2019-12-22

どうする?どうなる?海外移住後の年金について

  • 海外不動産コラム

グローバル社会となっている昨今、海外に駐在する人や、定年後に海外でのんびり過ごしたいと考える人が増えてきました。そうした生き方を考える上で、これまで積み立ててきた年金の支払いや受取に関する情報が少ないことに、不安を感じる人が多くいます。そこで今回は、海外移住する際の年金受取および支払いについて、簡潔にまとめましたので、老後の安心・安全な海外移住生活を実現する際の参考にしてみてください。

1 海外移住しても年金は受け取れる

前提として海外移住しても年金は受け取ることができます。ただし、年金請求手続は各自で行わなければいけません。特に、海外移住後、日本に住所がない人の場合、日本在住者のように、日本年金機構から年金請求書が送られることがないため注意が必要です。手続きに必要な年金請求書を日本年金機構のホームページでダウンロードし、記入後に他の必要書類と共に郵送するなど、複数の手続きや提出書類の準備が必要なため、日本にいる親族や社会労務士に手続きを頼めるのであれば、委任も検討した方が良いでしょう。海外移住者が年金請求書を提出する先は、日本国内で最終居住地となった地域を管轄する「年金事務所」もしくは、全国78カ所にある「街角の年金相談センター」になります。提出期限は、年金支払い日の前々月末日です。

1-2 移住先での年金の受け取り方

海外で年金を受け取る際、日本円を現地通貨に換えた上で受け取ることになります。海外への送金についても、日本国内と同じく2ヵ月に1度、現地の通貨で支払われます。タイ移住者が年金を受け取る場合、日本円の年金をUSドルに置き換え、さらにタイバーツにするといった流れになります。レートは変動するので、受け取り額はその都度異なります。公的年金については、金融機関の指定口座に振り込まれますが、海外移住者の場合は、国内・国外どちらの金融機関に振り込まれるか指定することができます。また、以前は海外居住者であっても25年間の年金保険料を納付する必要がありましたが、平成29年8月から期間が10年に短縮されたことで、仮に20歳から国民年金に加入し保険料を納付している人は、30歳を超えて海外居住しても年金を受け取ることができます。

1-3 毎年、現況届の提出が必要

海外に居住して年金を受け取る場合は、年1回「現況届」の提出が必要です。海外居住の年金受給権者宛に誕生月の前月下旬に日本年金機構から現況届が発送されます。この現況届に、滞在国の日本領事館等で発行した在留証明書(日本国籍を有する人に交付される証明書)を添付して年金事務所に提出します。現況届に必要な書類は、誕生月を含めて過去6カ月以内に証明を受けたものであれば有効です。もしも、現況届を提出するのを忘れてしまうと、年金が受け取れなくなりますのでくれぐれも注意してください。また、現況届を受け取るためには、海外転出届を移住前に提出する必要がありますので、こちらも十分注意してください。

2 海外移住後の年金支払いについて

年金は居住している国で加入することが原則となっています。これは、海外移住者であっても同様で、日本の年金に加入する義務がなくなる分、移住先の国の年金に加入することになります。海外へ移住後、国民年金の年金保険料を支払わなくなったとしても、既に支払った分の保険料は記録として残るため、長期の海外移住であっても掛け捨てになることはありません。また、海外に居住している人と国内にいる人との受給額に差が出ないよう、任意ではありますが海外移住後も国民年金に加入することができます。移住前の人は、現在住んでいる市区町村窓口。既に海外に居住している人は、日本国内で最後の住所地を管轄する年金事務所または市区町村窓口と、状況に応じて手続窓口が異なるので注意してください。

2-1 納付方法について

任意加入中の国民年金を納める方法は、国内にいる親族等が本人の代わりに納める方法と、日本国内に開設している預貯金口座から引き落とす方法のいずれかを選ぶことができます。親族等が代理で納める場合、代理人が支払いを忘れてしまうと未納状態となるため、後々のトラブルを防ぐためにも、支払いのタイミングできちんと連絡を取り合うなど、お互いに安心できる体制を事前に話し合った方が良いでしょう。その点、日本の通帳からの引き落としに関しては、自動的に支払われる分、支払いを忘れることはありませんが、通帳に十分な金額を入れておく必要があるため、こちらも定期的な確認が必要です。どちらの納付方法を選択するにしても未納期間を作らないことが肝心です。

2-2 会社員は引き続き厚生年金に加入

会社員などの厚生年金加入者は、所属先の企業や団体の業務で海外に駐在する場合、駐在先の海外に住所が変更しても、従業員として赴任中も厚生年金に加入し続けることになります。この際、海外で働く人が、日本で支払う保険料と海外の社会保障制度に加入して支払う保険料を二重に負担することを防ぐ制度「社会保障協定」を締結している国であれば、その国で働いていた期間も年金制度に加入していた期間として通算されます(一部の協定には年金加入の通算が行われないものもあるため、必ず事前に確認してください)。この制度により、若い時期から海外で働いている人であっても、加盟国の社会保障制度に加入すれば、日本の年金を受け取ることができるため掛け捨てを防止できます。

3 安心して年金を受け取るための注意点

海外転出届を提出すると海外移住中は合算対象期間と見なされ、年金保険料を納めなくともよくなりますが、年金額そのものには反映されないため、ゆとりある老後の暮らしを送りたいのであれば、海外移住後も国民年金に任意加入することをお勧めします。特に、加入期間が10年に満たないと受け取ることができないため、年金の加入記録を移住前に必ずチェックし、任意加入するのであれば移住前に各種手続きを済ませておきましょう。保険料の引落口座の管理も同様です。また、海外移住に際し、保険料納付実績や将来受給できる年金額の見込みなど、年金に関わる個人情報を確認できる「ねんきん定期便」の移住先住所への転送届も忘れずに提出した方が安心です。

3-1 確定拠出年金について

確定拠出年金法に基づいて実施されている、私的年金の制度「個人型確定拠出年金(iDeCo)」に加入している人が海外移住した場合、移住後の掛け金の積み立てができなくなります。また、途中で積み立てを中止しても、確定拠出年金は60歳になるまで引き出すことができないため、海外移住中は口座管理手数料のみかかる形になります。もともと確定拠出年金は、国民年金に加入している自営業者や厚生年金に加入している会社員が、公的年金に老後資金をプラスするために始まりました。こうした日本居住者向けの商品があるため、海外移住する際は現在加入している商品について、あらためて管理・整理した方が良いでしょう。

3-2 日本に戻った際に気をつけること

20歳~60歳未満の間に、海外から日本へ住所を移した場合、第一号被保険者として国民年金に強制加入となります。これは自動的に切り替わるわけではありません。転入先の役所で手続きが必要となるため、一時的な帰国であっても日本国内に住所を登録したら、必ず手続きを行いましょう。また、海外移住中の任意加入期間で付加保険料を納付していたのであれば強制加入に変更となった際、再度、付加保険料の納付手続きを行う必要がありますので、こちらも忘れずにチェックしてください。ちなみに、年金を受給している人が移住先から日本へ住所を映した場合、年金受給者の住所変更手続き以外に、口座変更を行う場合も住所地の役所または、年金事務所で口座変更の手続きを行う必要があります。

まとめ

海外で年金を受け取るために、毎年「現況届」を提出すること。その現況届を受け取るため、移住前に「海外転出届」を提出すること。この2つは忘れずに行う必要があります。また、老齢年金以外に遺族年金基金、遺族厚生年金、障害基礎年金、障害厚生年金、寡婦年金、死亡一時金なども、移住先で受け取ることができます。ゆとりある老後を過ごすために、事前準備は抜かりなく行いましょう。