日本経済の先行きが不透明となるなかで、医師として働いている方も資産形成が求められます。とはいえ、仕事が忙しく、なかなか資産形成に取り組めない医師の方も多いのではないでしょうか。

そこで、本記事では、医師の方でも始められる資産形成の方法を紹介しています。本業である医師の仕事で収入を得つつ、定年退職後や老後の資産形成に向けた準備を進めてみましょう。

医師も資産形成に取り組むべき理由とは

 

一般的に収入が高い医師ですが、なぜ資産形成が必要なのでしょうか。医師という職業の特徴を踏まえながら、資産形成が必要な理由を解説します。

年収と比例して支出が膨らみやすい

まず、医師という職業から高収入を得られる一方で、支出額も膨らみやすいのが理由に挙げられます。年齢や勤務先で差が出ますが、令和3年度における医師の平均年収は1,378.3万円円でした(※1)。

令和2年度の日本全体における平均年収は433万円であったことから、医師の給与水準は国内でも高い部類に入ります(※2)。しかし、医師の世帯平均支出額も高く、毎月51万円以上の割合は全体の50%を超えています(※3)このように年収と比例して支出額が膨らみやすいため、早い段階で資産形成に取り組む必要があります。

定年退職後の収入源を補う必要がある

2つ目の理由は、定年退職後の収入源を確保するためです。上記で解説したとおり、医師の平均年収は日本国内でも高めに分類されます。

とはいえ、医師を定年退職したあとは、これまでと同額の収入を得られるわけではありません。勤務医の場合、国民年金と厚生年金の両方に加入しているものの、毎月の年金額は20〜25万円ほどです。平均年収1500万円と比較すると、5分の1ほどまで年収が下がることとなります。また、開業医に至っては、国民年金にしか加入していないことや、勤務医のように退職金制度がありません。

つまり、医師として働いていた頃の金銭感覚で支出額が変わらないままだと、定年退職後の生活で負担を強いられる可能性があります。なるべく生活水準を維持するためにも、資産形成による年金以外の収入源を補うようにします。

病気や怪我で稼げなくなるリスクがある

ほかの職業同様に、病気や怪我で働けなくなった際のリスクにも注意しなければなりません。とくに、過酷な医療現場で働き続けるなかで、病気や怪我を患い、長期間働けなくなることもあります。

もちろん、医師として稼げなくなった場合に備えて貯蓄することも大切ですが、早い段階で資産形成に取り組むことで、自身の資産を増やせる可能性を高められます。万が一のことを想定し、金銭的に不安を抱えないようにしましょう。

医師におすすめの資産形成方法とは

多くの資産運用の手段があるなかで、医師に適した資産運用方法を紹介します。それぞれの特徴を踏まえたうえで、自身にとって取り組みやすい方法を選んでみてください。

株式投資

株式投資は、企業の株式を購入して、配当金や株式売却による収益を狙う方法です。将来的に成長を期待できる企業の株式を購入したり、好きなタイミングで売却したりといった自由度の高い運用が可能です。

一方、株式投資は、運用する手間がかかります。とくに、短期で売買を検討している場合、日常的に株価をチェックする必要が出てくるため、本業に支障が出ないように注意が必要です。

投資信託(インデックス投資)

投資信託は、資産運用のプロであるファンドマネージャーが、投資家に代わって運用します。株式投資と異なり自分で運用する必要がなく、時間が限られている医師の方でも取り組みやすい方法です。

また、先進国の株式に特化した商品や株価指数に連動した商品、不動産に特化した商品(REIT)など、幅広いジャンルから商品を選べるのも投資信託の特徴です。

積立NISA

積立NISAとは、2018年1月より開始された少額投資非課税制度です。年間最大40万円・最長20年間の非課税枠が設けられており、投資信託で発生した利益に関して、税金が発生しないというものです。

金融庁に届け出があった投資信託の商品が対象で、商品数は100以上に及びます。非課税枠内であれば自由に商品を購入できるので、分散投資にも適しています。

積立型保険

積立型保険とは、貯蓄性がある保険です。掛け捨て型の保険と異なり、保険期間が満了を迎えた際に、満期保険金や解約返戻金を受け取れます。

一般的に、積立型保険は、個人年金保険、学資保険、終身保険、外貨建て終身保険の4つに分類されており、将来的な資産形成の計画に応じて選択できます。

不動産投資

不動産投資は、家賃収入を安定的に得られるため、中長期的な資産形成に適しています。日本国内の平均利回りは、エリアごとに異なりますが、おおよそ3〜5%です(※4)。

近年では、経済発展が続く東南アジアの不動産が注目されています。たとえば、カンボジアの場合、新型コロナウイルスの影響により2020年の経済成長率が-3.1%まで落ち込んだものの、2021年は3.0%まで回復しました。さらに、2022年には5.3%、2023年は6.5%との予測が出ています(※5)。一般的に、経済成長や人口増加とともに不動産価格も上昇するので、将来的に売却益であるキャピタルゲインを期待できます。

また、高い利回りを狙いやすいのも東南アジア不動産の特徴です。カンボジアの首都プノンペンの利回りは約6%、フィリピンのケソン市(マニラ首都圏内)は約5.6%と高い水準です(※6)。不動産価格も1000万円台から購入可能な物件も多くあり、初期投資を抑えながら資産形成に取り組めるのが魅力です。

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医師が資産形成を行う際のポイント

不労所得を得られる資産形成方法を選ぶ

医師の方が資産形成を行う際には、不労所得で収入を得られるように工夫してみてください。不労所得とは、労働の対価として支払われるお金以外の収入のことで、株式投資による配当金や売却益、不動産投資の家賃収入などが当てはまります。

医師という仕事柄、本業とは別に副業という形で労働を始めるにあたって、そもそも時間を確保するのが難しいかもしれません。そこで、不労所得を実現すれば、医師の仕事に集中しつつ安定した収入を得られます。医師を定年退職したあとも、継続的に収入を得られるため、生活水準を維持する目的にも適しています。

リスク対策として分散投資を心がける

本業の医師として稼いだ資金の損失を防ぐためにも、分散投資によるリスク対策を徹底するようにしましょう。具体的には、ある投資商品が値下がりしても、ほかの投資商品でリスクカバーできるような分散投資を意識してください。

たとえば、株式投資であれば、特定の業界に偏って株式を購入するのではなく、さまざまな業種の株式を分散して購入することを推奨します。不動産投資でも、エリア別で物件を購入したり、海外不動産にも投資をしたりすることで、リスク回避を期待できます。

不動産投資の法人化による節税対策

不動産投資を中心に資産形成を行っている場合、不動産事業を法人化した方が節税対策につながる可能性があります。個人として不動産投資による収入を得ていると、以下の所得税税率が採用されます。利益額にもよりますが、最大55%(所得税+住民税)の税率で所得税が決まります。

個人所得税税率(※7)

課税所得金額
税率控除額
1,000円から1,949,000円まで
5%
0円
1,950,000円から3,299,000円まで
10%
97,500円
3,300,000円から6,949,000円まで
20%
427,500円
6,950,000円から8,999,000円まで
23%
636,000円
9,000,000円から17,999,000円まで
33%
1,536,000円
18,000,000円から39,999,000円まで
40%
2,796,000円
40,000,000円以上
45%
4,796,000円

一方、不動産事業を法人化することで、法人税の税率で課税額が計算されます。税率は最大33.58%(法人税実効税率)で、個人の所得税と比較して、納税額を安く済ませられる可能性があります。

法人税税率(※8)

年800万円以下の部分
下記以外の法人
15%
年800万円以下の部分適用除外事業者
19%
年800万円超の部分
23.2%

資産形成のプロに相談する

資産形成の方法に不安を感じている医師の方は、専門家への相談を推奨します。比較的高収入を得られる職業ですが、資産形成の方法を間違えることで、思わぬ損失につながる危険性があります。

また、資産形成の方法に不安を抱えたままでいると、医師の仕事に集中できなくなることも考えられます。心理的な不安を取り除くためにも、資産形成のプロに相談したうえで取り組むようにしましょう。

まとめ

高い収入を安定的に得られる医師でも、老後に向けた資産形成に取り組む必要があります。収入が高いことによる支出の調整が難しかったり、収入が途絶えたりしたときに、資産形成に取り組んでいると安心感を得られる可能性があります。

ただし、数ある資産形成の方法のなかから、現時点のライフスタイルや余裕資金の額などを考慮したうえで、どの方法を選択するかが重要です。資産形成の専門家にも相談しながら、最適な方法を選ぶようにしましょう。

※1:医師の平均年収ランキング【年代・診療科・地域・経営母体別】

※2:令和2年分 民間給与実態統計調査

※3:医師のお金大調査

※4:第43回 「不動産投資家調査」(2020年10月現在)の調査結果

※5:JETRO「需要拡大などを背景に景況感は大幅なプラスに(カンボジア)」

※6:Asian Development Bank「Cambodia: Economy

※7:所得税税率

※8:法人税税率