昨年末、中国で最初に確認された新型コロナウィルス(COVID-19)は、瞬く間に世界各地へ広まり、感染者数は今も右肩上がりで増えている。死者の数は、2002年のSARSを上回ったという。

各国の保健当局は、ウィルス封じ込めのため様々な策を取っているが、ビジネス界でも緊急時対応策が求められている。特に感染が拡大している地域における不動産業界へのダメージは大きいと見られている。アジアでも各部門で影響が出ている。

-小売、レストランへの影響
小売店やレストランは営業を中止せざるを得ない状況にある。中国本土に多くのアウトレット店を構える周大福(Chow Tai Fook)や、中国本土のナイキ、アディダス、スターバックスといった有名店も閉店を余儀なくされている。

-ショッピングモールも休業へ
市民の買い物は生活必需品のみとなっていることから、中国のショッピングモールの大半は休業したままとなっている。

-観光の減少
観光客もアジアを敬遠するようになり、旅行業界も打撃を受けている。今や中国だけでなく全世界で旅行が控えられるようになり、今年の観光シーズンの売上はかなり減少すると見られている。
タイのように観光業が経済に不可欠となっている国は、特に今後の影響が懸念される。インドネシアのバリ島でもキャンセルが相次ぎ、ベトナムでも年間を通じたキャンセルが発生している。ベトナムの観光業が受ける影響は、59億~77億ドル(約6,370億~8,317億円)に上ると見られている。

-テナントへの救済措置
シンガポールのレストラン経営者などからは、家賃の割り戻しを求める声が挙がっている。シンガポールのデベロッパーCapita Landは、1,000万シンガポールドル(約7億7,650万円)相当のマーケティング支援プログラム、家賃支払いの柔軟な対応、家賃の割り戻し(1回のみ)等のテナント救済措置を行うという。また香港でも同様の措置が検討されている。

-不動産会社の賃金凍結
シンガポールでは、Capita Landなどが賃金凍結を実施し、取締役及び管理職社員は5~15%の基本給引き下げを行うなどの対策が取られている。

-SARSの経験は活かされるのか?
SARSが流行した2003年の中国経済は、現在の1/9程の規模であった。現在の中国は世界最大の輸出国であり、世界2位の輸入国へと成長している。今後の市場動向について、SARS流行時からヒントを得られる部分もあるかもしれないが、当時と状況が異なることも理解しなければならないだろう。

-回復の兆しも?
シンガポールのショッピングモールには、少しずつ買い物客が戻り始めているという。しかしホテルなど宿泊施設は、空室が目立つ状態が続いている。City Development(CDL)は、現在の低迷期を利用して、タイ・プーケットのジャンセイロンモール(Jungceylon)やシンガポールのオーチャードロード沿いのモールを改装する計画を打ち出している。ライバル企業でもあるCapita Landも、現在12カ所のモールが閉鎖したままではあるが、その他の39カ所の施設について営業再開の流れになっていると話している。OCBCInvestment Researchによると、Capita Landの客足は、大流行前の40~50%程度まで戻ってきているという。

今後の状況については、予測することは難しいが備えることは可能だ。現在のアジアの状況を踏まえ、不動産投資家、物件のオーナー、経営者らは、今後起こり得る厳しい状況に対処できるようできる限りの備えをしておくべきであろう。


【参照】Coronavirus impact on real estate companies in Asia -- so far

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セカイプロパティ編集部
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