東南アジアの不動産は、人口増加や経済発展による値上がりを期待できると言われていますが、不動産価格の推移は国によって様々です。
この記事では、タイの不動産について、現地銀行の統計に基づいた直近5年間の値動きともに、2021年以降の注意点などについても解説します。
タイ不動産の価格推移
タイ不動産の価格推移について、主に日本からの投資対象となるコンドミニアムに絞って解説します。
タイのコンドミニアム価格推移
タイでは原則として法人を含む外国人は土地を所有できません。このため、タイ不動産投資で購入できる物件は基本的にコンドミニアムになります。Bank of Thailandの統計によると、タイのコンドミニアム価格推移は以下グラフの通りです。
※参照:Bank of Thailand
2009年以降の10年あまりで、タイのコンドミニアムは約2倍まで値上がりしてきている状況です。しかし、2019年の秋以降は値上がりと値下がりを繰り返しており、2021年4月までの間に2倍以上まで上がったことはありません。
少々踊り場に入った感のある推移ですが、今後長期的には再度値上がりすることも考えられます。コロナウイルス感染症の拡大状況も影響すると考えられるため、今後の値動きには要注意です。
なお、同様に土地の価格指数推移を見ると、2021年4月時点では196.7まで上がってきているため、土地の値上がりがコンドミニアムの価格上昇に影響したとも言えるでしょう。
2021年以降の見通し
Colliers Thailandが発表したレポートによると、2021年は低価格帯のコンドミニアムが多く供給されると予測されています。
低価格帯のコンドミニアムとは、具体的に1㎡あたり100,00バーツ(35万円:1バーツ=3.5円換算)または1ユニットあたり300万バーツ(1,050万円:1バーツ=3.5円換算)未満の物件です。なお、物件が供給されているのはバーン・ケーやテパラックなど、首都バンコクの中でも外縁部に位置するエリアが多くなっています。
新たに物件が供給されるエリアが都市の外縁部に広がっていることから、バンコクの中でも中心部では開発用地が少なくなってきているとも言えるでしょう。また、低価格帯のコンドミニアムの需要があるのは、主に現地の給与所得者です。
低所得者向けの物件販売数が増加中
タイの住宅情報センターによると、コロナウイルス感染症の拡大によって景気が後退したにもかかわらず、2021年における300万バーツ(1,050万円:1バーツ=3.5円換算)未満の物件販売数は2020年よりも増加する見通しです。なお、タイ政府は低所得者に向けて住宅購入を促す政策を推進しています。
300万バーツ以下の物件に限定して、土地と建物双方にかかる固定資産税を90%削減するとしています。減税期間は当初2020年までの予定でしたが、タイ政府は2021中も減税期間を延長する予定です。物件販売数の増加は、減税政策が奏功した結果とも言えます。
※参照1:Colliers Thailand
※参照2:Colliers Thailand
低所得者向けの物件投資には要注意
2021年時点において、タイの不動産市場で活況を呈しているのは低所得者向けの住宅市場という点には注意を要します。タイ不動産投資の市場において、日本人向けに販売されている物件には、現地民から見て高級物件に該当するものが少なくありません。
高級物件に入居できる居住者は、現地の富裕層か外国人駐在員などに限定されます。コロナウイルス感染症拡大によって本国へ帰国している駐在員も多いため、2021年時点では、高級物件の賃貸運用には空室リスクに要注意の状況です。その一方で、低所得者向けの物件には低価格で購入できるメリットがありますが、キャッシュフローを残しにくいデメリットもあります。
低所得者向けの物件では、家賃を低めに設定しないと入居者が入らないためです。もともとの家賃が低いと各種経費支払い後の手残りも少なくなります。仮に利回りが高い物件であっても、想定されるキャッシュフローの確認は重要です。タイ不動産投資では、物件価格と賃貸需要の大きさを見極めながら物件を選ぶことが重要になってきています。
安易に低所得者向けの物件へ投資すると、期待していたほどキャッシュフローが残らなかったということも起こり得ます。
まとめ
タイのコンドミニアム価格推移を見ると、2020年以降上下動を繰り返しているものの、価格指数が200を超えたことはなく横ばいの状況です。
しかし、長期的な目線では右肩上がりで推移しているため、コロナウイルス感染症の状況次第では、今後さらに値上がりする可能性もあります。
なお、不動産市場の状況を分析すると、2020年~2021年の期間で活況を呈しているのは低所得者向けの住宅市場です。外国人駐在員などが本国へ帰国している状況も鑑みると、高級物件への投資では空室リスクが高まっていると考えられる一方で、低所得者向けの物件投資には、キャッシュフローが少なくなる点に注意を要します。