かつて、「アジア最後のフロンティア」と高い注目を集めていたミャンマーですが、政治的な混乱が生じたことで経済活動に影響が出ています。不動産市場も例外ではなく、2021年のクーデター前後に大きな変化がありました。

そこで、ミャンマーへの不動産投資を検討している方や、ミャンマーの不動産市場が気になる方向けに、最新の不動産情報を解説します。ミャンマーの不動産は今後伸びるのかどうか、最新情報を踏まえたうえで考えていきましょう。

ミャンマーの不動産最新情報(2021年のクーデター後)

ニュースでも報じられたとおり、2021年にミャンマーではクーデターが発生しました。国民民主連盟(NLD)から軍事政権に逆戻りした結果、ミャンマーの不動産にも大きな影響が出ています。

不動産販売はクーデター発生後に30%減少

2021年にミャンマーでクーデターが発生して以降、不動産販売は約30%も減少、賃貸についても約60%減少したとの声もあり、ミャンマーの不動産市場に多大な影響を与える結果となりました。

駐在員帰任に伴い家賃収入が期待できにくい

民主政権から軍事政権に移行したことを受け、日系企業のなかにはミャンマーに駐在する従業員を日本に帰任させる動きもあります。ミャンマーに現地法人を置く建設企業や製造企業、物流企業など多方面の業界でミャンマー撤退の動きが高まりました。

結果として、ミャンマーに駐在する日本人が減少し、家賃収入を得ること自体が難しい状況です。また、外資企業の徹底が進むなかで、ミャンマーの経済発展も停滞する可能性があります。

不動産に関する法整備が進んでいる途中

発展途上国であることや、政情不安ということもあり、不動産に関する法整備が他国と比較して進んでいません。2020年の情報によると、不動産サービス法と呼ばれる「不動産仲介業者に必要な技術や機能、義務、説明責任、仲介業者・購入者・販売者それぞれの権利」を盛り込んだ法律が制定される予定でした。しかし、2020年の時点では、未制定の状況です。

一方で、のちほど解説しますが、ミャンマーには、外国人向けにコンドミニアムの購入規制をまとめた「コンドミニアム法」が存在します。ミャンマーの不動産を購入する際には、現時点で有効な法律を確認することが重要となります。

ミャンマーの不動産投資で注意すること

ミャンマーの不動産投資は、情報が入りにくいということから多くの注意点があります。今後、ミャンマーでの不動産購入を検討している方は、本項の注意点を確認しておくようにしましょう。

2018年よりコンドミニアムの所有が可能に

2018年より、外国人でもミャンマー国内の不動産を購入することが可能となりました。それまでは、外国人の不動産購入が禁止されていましたが、2016年に制定されたコンドミニアム法に基づき、外国人が安心してコンドミニアムを購入できます。

コンドミニアム法により売買の制限がある

2016年に制定されたコンドミニアム法ですが、外国人の不動産売買に制限が設けられています。外国人がコンドミニアムを購入する際に、「6階以上の建物」かつ、「各階で40%までの購入」のみ認められるというものです。

外国人がミャンマーのコンドミニアムを売買する際の主な条件

・コンドミニアム法に基づき建てられた6階建て以上の高層住宅

・各階で40%までの購入

外国人による土地の購入は不可

外国人でも不動産の購入が可能な一方、土地の購入に制限がある点に注意が必要です。ミャンマー連邦共和国の憲法には、「すべての土地は国家に帰属すると規定されており、個人や企業が土地を所有することは認められていない」という旨があります。つまり、外国人の名義や企業の名義などでミャンマーの土地を保有することはできません。

各種税金が発生する

ミャンマーの不動産売買でキャピタルゲインを狙いたい方は、税金にも注意しましょう。不動産に関する主な税金に、「キャピタルゲイン税」、「印紙税」、「賃貸借契約書の印紙税」の3つが挙げられます。なお、ミャンマーと日本は租税条約を結んでいないため、外国税額控除が適用されず、二重課税される可能性があります。詳しくは、税理士までご相談ください。

・キャピタルゲイン税

キャピタルゲイン税とは、不動産の売却益を指します。ミャンマー国内では、取引額が1,000万チャット(約72万円)を超える場合にのみ、10%の税率で課税されることとなります。ミャンマー居住者・非居住者に関わらず、キャピタルゲイン税を納めなければなりません。

・印紙税

次に、印紙税は、ミャンマー印紙税法に基づき、不動産譲渡を含み、サービス契約やリース契約等、一定の課税文書について印紙税を納付する必要があります。不動産譲渡に関する契約書の場合、契約金額の3%が課されるほか、「ヤンゴン、マンダレー、ネピドー」に所在する不動産については、追加で2%の印紙税が必要です。

・賃貸借契約書の印紙税

最後に、賃貸借契約書の印紙税は、「1年以上3年以下の賃貸借契約で、年平均賃貸料の0.5%」、「3年超過の賃貸借契約で、年平均賃貸料の2%」です。(※1)

ミャンマーの不動産が伸びにくい理由

ミャンマーの不動産は、今後成長する可能性が低い状況にあります。どのような理由から、ミャンマーの不動産が伸びにくいのかを解説します。

外国人がミャンマーの不動産情報を入手しにくい

1つ目の理由は、外国人がミャンマーの不動産情報を入手しにくいことが挙げられます。これは、ミャンマーの不動産を扱っている日系企業が少ないことや、不動産情報や法律の内容が現地語(ビルマ語)で発信されることなどが原因です。

また、クーデター後は、ミャンマー国内で情報統制も行われており、不動産の領域に限らず、ミャンマーの正確な情報を得にくい状況が続いています。今後、ミャンマーの不動産を購入するうえで、情報不足が懸念点となります。

政治的な不安定要素がある

冒頭でも解説したとおり、2021年にミャンマー国内でクーデターが発生しました。アウンサンスーチー氏が率いる国民民主連盟(NLD)から、軍事政権に移行し、ミャンマー国内でも大きな混乱を招いています。

従来の国民民主連盟時代は、積極的に海外からの直接投資を呼び込んでいましたが、軍事政権に切り替わったことを受けて、投資額が激減しました。JETROの情報によると、2021・2022年度(ミャンマーの会計年度は10月~9月)における第1四半期(2021年10~12月)の外国直接投資額は、前年同期比29.5%減の約2億4,590万2,000ドルでした。

新型コロナウイルス感染拡大前の2019・2020年度第1四半期の11億6,423万3,000ドルと比較しても、78.9%の減少です。(※2)

軍事政権が今後も続くとなると、外資系企業からの投資が減少し、不動産開発にも影響を及ぼす可能性があります。

将来的なミャンマーの経済成長が不透明

ミャンマーは、「アジア最後のフロンティア」とも呼ばれていたように、今後の経済発展が期待されていた国でした。1987年に国連から「最貧民国」と指定を受け、アジア通貨危機後も対外開放を続けた結果、2000年代に成長率10%を記録しました。(※ミャンマーの公式発表ではあるものの、信頼性に疑問が持たれている)(※3)

しかし、2021年のクーデターで軍事政権に移行したことで、ミャンマー経済が1980年代まで逆戻りする可能性が高まっています。すでに、世界銀行の「ミャンマー経済モニター」では、2021・2022年度の実質GDP成長率が前年度比1%になるとの予測を発表しました。同じ東南アジアのタイやマレーシア、フィリピン、カンボジアなどでは、新型コロナウイルス対策規制も緩和し、GDP成長率も上向きに動いています。(※4)

ミャンマーでも、新型コロナウイルスの感染も一段落し、経済活動が戻りつつある一方で、治安の悪化や、インフラのコスト高、投資意欲の減少などが経済に影響を与えています。将来的な経済成長が不透明な状態が続いており、不動産投資に関しても明るい兆しが見えにくいのが現状です。

それでもミャンマーで不動産投資をするならヤンゴンの開発エリアがおすすめ

ヤンゴン市内で不動産を購入するにあたって、エリアの選択が重要となります。将来的な不動産価格上昇を狙うためにも、次の3つのエリアに注目してみてください。

1.ダウンタウンエリア

ダウンタウンエリアは、ヤンゴン市内の南部のエリアで、市役所をはじめとする行政機関が集まる場所です。日系企業が建設したSakura Tower(サクラタワー)は、ヤンゴン市内におけるビジネスの中心地でもあり、外資系企業も入居しています。ダウンタウン北部の「ヨーミンジー通り」は、外国人に人気のコンドミニアムがあります。

2.ヤンキンエリア

ヤンゴン市内の中央に位置するヤンキンエリアは、高級コンドミニアムが立ち並ぶエリアです。「ミャンマープラザ」や、「ジャンクション・スクエア」といった大型ショッピングモールもあり、ヤンゴン市内のなかでも発展しているエリアです。

3.スターシティ(タンリンエリア)

ヤンゴン市内から川を隔てて南東方面にあるタンリンエリアには、「スターシティ」と呼ばれる開発地域があります。スターシティの敷地内には、高級コンドミニアムや商業施設、オフィス、ゴルフ場などが立ち並び、将来的な不動産価格上昇にも期待できます。

東南アジアの不動産領域で成長性が高い国

ミャンマーは、政治的な不安や、経済の先行きが見通しにくいことから、現時点では不動産投資を積極的に行うことは推奨しません。とはいえ、東南アジアには、今後の経済成長が期待されている国が多くあります。そこで、不動産領域での投資を検討している方向けに、東南アジアでおすすめの国を3つご紹介します。

カンボジア

カンボジアは、外国人でも不動産が購入しやすい国の1つです。ミャンマーのコンドミニアム法同様に制限があるものの、「2階以上の住居が購入対象」、「建物全体の70%まで保有可能」など、厳しいルールは設けられていません。また、カンボジア国内に居住していない外国人でも、現地の銀行口座を開設できます。

カンボジアの経済成長も著しく、新型コロナウイルスの影響で2021年は2.2%と低調な一方で、2022年には5.1%まで上昇する予測があります。首都プノンペンには、1,000万円台で購入可能な不動産も多く、経済成長に伴い、将来的なキャピタルゲインを狙えます。(※5)

カンボジア・プノンペンの物件一覧

マレーシア

マレーシアは、東南アジアのなかでも若者が多い国の1つです。平均年齢は28歳(日本は48歳)と若く、賃貸需要による家賃収入にも期待できます。また、新型コロナウイルスによる感染対策も一段落し、2022年のGDP成長率は5.3~6.3%と予測されています。経済成長によるキャピタルゲインも狙える国です。(※6)

ただし、外国人向けの不動産売買ルールに基づき、「100万リンギット(約2,900万円)」の不動産のみが購入の対象となる点に注意しましょう。

マレーシア・クアラルンプールの物件一覧

フィリピン

日本から3時間ほどのフライトで行けるフィリピンも、不動産投資におすすめの国です。経済成長に欠かせない人口の伸びが著しく、2020年5月時点で1億903万人を突破し、過去5年間で800万人も増加しました。(※7)

とくに、労働生産人口(15〜64歳)の割合が高く、2020年の労働生産人口は6,900万人(全体の約64)、そして2050年には9,800万人(全体の約66%)にも上る予測があります。。労働生産人口が増加することで、不動産価格上昇に伴うキャピタルゲインだけでなく、賃貸需要も狙えます。(※8)

フィリピンの物件一覧

まとめ

ミャンマーの不動産投資は、2021年に発生したクーデターに伴い、民主政権から軍事政権に移行したこともあり、政治的な不安定さがネックとなっています。また、現地の情報が入りにくいため、現時点ではミャンマーへの不動産投資は難しい状況です。

今後、東南アジアでの不動産投資を検討している際には、カンボジアやフィリピン、マレーシアといった成長性の高い国もおすすめします。当社は、カンボジアとマレーシアに現地法人を設立し、最新の不動産情報をお客様にお届けできます。少しでも気になることがありましたら、当社までぜひお気軽にご相談ください。

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※1:国土交通省「海外不動産市場データベース:ミャンマー

※2:JETRO「ビジネス短信:ミャンマー

※3:政策研究大学院大学工藤年博氏「ミャンマー情勢 クーデタの背景、影響、行方

※4:世界銀行「MYANMAR ECONOMIC MONITOR 2021JAN

※5:JETRO「需要拡大などを背景に景況感は大幅なプラスに(カンボジア)

※6:JETRO「2022年のGDP成長率は5.3~6.3%、中銀が予測を下方修正

※7:JETRO「2020年の人口は1億903万人、5年間で800万人超増加

※8:独立行政法人労働政策研究・研修機構「生産年齢人口(15〜64歳人口