人口減少や少子化を背景に国内不動産市場の縮小が懸念される中、海外不動産に注目が集まっています。資産形成や移住を検討する方は経済発展が著しい東南アジアを、節税したい方は建物価値が落ちにくいアメリカなどを対象に検討を始めています。

この記事では海外不動産投資を始めたい方のために、海外不動産を購入するメリットや目的別の投資方法、人気の対象国などをご紹介しますので、参考にしてみてください。

1 海外不動産投資がおすすめの人

不動産投資は国内でもできますが、目的によっては海外不動産のほうが向いている方もいます。タイプ別にどのような方に向いているのかを見ていきます。

1-1 資産形成したい方

海外不動産では、人口が減少していく日本よりも不動産価格の上昇幅を狙いやすい国があるため、キャピタルゲインでの資産形成を考えている方に向いています。

現在、日本国内の経済状況について野村総合研究所は、「日本の経済成長率は主要国に比べ低く、これからの大幅な経済成長は難しい見込み」としており「インフレ率の低迷が続き、物価上昇の動きは鈍い」と分析しています。

不動産需要については、「賃貸マンションの供給戸数は全住宅戸数の増加率を上回る水準で推移している」との一方で、「2015年以降に神奈川県の空室率が急激に上昇し、2016年末以降は東京でも空室率が上昇しつつある」と悲観的です(参考:野村総合研究所「日本の不動産投資市場 2018」)。

経済成長の見込みが薄く、物件の供給量が多くなれば、利回りの低下も懸念されます。また都市部であってもすでに空室率が上昇しているのも投資家の方にとって不安材料でしょう。

不動産価値が上昇するためには、「国の経済が成長すること」「物価が上昇すること」「不動産需要が堅調に推移すること」などの条件が挙げられます。東南アジアではカンボジア・マレーシアなど高い経済成長が続く国では、今後の不動産価値の上昇が狙いやすいと言えます。完成前のプレビルド物件を安く購入し、完成後に高く転売できればキャピタルゲインが期待できます。

不動産取得に関する購入規制は国によって異なりますが、コンドミニアムなら購入できる国は多く、資産形成のために運用できます。販売価格も欧米に比べれば取得しやすい水準なので、老後に向けて資産形成をしていきたいサラリーマンの方にもおすすめです。

1-2 節税したい方

例えばアメリカ不動産は日本よりも土地に対して建物の価値が高いため、節税目的で購入する方が多くいます。日本の不動産にも節税効果はありますが、短期の節税に向いている築古物件は流動性が低く、新築物件やタワーマンションなどは割高です。

賃貸運用を行う場合でも、人口減少や築年数経過による空室リスクの上昇や実質利回りの低下などの課題を抱えています。売却するにしても、人口減少に伴う不動産需要の減少や築年数経過による物件価値の低減リスクなどがあります。

一方、欧米の建物の価値は日本に比べ落ちにくいため、売却時の値下がり幅がそれほど大きくないという傾向にあります。

中古物件の場合なら短期間での減価償却(時間が経つごとに減少していく資産の価値を、その資産の取得費を耐用年数で按分して毎年費用計上すること)が可能で、建物価値が高いため経費計上できる金額も大きくなります。納税額が多い方なら、日本の不動産を運用するよりも節税につながる場合もあるでしょう。

1-3 移住目的の方

「老後の2,000万円不足」という政府の発表が話題を呼んでいるように、日本では将来の年金制度が不安視され、老後の安定した生活費を確保する手段に関心が集まっています。そこで生活費の安い東南アジアへの移住を検討している方にも、海外不動産投資はおすすめです。

たとえば日本人が多く住み、気候も暖かいマレーシアは、リタイア後の新天地として人気があります。ほかにもビザが取りやすいフィリピンやカンボジア、物価が安いタイなども人気です。物件価格は安く、サラリーマンでも取得しやすいため、コンドミニアムを投資用として購入しつつ、将来的に自分が住んでも良いでしょう。

不動産価格のグローバルデータベースを扱うNumbeo.comによると、㎡当たりの価格(単位は米ドル)は以下のとおりです。

都市名

㎡あたりの価格

日本円にした場合

バンコク(タイ)

$5,174.25

約55万4,000円

クアラルンプール(マレーシア)

$2,800.04

約29万9,000円

マニラ(フィリピン)

$2,570.55

約27万5,000円

パタヤ(タイ)

$2,513.18

約26万9,000円

プノンペン(カンボジア)

$2,355.56

約25万2,000円

チェンマイ(タイ)

$2,237.73

約23万9,000円

ハノイ(ベトナム)

$2,134.25

約22万8,000円

ジャカルタ(インドネシア)

$2,025.83

約21万7,000円

東京

$10,854.90

約116万5,000円

(参考:Numbeo.com)

また、各都市における1人当たりの生活費(月間)の目安は以下のようになっています(住居費除く)。カッコ内は中心部における1ベッドルームの月額家賃です。


月平均の生活費

1ベッドルーム家賃

バンコク(タイ)

70,705円

72,203円

クアラルンプール(マレーシア)

53,546円

61,311円

マニラ(フィリピン)

58,299円

58,335円

パタヤ(タイ)

60,078円

57,562円

プノンペン(カンボジア)

60,050円

55,503円

チェンマイ(タイ)

57,417円

40,603円

ハノイ(ベトナム)

48,246円

38,553円

ジャカルタ(インドネシア)

56,687円

43,284円

東京

121,693円

122,062円

(参考:Numbeo.com)

このように東南アジアは家賃・生活費ともに安いことから老後の生活にも適しており、不動産を早期に購入しておけばリタイヤ後の蓄えが期待できるだけでなく、移住手続きなどもスムーズに進めやすくなるでしょう。

2 海外不動産投資にオススメ4カ国の特徴とメリット


海外不動産投資の対象国として人気の東南アジアとアメリカの特徴やメリットをご紹介します。

2-1 移住先としてもおすすめのマレーシア

マレーシアは、日本人の希望する移住先として13年連続1位(ロングステイ財団調査)になるなど高い人気を誇りますが、不動産価格が割安であることもおすすめできる理由です。

東京と首都クアラルンプールの生活費を比べると、クアラルンプールは東京の半分程度で済む上、不動産は3分の1ほどで購入できます。40㎡ほどのコンドミニアムであれば、1,000万円を少し超える程度で、賃貸に出しておけば家賃の利回りもそれなりに確保できるでしょう。

クアラルンプールにおける2018年の住宅平均価格は189,662米ドル(約2,000万円)です。利回りは年々低下傾向にあるため、短期的な利益確保というよりも将来の移住を見据えた購入方法を検討してみても良いでしょう(参考:global property guide)。

また、マレーシア経済は堅調に推移しており、IMF(国際通貨基金)の予測によるGDP成長率は2019年で4.7%、2020年で4.8%と安定した伸びを見せています。今後も不動産価格の上昇が予測されるため、早い段階で購入しておけば将来移住する時に役立つでしょう。途中で売却してもキャピタルゲインが見込め、資産運用という面でもメリットのある国と言えます。

2-2 利回りと価格上昇が期待できるタイ

タイは堅調な経済成長と不動産需要の増加を背景に、住宅市場の拡大が今後も見込まれています。タイ中央銀行の発表によると、2018年第2四半期までの1年間で住宅価格は6.3%上昇しています(実質ベースでは5%)。コンドミニアム価格は2018年第2四半期まで4.9%上昇しました(実質ベースでは3.6%)。地価の上昇も堅調で、2018年第2四半期までの1年間で7.92%(実質ベースで6.58%)伸びています。

銀行が住宅ローンの貸付基準を緩和したこともあり、不動産総合サービス会社「CBRE」は、今後の住宅市場について「引き続き力強く成長する」と予測しています。また利回りに関しても、首都バンコクでは5〜8%の範囲で確保されています。

バンコクは多くの都市部とは異なり、専有面積が広いタイプのほうが利回りも良い傾向です。物価も上昇傾向にあり、東京と比較すると一月の生活費は半額以上の水準となっていますが、不動産価格は割安で購入できるレベルと言えます(参考:global property guide)。

このように今後の値上がりと利回りが期待できるバンコク不動産投資は、特に資産形成したい方に向いているでしょう。

2-3 需要増加が著しいカンボジア

カンボジアのコンドミニアムは、現地のカンボジア人の購入意欲が高まっています。物件価格は需要が増えるほど上昇するため、カンボジア不動産も資産運用におすすめです。

現地紙クメールタイムスによると、これまでコンドミニアムの購入者は外国人が80%を占めていましたが、現在のほとんどはカンボジア人です。首都プノンペンのコンドミニアムは手頃な価格のもの、ミドルレンジのもの、ハイエンドのクラスと3つのカテゴリに分かれ、手頃な価格帯のコンドミニアムは㎡当たり約1,400米ドルほどで、2018年第3四半期は前年同期比で5%上昇しています。

ミドルレンジのコンドミニアムは供給量が多いこともあって、㎡単価は2,600米ドルで、前年同期比2%減少しています。ハイエンドクラスのコンドミニアムは㎡単価が3,250米ドルで、前年同期比1.8%上昇しました。

また、プノンペンの物価は、東京と比較した生活費は半分以下で、不動産価格は4分の1程度になります。東南アジアの中でも割安な部類に入るため、これから海外不動産投資を始めようと考えている方におすすめの国と言えます。

経済成長率は2018年が4.7%、2019年は4.3~4.8%になると予測されています(マレーシア中央銀行発表より)。強い経済成長を背景にこれからの賃貸利回りも期待できます。外国人は土地の購入ができないため参考程度になりますが、フラットタイプのアパート(商業施設の上階に設けられた複合物件)における利回りは3.27~5.33%となります(参考:global property guide)。

2-4 節税対策としておすすめのアメリカ

アメリカでの不動産投資は、節税目的の短期所有が向いています。アメリカでは建物価値が高いことから中古物件でも減価償却費を大きく計上でき、節税効果が期待できます。

現在のアメリカ住宅市場は住宅価格上昇のあと、金利上昇によって新規建設の需要と供給が少なくなっているため落ち着きを見せる一方で、直近の主要都市では不動産価格の上昇が続いています。

2018年11月時点における各地の住宅価格指数は、次のように1年間で高い伸びを見せています。

ラスベガス

+12.07%

フェニックス

+8.1%

シアトル

+6.33%

アトランタ

+6.2%

ミネアポリス

+5.77%

デトロイト

+5.75%

(参考:global property guide)

都市部の物件価格は高騰していますが、高額納税者であれば節税効果が期待できるでしょう。利回りはコンパクトな物件のほうが高い傾向があり、たとえばニューヨークの場合、ワンルームタイプの利回りは7%程度、1ベッドルームタイプのアパートメントでは4%程度になります。これからアメリカで不動産投資をする場合は、短期売却を視野に入れた購入を検討してみても良いでしょう。

4 まとめ

海外不動産は経済成長率の高さや物件価値の高さなどによって、国内不動産よりも資産形成などに役立つ場合があります。キャピタルゲイン狙いなのか、節税対策なのかなど目的によって選ぶべき投資国やメリットが違ってくるため、まずはどのような目的で海外不動産投資を始めたいのかを明確にしましょう。

興味が湧いた方は、この記事を参考にご自身に最も合う投資対象国を見つけてみてください。