどんな国?欧州ビジネスの拠点として注目を集める新興国!?


はじめに、リトアニアを知るために、その概要を見てみましょう。

国名リトアニア共和国
面積6.5万平方キロメートル
人口281万人(2018年1月リトアニア統計局)
首都ヴィリニュス(人口約53万人、2017年リトアニア統計局)
言語リトアニア語
宗教主にカトリック
通貨ユーロ(2015年1月1日から導入)
在留邦人82人(2017年4月現在)

出典:外務省)

リトアニアは、ヨーロッパ北東部に位置するバルト三国で最大の国。とは言え、北海道の8割程度の面積で、北にラトビア、東にベラルーシ、南にポーランド、南西はロシアと隣接しています。

国土は平坦で一番高い所でも海抜292メートルしかありません。また、多くの湖が点在していて、混交湿地林が国土の約3割を覆っているという特徴があります。

旧ソ連からの独立後、急速に発展してきた新興国のひとつであるリトアニアは、欧州連合(EU)の政策を積極的に実行し、ビジネス環境の改善を続けている優等生的な国。

人口300万人ほどの小国の国内市場だけに頼ることなく、輸出で稼ぐなど、インターナショナルであることは必要不可欠と考え、様々な政策に取り組んでいます。

例えば、交通の要衝でもある、ヴィリニュス、カウナス、クライペダなどの主要都市に経済特区を設置。そこでは創業から6年間の法人税免除をはじめ、その後も法人税率を通常の半分にしたり、配当金や不動産税の免除を行うなど、様々な特典を駆使し外国投資を誘致しています。

中でも注目すべきはリトアニア第3の経済中心地クライペダ。ここには、バルト海に面した不凍港があることに加え、道路網、鉄道網、航空網までも擁しており、欧州市場で重要な交通の要衝の1つとなっているからです。欧州のビジネス拠点のひとつとしての大いなる魅力があり、更なる発展が期待されています。

リトアニアの不動産市場動向。活発な不動産取引総数で前年比12%増に


次に、ヨーロッパにおけるビジネス拠点として期待がかかるリトアニアの不動産市場の動向を見てみましょう。

バルト三国で不動産事業を展開する OberHaus Real Estate Advisors によると、リトアニアの5大都市(ヴィリニュス、カウナス、クライペダ、シャウレイ、パネヴェジース)のアパート(日本のマンションい匹敵するもの)価格指数は、名目上は3.57%上昇しています。 しかし、インフレ率を調整すると、0.33%の下落となりました(2017年)。

実際の上昇率と名目上の数字の差は、2017年のインフレ上昇に起因しているのでしょう。同年のインフレ率は3.7%と、2016年の0.7%、2015年の0.7%と比較しても急激に上昇しているからです。

また、State Enterprise Centre of Register の数字によると、2017年のリトアニアにおける不動産取引の総数は前年比12%増の124,600件となっています。中でも、住宅取引の案件が10,600件で一番多く前年比で6.9%増。一方でアパートは33,700件となり、前年比で0.6%減少しています。土地は62,600件が売却され、前年比で5.9%増となりました。

注目すべきは、2017年における不動産取引の約33%を占めているのが、リトアニアの5つの主要都市(ヴィリニュス、カウナス、クライペダ、シャウレイ、パネヴェジース)となっていることです。

(出典:Global Property Guide)

リトアニアの不動産価格と推移。上昇を続けるも、インフレの影響あり


リトアニア5大都市のマンション価格は、2017年第4四半期(インフレ調整後0.1%)でわずか0.51%の上昇率となり、2015年第4四半期以来、最低の上昇率となりました。

以下の表から、それぞれの都市におけるアパートの平均価格と、上昇率による価格推移をうかがうことができます。

都市名アパート平均価格(平方メートル当たり)前年比の上昇率(2017年)インフレ調整後
ヴィリニュス1,468ユーロ(約187,510円)+3.6%+0.33%
カウナス1,031ユーロ(約131,769円)+4.8%+0.85%
クライペダ1,037ユーロ(約132,536)+2.4%+1.43%
シャウレイ612ユーロ(約78,218円)+2.7%+1.13%
パネヴェジース576ユーロ(約73,617円)+3.1%+0.81%

(出典:Global Property Guide)

リトアニアの大都市のほとんどで名目価格が上昇を続けているものの、実際の価値としてはそれよりも低くなっていることが分かります。

リトアニアの不動産を購入するのにおすすめのエリア

・世界遺産の街並みが美しい、首都「ヴィリニュス」


リトアニア首都で同国における最大の都市、人口数は約53万人(2017)。旧市街はユネスコの文化遺産として登録されており、その面積は3.6平方キロメートルと欧州内でも最大級を誇り、歴史的・文化的事物が集積されています。特に教会建築が豊富で、バロック様式をはじめ、ゴシックやルネッサンス様式など多様な建築芸術を目にすることができます。

年間平均気温は6.1℃ですが、夏は30℃を越えることもあります。1月の平均気温は-4.9℃、7月は17.0℃。冬は氷点下になることがほとんどで、氷結する湖で行うアイス・フィッシングが娯楽として人気があります。

・リトアニア第2の都市。日本とのつながりも深い「カウナス」

リトアニア第2の都市で人口は約30万人(2015年)。ポーランド・ワルシャワから、ラトビア・リガ、エストニア・タリンを通ってフィンランド・ヘルシンキまで到る高速道路、「Via Baltica」(バルト諸国を縦断することから名付けられた)の沿線上の要所に位置する都市です。

歴史的にも重要な街で、ユダヤ人をはじめ多数の難民を救った杉原氏の功績をたたえた、旧カウナス日本領事館は現在「杉原千畝博物館」になっています。リトアニアでは学校教育の中でも、杉原氏や日本の歴史を学ぶ機会があり、同博物館に社会科見学をすることがあります。ちなみに、ヴィリニュスには杉原氏の名に由来する「杉原通り」があります。

・リトアニア唯一の港湾都市。欧州で重要な交通の要衝「クライペダ」

首都から312㎞に位置するクライペダは、バルト海に面したリトアニア西部の港湾都市です。同国では唯一の港湾都市として昔から交易上の要衝として知られており、スウェーデン、デンマーク、ドイツ、ポーランドとのアクセスを可能にする主要なフェリー港があります。人口は約15.5万人(2015年)。

クライペダ近郊には、リトアニアで人気のある海岸リゾート地のパランガやニダや、世界文化遺産にも登録されたクルシュー砂州国立公園があります。世界遺産、且つ国立公園として多くの観光客が訪れる名所となっており、夏季シーズンには、本国リトアニアのツールリストはもちろん、ロシアやドイツなど近隣諸国からも美しい砂浜の風景を楽しんでいます。

リトアニアの不動産は外国人でも購入できるの?


以上、リトアニアの主要都市を解説してきましたが、実際に私たち外国人でも同国で住居などの不動産を購入することができるのでしょうか?

結論から述べれば、農地を除いて、リトアニアでは外国人でも不動産を所有することができます。その他の制限はありません。

リトアニアの不動産購入にかかる諸費用は?


最後に、不動産を購入する場合にかかる諸費用を紹介しておきましょう。

まず、公証人への手数料です。通常、不動産価格の約0.45%となっています。

リトアニアでの不動産購入の際には、公証人役場がその手続きを行います。この不動産売買の手続きに掛かる費用は定額化されています。この公証人役場が「エスクロー」として、売買の中間役となり、不動産売買の過程で問題がないかを確認する役目を担っています。

また、不動産登記は必須ではありませんが、両当事者の利益を守るためにも強くおすすめします。登記費用は不動産価格の0.03~0.5%。上限は1,448.10ユーロ(約185,501円)ですが、建物と土地に別々に適用されるため、建物と土地で構成された不動産の場合は総額2,896.20ユーロ(約371,002円)が適用されます。

代理店の手数料は1.5~3.0%、加えて21.0%の付加価値税がかかります。

(出典:Global Property Guide)

まとめ


今回はリトアニアの不動産市場に焦点を当てて解説してきましたが、いかがでしたでしょうか?日本との意外な接点もあり、親しみを感じますね。

リトアニアは2015年にユーロを導入したばかりですが、欧州委員会との付き合い方が上手く、今後も新興国の中でも堅実な経済成長が期待できるのではないでしょうか?合わせてインフレに影響されがちな不動産市場も適正に推移していくことが望まれます。

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