ベトナム社会主義共和国(以下:ベトナム)は、国としてASEANの中でもトップクラスの成長を遂げています。また、ベトナムでは2015年の法律改正によって外国人でも不動産購入が可能となり、投資先としても魅力的な国となりました。

今回の記事では、ベトナムにおける不動産投資のメリット・デメリットに加え、近年の価格推移について解説します。

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ベトナム不動産の外国人に対する購入規制解禁について

2015年から外国人の不動産購入が解禁

2015年の住宅法改正によって、所有権や購入戸数に関して制限はありますが、ベトナムにおいても外国人の不動産購入が解禁されました。しかし、下記で解説するとおり、外国人による不動産購入が無制限に解禁されたのではなく、一定条件付きで不動産購入が解禁された点について留意しましょう。

コンドミニアム総戸数の30%まで外国人名義で所有可能

外国人による住戸の所有は、コンドミニアム1棟につき全戸数の30%まで認められています。 また、戸建て住宅の場合は、外国人は1街区につき250戸まで所有できます。

所有期間は50年が基本

外国人がベトナム不動産を所有可能な期間は50年間に限定されています。1回に限り更新が認められており、追加で50年間の延長ができるため、外国人は最長で100年間に渡ってベトナム不動産を所有できます。

法人名義で物件を購入すると、賃貸するための条件が厳しくなる

個人名義で購入した物件に限り、外国人でも物件を賃貸して家賃収入を得られます。一方、ベトナム国内の法人名義で購入した物件の場合は、用途が社宅用に限定されます。

なお、ベトナム国内で不動産事業免許を保有する法人であれば、賃貸収入を得ることができます(ただし、資本金約1億円が必要)。

法人の方が住宅を賃貸するための条件が厳しいため、投資目的でベトナム不動産を購入する場合は、個人名義で購入するのが得策です。

外国人は原則として中古物件を購入できない

外国人は中古のベトナム不動産を購入できません。しかし、外国人が所有している中古物件であれば購入可能です。

外国人から中古のベトナム不動産を購入する場合は、所有期間について前所有者の経過期間を引き継ぐことになります。

コンドテルの土地所有権を得られない

ベトナムでは、商業用途であるコンドテルの土地所有権を外国人が取得することはできません。所有権者については開発会社などを設立し、契約書で購入者の実質的な所有権を担保する流れとなります。

ベトナム不動産投資は成功する?近年の価格推移

2019年以降は上昇傾が続く

それでは、ベトナムの不動産価格の推移を確認してみましょう。

世界中の不動産情報をリサーチしている「Savills plc」が2023年第4四半期に発表した資料から引用したものです。2009年第1四半期の不動産価格を100として、ベトナム(ホーチミン内)における2019年から2023年までの不動産価格指数を表しています。

出典:Savills plc

2019年の第1四半期以降、安定しながら不動産価格指数が上昇傾向にあります。とくに、新型コロナウイルスの感染拡大となった2020年前後も大きく指数を落とすことなく、コロナ禍以降も上昇しているのが特徴です。

本資料からもわかるとおり、ベトナム・ホーチミンの不動産価格指数は上昇傾向にあり、不動産投資のチャンスともいえます。2023年も高い数値で、今後も不動産市場の拡大が期待できます。

ベトナム・ホーチミンの地区別の価格比較

以下のグラフは、ベトナム・ホーチミンにおける地区ごとの㎡単価を比較したものです。

図:ホーチミン地区ごとの㎡あたり不動産価格

出典:自社調査

ベトナムのホーチミン市は、ホーチミン1区~12区、「フー・ナウアン」「ビン・タン区」「タン・ビン区」「タン・フー区」、「ゴー・ヴァップ区」、そして「ツー・ドク区」とエリアが分けられています。

上記のなかでも、ホーチミン1区は最高級エリアとして知られており、価格は㎡あたり4,570米ドル(約72万円)となっています。次に価格が高いのが3区で3,874米ドル(約61万円)、4区の1,949米ドル(31万円)です。

一方で最も安価なエリアは、12区で約710米ドル(11.2万円)、9区が873米ドル(13.8万円)、「ツー・ドク区」が約948米ドル(15.0万円)となっています。

ベトナムの不動産市場はコロナ禍の低迷から回復

世界経済に大きな打撃を与えた新型コロナウイルス感染症ですが、ベトナムの不動産市場は早くもコロナ禍の低迷から回復傾向にあります。

感染拡大が始まった2020年3月〜7月にかけては住宅購入意欲が低迷し、賃貸不動産やコンドミニアムにも大きく影響しました。しかし、同年8月には不動産市場において回復の兆候が見られ、10〜12月には9,000戸以上の住宅供給が見込まれていました。

不動産以外での消費意欲も徐々に上がっており、2021年の実質GDP成長率は2.6%、2022年には8.02%の経済成長率を記録しました。

ベトナム不動産投資の利回りは平均3~5%

ベトナム不動産の利回りは平均して3~5%であり、日本の利回りが2.5%前後であると考えると高い投資対効果が期待できます。一方でベトナムの賃料相場は、ハノイやホーチミンにおいて1LDKで6万5,000円前後となっており、賃料が安い点に注意しておきましょう。

ベトナム不動産の利回りはアジアの周辺諸国と比較して高い

不動産の利回りにおいては、ベトナムはアジアの周辺諸国と比較して高い傾向にあります。以下の図は、世界の不動産情報などを掲載しているGlobalPropatyGuideが公表しているものです。

出典:Rental Yields in Vietnam compared to Asia(アジアと比較したベトナムの利回り)|GlobalPropatyGuide

アジア12カ国で比較するとベトナム不動産の利回りは第5位。不動産投資先として人気のあるマレーシアやシンガポールよりも0.6~1.0ポイントほど高い利回りを記録しています。

日本不動産の利回りを比較してもやはり高いので、ベトナムは不動産投資先として魅力的な国の1つと言えるでしょう。

エリア別の利回りでは、値段が上昇しているホーチミンは少し低い傾向に

次に、ベトナム不動産の利回りをエリア別に比較してみましょう。以下の表は、世界最大級の消費者データベースであるNumbeoに掲載されている、ホーチミン、ハノイ、ダナンの不動産利回り情報を参考にして作成したものです。

 ホーチミンハノイダナン
中心地の利回り3.01%4.14%5.24%
郊外の利回り4.2%5.01%6.67%

Numbeo Property Prices Comparisonの情報を参考に当社にて作成

※情報は調査当時のものでありリアルタイムで変化します

結果としてハノイとダナンが、ホーチミンの利回りを上回っています。これはハノイとダナンの不動産価格がホーチミンほど上昇しておらず、不動産取得にかかる費用が低いためだと考えられます。

注意していただきたいのは、ホーチミンの投資価値が低くなっているわけではない、ということです。不動産価格が上がると相対的に賃料も上がります。事実、ホーチミンの平均的な不動産収益は、ハノイよりも27%ほど高いことがわかっています。

出典 : NUMBERO

ベトナム不動産投資のメリット

ベトナム不動産はアジアの中でも低価格でマンションを購入可能

ベトナムで最大の都市であるホーチミンは、近隣アジア諸国の都市部と比較すると、2024年現在で不動産価格が低い傾向にあります。たとえば、ジャカルタ、バンコク、シンガポール、東京の不動産価格はホーチミンよりも高いのです。

一方、ベトナム国内で比較すると不動産価格が上昇傾向にあるため、ハノイやダナンなどよりも利回りが低くなっています。

しかし、あくまでもベトナム国内の話であり、ホーチミンの不動産価格がアジア諸国と比較して安価であることには変わりありません。

今後さらなる不動産価格の上昇を期待できる

ベトナムでは、今後さらなる不動産価格の上昇が期待できます。その理由は、「年々増加する人口」です。ベトナムでは、2000年から2020年にかけての20年間において、年間平均1.0%で人口が増加し続けています。

東南アジア諸国の人口増加率(過去20年間の平均)

ベトナムインドネシアフィリピンタイマレーシア日本
1.0%1.3%1.7%0.5%1.7%0.0%

出典:Population, total(全体人口)|THE WORLD BANK

外国人駐在員による賃貸需要が旺盛

ベトナム不動産を個人で購入する場合は、賃貸物件として家賃収入を得ることが認められています。

ベトナムの活発な経済発展を背景として、海外からベトナムへ進出してくる企業は増えており、ホーチミンなどの都市では特に、外国人駐在員も増加中です。

ベトナムにおける外国人の数は約30万人に及んでおり、その大多数がホーチミンやハノイなどに在住しています。ベトナムの都市部では特に、外国人駐在員の入居を狙った不動産投資が有効です。

ベトナムは経済発展著しい国ではありますが、現地のベトナム人に関しては、まだ所得が十分に上昇しているとは言えません。

その一方で、外国人駐在員が入居する場合は会社から家賃補助が出ます。ベトナム不動産投資では、家賃の滞納リスクなどを軽減するためには、外国人の入居を狙うのが有効です。

災害リスクが低い

ベトナムには火山もなく、地震の心配はありません。台風も北部ではたまに通過しますが大きな被害はなく、南部では特に台風の被害も心配ありません。

税金が安い

ベトナムは各種税金が日本と比べて安い傾向にあります。たとえば、不動産投資における賃料収入の所得税は5%と決まっており、日本の所得税をはるかに下回ります。

(※日本の所得税は累進課税で5~45%だが、家賃収入を含めた合計の事業収入が195万円を超えた時点で税率10%が課せられる)

「不動産賃貸による税金が安い」というメリットから、ベトナムでは表面利回りと実質利回りのギャップが小さく、同水準の表面利回りであっても日本よりも収益率が高くなるのです。

ベトナムの税金事情については『ベトナムの不動産に関わる税金は?購入・管理・売却に分けて解説』にて詳しく解説しているので、ぜひご一読ください。

注目のエリアを紹介

経済の中心地「ホーチミン」

ベトナム経済の中心地ホーチミンは、熱帯モンスーンに属しているため年間を通して温暖な気候が特徴です。

外資系企業のビルやお洒落なカフェ、レストランが立ち並ぶエリアが点在しているほか、フランス植民地時代の名残もあるため、フランス現地にいるような雰囲気を感じさせてくれる建造物も数多く残っています。

政治の中心地「ハノイ」

ハノイはベトナムの首都で、政治の中心地であり芸術の街としても知られています。

この街の最大の特徴は「四季」があることで、5~9月は雨季となり湿気の高い時期が続きますが、それ以外は比較的過ごしやすい気候となっています。

ハノイの人気投資エリアは、日本大使館や日系企業があるバーディン区(Ba Dinh)をはじめ、 ショッピングセンターや日本人学校へのアクセスが便利なコウザイ区(Cau Giay)、 大型のコンドミニアム建設が進むナムチュリム区(Nam Tu Liem)、ハイバーチューン区(Hai Ba Trung)などに分かれています。

また、ベトナムが誇る人気の世界遺産「ハロン湾」まではハノイから車で約3時間です。ハノイはフランス統治時代に描かれたアートから大自然まで、様々な魅力を持った都市と言えます。

ビーチリゾート「ダナン」

ベトナム中部に位置するダナンの「ミーケビーチ」は、米雑誌フォーブスが選ぶアジアの魅力的なビーチ6選にも選出されています。

観光地としてはもちろん、近年はビジネスの都市としても世界からも注目を集めており、ベトナム移住先としても魅力的な都市と言えるでしょう。

ホーチミンやハノイに比べると知名度は低いものの、今後、さらなる発展が期待される街の1つです。

ベトナム経済はコロナ禍でも成長中

驚くことに、ベトナム経済は苦しいコロナ禍にあっても成長を続けています。世界通貨基金が2022年1月に発表した「世界経済見通し 改訂版」によれば、2022年と2023年における実質GDP(国内総生産)の成長率予測値は次のとおりです。

 ベトナム日本アメリカドイツフランスイタリア
2022年5.6%3.3%4.0%3.8%3.5%3.8%
2023年6.0%1.8%2.6%2.5%1.8%2.2%

出典:世界経済見通し 改訂版|世界通貨基金

発展途上国で実質GDPが高くなるのは良くあることですが、着目すべきは「2022年から2023年にかけて実質GDPが上昇している」という点です。

先進国では成長率予測値が軒並み下向きになっているのに対し、ベトナムの成長率予測値は0.4ポイント上がっています。単純に高い成長率予測値というだけでなく、次年度においても上向きになっているところが、ベトナムの成長性を表しています。

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ベトナム不動産投資のデメリットやリスク

社会主義国家であること

ベトナムは世界でも数少ない社会主義国です。そのため、不動産の購入に関しても外国人に対する規制はやや厳しいと言えます。

役人の権力が強いため、時として賄賂が必要になったり、急に法律が変わったりと、資本主義の国とは異なる事態が起こり得る可能性があることも理解しておく必要があります。

海外送金の手続きがやや複雑

ベトナムでは海外送金のための納税証明などの書類が多く、手続きが複雑であることがデメリットのひとつです。ただし、納税証明は税理士に依頼すれば対応してもらえます。

納税証明と送金目的が明確であれば海外口座への送金ができますが、銀行によって対応にばらつきがあるのが実態です。

大手銀行の場合、明確な送金目的を書類に記入すれば問題ありませんが、送金元の口座と送金先の口座とで名義が違う場合は別途書類が必要になります。

竣工リスクがある

ベトナムのデベロッパーは、1つのプロジェクトに対して総工費の10~20%ほどしか自己資金を投下せず、それ以外の費用については、金融機関からの融資や物件の売上を充当する傾向があります。

例えば工事中にトラブルが発生したり、物件の売上が芳しくなかったりする場合は、プロジェクトが中断されてしまうため要注意です。

プロジェクトが中断されてしまうと、物件の引渡しを受けられなくなってしまいます。また、支払済みの資金も返金されません。

前政権の時に建設許可を得たプロジェクトが、政権交代によってストップしてしまったという事例も実際に存在します。

ベトナムで工事中の物件を購入する場合は、海外で上場している不動産会社や、日系不動産会社が開発に参画しているプロジェクトを選ぶことが重要です。

建物の耐久性に差がある

ベトナムの建物の構造・耐久性に関しては、日本ほど優れていません。構造がRC造であっても壁にレンガが使われている場合もあります。

ただし、建物の品質はデベロッパーやゼネコンによって違うため、建設に関わっている会社が持つ過去の実績を参考に判断するのが安全です。

また、売買契約書には物件の建設に使用した資材が記載されるため、そちらも参考にすることでリスクを軽減できます。

為替差損や権利書が発行されないなど、具体的な失敗パターン例

さらに注意すべきリスクは、「為替差益」と「レッドノート(権利書)が発行されない」ことです。

また、ベトナムで不動産を購入すると、常に為替差益の問題がついて回ります。簡単にいえば、円安ドン高の時に不動産を購入してしまうと、円高になったときに為替変動による損を被る可能性があります。

また、ベトナムでは外国人に対してレッドノートを発行した事例が少なく、取得が難しい状況にあります。レッドノートがなければ信頼性を担保できず、不動産価格が下がる可能性があるのです。

こうしたベトナム不動産投資のリスクや失敗パターンについては、『ベトナムの不動産投資のリスクや失敗パターン6選!』にて詳しく解説しています。ベトナム投資を始める前のリスクヘッジの第一歩としてご一読ください。

まとめ

ベトナム不動産投資に関する、メリット・デメリットを紹介しました。近年は不動産価格が上昇傾向にあり、人口増加などによって経済も支えられています。

コロナ禍の低迷を抜け出し、不動産市場も活性化が期待されています。

しかし、デベロッパーの選定など気を付けるべき点が多数ありますので、情報収集は怠らずに行ってください。

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