不動産投資を行うなかで、空室リスクに注意しなければなりません。空室が続くと、家賃収入が得られなくなり、キャッシュフローの悪化につながる危険性があります。

では、どのような空室対策を実施すればよいのでしょうか。今回の記事では、空室が発生する原因や不動産投資の空室対策・アイデア10選に加え、対策時の注意点をまとめて解説します。

不動産投資で空室が発生する原因

そもそも、不動産投資で空室が発生するのはどのような原因があるのでしょうか。空室が発生する6つの原因を紹介します。

1.交通の利便性や立地が悪い

不動産投資で空室が発生する原因に、交通の利便性や立地が悪いことが挙げられます。入居者目線で考えると、「駅から近い」、「商業施設まで徒歩で行ける」、「バス停が近くにある」といった利便性を重視した物件が好まれやすいためです。

もちろん、交通の利便性・立地だけが原因で空室が発生するとは限りませんが、物件選びで重要なポイントとなります。

2.物件タイプが地域性に適していない

次に、物件タイプが、その土地の地域性とマッチしていない可能性があることです。たとえば、大学や専門学校といった教育機関が多く立地するエリアでは、ファミリー向けの物件よりも、ワンルームタイプの物件が好まれます。

一方、都心から離れたベッドタウンと言われるエリアの場合、家族で暮らす世帯も多く、ファミリータイプの物件が好まれる傾向にあります。このように、各地域性にもとづいて、どの物件タイプが求められているのかを把握しないと、空室リスクの危険性が高まります。

3.設備や内装が古い

3つ目は、物件の設備や内装が古いことです。ほかの物件と比較して、共用スペースや各部屋の設備が古くなっていたり、もはや機能として満足して使えなかったりすると、入居希望者から敬遠されてしまいます。

また、部屋を探している人の気持ちを考えてみると、家賃が同じ場合、最新の設備が整った物件の方が選択されやすいです。設備を最新のものに変えることやリフォームを行うこと、家賃を下げるなどしないと、新しい入居者が集まりにくい状況が続く可能性があります。

4.家賃が相場よりも高額である

家賃が相場よりも高額に設定していると、空室リスクが高まる恐れがあります。一般的に、周辺に立地する部屋の間取りや、設備などが同じであるのにも関わらず、家賃が高額の場合、入居者が集まりにくい状態となってしまいます。

とくに、インターネットサービスを経由して物件を探している方は、家賃の金額にフィルターをかけていることも多く、そもそも自身の物件を見てもらえない可能性も高まります。周辺の家賃を念入りに調査し、大きなズレが発生しないように注意しなければなりません。

5.入居者の募集条件が厳しい

入居者の募集条件が厳しいと、空室が発生する可能性が高まります。賃貸経営では、家賃滞納リスクや、部屋をきれいに使ってもらえるように、入居者の審査を厳しく行うことも重要です。

しかし、リスク対策のために入居条件を厳しくしすぎると、空室につながってしまいます。ペットの飼育を禁止している、外国人の入居に制限を設けている、収入が一定以上といった条件を設けている場合、多少緩和することも必要となります。

6.近年求められる需要に対応していない

入居者から求められる需要に対応することも、空室リスクと関連性があります。たとえば、近年、感染症が続いているなかで、自宅にいる時間が増えたことから、防音性が高い部屋やインターネット環境が整った部屋が好まれています。

その他、女性でも安心して生活できるように、セキュリティ対策も重要となりました。入居者に求められる需要を把握しておかないと、空室を埋めるのに苦戦してしまう可能性が高まります。

不動産投資で求められる空室対策・アイデア10選

不動産投資で空室リスクを防ぐためには、対策を徹底することが重要となります。そこで、不動産投資で求められる空室対策・アイデア10選を紹介するので、1つ1つ丁寧に確認しましょう。

1.賃貸需要が高いエリアの物件を購入する

1つ目の対策方法は、賃貸需要が高いエリアの物件を購入することです。具体的には、交通アクセスに優れたエリア、商業施設が周辺にあるエリア、今後開発が予定されているエリアなどが挙げられます。

また、今後人口の増加が見込まれるエリアも検討しましょう。たとえば、東南アジアでは、人口の増加が進んでおり、高い賃貸需要を期待できます。

とくに、フィリピンは、労働生産人口が増加している国です。フィリピン統計庁のデータによると、2020年5月1日時点で1億903万5,343人に上ります。(※1)

なかでも、労働生産人口(15〜64歳)の割合が高く、2020年の労働生産人口は6,900万人(全体の約64%)、そして2050年には9,800万人(全体の約66%)にも上る予測が出ています。今後30年間に渡って労働生産人口の増加が見込まれており、不動産投資でも賃貸需要による利益獲得を狙えます。(※2)

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2.各タイプの特徴を理解する(戸建て、ワンルーム等)

次に、物件タイプの特徴を理解することです。戸建て、ファミリータイプ、ワンルームなど、各タイプがどのような層に求められるのかを把握しましょう。

たとえば、ワンルームであれば、学生から社会人の一人暮らしといった幅広い層に需要があります。物件タイプに対して、ターゲット層を明確にすることで、空室リスクの対策につながります。

3.地域性に基づいてターゲットを明確にする

物件タイプの把握だけでなく、地域性に基づいてターゲットを明確にすることも空室対策のアイデアです。空室が発生する原因でも解説したとおり、各地域に住んでいる住民層を確認しておかないと、なかなか入居者を獲得できない恐れがあります。

具体的には、学生が多く集まるエリアであれば、学生をターゲットにし、ワンルームタイプの区分マンションを購入しましょう。各タイプの物件を理解すること、そして地域性に基づきターゲットを明確にすることが、空室対策にそのまま役立ちます。

4.必要に応じてリフォームを行う

設備や部屋の内装が古くなってしまっている場合には、必要に応じてリフォームも実施しましょう。基本的に、築浅の物件であれば大きなリフォームは必要ありませんが、数十年経過する物件だと、定期的なリフォームが必要となります。

もちろん、すべてをリフォームする必要はなく、設備が故障していれば修復をしたり、現代風の内装にチェンジしたりするなど、空室を避けるためのリフォームが求められます。また、競合となり得る周辺の物件もチェックしながら、どの部分をリフォームするかも考えてみてください。

5.物件の家賃を見直す

次に、物件の家賃を見直すことです。入居者が賃貸を希望する際に、いくつかの候補における物件の条件が同じ場合、最終的に家賃で比較されることがあります。

このとき、ほかの物件よりも家賃が高額であると、どうしても候補から外れる可能性が高まります。定期的に同条件の物件で家賃相場をチェックし、大きな価格の乖離が生じないように注意しましょう。

6.管理会社を変更する

6つ目の対策方法は、管理会社の変更です。入居者を募集する際に管理会社を経由することがありますが、それぞれの管理会社で得意なエリア、年齢層、ターゲットなどが異なります。

また、すでに入居者が住んでいる状況で、管理会社が適切に対応してくれないといった懸念から、契約更新を行わずに退去してしまうケースも存在します。管理会社が投資家自身の目的を把握しているか、入居者に対して適切な対応を行っているかなどを見極めたうえで、必要であれば変更も考えるようにしましょう。

7.入居者ニーズに合わせた設備やサービスを導入する

社会的な変化に応じて、入居者のニーズも大きく変わってきています。現在では、自宅で働く社会人も増えていることから、万全なセキュリティ対策が整っている物件や、非対面で荷物を受け取れるような宅配BOXの設置などのニーズが求められるようになりました。

入居希望者が物件を選ぶ際にも、上記のような最新の設備・サービスは1つの要素とされやすく、可能であれば自身の物件にも導入しましょう。ただし、各設備・サービスを導入した結果、家賃を想定以上に上げざるを得なくなったり、キャッシュフローが不安定になったりしないように注意が必要です。

8.募集条件を緩和する

入居者を安定的に維持するためには、募集条件の緩和も重要となります。あまりにも厳しい条件を設定していると、入居可能な属性が狭まり、結果として空室リスクが続いてしまいます。

また、募集条件の緩和に加え、敷金・礼金の徴収に関しても、適切な金額に設定することを推奨します。一方、敷金・礼金が安すぎると入居者の信用リスクにも悪影響を及ぼす可能性があるので、周辺物件の金額もリサーチしながら変更しましょう。

9.入居者募集の方法を変えてみる

入居者を募集しているのに、なかなか希望者が現れない場合には、募集方法の変更も試してみてください。スマホで住まいを探せるアプリや、気軽に物件を閲覧できるポータルサイトが増えるなかで、いかにして自身の物件が多くの人に見てもらえるかが重要です。

とくに、ほかの物件との差別化を図るためにも、室内だけでなく、建物全体の外観を撮影した写真や、周辺の商業施設に関する写真なども掲載しておくと、ユーザーの目に留まりやすくなります。また、多くの検索結果に埋もれてしまわないように、物件の特徴をしっかりと把握したうえで、検索フィルターに引っかかるような対策も大切です。

10.内覧時にニオイ対策や清掃を行う

入居希望者が現れたけれど、最終的な契約にたどり着かなかったという場合には、希望者が内覧する際にニオイ対策や清掃を行うことも忘れないようにしましょう。室内に入った際に、ニオイや汚れが目立っていると、マイナスポイントとして評価されてしまいます。

また、室内だけでなく、共用部分の電灯が切れていたり、ゴミが溜まっていたりすることも、入居の可能性を低くする原因になりかねません。可能な限り清潔な状態に保ちながら、入居希望者を迎えるようにしてください。

不動産投資で空室対策を行う際の注意点

空室を発生させないためにも、事前対策が求められます。しかし、空室対策を行う際には、いくつかの注意点にも気をつけなければなりません。4つのポイントを押さえたうえで、注意しながら空室対策を進めましょう。

安易に家賃を値下げしないようにする

はじめに、安易な家賃の値下げには注意してください。空室が発生しているからといって、相場よりも圧倒的に安くなるまで下げる必要はありません。

家賃を下げる前に、空室が発生している本質的な原因の追求や、家賃ではなく敷金・礼金を値下げする方法も選択肢に挙げられます。空室が続いてしまうのは心理的に負担となりますが、むやみに家賃を下げることだけは避けるようにしましょう。

費用対効果を分析したあとにリフォームをする

空室リスクを軽減するために、室内や設備のリフォームを行うことは重要な対策となります。しかし、費用対効果を考慮せずにリフォームを実施すると、費用の回収が困難となることが考えられます。

リフォームを実施する際には、費用をあらかじめ細かく計算し、現状の家賃で費用を回収できるのかを分析する必要があります。費用をかけずに簡易的なリフォームを行い、家賃はそのままの方が高い費用対効果を得られる可能性もあるので、専門家にも相談をしてみましょう。

長期的な戦略で空室対策を行う

空室対策は、長期的な戦略で行うことが求められます。たとえば、空室を解消するために無計画な募集条件の緩和を行うと、一時的には空室が埋まるものの、家賃滞納リスクや物損リスクが生じる危険性が高まります。

つまり、その場しのぎの空室対策を実施するのではなく、原因をしっかりと追求し、将来にわたって空室が出ないような対策を行わなければなりません。

不動産仲介会社に相談しながら空室対策を実施する

投資家自身で空室対策を行うことが難しい場合には、不動産仲介会社に相談してみることも検討しましょう。不動産投資のノウハウや知識を備える担当者がいるので、適切なアドバイスをもらえる可能性があります。

また、一部の不動産仲介会社では、不動産投資に関するオンラインセミナーを行っています。オンラインセミナーは直接相談するよりも参加しやすいので、不動産投資を始めたばかりの方でも気軽に参加できます。

まとめ

不動産投資で収益を狙っていくなかで、空室対策をしっかりと行いましょう。賃貸需要が高いエリアの物件を探すことや、地域性に基づいてターゲットを明確にすることなど、空室を避けるためのアイデアを試してみてください。

とはいえ、空室対策を実施する際には、安易な家賃の値下げに注意すること、長期的な目線を持ちながら空室対策を行っていくことが大切です。不動産仲介会社にも相談しながら、安定した収益を得られるように準備をしましょう。

※1:2020年の人口は1億903万人、5年間で800万人超増加

※2:独立行政法人労働政策研究・研修機構「生産年齢人口(15〜64歳人口」