マレーシアで暮らしていると1日5回流れる「アザーン」の号令を聞いたことがある方は多いのではないでしょうか?マレーシアではイスラム教、仏教、キリスト教、ヒンドゥー教などが信仰されています。その中でも、約60%はイスラム教と言われています。身近なようでよくわからないイスラム教について今回は掘り下げてみたいと思います。

イスラム教の女性は、肌や髪を見せてはいけない?!

イスラム教徒の服装と言えば、女性が頭にかぶっている布をみたことがあると思いますが、こちらはヒジャーブ(隔てるものという意味のアラビア語)マレーシアではトドゥン(tudung)とも呼び、女性の髪の毛を覆うものです。正方形や長方形、最近はターバン型など様々な色や柄があります。

イスラム教の女性は、基本的に血のつながりのある家族以外の男性の前では肌や髪を見せてはいけないので、ヒジャーブと長袖で身体のラインが見えにくいドレスを着用していることが多いです。マレーシアの民族衣装であるバジュクルンは、華やかなスタイルも多くカラフルでスタイリングも様々な物があります。

普段は、ジーンズにヒジャーブのラフなスタイルのマレーシア人もイードなど年中行事の時には、バジュクルンを着るという女性も多いです。イードは、年に2回ある、イスラームのお祭りのことです。断食明けに大祭のイードと犠牲祭のイードがあります。

ちなみに、男性も膝より上は見せてはいけない部分になっており、ショートパンツなどを履いている方はあまり見かけません。男性が着ている洋服をバジュムラユ(bajyu melayu)帽子のことをコピア(kopiah)やソンポ(songkok)と呼びます。民族衣装で腰に巻く布をサンピン(Sampin)といいとても色々な種類のカラーがあります。寝る前のリラックスした時に腰に巻くチェックの布があるのですが、これはサロン(sarung)といい、男性のパジャマのような感じです。

食べ物やレストランにあるハラールマークって?

街中で見かけるハラール(حلال)の文字、ハラールとはアラビア語で「許されたもの」という意味で食べ物以外にも使います。食べ物に使う場合には、イスラム教徒が口にしないもの(アルコール・豚肉(エキスや油も含む))が入っていないことを、マレーシアの認証団体で認めますよというマークなのですが、実際こちらのマークがなくても食べることはできます。

日本人にとって身近な食材である、みそや醤油など、アルコールが入っている場合は食べられませんが、アルコールが入っていないものは食べることができますので、マレーシアではアルコールが入っていない、ハラールマークの付いた調味料をお店て容易に見つけることができます。マレーシアの場合は、「もしかしたらアルコールや豚肉が入っているかもしれないので中をよく見てから買ってね。」という案内をスーパーなどで見かけます。とは言え、ハラールマークがなくても「Non Pork」や「Non Halal」と記載があるレストランもあり、アルコールは出しているけど豚肉は使っていないというお店もあります。

イスラム教のお祈りは1日5回もある!

朝日の出とともに聞こえてくるアザーン。朝早く、びっくりして目が覚めたという経験がある方もいらっしゃるのではないでしょうか?イスラム教徒は、1日5回の礼拝が義務付けられているのですがアザーンが鳴ると次のお祈りの時間帯に入ります。

祈る方角は、キブラといってサウジアラビアのメッカのある方向です。マレーシアのホテルなどで矢印が書いてある印を見たことがある方もいると思います。メッカの街には巡礼をするモスクがあり、そこには黒い布がかかった箱のような建物(カーバ神殿)があります。そこに向かって世界中の人々が祈ります。基本的に、日が昇る時間、午前・午後、日暮れの時間、夜の5回ありますが、旅人や病床にある人などは特例もあります。金曜日は、男性は、お昼の時間に集団礼拝に出ることが義務付けられており、シャワーを浴び、着替えをした後、仕事場や家の近くにあるモスクに参加をします。

金曜日にモスク近辺が混雑しているのは、こちらの影響もあるのかもしれません。

断食月のラマダーン

イスラム月の9番目(陰暦の月の暦)の月がラマダーン月となるので、西暦の数え方とは異なるのですが毎年少しずつずれて12か月に1度の断食月がやってきます。この月がくるとイスラム教徒は、日中飲食をしません。食べるだけでなく、飲むことも禁じられています。

日暮れになると一斉に飲食が解禁になるので、この時期になるとラマダーンのプロモーションなどをやっているレストランも出てきます。夜には、パサールマラムと呼ばれる夜市が各地で行われ、夕食を夜市で買って家族みんなで食べる家庭も多いです。この夜市は、マレーシアの名物で、飲み物から焼き鳥(サテ)、ご飯、スープやデザートまで沢山の屋台がひしめき合い日本のお祭りのような雰囲気があるので日本の方には懐かしさを感じる方もいるかもしれません。

夕食が終わり朝の礼拝の前は飲食は自由です。夜の間は自由に食べることができます。このラマダーンで大切な事は、欲を禁じて、飢えを感じることによって貧しい人の気持ちや心身の浄化をするということです。そのため、飲食以外にも、男女の性行為や悪口をいうこと、悪いことを行うことなども禁じられています。そして、ラマダーン時期が終わるといよいよ、1年に1度の大きなお祭り「イード」です。イードでは、近くのモスクに礼拝をした後家族や親せきの家を訪ねてご馳走を食べたり、子供たちにお年玉をあげたりなど日本のお正月のような雰囲気になります。

家族が大事で、結婚前のお付き合いは禁止??

マレーシアの方々とお付き合いすると家族ぐるみになることがあります。家族や親戚関係をとても大切にしているマレーシア人。基本的には、結婚前に男女がお付き合いをすることはイスラム教では禁じられているのでお付き合いする事になれば最初に家族に紹介をされることが多いと思います。家族の仲の良さは、それぞれの家族にもよりますが、毎日連絡を取り合い普段の生活やちょっとしたできごとなどを家族とシェアする事が多く、それは、イスラムの教えで「家族を大切にし、年長者を敬うこと年少者を愛すること」などがいわれているからかもしれません。

男女のお付き合いの禁止についてですが、マレー系の場合には結婚の際にも父親に該当する人の許可がなければ書面上でも婚姻することができない為、必ず女性側の父親に値する方の許可が必要となります。一見厳しいように思うかもしれませんが、女性を守る為という考え方もあります。

喜捨の義務とは?

イスラム教では、亡くなった時には生前の善行で天国に行くか地獄に行くか決まると言われています。ラマダーン月の後には、持っている財産の中から2.5%を困っている方に寄付するという義務があります。これは、ザカートと言って義務付けられていますが、その他にも困った人を助けたり、旅人を助けたり、病人をお見舞いしたりなど良いことに対してお金や行動で尽くすことが良きこととして推奨されています。

日本語でいうと喜んで捨てるという意味になりますが、こういった人を助けたりすることにお金を費やすことを喜びとするという意味は亡くなった時天国へ行くために、生きている間に良き善行を積むための貯金ということになるかもしれません。その他、イスラム教では金利が禁じられていることもあり、銀行もシャリーア(イスラム法に則った銀行)がマレーシアには沢山あります。イスラム銀行とも呼ばれ他の銀行と多少金融の法律が異なる部分があります。こうやって見ていくと、イスラム教徒の生活は服装や食べ物だけではなく生活全般に対して宗教が関わっていることがわかると思います。

(著者プロフィール)
東京都出身、イスラム教徒に改宗して約8年その後マレーシア人と結婚して約1年のマレーシア在住日本人ムスリム。

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