2020年にはいよいよ東京オリンピックが始まります。しかし、その後の国内不動産市場に関しては人口減少による不動産相場の下落が予想されるなど、ネガティブな情報も飛び交っています。一方、経済成長や人口増加の続く海外不動産には価格上昇などの期待が寄せられています。

この記事では、海外不動産投資を検討している方のために、海外不動産投資でも現在人気の高いマレーシア、カンボジア、タイ、アメリカの4カ国の不動産投資情報を詳しくご紹介しますので、参考にしてみてください。

1 マレーシア

マレーシアはロングステイ財団が調査する「日本人が住みたい国」として長らく1位を維持している国で、2019年の経済成長率の予測は4.3~4.8%と高く、今後も不動産価格の上昇が期待できる国のひとつです。

1-1 マレーシア不動産の特徴

マレーシアでは2019年1月1日以降、税制改革により100万リンギット(約2,515万円)を超える部分の資産価額に対する印紙税が3%から4%に引き上げられました(日本貿易振興機構「ジェトロ」より)。その影響を受けて、2019年8月現在では住宅価格上昇のペースは若干落ちているものの、堅調に伸びています。

マレーシアの住宅価格は、1991年に前年から25.5%(実質20.3%)上昇し、さらに1995年には前年から18.4%(実質14.4%)上昇しました。2008〜2009年頃は景気低迷期でしたが、首都クアラルンプールの住宅価格は2005〜2015年までで122%の上昇を見せました(インフレ調整後は73%)。2016年〜2018年にかけてのマレーシア全国の住宅価格は、年間平均で5.5%(インフレ調整後で3.6%)上昇しています(Global Property Guideより)。

マレーシアでは高級住宅の供給過剰を回避するために、ハイエンド物件の開発承認を凍結する決定を2017年11月に行っています。これは100万リンギット(約2,515万円)を超える物件が対象となり、その代わりに供給不足となっている30万リンギット(約755万円)未満の住宅開発を推進しています。

1-2 マレーシア不動産の価格帯

マレーシアの不動産価格のデータは以下のようになります。価格は平均値(カッコ内は中間値)、単位はリンギット(RM)です(※2019年第1四半期 マレーシア財務省「JPPH」より)。


平均価格

中間価格

マレーシア全体

339,780RM(約855万円)

268,000RM(約674万円)

クアラルンプール

643,351RM(約1,616万円)

480,000RM(約1,206万円)

セランゴール

450,517RM(約1,134万円)

360,000RM(約906万円)

ラブアン

405,000RM(約1,018万円)

335,000RM(約842万円)

サバ

372,401RM(約936万円)

300,000RM(約754万円)

ペナン

359,750RM(約905万円)

290,000RM(約730万円)

ジョホール

358,787RM(約903万円)

340,000RM(約855万円)

サラワク

333,138RM(約838万円)

300,000RM(約755万円)

ヌグリ・スンビラン

296,883RM(約746万円)

220,000RM(約553万円)

1-3 マレーシア不動産の利回り

マレーシアの不動産に関するデータを公開しているマレーシア国家不動産情報センター(Napic)によると、首都クアラルンプールの高級住宅街「モントキアラ」やショッピングセンターでも人気の「ハタマス」は、外国人や駐在員に人気の高いエリアということもあり、賃貸利回り6~8%台と高い数値になっています。特に高い利回りが期待できるのは、次のような条件を備えたエリアです。

  • インターナショナルスクールが近い
  • 商業施設へのアクセスが良い
  • 学校、飲食店、ショッピングモール、病院などの施設を備えている

ただし、高級コンドミニアムはメンテナンス費用が高くなる傾向があるため、立地は良くても実質利回りが低下する可能性があります。クアラルンプール市内で物件を所有する投資家が利益確定のための売却を進めていることから、不動産価格が下落することにより相対的に利回りが上昇するケースもあります。

2 カンボジア

カンボジアは米ドル決済ができる点で不動産投資を行いやすい国です。経済成長も好調なので、不動産相場の上昇も期待できるため人気があります。

2-1 カンボジア不動産の特徴

カンボジアは過去14年間の経済成長率で年平均7%を維持しています。首都プノンペンにおける賃貸利回りは東南アジアで3番目の高さでありながら、不動産価格は東南アジアで最も低いランクに位置するなど、投資効率が高い国となります(B2B CAMBODiAより)。

新興国の中では都市開発が十分に進んでいませんが、生産年齢は若く、今後も急速な発展が期待できるため世界中から投資マネーを集めており、不動産相場の上昇が期待されています。

2-2 カンボジア不動産の価格帯

ASIA PROPERTY AWARDSのレポートによると、プノンペンでの手頃な価格のコンドミニアムは、1㎡あたり平均1,473米ドル(約15.6万円)となっています(2019年5月時点)。

またプノンペンでも商業中心地「ダウン・ペン」や別荘の多い「トゥール・コーク」などを含むエリアの場合、1㎡当たり5,000ドル(約53万円)近くとなり、そのほか条件の良いエリアは2,000~3,000ドルになります(米情報サービス会社「Just Landed」より)。

2-3 カンボジア不動産の利回り

プノンペンにおける平均賃貸利回りは6~7%です(THE EDGE MARKETより)。高級物件であればさらに高い数値になりますが、2014年から2016年にかけて10~12%であったことを考えると、賃貸利回りは低下傾向にあります。

コンドミニアムの供給数が増加していることから、賃貸需要を心配する向きもあります。しかしカンボジアでの駐在員雇用市場が活性化しているため、エリアを絞れば高利回りが期待できます。

3 タイ

東南アジアでも随一の工業国であるタイには、世界中から投資マネーが流入しています。バンコクは観光都市である一方で、電子機器や自動車の輸出でタイの経済成長を支えています。

3-1 タイ不動産の特徴

タイでの不動産投資は、プレビルドのコンドミニアムを購入するのが一般的です。完成まで3~5年かかるコンドミニアムを、建設計画の段階で安く購入し、完成に近づいたら転売して利益を出すという仕組みです。

バンコクにおけるBTS(スカイトレイン)の駅近くのコンドミニアムは、相当に価格が高くなっています。地下鉄のMRT線沿線もコンドミニアムの相場は高く、人気があります。人気のエリアはルンピニ公園周辺、シーロム地区やサトーン地区といった金融エリア、スクンビット周辺です。

3-2 タイ不動産の価格帯

タイの平米あたりコンドミニアム価格(2018年第3四半期)は物件のグレード別に次のようになります。

エントリー

70,000バーツ(約23万円)未満

ミッドレンジレベル

70,000~89,999バーツ(約23〜約30万円)

アッパーミッドレンジ

90,000~119,999バーツ(約30〜約41万円)

ハイエンド

120,000~199,999バーツ(約41〜約68万円)

ラグジュアリー

200,000~299,999バーツ(約68〜約102万円)

スーパーラグジュアリー

300,000バーツ(約102万円)以上

(外国人向け生活情報サービスメディアの「expatden」より)

BTS(スカイトレイン)の路線から離れた標準的なコンドミニアムの価格は、1ベッドルーム22㎡でおよそ100万バーツ(約340万円)となっています。バンコク中心部のBTS路線から数百メートル以内の立地であれば、物件にもよりますが同じ広さのコンドミニアムは250万バーツ(約850万円)を超えます。

3-3 タイ不動産の利回り

バンコク中心部の賃貸利回りは4~5%となっています(SANSIRIより)。数値としてはさほど高くないものの、賃貸需要は多いので、安定してコンドミニアムを保有することもできます。バンコク北部にかけては、賃貸利回り6~8%が期待できます。中心部と比べると不動産相場が安いのが理由です。

しかし今後は、格安航空会社エアアジアが移転したドンムアン空港の刷新やバンスー中央駅周辺の開発により、バンコク北部の賃貸需要は増加することが見込まれています。

4 アメリカ

経済成長を背景に不動産相場も上昇を続けるアメリカは、不動産投資先としては安定感もあり、人気の高い国です。

4-1 アメリカ不動産の特徴

アメリカは人口増加を背景に不動産相場も堅調に推移しています。新築よりも中古物件が多く、中古物件市場が確立されていることも特徴です。

アメリカの不動産は外国人でも土地を保有できる点が東南アジアとは異なります。また中古物件でも建物の価値が高く評価されるため、スピード償却による節税目的での投資法も人気です。

4-2 アメリカ不動産の価格帯

不動産ポータルサイトのzillowによると、アメリカ不動産の物件価格中央値は294,000ドル(約3,116万円)です。主な州の物件価格中央値は以下のようになります(2019年6月30日時点)。

ワシントン州

334,000ドル(約3,517万円)

コロラド州

332,600ドル(約3,502万円)

オレゴン州

309,400ドル(約3,258万円)

ネバダ州

237,500ドル(約2,501万円)

モンタナ州

201,500ドル(約2,122万円)

アイダホ州

189,800ドル(約1,350万円)


4-3 アメリカ不動産の利回り

アメリカの平均年間賃貸利回りは、432郡で8.8%となっています(WORLD PROPERTY JOURNALより。2019年3月発表による)。利回りが高いエリアは、ジョージア州ビブ郡の21.9%、ニュージャージー州カンバーランドの21.2%、ミシガン州ウェイン郡の17.1%などがあります。

一方、利回りが低いエリアとしては、カリフォルニア州サンフランシスコの3.7%やニューヨーク州ブルックリンの4.3%などがあります。

5 海外不動産投資の注意点

日本とは異なる事情の海外不動産投資で注意しておきたいポイントをご紹介します。

5-1 現地ローンの金利

低金利の日本ではローン金利も低いのですが、経済成長が続く国の金利はいずれも高い点に注意しましょう。日本のおもな金融機関では、海外の不動産を購入するために利用できる住宅ローンはありません。

国内の所有不動産を担保にフリーローンを利用する方法もありますが、対応する金融機関は多くありません。だからと言って高金利の現地ローンを安易に利用すると、利益が出なくなる場合もあるため、資金計画はしっかりと立てるようにしましょう。

5-2 為替差損

海外不動産を売買する際に注意したいのが「為替」です。購入時と売却時の物件価格が同じでも、円高に進んでいると為替差損が発生します。たとえば1ドル=110円で購入したものを、同じ金額で1ドル=100円で売却した場合、1ドルあたり10円の為替差損が発生します。10万ドルであれば100万円の損失に膨らみます。

為替相場がどのように動くのかを予測するのは困難ですが、これから日本が金利を引き上げてアメリカが利下げに向かう場合、円高に大きく振れる可能性もあります。物件を購入するには良いタイミングとも言えますが、売却時には為替のチェックが欠かせないでしょう。

5-3 物件管理

海外不動産投資では、賃貸や物件管理をどこの会社に任せるべきかという課題があります。時差の問題もあるため、連絡がスムーズに行えるかどうか、管理会社選びには注意を要します。

特に東南アジアは日本のような管理会社という業者が十分にありません。国によっては、賃借人募集をしていない管理会社もあり、賃借人が物件を管理する会社に直接足を運ばなければならないケースもあります。

できれば日系の不動産会社で、現地に支社があるところを選ぶのが良いでしょう。すぐに連絡が取れること、現地の様子を適宜報告してもらえることを条件に、管理会社を探すようにしましょう。

6 まとめ

東南アジアではすでに多くの投資家が資金を投入し、コンドミニアムを購入しています。一部では外国人投資家や駐在員を対象とした物件が過剰供給状態にありますが、エリアを絞れば利回りや今後の値上がりも期待できます。

アメリカは中国との貿易戦争が懸念材料で、今後の経済動向にも注目が集まりますが、不動産市場は変わらずに堅調です。ただし管理面では日本とは事情が異なることもあるので、事前に情報収集を十分に行って決めるようにしましょう。