ハワイ不動産は日本国内では節税効果もあったため、富裕層を中心として人気を博していました。しかし、税制改正によって節税効果が薄れることとなり、ハワイ不動産を今後どのように運用したら良いか悩む人もいるのではないでしょうか。ハワイ不動産を活用した節税の仕組みとともに、ハワイ不動産市場の現状や考えられる方策などについて解説します。

税制改正大綱によってハワイ不動産節税効果が縮小

令和元年末に発表された税制改正大綱により、ハワイ不動産投資による節税効果は縮小することとなりました。ハワイ不動産投資による節税の方法と、税制改正大綱の内容について解説します。

減価償却費の計上が節税のポイント

これまで、海外不動産投資による節税は、日本の税制によって発生する減価償却費を計上できることがポイントでした。

減価償却費とは、不動産など資産の経年劣化による価値の目減り分について、税務上の経費として計上できる費用のことを指します。減価償却費は実際の支出を伴う経費ではありません。このため、減価償却費を計上すれば実際の資産を減らさずに節税が可能です。

1年あたりの減価償却費を最大化するためには、減価償却期間を短期化できる築古の木造住宅を購入するのが有効です。しかし、日本では築古の木造住宅は入居者にも投資家にも人気がないため、最終的な物件の売却が課題となります。

その一方で、アメリカではハワイを含めて築古の木造住宅も多数流通しています。ハワイでは、日本で課題となる物件の流動性についても解決可能なため、これまで多くの富裕層がハワイ不動産投資による節税をしていました。しかし、減価償却費の計上による節税は今後封じられることとなります。

海外不動産投資の減価償却費は計上不可能に

2019年末に発表された税制改正大綱により、2022年に実施する確定申告からは、海外不動産投資によって発生した減価償却費を計上できなくなりました。海外不動産全てが対象となるため、ハワイ不動産についても今後は減価償却費を計上できません。

※参照:令和2年度 税制改正大綱

賃貸管理費や修繕費などは経費計上できるため、ハワイ不動産の節税効果がゼロになったわけではありませんが、効果が大幅に小さくなったと言えます。ハワイには、税制改正前には節税効果を期待できた木造築古物件も多く、こうした物件を購入していた日本人投資家も少なくありません。

コロナでハワイ経済も縮小

ハワイ不動産投資による節税は、税制改正によって効果が縮小することとなったため、投資家は今後の対応を迫られています。しかし、ハワイの主要経済は観光業なので、コロナで渡航制限が敷かれている2021年時点では、ハワイの経済も大きな打撃を受けている状況です。今後数年間は、失業者の増加などによる空室リスクや家賃滞納リスクなどに注意を要します。

渡航制限によって観光客が大幅に減少

ハワイ観光局の統計によると、2020年4月のオアフ島訪問者数は、対前年比マイナス99%となりました。なお、ハワイの訪問者はこれまで平均滞在日数が7日前後でしたが、コロナを経て20日以上など長期化しています。観光や結婚式などを目的としてハワイを訪問する人は減っており、友人・家族と会う目的でハワイを訪れる人が増えている状況です。

※参照:ハワイ観光局

ハワイ州の失業率推移

観光客の減少はハワイ州の失業率にも表れており、ハワイ州政府が発表したレポートによると、ハワイ州の失業率は以下のように推移しています。

※参照:ハワイ州政府

ハワイ州の失業率は、2020年第1四半期には2.0%でしたが第2四半期には19.4%まで上昇しました。その後、2021年第1四半期には9.0%まで下がっているものの、平常時と比較すると、ハワイの失業率はまだ高い状況です。

なお、宿泊施設・飲食業などに関連する失業者数は55,000人に上っており、全失業者数の42.2%を占めています。観光に関連する宿泊業や飲食業に従事する人たちの多くが失業している状況です。ハワイ州政府が発表しているレポートによると、ハワイ州の失業率は年々低下していく見込みです。

しかし、2024年の予測失業率は5.0%であり、ハワイの雇用が回復するまでには数年かかると予測されています。

平均所得が回復するのは2024年の見込み

そのほか、個人所得の指標も2020年以降2023年までは低下もしくは横ばいとなる見通しです。予測個人所得の推移は以下グラフのようになっています。

※参照:ハワイ州政府

2023年まではコロナの影響がある見通しとなっているものの、2024年には直近5年間では最高所得を更新すると予測されています。なお、2022年は最も平均所得が落ち込む見通しであり、予測平均所得は$82,599です。

ハワイでは元々の平均所得が高いことから、コロナの影響で所得が減少すると予測されているものの、$80,000を下回ることはない見込みとなっています。

ハワイ不動産投資で考えられる対応策

節税が封じ込められた上に、数年間は空室リスクや家賃滞納のリスクに要注意のハワイ不動産投資において、今後考えられる対応策を解説します。

ハワイ不動産はキャピタルゲインを期待できる

もともと不動産市場の安定性が高いハワイでは、コロナ禍においても住宅価格の暴落などは起きていません。アメリカ政府が打ち出した経済対策の1つである低金利政策が、住宅ローン金利を押し下げており、低金利を背景として住宅需要が拡大している状況です。

また、ハワイ不動産は価格の上下動が多いものの、長期的には右肩上がりで推移しています。コロナを原因としたハワイ経済の停滞によって、住宅価格が一時期落ち込むことは考えられますが、長期保有を前提に考えればキャピタルゲインも期待できます。

ハワイ不動産投資では節税が封じられた上に、コロナの影響で家賃収入によるインカムゲインも不安定な状況です。しかし、リーマンショック後も早い段階で不動産価格が回復した過去を鑑みると、キャピタルゲインを狙うのは不可能ではないと考えられます。

資産分散の観点からも長期保有は有効

海外不動産投資には、節税やキャピタルゲインといった直接的な利益のほかにも、資産分散によるリスクヘッジという効果があります。物件価格の暴落が起こりにくいと思われるハワイ不動産投資は、資産分散の観点からも有効です。

日本国内の不動産は、人口減少や経済成長の鈍化などが起きていることから、今後価値が下がることも考えられます。また、日本では地震や台風といった自然災害のリスクもあるため、海外不動産投資による資産分散は効果的です。

【関連記事】:ハワイ不動産投資のメリット・デメリット!国内不動産投資との違いも解説

まとめ

ハワイ不動産投資による節税のポイントは、減価償却費の計上を活用することでした。しかし、2022年に実施する確定申告からは、税制改正によって減価償却費を計上できなくなります。

2021年時点では、ハワイの経済はコロナによる影響を受けており、コロナ以前の水準に回復するまでには数年かかる見通しです。今後ハワイの不動産市場にもコロナの影響が表れる可能性があります。

しかし、過去の住宅価格推移を鑑みると、キャピタルゲインや資産分散の観点から、ハワイの不動産を長期保有するのも有効です。

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