タイの首都バンコクでは、自動車交通渋滞と大気汚染が深刻な問題となっており、政府はその解決策の一つとして、鉄道交通網の開発に取り組んでいる。完成すれば、中国やシンガポールへ鉄道で行くことが可能になり、タイのほとんどの主要都市とバンコク間が結ばれることになる。

タイ政府は、鉄道網拡張や高速鉄道開発のため210億ドル(約2兆2,556億円)を投じると発表しており、開発費13億ドル(約1,396億円)の交通のハブとなる東南アジア最大規模の駅も建設されるという(2021年オープン予定)。

ガソリン車や工場、発電所などから排出されるガスなどで、バンコクの大気汚染は過去最悪のレベルに達していると言われており、政府も市民に公共交通の利用を促し、鉄道交通網の拡張を優先的に行うなど様々な対策に乗り出している。

また鉄道交通網の開発は、石炭や石油などの化石燃料の使用を減らすだけではなく、低迷している経済を活性化させる目的もあるという。コロナウィルスの世界的な流行で、タイの観光業も大きなダメージを受けており、経済を立ち直らせるためにも、このプロジェクトは重要インフラプロジェクトとして位置づけられている。

今後3年間のインフラ開発のための予算330億ドル(約3兆5,445億円)は、そのほとんどが鉄道交通網開発プロジェクトに充てられる予定であり、過去5年間低迷を続けるタイ経済を立て直すため、民間投資を促し、消費を高めることを目標としている。迅速かつ便利に人々が行き交うことで経済が活性化するという信念のもとでプロジェクトは進められており、世界的に不景気で低金利となっている今こそ、インフラ開発に力を入れるべきだと関係者は話す。

今回の開発で、乗客については現在の2倍の年間2,200万人、また貨物については3倍の3,000トンの輸送が可能となるという。

過去70年近くタイでは高速道路の開発が中心となっており、鉄道網の拡張はほとんど行われてこなかった。今後の経済発展のためにも鉄道交通網の開発は非常に重要となり、汚職や不正なくきちんと実行されることが求められる。

2037年までに鉄道交通網は60%拡張し、観光地や国境エリアの都市を結ぶ路線が建設される見込みである。また路線が増えることで、効率的な輸送が可能となり、物流コスト削減につながると期待されている。

高速鉄道については、今後10年間は需要が満たないとされる試算もあり、政府は使用率を上げるためのシステム開発等更なる検討が求められることになる。タイ初となる高速鉄道は、ラオスの首都ヴィエンチャンで、中国の鉄道網と連絡する予定となっている。開発は段階的に行われる予定で、現在第一フェーズの608kmの区間が建設中である。中国の鉄道と連絡部分の第二フェーズについては、現在設計の段階であるという。

バンコク、渋滞と大気汚染緩和のための鉄道プロジェクト

【参照】Bangkok plans massive rail project to solve congestion and pollution woes

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セカイプロパティ編集部
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