不動産業界の専門家によると、オフィスは完全には消えないが、会社は社員のニーズを再考し、地主は増加する住宅のニーズに目を向けるかもしれないと述べています。

新型コロナウイルスの長期的な影響で、明確な予想はまだできないが、一つ注目されている話題は、テレワークだ。今の緊急事態が終わっても、今後テレワークが一般化したら、ニューヨークのオフィスビルのマーケットはどうなるのだろうか。

今の緊急事態が終わったら、会社員はオフィスに戻りたがるだろうと主張する一部の不動産業界の専門家もいれば、これからオフィスビルの需要がだんだん減少すると予測する専門家もいる。ニューヨークに住居用の建物が不足している中、その需要の低下に立ち向かえる対策として取り上げられているのは、オフィスビルをリフォームし、住居用に変えることだ。

「これは決して新いアイデアでも新い現象でもない。近年はロウアー・マンハッタンなどのエリアにオフィスビルから住居用のビルになるケースが何件かあります」とイングリッド・ゴールド・エレン氏(ディレクター:NYU Furman Center for Real Estate and Urban Policy)が述べた。

しかしColliers Internationalによると、2019年にマンハッタンだけで、オフィスビルの賃貸数が2001年以降最大となった。4年連続で上昇し、賃貸の土地面積が400万平方メートルとなった。

ゴールド氏によると、パンデミックの後にオフイスビルの需要が完全になくなることはないが、会社側は、必要に応じて、社員にシェアオフィスの提供やテレワークでの作業を許可することになるだろう。

そして、最初から新築で住居用のビルを建てるよりも簡単なため、より早く住居用のビルを増やせるメリットもあるという。「大きい工事で街並みが変わることもないく、新築と比べると周りのコミュニティーからの抵抗は少ないだろう」とゴールド氏は述べた。

オフィスビルを住居用のビルに変える傾向はニューヨークのような大都会より、ミシガン州のデトロイト市やオハイオ州のトレド市などの小都市では一般的だ。リンカーン土地政策研究所のロビン・ハック氏によると、近年では、こういった小都市ではコロナウイルスと関係なくオフィススペースの需要が一気に下がっている。

ニューヨークのようなオフィスビルの需要がまだまだある大都会では、オフィスビルを住居用に変える傾向になるかどうかは、パンデミック状態がいつまで続いて、会社側と社員がどのくらいテレワークの環境に慣れるか次第だ。

また、オフィスビルを住居用に変えるだけでは、ニューヨークの住居スペース不足を少し和らげるだけで、抜本的な解決には至らない。地主たちは、一般人が住めるようなアパートより、高級タワーマンションに変えた方が経済的に有利だと判断するかもしれないだろうとハック氏は述べた。

そして、今のパンデミックの影響で、本当にオフィスビルを住居用のビルに変える傾向になるかどうか懐疑的だ。

Center for an Urban Futureの常務、ジョナサン・ボールズ氏によると、パンデミックの前にニューヨークのオフィスの空室はほとんどなかった、さらにオフィスビルの数を減らしてしまうと、パンデミック収束後、中小企業が成長を目指すタイミングで、オフィスの家賃が上がってしまうかもしれない、そのような事態は避けるべきだと。

「明らかに、新型コロナウイルスの影響で仕事のスタイルは変わってきているが、これが長期的に続くかどうかはまだ不透明で、続かないことを前提にするべきだ。ニューヨークの経済は強い。一気にオフィスを減らすことは、慎重に考えるべきだ」と述べた。

会社は将来、社員がよりテレワークしやすい環境に変えていくかもしれないが、会社にとってテレワークは理想的な働き方ではないだろう。そして、オフィスビルの不動産業界より、コロナの前からピンチだった小売業界への影響は大きいはずだ。小売の販売方法はこれから大きく変わるだろうが、オフィスビルの空室率はそれほど上がらないだろう。

そしてThe Real Deal, CBREのCEOであるメアリー・アン・ティグ氏によると、パンデミックが終わると、会社員はオフィスに出勤する良さを改めて実感するだろう、それによりオフィスビルの需要が上がるかもしれない。

Durst Organizationのジョーダン・バロウィツ氏も同じような予測をしている。会社員は一刻も早くオフィスに戻りたがるかもしれないが、もしオフィスの需要が減るならば、原因は恐らく、会社が必要がないと判断したのではなく、ただの経済の悪化にすぎないだろう。

【参照】Could NY’s work from home moment fuel office-to-residential conversions?

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