アメリカは、海外不動産の投資先として人気の国です。比較的規制が緩く、外国人でも土地を所有できることに加え、不動産価格が上昇を続けていることが背景としてあります。また、アメリカでは築古物件の資産価値が、日本よりも落ちにくいという特徴もあります。

そこで、本記事では、アメリカ不動産投資の現状について人口や不動産価格の推移などを詳しく解説します。また、アメリカ不動産を検討したい方に向けて、不動産投資に適したエリアを6つご紹介しますのでご参考ください。

アメリカ不動産価格を示す「ケースシラー住宅価格指数」とは

ケース・シラー住宅価格指数とは、アメリカ大手格付け会社のスタンダード&プアーズ(S&P)社が算出する住宅価格指数のことです。全米の主要都市圏の一戸建て再販価格を集計し、2000年1月を100として指数を算出しています。また、個人消費動向にも関係する指数であることから、アメリカ国内の景気を示す指標でもあります。

 【2022年版】アメリカ不動産価格の推移

アメリカの不動産価格は、どのように推移しているのでしょうか。2021年のアメリカ不動産価格を振り返るとともに、2022年における住宅価格の見通しを紹介します。

2021年にアメリカ住宅価格は18.8%アップ

はじめに、2021年のアメリカ住宅価格を振り返ります。2021年のアメリカ住宅価格は、前年比で18.8%上昇し、過去34年間のデータでも過去最高を記録しました。

住宅価格が上昇した背景には、住宅の需給両面の影響があります。まず、需要面については、連邦準備制度理事会(FRB)の金融緩和策による低金利が進んだことや、新型コロナウイルス感染拡大以降、住宅の購入需要が高まったことが要因に挙げられます。また、住宅の供給面に関して、新型コロナウイルス感染拡大に伴う建築業界の人手不足や、木材価格の上昇が不動産価格上昇の原因とされています。(※1)

2022年の住宅価格アップの見通し

2021年に住宅価格が歴史的に上昇した一方で、2022年の住宅価格はさまざまな予測があります。アメリカ大手の金融系グループ「ゴールドマンサックス」によると、2022年の住宅価格は16%の上昇を見込んでいます(※2)。

また、大手不動産検索サイトの「Zillow」でも、2021年9月から2022年9月にかけて、住宅価格が13.6%の伸びを記録するとの予測があります(※3)。

しかし、上記2社の予測と異なり、2022年の住宅価格が鈍化するとの予測も出ています。キャピタル・エコノミクスのシニア不動産エコノミスト、マシュー・ポイントン氏によると、住宅ローンの金利が上昇していることを受けて、前年比5%安の可能性もあると指摘しました(※4)。金融緩和から金利上昇へと政策が変わるなかで、住宅価格の上昇も一旦落ち着く可能性があります。

アメリカ不動産価格の上昇が期待される理由

アメリカの不動産価格は、今後も上昇が期待されています。2つの理由から、アメリカ不動産価格が上昇する可能性を探っていきましょう。

アメリカ国内の人口増加

日本の人口減少が社会問題となっている一方で、同じ先進国のアメリカでは人口が増加し続けています。2020年4月1日時点におけるアメリカの総人口は3億3,144万9,281人で、2010年と比較して2270万人増加しました(※5)。伸び率は鈍化傾向にあるものの、1910年から右肩上がりで人口増加が続いています。

アメリカの人口が増加している背景には、移民の流入が挙げられます。米国のシンクタンク、ピュー・リサーチ・センターによると、アメリカ国内でのヒスパニック系の人口は、2010年の5,050万人から2020年の6,210万人と23%増加しました。2010から2020年における人口増加分の半数がヒスパニック系であることから、移民の存在がアメリカの人口増加に直接的な関係があります。

とくに、テキサス州、カリフォルニア州、フロリダ州での移民流入が目立っており、今後の不動産価格上昇にも影響を与える可能性も考えられます。(※6)

アメリカ経済の成長

アメリカは、依然として経済成長が続いている国です。アメリカ商務省の発表によると、2021年通年での実質GDP成長率は前年比5.7%の上昇で、1984年に記録した7.2%増以来37年ぶりの数値となりました(※7)。

経済成長が続く要因には、移民の流入を含む人口増加がポイントとなります。カンボジアやフィリピンといった東南アジア諸国でも、人口増加とともに著しい経済成長を遂げています。継続的に経済が発展することで、不動産の需要が高まるほか、価格の上昇にもつながる可能性があります。

アメリカ不動産投資におすすめのエリア6つ

日本と比較して約25倍の面積を誇るアメリカで不動産を購入する際には、不動産投資に適したエリアを探すことが大切です。都市の特徴や人口数、ケース・シラー指数などを踏まえて、おすすめのエリア6つを紹介します。

フロリダ州オーランド

フォーブスが3年連続で物件を購入しやすい場所として第1位に挙げているのがフロリダ州オーランドです。オーランドは、フロリダ州の中央部に位置する都市で、2022年現在の人口は約28万人に及びます。

また、全米でも人気の観光地としても知られており、「ウォルト・ディズニー・ワールド」、「ユニバーサル・オーランド」、「シーワールド・オーランド」といったテーマパークがあります。

なお、オーランドの1平方メートルあたりの不動産価格は3,694ドル(約50万)です(※8)。フロリダ州の賃料は上昇を続けており、2022年以降も不動産投資に適したエリアと言えるでしょう。

フロリダ州ジャクソンビル

フロリダ州ジャクソンビルは、州東北部に位置する都市です。人口は90万人を超えており、2020年時点で全米12番目の人口を擁します。新型コロナウイルスの感染拡大以降、リモートワークや生活費削減を目的とした移住にも人気が高いエリアです。

ジャクソンビルの1平方メートルあたりの不動産価格は、5,102ドル(約69万円)です(※8)。ドイツ銀行やJPモルガン・チェースといった大手金融機関の拠点もあり、今後さらなる従業員の流入による人口増加も期待されています。

テキサス州ダラス

テキサス州は、アメリカ国内で2番目の経済規模を誇る都市です。2021年のアメリカ国内におけるGDPのデータによると、テキサス州は、カリフォリニア州に続いて1兆9853万ドルで2位となりました(※9)。もともと、テキサス州では法人州税がゼロであることから、法人企業の拠点として注目されています。

州北部に位置するダラスにおける1平方メートルあたりの不動産価格は3,748ドル(約50万円)です(※8)。2021年のケースシラー指数の伸び率は26%と、冒頭で解説した全米のケースシラー指数よりも高い数値が出ています(※10)。

オハイオ州クリーブランド

オハイオ州クリーブランドは、州北部に位置する都市です。2020年時点の人口は約37万人で、オハイオ州内では州都コロンバスに次いで2番目の人口を誇ります。全米屈指の工業都市として繁栄し、現在では金融業やバイオメディカルも有名です。

グリーブランドにおける1平方メートルあたりの不動産価格は、2,130ドル(約28万円)です(※8)。また、2021年のケース・シラー指数の伸び率は、13.30%を記録しました(※10)。

ジョージア州アトランタ

ジョージア州アトランタは、同州の州都であり、2020年時点での人口は約50万人に及びます。飲料メーカーのコカ・コーラや、航空会社のデルタ航空といった全米を代表する大企業の拠点を置くほか、南部には日系企業の工場もあります。

アトランタの1平方メートルあたりの不動産価格は、4,436ドル(約60万円)です(※8)。2021年におけるケース・シラー指数の伸び率は21.90%で、全米平均の18.8%を上回る数値となりました(※10)。

アリゾナ州フェニックス

アリゾナ州フェニックスも、アメリカ不動産でおすすめの投資先です。温暖かつ乾燥した砂漠地帯の利点を活かして、精密機械や半導体などを生産する工業都市として発展してきました。また、グランドキャニオンをはじめとする国立公園も多く、世界中から観光客が訪れる都市でもあります。

フェニックスの1平方メートルあたりの不動産価格は、4480ドル(約60万円)です(※8)。2020年時点で人口は160万人を超えており、ケース・シラー指数も32.50%と高い数値を記録しています(※10)。

アメリカ不動産投資の注意点

住宅価格が上昇しているアメリカの不動産ですが、不動産投資で注意する点があります。次の3つの注意点を踏まえたうえで、アメリカ不動産投資を始めるようにしましょう。

節税スキームが難しくなっている

令和2年度の「税制改正大綱」により、海外不動産で生じた減価償却費の計上が不可能となりました。不動産など資産の経年劣化による価値の目減り分を経費として計上し、富裕層を中心に注目されてきた節税スキームです。

とくに、日本国内と比較して、アメリカ・ハワイでは、築古の中古物件の流動性が高く、節税対策に有効な投資先として知られてきました。しかし、税制改正大綱の施行に伴い、アメリカ・ハワイを含む海外不動産における減価償却費の経費計上が認められなくなっています。

各エリアの特徴を調べる

アメリカで不動産投資を始める際には、各エリアの特徴を調べるようにしましょう。上記で解説したとおり、広大なアメリカはエリアごとに特徴が異なります。

また、不動産価格上昇を狙う際には、人口が増加しやすい都市や、今後の経済発展が見込まれる都市を見極める必要があります。写真や文章では分からない部分も多いので、実際に不動産の購入を検討している都市に訪れてみることもおすすめします。

不動産代理店に相談する

最後に、不動産代理店への相談です。日本国内の不動産と異なり、海外不動産は情報を入手しにくいことや、言語による意思疎通の問題があります。

そこで、アメリカ現地で展開している日系の不動産代理店への相談をおすすめします。個人では難しい手続きを代理で行ってくれたり、最新の不動産情報を得られたりする可能性もあるので、不動産購入をスムーズに進めやすくなります。

まとめ

アメリカ不動産価格は、人口増加や経済発展に伴い、引き続き上昇する予測があります。しかし、住宅ローンの金利上昇による不動産価格上昇の停滞や、下落の可能性も出ていることから、慎重に購入を進めるようにしましょう。また、国ごとに不動産購入に関するルールが異なるので、日系の不動産代理店への相談も検討してください。

当社では、東南アジアを中心に海外不動産を取り扱っています。最新の不動産情報や、購入方法、注意点など、少しでも海外不動産で気になることがありましたら、ぜひお問い合わせください。

※1:JETRO「地域・分析レポート

※2:Goldman Sachs: Home prices will rise another 16% in ’22

※3:Zillow September 2021-September 2022 Home Value & Sale Forecast

※4:米住宅値下がりへ、来年半ばまでに前年比5%安も-ローン金利上昇で

※5:JETRO「地域・分析レポート

※6:ヒスパニック系が過去10年の人口増の半数、米シンクタンク発表

※7:米2021年GDP成長率、第4四半期は前期比6.9%、通年は5.7%で1984年以来の高成長

※8:1平方メートルあたりの住宅価格一覧「オーランド」、「ジャクソンビル」、「ダラス」、「クリーブランド」、「アトランタ」、「フェニックス

※9:Gross Domestic Product (GDP) of the United States in 2021, by state

※10:2021年の米国住宅価格は過去最高の伸び、オフィス需要は低迷が続く

不動産価格は1ドル=135円で計算