国内不動産投資に少子高齢化や人口減少によるリスクがあるように、海外不動産投資には国際経済の失速や為替によるリスクなどに注意する必要があります。

この記事では、海外不動産投資のリスク・注意点、失敗事例を先進国と新興国別に詳しくご紹介しますので、海外不動産投資に興味がある方は参考にしてみてください。

1 海外不動産投資の5つのリスク

海外不動産投資は、将来の資産形成や節税対策、移住目的などで注目を集めていますが、日本の不動産投資事情とは異なる様々なリスクや注意点があります。

1-1 未完成リスク

日本の不動産投資ではあまり考えられませんが、海外不動産には物件が完成しないリスクがあります。特に東南アジアの新興国における新築のコンドミニアム(分譲マンションや宿泊施設のこと)を購入する際に起こり得ます。

東南アジアのコンドミニアムは、値上がりが期待できることで人気が高く、その値上がりの仕組みは建設完成前に販売する「プレビルド」方式にあります。日本でも建設前の段階で新築マンションの売買契約を結ぶことはでき、頭金も支払えますが、実際にローンを組んで残金を支払うのは、マンションが完成して引き渡しができる状態になってからです。

一方、東南アジアのコンドミニアムは、建設前に売買契約を結んだ段階で支払いが始まります。一括で購入金額を支払うことで、本来デベロッパーが売り出す価格よりも安い価格で取得できるわけです。これがプレビルド物件を購入するメリットであり、完成後に値上げしてキャピタルゲイン(=売却益)を得やすい理由です。

ただし、プレビルド物件の購入で問題になるのが、「デベロッパーはプレビルド販売によって得たお金をコンドミニアム建設の資金に充てる」という点です。

つまりプレビルド販売での売れ行きが悪ければ、当初予定していた建設費用を工面できなくなり、その結果、工事が中断して建設がストップし、購入したコンドミニアムの引き渡しがされない可能性もあります。

海外不動産投資では未完成リスクを避けるために、建設・開発を手がけるデベロッパーの信用調査も必要になります。過去にどのような物件を手がけた実績があるのか、未完成で終わった取引はないかなどを調べることが大切です。

1-2 空室・売却リスク

国内の不動産投資でも空室リスクや売却リスクはあります。特に都市部から離れた不動産需要が少ない地方都市では、借り手がつかず買い手もつかない不動産は増えつつあります。一方、人口増加が続く東南アジアなら借り手もすぐ見つかるように思えますが、落とし穴もあります。

そもそも外国人が投資目的で購入するコンドミニアムの多くは、都市部で建設される新築です(エリアや物件にもよります)。販売価格は、先進国と比べれば安いと言えますが、現地の物価と比較すれば高額です。そのため賃借人のターゲットとなるのは、高額な家賃を支払える外国人もしくは駐在員などに限られます。

外国人の投資家に人気のあるエリアとなれば、購入意欲を見込んで大量のコンドミニアムを建設しています。それに対して外国人の駐在員などは急激に増えるわけではありません。新規に建設されるコンドミニアムの数に見合う駐在員が居なければ、賃借人を探すのも難しくなります。場合によっては家賃を下げざるを得ないときもあります。

投資用物件の価値は賃貸利回りで大きく左右されます。賃借人が付きにくい物件となれば家賃収入も見込めず、利回りも期待できません。そうなると、キャピタルゲインが狙えるほどの価格で転売するのも難しくなります。

東南アジアの一部では経済成長により所得が増え、中間層から富裕層へシフトする割合も伸びていますが、それ以上に新築コンドミニアムの建設ラッシュが続くようなエリアでは、空室リスクや売却リスクにも警戒する必要があります。

1-3 為替リスク

海外不動産を購入する際の決済は、現地の通貨で行うことになります。なお、為替相場は常に動いており、現地通貨と日本円とのレートも変動するため、為替リスクが常に発生します。

購入時よりも支払い時のほうが円高になれば、それだけ少ない日本円で現地通貨を調達できます。逆に転売する時は円安のほうが得します。同じ外貨で多くの日本円に換金できるからです。しかし、為替相場はそのように都合良く動いてはくれません。

東南アジアの新興国の経済発展が続く限りは、対円で現地通貨の上昇傾向は続くと見られますが、長く続けば売却時には為替差損を生み出すことになります。物件を購入時より高く売却できたとしても、為替差損によって損失が出る可能性もある点に注意が必要です。

1-4 政治リスク

経済成長を続ける新興国には世界の投資マネーが流入しており、コンドミニアム相場を押し上げています。一方で経済成長はインフレ(物価が上昇すること)を引き起こし、また外貨獲得のために新興国では金利の引き上げを続けています。

世界の投資家は高い利回りの債権も購入していますが、あくまで経済成長が続くことを見込んでのことです。しかし、政権交代が起こりやすい新興国で、あるときに体制が大きく変われば、国内経済にも影響が及ぶ可能性もあります。

例えば、政府が発行する国債は信用を失うことで投げ売りが始まり、債権価格の下落とともに金利は上昇します。債権利回りの上昇は住宅ローンの金利上昇にもつながり、住宅ローン申請が減少することで住宅相場も下落に向かいます。輸入品の値上げによるインフレは国民の生活を圧迫し、現地通貨も下落すればさらなる景気の悪化を引き起こす可能性もあります。

経済成長が失速すれば、世界の投資マネーは新興国から引き上げられます。すると不動産市場には世界の投資マネーは回らなくなり、すでに購入しているコンドミニアムは売却しづらくなります。

新興国は、先進国と比べて政治体制や経済が安定していません。突然の政権交代による経済への影響が生じれば、不動産市場にも大きな影響を与える可能性があることにも注意が必要です。

1-5 先進国の経済失速リスク

アメリカ不動産投資は節税効果の高さで人気があります。しかし米国リート(不動産投資信託)は、2019年4月、上昇を続ける株式市場に対して利益確定の売りが増えたため、2019年に入ってから初めて下落しました(ニッセイレポートより)。

米中の貿易摩擦も予断を許さない状況にあり、今後の経済減速に備えた利下げも予測される中で、上昇を続けてきた不動産市場も今後は下げに向かう可能性もあります。人口増加と堅調な経済成長が続いた先進国の不動産投資では、このような経済失速リスクに注意が必要です。

2 海外不動産投資の失敗事例(先進国編)

先進国における海外不動産投資の失敗事例を見ていきます。

2-1 売却時の失敗事例

不動産投資のスキームは国によって異なります。新興国なら賃貸収入によるインカムゲインよりも短期売却のキャピタルゲイン狙いが多くなります。一方、アメリカのような先進国の場合、インカムゲインもキャピタルゲインも見込めます。

しかし日本の不動産投資と同じ感覚で行うと失敗することがあります。アメリカの不動産は資産価値が高いため、減価償却による節税効果も高いことが知られています。ただし、これは建物をしっかりメンテナンスしているからであって、管理を管理会社に任せたままでメンテナンスをしないという事例も見受けられます。

その結果、売却する際に買い手から提示された金額が思った以上に低く、値下げせざるを得なかったというケースは少なくありません。アメリカでは売り手の瑕疵担保責任は問われないため、買い手が業者に依頼して購入希望物件を徹底的にチェックします。このとき、メンテナンス不足による価値の低下を指摘されることもあります。

このほか、賃貸に出す物件の場合、オーナーが自由にメンテナンスできないという事情もあるなど、先進国の不動産投資は資産価値の維持・向上に常に気を配る必要があります。

2-2 減価償却の盲点

先進国の不動産は土地に対する建物価格の比率が高く、日本のように築年数の経過によって建物の価値が大きく落ちないため、減価償却費を多く計上できるというメリットがあります。しかし、売却時には物件の購入価額を引き下げ、譲渡益が増えて支払う税金が高額になる場合もあります。

なかには日本での課税所得がさほど多くない方が節税効果以上の不動産譲渡所得税を支払って損したというケースもあります。基本的に先進国の節税目的での不動産投資は、高額所得者が行うものであるということに注意が必要です。

2-3 為替差損により大きな損失も

海外不動産投資は為替の影響を受けますが、為替相場の動向を掴むのは難しく、不動産の売買のタイミングにうまく合わせるのは困難です。

為替差損によって大きな損失を出したケースとして、2015年頃にアメリカ不動産を購入してすぐに売却した例が挙げられます。2012〜2016年にかけてドルに対して大きく円安に振れ、ピーク時は1ドル125円台となりましたが、以降は円高に転じています。2016年には1ドル100円を割り込むこともあり、その後は1ドル110円あたりに落ち着いています。

2015年といえば、アメリカの住宅相場は大きく上昇している時期です。その流れを見てアメリカ不動産を購入した場合、購入時1ドル120円であれば2016年には1割程度減少していることになります。購入時20万ドル(約2,400万円)の物件なら売却時に円に換算すると約2200万円にしかならず、200万円程度の損をした計算になります。

このように円安がピークの時に海外不動産を購入し、円高のときに売却すると大きな損失を出すケースも考えられます。

3 海外不動産投資の失敗事例(新興国編)

次に新興国で見られる不動産投資の失敗事例をご紹介します。

3-1 転売できずに支払い不能に

新興国のコンドミニアム投資でよくある失敗事例は、支払いができなくなって物件を手放すケースです。プレビルド販売のコンドミニアムを購入する場合、基本的には現金で購入しますが、まとまった資金を用意できない方もいるでしょう。

ただし、日本の不動産を購入する感覚で頭金を支払って高い金利のローンを組み、コンドミニアムが完成したら転売してローンを一括で支払うというスキームには注意が必要です。新興国の不動産事情は日本とは異なり、コンドミニアム建設は計画通りに進むとは限りません。

契約書にも記載されていますが、完成時期はかなりアバウトに設定されています。完成が遅れればローンの支払いも増え、賃借人も付けられないため負担は大きくなっていきます。完成しても登記に時間がかかることもよくあります。登記が行われなければ売却はできません。

さらに同じコンドミニアムでほかのオーナーも一斉に売却することになれば、今度は買い手がつかずに保有期間だけが長引きます。最悪、物件も売れずローンの返済負担も増して維持できなくなるという可能性もあるわけです。

3-2 想定した利回りが得られない

新興国のコンドミニアムを賃貸運用するのは簡単ではありません。賃貸マーケット自体が確立されていないことや、賃貸管理をしっかりと行える業者を探すのが難しいなど、様々な事情があるからです。

コンドミニアムを建設するデベロッパーが管理をするケースもありますが、デベロッパーに任せて失敗したという事例もあります。当初は高い利回りとなる賃料設定で賃借人を付けるものの、退去したあとの賃貸付けがうまくいかずに利回りが低下し、当初予定していた資金計画通りに返済ができなくなったというケースもあります。

新興国のコンドミニアムを管理する会社は、日系の不動産会社に依頼して任せるなど、信頼できるパートナーの確保がポイントになります。

4 まとめ

一見メリットが多いように見える海外不動産投資にもリスクや注意点はあります。日本とは異なる商習慣や為替リスクなど、国内不動産投資には無い危険が潜んでいることもあります。しかし、注意点や想定されるリスクを事前に学び、対策を用意しておけば、海外不動産も上手に運用することは可能です。

これから海外不動産投資を検討する際は、この記事を参考に海外不動産について情報収集をしてみてください。

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