世界で最も長い名前の首都の一つとして知られるスリランカの「スリジャヤワルダナプラコッテ」。もともとはコッテ村という自然豊かな場所でしたが、スリランカ政府が1980年以降、首都移転に向けた開発を行った結果、今や国会議事堂や政府機関のほか、大学、リゾート施設もある高級住宅地になっています。比較的歴史も浅いため、意外と認知度も高くないのが現状です。
一体どんな場所なのでしょうか。
1 スリジャヤワルダナプラコッテとは
スリランカの首都であるスリジャヤワルダナプラコッテは人口10万人ほどの都市です。
現在、行政機関や公園、植物園、スポーツスタジアム、博物館などの建設を計画として整備しようとしており、注目が集まっています。
1-1 名前の由来
スリジャヤワルダナプラコッテの名前は、移転当時のジュニウス・リチャード・ジャヤワルダナ大統領が決めました。今のスリジャヤワルダナプラコッテの場所は1400年代にはコッテ王国が治めており、当時は「ジャヤワルダナ」(勝利をもたらすという意味)と呼ばれる地域でした。偶然にもジャヤワルダナ大統領と同じ名前だったのです。
そのため、旧名を復活させ、「スリ(Sri)」(光輝く)、「ジャヤワルダナ(Jayawardene)」(大統領の名前)、「プラ(pura)」(街)「コッテ(Kotte)」(もともとの街の名前)という名称になったと言われています。
1-2 行き方は
スリジャヤワルダナプラコッテはスリランカの西部に位置しており、大都市のコロンボから南東に約10キロにあります。バスで行く場合は、コロンボのペター地区にあるセントラル・バスターミナルのNo.152または170から乗車します。所要時間は約40分です。値段はRs.30ほど。割と近い距離でもありますので、スリーウィーラー(トゥクトゥク、オートリクシャー)やタクシーに乗っていくのもありかもしれません。
2 スリジャヤワルダナプラコッテの歴史
スリランカ政府は1985年、首都をコロンボからスリジャヤワルダナプラコッテに移しました。それまでコッテ村と呼ばれる自然豊かな土地を大規模に開発。近代スリランカの象徴と呼ばれる国会議事堂などを建築したのです。
2-1 首都移転の経緯
かつてスリランカの首都だったコロンボは1970 年代、都心部への機能集中が社会問題化しました。そこでコロンボから約10キロ離れたコッテ村へ首都機能を移転することを計画。1983 年に国会議事堂が完成し、1985 年に遷都が正式に発表されました。
2-2 首都機能移転はストップ
しかし、首都機能の移転は簡単には進みません。その背景にあったのは深刻な民族対立です。1983 年にシンハラ人(仏教徒の多数派民族)とタミル人(イスラム教の少数派民族)との大規模な内戦が勃発。その間、行政機関の建物建設がストップしたのです。
2-3 大規模開発が再始動
内戦は2009年まで続きました。当時のラージャパクサ大統領が内戦を終結させると計画が動き出します。そうして2012年までに住宅・建設省や女性子ども省、環境省、教育省などが順次移転しました。また、スリランカ政府の観光立国化に呼応するように、周辺でも開発が進んでいったのです。
3 スリジャヤワルダナプラコッテの見どころ
スリジャヤワルダナプラコッテは首都ができるまで、湖と野原ばかりの自然豊かな土地でした。しかし、首都機能が本格的に移転してからはリゾート施設も注目を浴びるなど、洗練された地域へと変貌しようとしています。
3-1 国会議事堂
スリジャヤワルダナプラコッテ最大の観光スポットと言える国会議事堂です。人工的に作られた湖の真ん中にある威厳のある建築物は、近代スリランカの象徴です。建築者は、数々のリゾートホテルを設計した世界的にも有名なジェフリー・バワ。スリランカの古都・キャンディーの仏歯寺(two teeth temple)をモデルに設計から竣工までわずか3年で作り上げました。
総工費は当時の金額でUS$4300万。日本のODAを活用しており、工事は三井建設が行いました。最初は国際入札でしたが、工期が短いことや、大阪万博でバワが設計した「セイロン館」を同社が手がけたことなどから、特命で施工することになったと言います。
国会議事堂は、予約なしで内部を見学することもできます。
3-2 アペ・ガマ
500年前のスリランカの暮らしを再現したテーマパークです。アペ・ガマとは「私達の家」という意味で、近代化が進み、失いつつある伝統的な生活文化を学ぶことができます。園内はテーマごとに分かれており、例えば伝統的なスリランカの家や食事を知ることのできる暮らしのブース、工芸品などを実演販売するクラフトビレッジ、地元の料理が食べられる「レストラン」などがあります。
園内では、ガイド以外に村長や売り子、祈祷師など様々な村人が出現しますが、実際に皆その役になりきっているのも見どころの一つです。
入場料はおおよそ大人Rs.650、子どもRs.390。海外の観光客だけでなく、地元の子どもたちが学校の授業で来たり、地元の家族が休日に遊びに来たりするなど、多くの人で賑わっています。
3-3 ウォーターズエッジ
開発が進むスリジャヤワルダナプラコッテでも人気の複合施設です。人気の飲食店などが入り、夜は周辺がライトアップされ、リゾート感のある空間が楽します。地元のスリランカ人はここで結婚式を行うのが憧れです。
施設内にはスリランカ料理だけでなく、日本料理やイタリアン料理もあります。もちろんベジタリアンやヴィーガンの人にも対応。特に、朝食ブッフェ会場はソファー席がたくさんあり、ゆっくりと流れる川見ながら飲むセイロンティーは最高です。
3-4 グラモダヤ民族芸術センター
かつてのラナシンハ・プレマダーサ大統領が1988年、伝統芸術を保護しようと建設した施設。レース編みや宝石加工、木工、金属加工、伝統楽器、伝統舞踊など11のクラスがあり、若者に対して、伝統芸能を教えています。作品は政府が買い上げるほか、即売所もあると言います。今はアペ・ガマの中にあるそうです。
4 おすすめグルメ
スリジャヤワルダナプラコッテにはどんなグルメがあるのでしょうか。特に国会議事堂周辺を紹介します。
4-1スピナーカフェ(Spinner Café)
話題のヘルシーレストランです。一定の金額以上を支払うと、自転車を借りることができます。チキンやマグロのロティサンドなど軽めのメニューと、紅茶やコーヒー、ジュースを楽しめます。観光で歩いた後、ランチするのに最適です。
4-2 カーサ・イタリア・スリランカ(Casa Italia Sri Lanka)
本格的なイタリア料理が食べられるレストランです。本格的な窯で焼いたピザや様々な種類のパスタを楽しめます。デザートのティラミスもおすすめ。家族経営ということもあり、スタッフは皆フレンドリーなのもポイント高いです。
4-3 寿司バーサムライ(The Sushi Bar Samurai)
寿司屋というよりは、お寿司も含めて様々な日本の料理が食べられるお店。マグロやサーモン、たまごと言ったスタンダードなお寿司もありますが、鶏のラーメンや、天ぷら刺身のフルロールも楽しめます。カレーに飽きて日本食が恋しくなったらおすすめです。
5 まとめ
近年スリランカは観光立国を目指し、世界中からの旅行者受け入れに力を入れています。
そうした中、発展途上であるスリジャヤワルダナプラコッテはまだまだ伸びしろのある地域だとも言えます。いずれコロンボと並ぶ2大都市になる可能性も秘めています。スリランカに行く機会があれば、世界的な建築家であるバワが作った国会議事堂を見るために、足を運ぶ価値があると思います。