日本人が海外不動産投資をできる国の中でも、カンボジアはとても有望な国の1つです。しかし、このような疑問を持つ人も多いのではないでしょうか。
・海外不動産投資って不動産会社にだまされたりしない?
・カンボジアで投資しても本当に入居者が入るのか?
・カンボジア不動産投資にはリスクはないのか?
これらの疑問について、BEYOND BORDERSマレーシア支社長の玉邑へ、SEKAI PROPERTYの編集部がインタビューしました。こちらの記事を一読いただければ、カンボジア不動産投資と他の国の不動産投資とを客観的に比較可能です。
カンボジア不動産の登記について
カンボジアでは1991年まで内戦が続いており、内戦中に不動産所有権に関する登記情報が処分されています。また、不動産取引のみの証明となるソフトタイトルと、不動産所有権の証明となるハードタイトルがあり、物件所有権を法的に主張するためにはハードタイトルが必要です。
1.物件の所有権を主張できないことはリスクと言えますが、ハードタイトルは外国人投資家向けに問題なく発行されるのでしょうか?
日本で言うところの国土交通省に該当する機関がカンボジアにあります。当該機関が昨年発表したところでは、国土の73.5%まで登記が進んでいます。確かに、国土の26.5%は未登記の状態です。しかし、弊社が取引をお手伝いした物件に関しては、ハードタイトルを受け取れなかったことがありません。また、発行された登記済証についても、発行日などの日付だけが手書きで記載されており、物件所有権の証明に関する情報は印字されています。カンボジア不動産の登記済証も、日本で発行される登記済証とほとんど変わりありません。なお、登記済証の発行までにかかる期間については、3ヶ月程度かかることが多くなっています。他国と比較してカンボジアが遅いということはありません。日本と比較すれば時間がかかることは否めませんが、安心してお取引いただけます。しかし、ハードタイトルとソフトタイトルとの違いがわからないまま投資を進めようとする投資家の方がいるのも事実です。タイトルの違いと、発行のスケジュールとをデベロッパーへ確認してからお取引されることをお勧めします。デベロッパーの中には、タイトルの違いや発行について説明しないまま取引を進めようとするところもありますので。
カンボジア不動産のデベロッパーについて
2.デベロッパーのお話が出たのですが、カンボジア不動産のデベロッパーにはどんな会社があるのでしょうか?例えば、マレーシアには、株式上場していて信頼できる会社もたくさんあります。しかし、カンボジアには不動産専業で株式上場している会社がありません。
そもそもカンボジアでは証券取引所が成熟していないので、業種にかかわらず株式上場している会社自体が少ないです。このため、カンボジア不動産のデベロッパーに関する信用性を、日本人が調べるのはとても難しいのが実態です。弊社では、現地財閥系の会社が手がけている物件や、海外の上場企業がカンボジアで開発している物件を扱っています。例えば、株式会社ラ・アトレという日系不動産会社のグループ企業に株式会社LAホールディングスというところがありまして、株式会社LAホールディングスはジャスダックに上場しています。弊社が販売しているのは、株式会社LAホールディングスがカンボジア現地で開発した物件や、中国の上場企業が手がけた物件に加え、現地の財閥系企業がプノンペンにあるイオンモールの前に建設している物件などです。デベロッパーが現地企業でも、財閥系の企業が手がける物件は問題なく完成しています。その一方で、対応が良くない企業も非常に多いので、デベロッパーの見極めを怠ると、リスクも上がるのがカンボジア不動産市場の実態です。実際のところ、弊社にカンボジア不動産を販売してほしいという相談はとてもたくさん来るのですが、大半をお断りしています。
カンボジアに進出している日系不動産企業について
3.ちなみに、カンボジア現地に進出している日系不動産企業は他にあるのでしょうか?
撤退済みの企業も含めてお話しすると、タマホームさん・東横INNさん・レオパレスさん・スターツさん・レーサムさんなどがカンボジアに進出されています。レーサムさんは日本人向けの賃貸マンションを建設・運営していますが、日本人入居者を中心に、非常に高い稼働率を維持しています。
カンボジア不動産投資の入居者について
4.賃貸付けのお話が出ましたが、カンボジア不動産投資ではどんな人が入居者ターゲットになるのでしょうか?
カンボジアはまだ発展途上の国であり、現地人の多くは住居に戸建を選びます。このため、カンボジアのコンドミニアムに住むのは、超富裕層のカンボジア人か外国人です。
5.東南アジアの不動産投資というと、外国人駐在員の入居を狙った物件も非常に多いと思うのですが、カンボジアには外国人駐在員はどの程度いるのでしょうか?
カンボジアに住んでいる日本人はあまり多くありません。しかし、他の国の人はとても多いです。例えば中国人は20万人くらいいます。ただ、プノンペンには本当にたくさんのコンドミニアムが建設されていて、品質が良くない物件も多いです。このため、中国人が20万人いると言っても、どんな物件でも入居者が入るわけではありません。中国人や台湾人の入居者は、設備のメーカーなどをとても気にします。設備関連がしっかりしている・立地が良いなど、物件の競争力がないと入居者を入れるのは難しいです。今後、プノンペンのコンドミニアムは供給過多になって来ると思うので、いい物件を買えば賃貸付けも難しくありませんが、低品質な物件は空室リスクが高くなると考えています。また、立地として、プノンペンの中でも、東京で言うところの都心5区に該当するエリアだけをお勧めしています。人口がとても多く、渋滞が絶えないようなエリアであれば、空室リスクも低いと考えているからです。新興国では特に、多くの人が首都を目指して集まってきます。首都の中でも立地が1番良いエリアであれば、仮に入居者付けに苦戦したとしても、家賃を下げれば入居者が入らないことはないというのが弊社の考え方です。
6.カンボジアでは、入居者の募集はどのように行われているのでしょうか?
日本で言うところのSUUMOやat Homeみたいなwebサイトが、カンボジアにもあります。そういった不動産ポータルサイトに広告を掲出するのが1つ目の方法です。ただ、不動産ポータルサイトを見ているのは主に外国人です。カンボジア人の場合は、不動産仲介会社に紹介された物件を検討するほか、入居者募集の看板を見て、物件の受付に直接「空きがないか?」と聞いてくることもあります。日本ではあまり考えられない話ですが、カンボジアでは看板の効果がとても大きいです。弊社では、看板を見て飛び込んできたお客様にいつでも内見をしていただけるよう、準備することも重視しています。また、物件受付のコンシェルジュを委託している会社と、内見で入居が決まったらコミッションを支払う契約を結ぶことも重要です。契約を結んでおけば、弊社が管理している住戸を優先的に案内してもらえます。
7.カンボジアでの賃貸管理において、ビヨンドボーダーズの現地スタッフの方はどのように関与されるのでしょうか?
建物の維持管理については、デベロッパーと取引している会社が受け持っています。弊社が担当するのは賃貸管理全般の部分です。例えばスターツさんなど日系の不動産会社を含め、現地の不動産会社から入居者を紹介してもらえるように営業しています。2021年1月時点で約2,000名の現地エージェントと連絡先を交換していまして、入居者募集物件が出た際には、チャットアプリでエージェントに物件情報を流せる体制を整えています。
8.現地スタッフの方は、より現場に近い立ち位置で活動されているのですね。
そうですね。今カンボジアのオフィスにいるのは、日本語が堪能なカンボジア人と英語が堪能なカンボジア人のスタッフです。彼らが、コロナ禍でも滞りなく鍵の引き渡しなど対応してくれています。日本からのバックアップとしては、カンボジアへ進出している日系企業の人事担当者の方々へ、「現地駐在員の方へ物件のご案内をお願いします」という営業をかけています。
9.現地にある既存の不動産会社が海外駐在員の受け皿となっているのは一般的ですが、ビヨンドボーダーズが自ら受け皿になろうとしているわけですね。
おっしゃる通りですね。カンボジア不動産投資では、空室リスクに関しては、そこまで心配する必要はないのでしょうか?通常時であれば、それほど心配はいりません。しかし、2021年時点ではコロナの影響が大きいので、入居が決まるまでに時間がかかることもあります。
カンボジア不動産投資の利回りについて
10.実際に現在稼働している物件では、利回りは何%ぐらい出ているのでしょうか?
弊社が把握している限りでは、低くて6%から最大で12%くらいです。利回り保証付きで流通している物件を見ても、6%〜7%を3年保証などのものが多いので、妥当な数字だと思っています。ただ、利回りが高い物件はクオリティや諸条件がよく、希少性クオリティもとても高いので、そういった物件じゃないと大きな利回りを狙うのは難しいですね。また、カンボジアの地方に行けば30%など狙える物件もありますが、リスクも高いと思います。単純に地方で物件価格が低いから利回りが上がっているわけです。そういった物件は後で売却が難しくなると思います。弊社としては、利回りだけに着目した物件選びはしていません。
11.海外不動産投資では、利回り保証付きの物件を購入したけれどお金が入ってこないというトラブルも多いのですが、利回り保証についてはどのようにお考えでしょうか?
弊社でも3年間6%保証などのカンボジア不動産を取り扱っていますが、その物件では、問題なく投資家の方々へお金が支払われています。また、10年後の物件買取保証付きといった物件も確かにあります。保証内容は契約書にも明記されるわけですが、本当に買取されるのか弊社では判断できません。弊社では、物件や現地の不動産会社について、50前後の項目を確認しながらデューデリジェンスをしています。全ての項目をクリアできていない場合は、取扱・取引を見送ります。利回りありきで取扱物件を選ぶのではなく、デューデリジェンスをクリアできる物件を取扱うのが、弊社の基本的な考え方です。
カンボジア不動産投資の物件売却について
12.カンボジア不動産投資では、出口戦略はどう考えておけば良いのでしょうか?
コロナが流行している直近ではインカムゲインが目減りするとしても、人口増加と経済発展による物件価格の上昇が予測されるという点で、カンボジア不動産投資は日本国内の不動産投資とは前提が異なります。都心の一等地に建っている物件を1,000万円前後の手頃な価格で買えるため、仮に空室続きで利益が出なくても、キャピタルゲインが出る可能性は高いです。このため、結果的には黒字が出る投資をしていただけると考えています。また、出口戦略に関しては、物件の売却先は外国人だけではありません。最近では現地カンボジア人の購買力も上がってきています。弊社が取り扱った中で、プノンペンでイオンモールの前に立地している「ペントハウス」という物件があるのですが、その物件は全体の約6割を現地人が購入しています。ペントハウスの平均価格は1,500万円程度ですが、買える現地人もいるわけです。今後現地人の購買力はさらに上がってくると考えられるので、物件の売却先としては、現地人も選択肢の1つと言えます。
13.都心物件を購入する現地人は投資用に購入しているのでしょうか?
ペントハウスに関しては、デベロッパーの担当者は半分が投資用で半分が実需と言っていました。なお、カンボジアの地方に住んでいる人が、子ども用に物件を買って、子どもが大学を卒業したタイミングなどで売却して値上がり益を狙うということもあるそうです。
14.カンボジアでは地方にも富裕層がいるのでしょうか?
カンボジアでは地方の公務員には富裕層も多いです。また、金利がとても高いので、金融業を営んでいるカンボジア人の中には高所得者もたくさんいます。そのほか、ポル・ポト政権が倒れてから地価がとても上がっているので、地主の人にも富裕層が多いです。東南アジアの富裕層は現物資産を好むので、カンボジア人の富裕層で不動産を買う人はたくさんいます。
カンボジア不動産投資の建物管理について
15.キャピタルゲインを狙うためには、常日頃の建物管理も必要だと思います。日本の分譲マンションでは、管理組合が共用部の管理を管理会社へ委託するのが一般的です。カンボジアではどのように建物管理をするのでしょうか?
弊社が取り扱っているコンドミニアムでは、管理規約が作成されているなど、共用部の管理も問題ありません。その一方で、弊社では取り扱っていませんが、管理の体制が整っていない物件も多いです。管理が行き届いていない物件には、築2〜3年しか経っていないのに、20〜30年経っているように見えるものもあります。カンボジア不動産投資で物件を検討するときには、ビルメンテナンスをどう計画しているのか確認することも重要です。
カンボジア不動産投資のリスクについて
16.カンボジア不動産投資で注意すべきリスクとしては、どんな点が挙げられますか?
先ほどデベロッパーのこともお話ししましたが、不動産会社の選定については要注意です。日系の会社と言っても、例えば、社長さん以外にはカンボジア人のインターン生がいるだけといった会社もあります。投資家の方としては、売主とのコミュニケーションに外国語が必要で、コミュニケーションを助けてもらう意味でも日系の会社を通して買うわけです。しかし、物件が売れたら、その日系の会社がいなくなってしまうというケースもあります。そうなると、投資家の方としては、その後のコミュニケーションや管理などをどうしたらいいかわからなくなってしまいます。少なくとも、組織としてある程度の規模感を持った不動産会社と取引する方が安全です。実際に「不動産会社がいなくなってしまって困っている」というご相談が弊社に来ることもありますので、まともな会社と取引する必要があると思います。
カンボジア不動産投資は資産分散先として捉えるほうが安全
17.他に何か気をつけるべき点はありますか?
弊社の主張として矛盾があるかもしれませんが、カンボジア不動産投資も、あくまでも資産分散先の1つとして捉えていただくのがいいと思っています。たまに、用意できる限りの資産を全てカンボジア不動産投資に投下しようとする投資家の方もいるのですが、そういった投資法はおすすめしません。すでに日本や他の海外で不動産投資の実績があって、資産分散の観点からカンボジアも検討するというぐらいのほうが安全だと思います。日本人が不動産投資をするのであれば、やはり、カンボジアよりも日本国内の方がリスクは小さいはずですから。
カンボジア不動産投資のローンについて
18.投資家の目線で見ると、ローンの利用可否は投資判断に大きく影響するのですが、カンボジア不動産投資で利用できるローンはあるのでしょうか?
残念ながら、2021年2月時点では、日本人の投資家がカンボジアの現地金融機関で利用できる住宅ローンなどはありません。弊社のお客様も、90%以上はキャッシュで物件ご購入いただいています。カンボジア不動産投資の支払いかたには、大きく分けて2つの方法があります。1つは、竣工前の物件を購入する場合に、竣工までの期間で分割払いをしていく方法です。しかし、これはただの分割払いなので、レバレッジを効かせる方法ではありません。一括で大きなお金を支払うのが難しいという場合に取れる選択肢です。もう1つ、株式などの金融資産を担保として、日本の金融機関から融資を受ける方法があります。金融資産がない場合は、抵当権がついていないもしくはローンの残債が少ない不動産を担保にすることも可能です。
19.金融資産や日本国内の不動産を担保にする場合は、投資先の国は問わないのでしょうか?
原則、どの国でも大丈夫です。ただ、ご自身が持つ何らかの資産を担保にしないと、カンボジア不動産投資でローンを使うのは難しいと思います。
まとめ
カンボジア不動産投資には、不動産会社の選び方や入居者募集などに関してリスクがあることも事実です。特に、入居者の募集については現地不動産マーケットの特徴をつかみ、戦略性を持って進めることが重要になります。
弊社では、厳しいチェックをクリアできる物件やデベロッパーだけを厳選してご案内しておりますので、海外不動産投資にご興味をお持ちの場合は、ぜひ1度ご相談ください。