2015年に外国人のベトナム不動産購入が解禁となったことをきっかけに、ここ数年で多くの外国人がベトナムの不動産に投資をし始めています。
ITや建設業に従事する国民が多く、これからの発展が期待されるベトナムですので、投資によって得られる利益やメリットなどの情報ばかりが広がりがちですが特に不動産のような高額投資に関しては、投資リスクをできるだけ下げる準備や工夫をすることがとても重要です。
そのためには、ベトナム不動産への投資の良い面を知るのはもちろん、実際の失敗例も併せて適切に把握しておく必要があります。
今回の記事では、ベトナム不動産を購入・売却する過程で起こりうる失敗例と対策について紹介していきます。
ベトナム不動産投資失敗パターン:購入編
1.プレビルドで購入して建設がストップする
プレビルドとは、工事の着手前もしくは着手中など、物件が出来上がっていない状態のことを指します。新築物件を購入する際、特に工事が大規模であったり長期にわたる場合は、物件を建設し始める前に売買契約を結ぶことがあります。
プレビルドで購入する場合、工事の進み具合に合わせて段階的に支払いをしていくことになります。段階的な支払いを行うので、一括で支払いを行うよりも資金負担が軽減されますが、万一建設が何らかの理由で中止になってしまうと、事前に支払っていた投資金額が戻ってこない、という事態になってしまいます。
ベトナム人労働者の傾向として、他に勤務条件の良い仕事があれば気軽に転職することも多く、人材の定着率が低い傾向にあります。ですので、工事途中で労働者が足りなくなったために工事遅延や中止が発生してしまう可能性もあるかもしれません。
上記のような事態を避けるためには、実績のある建設会社や日系の仲介会社を経由しておくことが効果的だと言えます。
2.ドン高のときに購入してしまう
ベトナム不動産に限った話ではありませんが、不動産のような高額投資を行う場合は、通貨レートが非常に大きな影響を与えます。
日本の物価と比較すると、ベトナムの物価は約3分の1程度ととても安いです。
ただし不動産のような高額の投資になった場合、レートの小さな差が購買金額を大きく左右してしまうことがあります。
また、ベトナムは社会主義国家であり「管理フロート制」という制度を取っています。
これは、為替レートが一定の水準で適切に保たれるように中央銀行が調整するような仕組みです。
このように厳密に管理された市場であることを理解して、現在のレートが不動産の購買・売却に適切な値なのか、判断していくことが重要になります。
ベトナム不動産投資失敗パターン:購入後編
3.レッドノートが発行されない
レッドノートとは、日本で言う「権利書」「登記簿謄本」のことで、「物件の所有権についての公的な証明書」です。これがあって初めて、購入した不動産が正式に購入者のものであることを証明することができます。
レッドノートを保有していることで信頼性が担保できるので、不動産価額の向上にもつながりますし、物件の保有年数や契約更新可否にも影響します。
ただ、外国人向けのレッドノートの発行事例が少なく、役所手続きも煩雑なことから、取得が難しいのが現状です。手続きには時間を要する上、少しでも不備があった際には書類が交付されない、といった可能性もあります。
不動産購入後の売却を視野に入れている場合は、レッドノートの交付手続きに詳しく実績のあるエージェント・仲介会社を活用することが非常に有効であると言えます。
4.欠陥住宅だった
日本のように、モノやサービスの品質が全体的に高い国では想像しにくいことかもしれませんが、ベトナムを含む東南アジア諸国においては、新築物件ですら欠陥住宅である場合があります。
例えば、新築マンションのコンクリートの品質が低かったために雨漏りが発生したり、という可能性は大いにあり得ます。
不動産の価値を下げてしまうような致命的な住宅の欠陥は、購入前にしっかりと把握する事が前提になります。
ただし内部の構造などの品質は、実際に建物の外観や内装を見ただけではわからないことも多いでしょう。完成前の物件を購入する(プレビルド)場合は、特に判断が難しいと言えます。まずは、安価な価格に惑わされない、という事が第一です。極端に安価な物件の場合、使用している材質が粗悪なものであったり、安全性を保つために必要な手間やコストを削っている可能性があるからです。
さらに大事なのが、購入後に欠陥が見つかった場合のリスクを下げる仕組みを理解しておく事です。
日本では、売買対象の物件に外観からは特定できないような欠陥がある場合、売主が買主に対してその責任を負う、「瑕疵担保(かしたんぽ)責任」というものが民法で規定されています。
このような仕組みがベトナムではどのように適用されるのか、専門家や知識のある仲介会社を活用するのがより良い方法だと言えます。
5.賃貸付けができない
不動産投資での利益は、大きく分けて
- 不動産購入・売却時の差額で利益を得る「キャピタルゲイン」
- 不動産購入後に居住者を募り、その家賃収入で長期的に利益を得る「インカムゲイン」
の2種類があります。
後者のインカムゲインによる利益を求めて投資を行う場合、より高い賃料で長期的に賃貸できることが理想的となります。
そのためには、高額な家賃収入を得ることができる人気エリアに住宅が建設する、ということが有効な戦略にも見えます。
しかし、人気のエリアは住宅建設が進みすぎて住宅が供給過多になってしまうリスクもあります。競争が激しくなってしまえば家賃は上がりにくくなりますし、そもそも借主を探すことが難しくなる可能性もあります。
賃貸物件を購入する際には、物件の立地はもちろん、賃貸する際の競合となる他の物件の建設状況や、その土地の開発の進み具合をしっかりとチェックしておく事が有効でしょう。
ベトナム不動産投資失敗パターン:売却編
6.売却先が見つからない
不動産投資における売却益(キャピタルゲイン)を目指す場合は、自分の売りたいタイミングで売却先見つけることが肝です。
ベトナムでの不動産売買はエージェントに依頼すると手数料がかかるからと、個人間で行われるケースが多いですが、不動産の所有主が外国人の場合、現地で買い手を探すのは一筋縄ではいきません。
やはり不動産というと高額な投資ですので、売り主のことを買い手がどれだけ信頼できるか、という事が重要になります。
日系の投資家相手なら比較的スムーズに交渉が進むかもしれませんが、日本人の買い手だけだとどうしても市場が小さくなってしまいます。
現地や外国の法人・個人投資家に売却する場合は、現地の人脈やコネクションがなければ難しいでしょう。
「売却先がなかなか決まらず売り時を逃した」という事態を避けるためにも、多少の手数料がかかっても、信頼できるエージェントを見つけて売却先を探してもらう方が賢明でしょう。
7.売却資金を日本に持って帰れない
ベトナムはもともと社会主義国ということもあって、外資送金のハードルが高い国です。
ベトナムでの不動産投資で得た売買益に対してかかる税金は、申告の上適切に支払う必要があります。また、その納税を行ったことを証明する書類をきちんと入手しておかないと、送金処理ができない可能性もあります。
将来の利益を確保するにはどのような税金がかかるかを把握し、納税手順やどんな書類が必要なのか調査をすることを怠ってはいけません。自分がどの程度の税金を納付しなければならないのか、投資開始段階から認識しておくようにしましょう。
ただ、納税に関する情報をすべて把握するのはなかなか難しいので、現地の事情によく精通したパートナーを作っておくことが有効であると言えます。
まとめ
ベトナム不動産投資での失敗例について紹介してきましたが、どの失敗例の背景にも「現地の事情や制度をよく理解していなかった」「信頼できる仲介業者・管理会社が見つからなかった」ということがあります。
高額な投資を行う際には、ご自分でも現地事情をよく調査した上で、信頼できる相談相手・ビジネスパートナーを選んで協力していくことが、投資リスクを下げるもっとも効果的な方法だと言えるでしょう。