資産運用を始めてみたいけれど、副業に当てはまるのか気になる方もいるのではないでしょうか。副業が禁止されている企業で勤務している方や、そもそも法律で副業禁止の公務員の方は、資産運用を始めても大丈夫かという不安があります。
そこで、本記事では、資産運用が副業に見なされるのかどうかを解説します。初心者の方でも始められやすい資産運用向けの商品や、注意点についてもまとめているので参考にしてみましょう。
資産運用と副業の違い・定義
資産運用とは、「すでに保有している資産を運用し、資産の拡大を狙う」ことです。具体的には、普段の仕事で獲得した給与を元手にして、株式投資や投資信託、不動産といった資産に投資します。
一方、副業とは、「本来の仕事とは別に、労働の対価として報酬機会を得る」ことです。つまり、本業で収入を得ているなかで、ほかの仕事を介して副収入を確保している状態を意味します。
・資産運用:すでに保有している資産を運用して、資産を増やす
・副業:本業とは別の仕事に取り組み、労働の対価として報酬を獲得する
資産運用は副業として見なされにくい
一般的に、資産運用は副業として見なされにくいと言われています。企業ごとに異なりますが、就業規則において、副業の定義に資産運用の行為が当てはまらないためです。
もちろん、就業規則のなかに、「資産運用を副業と見なす」という記述があれば、資産運用も副業に該当することとなります。副業が禁止となっている企業で働いている方は、資産運用がどのような扱いになっているのかを確認しておきましょう。
公務員でも副業で資産運用は可能?
公務員は、「国家公務員法第103条と104条」と「地方公務員法第38条」に基づき、副業行為が禁止されています。サラリーマンのように副業を行うと、罰則を受ける可能性があります。
しかし、資産運用に関しては、規則を遵守すれば公務員でも可能となっています。
たとえば、不動産投資では、以下の条件を遵守すれば公務員でも運用が可能です。
・不動産投資の規模が5棟10室以下
・家賃収入が年500万円未満
・物件の管理を業務委託する
資産運用を副業で行うメリット
資産運用を副業感覚で始めることは、将来的なライフイベントの実現や老後資金の確保に適しています。サラリーマンや公務員の方が、資産運用を始めるメリットを紹介します。
初心者でも始められやすい
「資産運用」と聞くと難しいイメージを持つ方も多いかと思いますが、初心者でも始められやすいのがメリットです。
たとえば、投資信託は、自分で投資したい商品を選ぶだけで、運用自体はプロのファンドマネージャーが行います。もちろん、投資する商品の特徴や、リスクの対策方法などを学ぶ必要はあるものの、これまで資産運用を行ってこなかった方でも、副業感覚で始めやすいのがメリットです。
時間をかけずに資産運用を行える
商品によって異なりますが、資産運用は時間をかけずに行えるのも魅力の1つです。通常、副業として労働する場合、作業時間を確保しなければなりません。プライベートの時間を取られてしまうほか、体力や精神的な負担が強いられます。
一方、資産運用は、長期的な目線で運用する商品が多いため、購入してから売却するまで、数年、数十年といった期間そのままにしておくこともあります。短期的に利益を狙わない限り、頻繁に取引することもないので、本業の仕事に支障が出にくいと言えます。
将来的にアーリーリタイアや不労所得を狙える
元手の資金にもよりますが、定年退職前にアーリーリタイアや不労所得の実現を期待できます。たとえば、1000万円を元手に、3%・5%・7%の利回りにおけるシミュレーションを見てみましょう。
一定の利回りで運用した場合のシミュレーションではあるものの、結果次第では、20年後、30年後に資産を大幅に増やせる可能性があります。
※1000万円を元手に運用した場合(複利運用)
利回り | 1年後 | 5年後 | 10年後 | 20年後 | 30年後 |
---|---|---|---|---|---|
3% | 1030万円 | 1159万円 | 1343万円 | 1806万円 | 2427万円 |
5% | 1050万円 | 1276万円 | 1628万円 | 2653万円 | 4321万円 |
7% | 1070万円 | 1402万円 | 1967万円 | 3869万円 | 7612万円 |
資産運用の副業におすすめの投資商品
サラリーマンや公務員の方が資産運用を行う場合、本業に支障が出ないように、負担になりにくい商品への投資を推奨します。そこで、これから資産運用に取り組んでみたい方向けに、おすすめの商品を6つ紹介します。
株式投資
1つ目は株式投資です。株価が値上がりしたときに売却することで、キャピタルゲインを狙えるほか、一部の株式銘柄では定期的に配当という形でインカムゲインを期待できます。
一般的に、株式投資で収益を狙うためには過去の株価を分析し、割安な銘柄に投資することが重要となります。短期的な売買を繰り返さなければ、副業としても負担なく続けられます。
投資信託(インデックス投資)
投資信託は、ファンドマネージャーに資金を預けて、株式や債券などを運用する方法です。上記でも解説しましたが、自分自身で売買を行う必要がないので、本業に支障が出にくいのがメリットです。
また、投資信託は、複数の株式銘柄を組み合わせた商品や、新興国の株式を中心とした商品など、多種多様な商品から選べます。分散投資にも効果的であり、リスク軽減にもつながります。
国内・海外債券
債券は、国や自治体、企業などが、投資家から資金を借り入れるために発行する有価証券です。債券に記載されている利率をもとに収益を狙えるほか、満期を迎えた際に、額面の金額がそのまま投資家に償還されます。
先進国が発行する国債や、大手企業が発行する社債であれば、償還前に債務不履行になる可能性も低く、リスクを抑えながら運用できます。
外貨預金
外貨預金とは、その名前のとおり、外国の通貨を預金することです。日本国内でも銀行や証券会社といった金融機関を通じて、外貨専用の口座を開設できます。
為替変動による差益を狙えるほか、金利による収益を期待できます。金融機関ごとに金利が異なりますが、2022年9月現在で、米ドルで1ヶ月の定期預金を行う場合、三井住友銀行は0.01%、楽天銀行は0.4%、住信SBIネット銀行は1.1%と、高金利となっています(※1)。FXのように短期的に売買する必要もないので、本業がある方でも取り組みやすい資産運用方法です。
国内/海外REIT(リート)
REIT(リート)は、「Real Estate Investment Trust」の頭文字を取った資産運用方法で、「不動産投資信託」とも呼ばれています。投資信託の一種で、投資家から資金を集めて、商業施設、ビル、コンドミニアムなどの不動産に投資します。
投資信託同様に、投資家自身が運用する必要がないので、本業への影響を抑えられます。また、日本国内版の「J-REIT」は、運用収益の90%超を投資家に分配するなどの一定の条件を満たせば、法人税が課せられない仕組みとなっているため、高い利益を期待できます。
国内/海外不動産投資
不動産投資は、毎月入居者から支払われる家賃収入や、物件売却によるキャピタルゲインを得る資産運用方法です。副業として不動産投資を始める方のなかには、「物件の管理に手間が取られてしまうのではないか」と不安に感じる方も多いですが、管理会社に委託すれば、時間を取らずに行えます。なお、公務員は、不動産投資を行う条件として、管理会社への委託が義務付けられている点に注意が必要です。
また、最近では、東南アジアを中心とした海外不動産も注目されています。カンボジアやフィリピン、マレーシアなどは経済発展が目覚ましく、賃貸需要の拡大や不動産価格の上昇が期待できます。
たとえば、カンボジアの首都プノンペンにおける主要エリアの地価が2019年の1年で12%上昇しました(※2)。さらに、フィリピンの不動産価格の指標である「住宅用不動産価格指数」によると、2022年第1四半期において前年比5.6%上昇しており、長期的に不動産を運用し続けることで、キャピタルゲインを狙えます(※3)。
資産運用を副業で始める際の注意点
資産運用を副業として始めるにあたって、いくつかの注意点を確認しておきましょう。トラブルに発展しないように、どのようなことに注意するべきかを解説します。
業種によっては会社から株式投資を禁止にされている
業種によっては、会社から株式投資が禁止されている点に注意しましょう。金融商品を取り扱う一部の証券会社や、保険会社、銀行などでは、従業員による金融商品の取引を禁止としています。
これは、業務上で知り得た情報を活用して、株式投資で利益を獲得するインサイダー取引を防ぐものです。また、上場企業に務めている役員の方でも、自社株の売買や、取引先の株を売買する際にはインサイダー取引に該当しないよう十分に気をつけなければなりません。
サラリーマンの方でも確定申告が必要
株式投資や不動産投資などの利益が20万円以上発生した場合、サラリーマン・公務員の方でも確定申告が必要です。1つ1つの資産でどれくらい利益が発生しているのかを計算し、確定申告を済ませなければなりません。
一方で、資産運用における利益が20万円未満であれば、確定申告は不要です。ポートフォリオを作り、各資産の状況をしっかりと把握しましょう。
投資をしていることが会社にバレる可能性がある
資産運用は副業に該当しないものの、会社や同僚にバレたくないと感じている方も多いのではないでしょうか。しかし、資産運用で利益が発生していると、会社にバレる可能性が高まります。
会社にバレる原因は、前年の収入に応じて納税額が変動する「住民税」です。サラリーマンや公務員として働いている場合、勤務先の給与から住民税が天引きされるので、普段よりも高い住民税だと資産運用を行っていることがバレる恐れがあります。
資産運用成功に向けて専門家に相談する
資産運用を成功させるためにも、専門家への相談を忘れないようにしましょう。「資産運用を始めたばかりで、どの商品に投資をすればよいのか」、「リスクを回避する方法がわからない」といった悩みを持ち続けながら運用すると、思わぬ損失が発生する危険性があります。
また、専門家に相談する際には、信頼性を重視して選定することが大切です。資産運用におけるアドバイザーとしての経験・実績、ユーザーからの評判などを判断したうえで、相談してみてください。
まとめ
基本的に、資産運用が副業に見なされることはありません。公務員の方は、一定の規則が設けられていますが、条件を守れば資産運用を始められます。
ただし、サラリーマンや公務員として働いている以上、本業に支障が出ないような資産運用方法を調べる必要があります。各商品における専門家にも相談しながら、自身の目的・目標に適した運用方法を選ぶようにしましょう。
※1:各金融機関 外貨預金金利
三井住友銀行:外貨預金金利
楽天銀行:外貨預金金利
住信SBIネット銀行:外貨預金金利
※2:CBRE社「Phnom Penh, Q4 2019」
※3:フィリピン中央銀行「Residential Real Estate Prices Continue to Rise in Q1 2022」