温暖な気候が特徴のタイは、世界各地から旅行者が訪れる観光大国です。2020年の外務省の調べでは在留邦人数が8万人を超えており、アメリカ、中国、オーストラリアに次いで4番目に日本人の滞在者が多い国でもあります。(※1)

コンドミニアムやショッピングモールといった不動産建設もラッシュを迎えており、投資用に物件を購入する方も少なくありません。そこで、本記事では、外国人がタイ不動産を購入する方法と手順を解説します。また、タイ不動産購入時の注意点や、不動産の価格相場も紹介しているので、今後の検討材料に活用してみてください。

タイ不動産購入時の規制事項

タイ不動産の購入前に、外国人がタイ不動産を購入する際の規制事項を確認しておきましょう。主に、以下の3つの注意事項に気をつける必要があります。

外国人がタイ国内の土地を購入するのは法律違反

タイ国籍を持っていない外国人が、タイ国内の土地を購入することは法律で禁止されています。また、タイ国籍を持つ人の名義を使って、土地を購入することも法律違反です。

ただし、BOI(タイ投資委員会)に認定された企業や、タイ工業団地公社(IEAT)認定の工業団地に立地する企業であれば、外資比率に関係なく土地の取得が可能です。

1999年5月に改正した土地法によると、4,000万バーツ以上(約1億5,000万円)の投資条件を満たした場合のみ、居住用に1ライ(1,600平方メートル)以下の土地を取得が可能であるとされています。(※2)

コンドミニアム法による保有制限

外国人によるコンドミニアムの購入は可能です。しかし、コンドミニアム法で保有制限が設けられており、一棟のコンドミニアムのユニットの総床面積あたり49%としています。

不動産購入時に資金源証明が必要

タイ国内の不動産を購入する際には、資金源証明が必要です。資金源を証明するためには、次の手順を進めます。

1.物件の購入価格を上回る「外貨」を海外の口座からタイの口座へと送金する

2.送金した先の銀行で「外貨送金証明書」を取得する

3.「外貨送金証明書」を土地局で証明する

タイ不動産購入ステップ①信頼できるエージェントを選ぶ

最初に、タイ不動産の購入にあたって、信頼できるエージェント探しから始まります。タイの不動産情報を検索すると、多くのエージェントが現地不動産を取り扱っています。日本に拠点を置く企業から、現地企業まで様々で、取り扱っている物件やエリアが異なることもあります。

ただし、扱う商品が「タイ」のものである以上、現地の商習慣が日本とは大きく異なるという点に気をつけなければなりません。タイの物件だからという理由で、タイ現地のエージェントから返答に時間がかかったり、日本の不動産ほどの詳細な情報が明示されなかったりという事例もあります。

タイ不動産購入ステップ②購入物件の選定

次に、購入物件の選定に移ります。新築・中古物件、居住・賃貸用どちらなのかを確認しましょう。

新築か中古物件か

物件には、新築物件と中古物件(リセール)の2タイプが存在します。

タイでの新築物件は、竣工前に売り出しを始めるプレビルド物件の販売が一般的です。売り出し開始の時期は注目度が非常に高く、人気物件のリリース日には多くの購入希望者がギャラリーに押し寄せます。一番ユニットの選択肢が多いのもプレビルド物件です。

一方で、完成まで通常2〜3年かかることもあり、購入時には実際に買うユニットを見ることが出来なかったり、何らかの事情で建築が中止になったりするリスクに注意しなければなりません。

なお、中古物件は、条件によりプレビルド物件に比べて割安で購入できる可能性があります。すでに完成している物件であることから、即入居、即賃貸付けが可能で、購入すればすぐに物件を活用できます。

また、「プレビルド物件の購入者が竣工の直前にリセールに出す」というケースもあり、まもなく完成する未登記の物件を購入することも可能です。物件とは常にタイミングと巡り合わせですが、メリット・デメリットをよく理解したうえで検討する必要があります。

居住用か賃貸用か

居住目的の購入であれば、自分自身の気に入る立地、間取り、デザインで選んで問題ないでしょう。ご自身の行動エリアまでの移動が苦でなければ、交通機関からの距離などはあまり考えなくてもよいかもしれません。

ただし、自分では住まないけれど、賃貸として投資用に物件を購入したいとなると、購入する物件も変わってきます。交通アクセスが悪ければ、居住対象は自家用車を持っている人に限られるほか、間取りによっても居住世帯のターゲットを変えなければなりません。購入希望物件の位置するエリアには、どんな人が多く住んでいるか、賃貸の需要はあるかどうかも、現地情報に詳しいエージェントから情報を集めることが重要です。

タイ不動産購入ステップ③現地視察

購入物件の選定が終わったあとは、現地視察に移ります。

とくに、バンコクでは、コンドミニアムの建設ラッシュが進んでいるため、図面だけでは読み取れない周囲の環境なども含めて確かめる必要があります。

多くの新築コンドミニアムの場合、予定地にセールスギャラリーを併設し、実際の内装や設備にも触れることが出来るので、イメージを掴みやすいです。現地の風を感じて、自分の目で見て確かめてから購入へと進みましょう。

なお、2022年6月現在、新型コロナウイルス感染対策に伴うタイへの入国規制が緩和されています。2022年7月1日からは、これまで必須であった「タイランド・パス」と保証額1万ドルの保険加入が撤廃され、ワクチン接種証明書、または出発72時間前までのPCR検査または抗原検査キット(ATK)による陰性証明のみの提示で入国が認められます。

現地視察をしないでタイ不動産を購入することも可能ですが、過去にタイへの渡航歴がない方や、タイの土地に詳しくない場合には、現地視察を推奨します。

タイ不動産購入ステップ④予約金支払い

購入物件の選定を終えたら、予約金を支払います。通常、予約フォームへの記入と、予約金の納入が同時に必要です。

予約金は、条件やオーナーによって異なり、不動産購入価格の1%であるケースが多いです。支払い方法は、現金、または、一部のセールスギャラリーではクレジットカード決済に対応している場合があります。

いずれにしても、予約金を支払う際は、タイバーツの準備をしておくと安心です。

また、人気の不動産は、在庫の変動も激しく、気に入った物件が見つかったとすれば、早めに予約することを推奨します。予約金が返金不可の場合もありますので、慎重に進めるようにしましょう。

タイ不動産購入ステップ⑤購入の契約手続き

不動産購入の予約が完了すると、残金の支払いと、契約書の交付・署名の手続きへと進みます。タイ語の契約書に英訳がついている場合もありますが、英語が苦手な方は、エージェントと共に内容をしっかり確認しましょう。

この段階で、エージェントへのコンサルティング料金の支払いも発生します。

タイ不動産購入ステップ⑥頭金と残金の支払い

新築の場合

売買契約と同時に、頭金を支払います。購入予約を済ませてから2週間〜1ヶ月以内に売買契約を交わし、物件価格の10〜20%の頭金を支払うのがタイ不動産購入の通例です。

このとき、支払いはタイ国外から、バーツ以外の外貨建て送金をする必要があります。そして、送金の目的を「コンドミニアム購入のため」と記入します。外貨送金証明書は、外国人がコンドミニアムを購入する際に重要な証明書です。

頭金の支払いが済んだあとは、建設状況の進捗とともに、残りの費用を支払います。完成間近になると、残金(全体の60~80%)を送金します。同時に、修繕積立金、共益費、水道や電気のメーター費など、細かい費用をまとめて支払うよう求められることもあります。

中古の場合

中古の場合は、予約金もしくは手付金という形で10〜20%程を先に支払います。その後契約が完了すると、期日までに残金を払い込みます。

中古物件だと、支払いに関してはとてもシンプルですが、すぐに登記の移転手続きへと段階が進むので、早急な資金の準備が必要です。

タイ不動産購入ステップ⑦引き渡し

引き渡しの前に「インスペクション」と呼ばれる立ち入り検査が行われます。引き渡し時に注意しておきたいのが、タイの物件では、竣工後にさまざまなトラブルが発生する可能性があることです。

具体的には、水道や排水設備の異常、害虫の発生といったトラブルも少なくありません。この段階でしっかりと確認をし、必要であればデベロッパーに修繕を依頼してください。インスペクションが完了し、物件に住めるようになるまでに、2~3ヶ月を見積もっておくと安心です。

タイ不動産購入ステップ⑧登記移転

登記移転の際に、土地局に支払う登記費用が発生しますが、新築と中古の場合で多少異なります。

まず、登記費用は購入価格もしくは評価額の約2%です。新築の場合は、デベロッパーと買主で登記費用を折半するのが一般的です。

中古物件の場合は、交渉次第で支払い条件が変わります。物件の売主側が負担してくれるケースもありますので、事前に確認しておきましょう。

登記の際に、売買の契約書、今までの外貨での支払いを証明する外貨送金証明書が必要となることだけ留意してください。

タイ不動産購入の注意点

タイ不動産を購入する際には、タイ特有の注意点に気をつける必要があります。失敗しないようにするためにも、4つの注意点を確認しておきましょう。

ローンによる借入は難しい

タイ不動産を購入する際に、ローンによる借入を検討している方は注意が必要です。一般的に、日本国内の不動産を購入するときには、金融機関で不動産投資用のローンを組みます。

ただし、海外不動産の購入に関しては、不動産投資用のローンを組めない可能性があります。これは、海外不動産の担保評価が難しいのが理由で、タイの不動産に限りません。

為替変動によるリスクがある

為替変動によるリスクにも注意が必要です。タイでは自国通貨の「バーツ」が流通していますが、1997年にバーツをきっかけとするアジア通貨危機が発生しました。

それまで順調だった経済成長も、1998年にマイナスに陥り、タイ経済に大きな打撃を与える結果となりました。今では経済発展を続けているタイですが、将来的な為替変動のリスクを考慮しておくようにしましょう。

短期での賃貸運用は資格が必要

タイ国内で購入した不動産を短期で賃貸運用する場合には、資格を取得しなければなりません。30日未満の短期賃貸運用を無資格で行うと、罰せられてしまいます。コンドミニアムをホテルとして活用したい方は、タイ国内で資格を取得する必要があります。

政治的な不安定要素がある

タイ国内では、クーデターや大規模なデモ活動が複数回行われてきました。2014年に起きたクーデターでは、タイ全土に戒厳令が発令され、夜間の外出禁止や学校の閉鎖といった事態にまで発展しました。

最近では、2021年にタイ王政改革を目的としたデモも発生し、タイ国内における政治的なリスクが課題となっています。タイの不動産を購入する際には、政治的リスクも考慮したうえで検討しましょう。

タイ不動産購入でおすすめのエリアとコンドミニアムの価格相場

観光大国のタイでは、首都バンコクだけでなく、北部のチェンマイや、リゾート地のプーケット、パタヤといったエリアでも不動産投資が行われています。タイ国内で不動産の購入を検討している方向けに、おすすめのエリアや、不動産価格の相場(平米単価)を紹介します。

バンコク

バンコク市内で不動産投資を行うのであれば、「外国人が多く住むエリア」や、オフィスや商業施設が集まる「CBD(Central Business District)」を中心にコンドミニアムを探すのがおすすめです。バンコク市内中心部の不動産価格の相場(平米単価)は、181,181バーツ(約68万円)です。(※3)

・スクンビット

スクンビットは、バンコクの中心に位置するスクンビット通り周辺のエリアです。BTS(スカイトレイン)と平行に続く通り全体を指し、ショッピングモールや多種多様の飲食店などが立ち並んでいます。日本人を含む外国人居住者が多いエリアで、不動産価格も比較的高めです。

・プロンポン、トンロー、エカマイ

プロンポン、トンロー、エカマイは、スクンビット通りを南方向に進んだエリアです。日本人駐在員に人気のエリアで、日系の飲食店や日本語に対応した病院などが立ち並び、地元では「日本人街」と言われています。BTS「プロンポン駅」周辺には、現地の日本人や富裕層をターゲットにした「エンポリアム(The Emporium)」、「エムクオーティエ(EmQuartier)」といったショッピングモールがあります。

・アソーク

アソークは、スクンビット通りと交差するアソーク通りを中心とするエリアです。BTS「スクンビット駅」と、MRT「アソーク駅」にあるショッピングモール「ターミナル21」は、アソークのランドマーク的な存在です。また、アソーク通りには、コンドミニアムや高層ビルの建設が進んでおり、今後の不動産価格上昇を期待できます。

・シーロム、サトーン

シーロムは、バンコク市内を代表するオフィス街で、大手日系企業も入居するビルが並ぶエリアです。中規模のショッピングモールや飲食店も多く、地元タイ人だけでなく、外国人観光客からも人気があります。また、サトーンには、各国の大使館も多く、閑静な住宅街としても知られています。

チェンマイ

チェンマイは、タイ北部に位置する都市です。タイ第2の都市で、市内中心部の旧市街地には、歴史のある寺院や伝統工芸品を扱うショップが並びます。第2の都市でありながら、バンコクと比べるとチェンマイは自然に囲まれた静かな環境で、別荘地としても人気があります。チェンマイ市内中心部の不動産価格の相場(平米単価)は、61,977バーツ(約23万円)です。(※3)

プーケット

プーケットは、タイを代表するリゾート地です。「アンダマン海の真珠」と呼ばれるエメラルドグリーンの透き通った海と白いサンゴの砂浜が特徴で、外国人観光客も多く訪れます。コンドミニアムを購入して、Airbnbでホテルとして運用することも可能です。ただし、前述したとおり、30日未満の短期賃貸運用は資格が必要です。

プーケット市内の不動産価格の相場(平米単価)は、プーケット市内101,666バーツ(約38万円)です。(※3)

パタヤ

パタヤは、バンコク市内から車で2時間ほどのリゾート地です。バンコク居住者でも気軽に訪れやすく、週末だけパタヤで過ごす人も少なくありません。また、パタヤは、ベトナム戦争中に米国軍の保有地であった背景から、欧米人の観光客が多く見られます。ビーチ沿いを中心にコンドミニアムが立ち並んでおり、投資目的だけでなく、セカンドハウスとしてもおすすめです。パタヤの不動産価格の相場(平米単価)は、67,222バーツ(約25万円)です。(※3)

まとめ

タイ不動産の購入方法は、現地調査から始まり、契約の手続き、支払い、不動産の引き渡しと進んでいきます。一方で、外国人に対する不動産購入の規制が設けられているため、購入前に本記事を参考にしておきましょう。

当社では、マレーシアやカンボジアといった東南アジアを中心に不動産を取り扱っています。今後、タイ国内や、東南アジアで不動産購入を検討している方は、気軽にお問い合わせください。

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※1:外務省「日本人の多い国

※2:JETRO「タイ:外資に関する規制

※3:タイ不動産価格情報:「バンコク」「チェンマイ」、「プーケット」、「パタヤ