アイルランドが抱える課題のうち、最も解決が急がれるとされているのがダブリンの住宅難と経済的地域格差である。

首都ダブリンや財政が健全なリムリック州(Limerick)、ゴールウェイ州(Galway)、コーク州(Cork)などとは異なり、アイルランド北西部には財政力が弱い州が多い。一方、雇用市場が好調なダブリン州では、ここ数年で住宅価格が急上昇し、家賃は10年前と比較し80%上昇している。

2015年のデータでは、一人当たりの平均可処分所得(自由に使える収入)はダブリン州がずば抜けて高く、ドニゴール州(Donegal)が最下位となっている。また北部アルスター地方(Ulster)の都市は、収入が低いことが示されている。

1800年代に相次いで発生した飢饉で、800万人を超えていたアイルランドの人口は1900年代前半には440万人までに減少し、現在の人口も460万人にとどまっている。しかしダブリンでは増加の傾向が見られ、現在では総人口の20%がダブリンに住んでいるという。8つの州を除くすべての地域で、1800年代当時よりも平均で半数以下に人口が減少している。

キルデア州(Kildare)やウィックロー州(Wicklow)などは、ニューブリッジ(Newbridge)やグレイストーンズ(Greystones)といった地方都市から首都へのアクセスが良く都市繁栄につながった良い例であるが、一方のダブリン州は、ダブリンまでの公共交通機関などが乏しく、結果的に住宅需要が州都ダブリンに一転集中している状態である。

アイルランドの鉄道網については、100年前と比較しても発達しているとは言い難い。消滅してしまった鉄道インフラも多く、アイルランド北部は、かつて鉄道網が最も多く張り巡らされていた地域から、最もまばらな地域へとその姿を変え、特にアルスター地方は大きな打撃を受けた。

ダブリンの住宅問題や地方の過疎化など、現在アイルランドが直面している様々な問題解決のため、ダブリンとアイルランド北西部を結ぶ高速鉄道の開発計画が注目されている。

プロジェクトが実現すれば、ダブリンや空港から地方へのアクセスが大幅に改善されることになる。さらにダブリンの商業地としての知名度が高まり、外国企業の積極的な誘致も可能になる。

現段階では、まず主要ハブ駅であるダブリン・コノリー駅(Dublin Connolly)とダブリン空港が地下で結ばれ、そこからミース州(Meath)アッシュボーン(Ashbourne)、ナバン(Navan)、ケルズ(Kells)、キャバン州(Cavan)ヴァージニア(Virginia)、モナハン州(Monaghan)クローンズ(Clones)、ティロン州(Tyron)オーマ(Omagh)、ストラベーン(Strabane)、ドニゴール州(Donegal)レタケニー(Letterkenny)を通り、終点ロンドンデリー(Derry)へと向かう案が検討されているという。


【参照】High speed rail to the northwest would help alleviate Dublin's housing crisis and Ireland's severe regional inequality

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セカイプロパティ編集部
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