コロナウイルス感染症の拡大は各国経済に大きな影響を与えていますが、不動産市場の動向は国によって様々です。タイではコロナがどのように影響しているのか、経済動向と不動産動向の両面について、データを用いて検証します。

タイにおけるコロナの状況

2021年に入ってからタイではコロナが拡大しているのか、経済へどのような影響を与えているのか、各統計を参照することで考察します。

タイの感染者数推移

WHOの統計によると、タイにおける2021年6月末までのコロナの感染者数推移は以下グラフのようになっています。

※引用:WHO

タイでは、2020年12月まではコロナの感染者数がそれほど多くありませんでした。しかし、12月中旬頃から少し感染者数が増えています。この時期に感染者数が増えたのは、イギリスで新たな変異株が発生したことに基づいていると考えられます。

2021年2月~3月の間は感染者数が減少したものの、4月に入ってからはそれまでと比較すると大幅に感染者数が増えており、ピークの5月中旬にはタイ全土で約28,000人の感染者が確認されました。

2021年に入ってからタイで大幅に感染者数が増えたのは、インドで感染爆発が起きたことも関係していると考えられます。

2021年6月21日の集計でも26,000人以上の感染者が確認されました。なお、日本では2021年6月29日の全国感染者数が1,381人なので、タイでは日本を大きく上回るペースで感染者数が増えていることになります。タイのコロナ抑え込みには、まだ時間がかかりそうな状況です。

コロナ下のタイにおける経済状況

つづいて、コロナがタイの経済に与えている影響の大きさを検証します。IMFのデータによると、タイの実質GDP推移は以下の通りです。


2018年

2019年

2020年

2021年予測
実質GDP
4.2%

2.3%

-6.1%

2.6%

※参照:IMF

2020年にGDPがマイナスまで下がっていること自体は、他の国と比較してもそれほどめずらしいことではありません。同統計によると、例えば日本では2020年の実質GDPは-4.8%となっています。タイでは自動車産業及び観光産業に対するコロナの打撃が深刻です。世界的な経済活動の停滞などにより、タイの主要産業である自動車製造業は大幅に縮小しています。

また、渡航規制によって外国人観光客が入ってこなくなり、観光業も規模縮小を余儀なくされました。世界銀行の統計によると、タイの失業率は2019年の0.72%から2020年には1.02%へ上昇しています。タイの失業率は2009年以降1%を下回っていたため、約10年ぶりに1%を超えました。

※参照:世界銀行

多くの国では2021年にGDPなどの経済指標が回復すると予測されていましたが、これはコロナが収束するという希望的観測も混じった予測であることは否めません。実際に2021年に入ってからコロナの感染者数が大幅増加したタイでは、2021年6月時点では、予測通りに経済が回復するか不透明な状況にあると言えます。

コロナがタイの不動産市場に与えた影響

タイでは2021年に入ってからコロナの感染者数が増加しており、経済も先行き不透明な状況です。コロナはタイの不動産市場にどう影響しているか、金利と不動産価格指数の推移から解説します。

タイの長期金利推移

多くの国では、コロナによって縮小した経済を刺激するために低金利政策が採用されており、タイも例外ではありません。タイの金利は以下グラフのように推移しています。

※参照:Bank of Thailand

2020年初頭から下半期にかけて徐々に金利が引き下げられており、2020年9月以降は0.4%前後で推移しています。タイでも多くの国と同様に、金利引き下げによる緩和政策を取ることで、資金を市場に流通させて企業の設備投資や個人の消費を促している状況です。

中央銀行の利下げによって、民間銀行は住宅ローンを含む各ローンの金利を引き下げていることが予測されます。

タイの不動産価格推移

住宅ローン金利が引き下げられると、住宅需要が刺激されて住宅価格が上がることも多いものです。

実際に、例えばアメリカでは、コロナによってダメージを受けた経済を刺激する目的で、政策金利が0%前後まで引き下げられました。その結果、住宅ローン金利が下がって住宅需要が拡大し、アメリカ不動産の価格は2020年以降大幅に上がっています。

しかし、タイも含む新興国では、政府が低所得者向けの住宅取得支援政策を推進することもあり、先進国と同様に不動産価格が上昇するとは限りません。タイのコンドミニアム価格推移は以下グラフのようになっています。

※参照:Bank of Thailand

タイのコンドミニアム価格指数は、長期的には右肩上がりで推移しているものの、2020年以降は上下動を繰り返しており横ばいとも言える状況です。タイのような新興国では、外資の流入も不動産価格に大きく影響するため、国内の実需だけで不動産価格推移を予測することは難しくなっています。

また、2020年に失業率が上昇したほか、2021年に入ってコロナの感染者数が増加している状況下では、タイの不動産市場は外資の影響を受けやすくなっている状態です。

2021年下半期以降のタイ不動産市場について予測を立てる上では、世界的な景気動向も含めて考慮する必要があります。

まとめ

タイでは、2020年はコロナの感染者数が少なく推移していましたが、イギリス変異株の出現やインドでの感染爆発などの影響もあり、2021年は感染者数が増加しています。世界的な不況や渡航制限などによってタイの経済はダメージを受けており、失業者数が増加するなど、2021年時点のタイ経済は先行き不透明な状況です。

不動産市場への影響を見ると、中央銀行の利下げによって住宅需要の拡大は期待されるものの、新興国では外資の影響も大きいことを鑑みると、タイ不動産市場の今後は外資次第な部分もあると言えます。住宅価格指数推移は、2020年に入ってから上下動を繰り返しながらも長期的には横ばいの状態であり、今後についてはコロナの抑え込み次第と言える状況です。

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