香港の社会混乱、イギリスのEU離脱、米中間の貿易摩擦などの不安定な世界情勢の影響を受け、2019年は高級不動産市場にとっても不安定な1年となった。
英系不動産コンサルティング会社ナイトフランクの最新のレポート「Prime Global Forecast 2020」では、2020年の高級不動産市場の見通しがまとめられている。ナイトフランク社によるランキングは下記のとおり。(価格上昇率をもとにランキングされている。)
15.カナダ・バンクーバー
バンクーバーにおける高級住宅家格は、5%ほど下落することが予想されるが、下落率は緩やかになりつつある。在庫物件が少なくなり不動産市場規制が徐々に調整されているため、住宅市場は回復傾向を見せている。
14.アメリカ・ニューヨークシティ
ニューヨークシティの高級住宅価格は、低金利住宅ローンや雇用統計の強さなどから、3%の下落が予想されている。
13.アラブ首長国連邦・ドバイ
高級不動産価格は2%下落すると見られているが、2020年10月には国際博覧会の開催を控えており、ドバイの住宅市場にも好影響をもたらすことが期待されている。また地下鉄の延長などインフラ整備にも力を入れている。
12.インド・ムンバイ
昨年の景気後退や印紙税増税などの影響を受け、今年もバイヤーは「様子見」のスタンスを取ることが考えられる。不動産価格は、1%の下落が見込まれている。
11.香港
政治的混乱が続く香港では、価格はほぼ変わらず、高級住宅市場は引き続き停滞する見込みとなっている。2019年には、最も高級な住宅街である「ピーク」地区の豪華物件が数件売れたという。
10.イギリス・ロンドン
EU離脱に関する方向性がクリアになり、これまで様子見のスタンスをとっていたバイヤーが一気に動き出すことが考えられる。不動産価格については、1%の上昇が予想されている。
9.アメリカ・ロサンゼルス
高級住宅価格は、2%の上昇が予想されている。価格帯によって状況が異なり、200万ドル(約2億1,900万円)以下の物件の需要は増加し、200万~1,000万ドル(約10億9,600万円)の中価格帯の物件においては若干の価格上昇、1,000万ドル以上の物件の上昇率は緩やかになると見られている。
同率6.オーストラリア・メルボルン
低金利の影響で、高級住宅価格は3%の上昇が予想されている。オーストラリアの物件は、管理のしやすさなどから物件の規模縮小を考えるバイヤーからの人気が高いという。
同率6.シンガポール
シンガポールについては、混乱が続く香港から移り住む人々が増えていることなどから、高級住宅市場については3%の価格上昇が見込まれている。
同率6.スペイン・マドリード
海外バイヤーの増加などから、マドリードについても3%の上昇が見込まれている。
同率4.オーストラリア・シドニー
低金利、高級住宅の限定的な供給、路面電車(ライトレール)への投資などから、シドニーの住宅価格は4%の上昇が見込まれている。メルボルン同様、物件の規模縮小を考えるバイヤーからの需要が高まっている。
同率4.スイス・ジュネーブ
シドニー同様、低金利や交通インフラへの投資などから、住宅価格は4%の上昇が予想されている。
同率2.アメリカ・マイアミ
ニューヨークや、コネチカット、カリフォルニア、ニュージャージーなどでは税制改革が行われ、増税の打撃を受けた富裕層がマイアミへと移り住んでいることなどから、住宅価格は5%上昇すると見られている。
同率2.ドイツ・ベルリン
ベルリンの物件については国内外のバイヤーからの需要が高く、5%の価格上昇が見込まれている。
1フランス・パリ
パリについては、低金利、経済的安定、限定的な供給などから、今年7%の価格上昇が見込まれている。また2024年の夏季オリンピックやパリ首都圏の大規模都市再開発計画「グラン・パリ・プロジェクト(the Grand Paris Project)」なども注目を集めている。
【参照】How the world's top 15 luxury housing markets will perform in 2020
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