個人の資産管理や副業収入を管理するため、「プライベートカンパニーの設立」に興味を持たれている方は多いでしょう。

本記事では、そんなプライベートカンパニーの基本やメリット・デメリット、設立のステップなどについてご紹介します。投資や副業を行なっている方にとって有益となる内容なので、ぜひ参考にしてください。

プライベートカンパニーとは?

プライベートカンパニーとは「個人で所有している企業」のことです。「個人事業主のこと?」と思われるかもしれませんが、少し違います。

個人事業主は、税務署に開業届を提出し、個人で働いている人を指します。法人を設立した時点で、個人事業主ではなくなります。一方、プライベートカンパニーとは、個人資産の管理や、法人税適用による節税効果を狙って設立される法人を指します。

「副業用に設立する会社のこと?」という質問は、半分正解です。プライベートカンパニーを、副業の収入管理、節税対策のために設立する人もいます。

最終的にプライベートカンパニーで何をするかは個人に自由となりますが、一般的には次項で挙げられる2つの目的を持って設立されます。

プライベートカンパニーを設立する2つの目的

それでは、プライベートカンパニーを設立する代表的な2つの目的についてご説明します。

個人資産の管理

大半のプライベートカンパニーは、個人事業を営むためでなく「個人資産を管理するため」に設立されます。

不動産、株式、FX、仮想通貨といったさまざまな資産を個人レベルで管理するのではなく、会社レベルで管理するのです。

では、なぜ資産を個人レベルプライベートカンパニーを設立して管理するのか?その理由は、「法人税適用による節税対策」に他なりません。

法人税適用による節税対策

プライベートカンパニー設立の最たる目的とは、「法人税適用による節税対策」です。実は、個人所得にかかる税金よりも、法人所得にかかる税金の方が安く済むことがあり、これを利用して節税対策に取り組む人が増えています。

個人所得の税率は累進課税であり、所得額に対して5〜45%の税金が課せられます。これに住民税10%、復興特別税2.1%を加算すると、最大で57.1%もの税金を支払わなければいけません。

一方、法人税は東京に本社を置く場合、基本的に23.2%となっています(条件によって異なります)。つまり所得が多いほどプライベートカンパニーによる節税効果が高まるのです。

また、プライベートカンパニーを設立すると所得を家族等に分散させることができ、さらに節税できる可能性もあります。

プライベートカンパニーを設立する3つのメリット

プライベートカンパニーを設立すると、代表的な3つのメリットを得ることができます。それでは1つずつ確認していきましょう。

損金計上で節税効果を高められる

プライベートカンパニー設立後は、経費として計上可能な範囲が広がります。たとえば、家賃や旅費などを経費で計上することで、非課税の対象となり、節税効果を高められます。

副業でも経費計上できるものはありますが、項目は家賃・通信費・広告宣伝費などに限られています。一方、プライベートカンパニーなら法人として経費項目の幅が広がるため、節税効果が高まるのです。

利益・損失の繰延を最大10年に伸ばせる

プライベートカンパニーであれば、事業によって発生した利益・損失を繰り越しできます。。たとえば1年目に100万円の損失が出た場合、「半分は来年に繰延する」ということが可能です。

これがどうメリットかというと、利益が多めに出た年度ではいくらかを繰延することで、来年度に支払う税額を少なくさせられます。一時的に税額を少なくできるため、資金繰りがより楽になるのです。

ただし利益の繰延とは、利益をないものにするわけではありません。あくまで繰延であり、いずれは利益として計上しなければいけません。とはいえプライベートカンパニーなら最大10年も繰延できるので、資金繰りを最適化するのに効果を発揮します。

法人保険の適用により保険料を経費にできる

プライベートカンパニーを設立すると法人保険が利用できるようになります。そして、法人保険の保険料は経費にできる部分があるため、保険に加入しながら節税対策まで行えるようになるのです。

経費に計上できる保険料は、保険の種類によって異なるので事前調査を忘れないよう注意しましょう。

また、解約返還金(解約返戻金)の制度が利用できる保険の場合、保険に加入しながら退職金も用意することができます。

プライベートカンパニーを設立する3つのデメリット

魅力的なメリットがある一方で、プライベートカンパニーの設立にはデメリットもあります。ここでは代表的な3つのデメリットをご紹介します。

設立・維持に費用がかかる

プライベートカンパニーの設立と維持には費用がかかります。「申請すれば設立できる」というわけではないので、この費用面が大きなデメリットになってしまう方もいらっしゃいます。

たとえば、プライベートカンパニーの設立(株式会社として設立)には次のような費用がかかります。

  • 登録免許税:15万円(15万円と資本金の金額×0.7%を比較して高い方)
  • 定款認証:5万円
  • 定款謄本手数料:2,000円
  • 収入印紙:4万円

※電子定款なら収入印紙は不要です

また、プライベートカンパニーの維持にも費用がかかります。一定収入を超えると税理士との顧問契約も必要なので、プライベートカンパニーの設立・意地にかかる費用を事前に確認しておきましょう。

所得情報や個人情報が公になる

プライベートカンパニーの設立には会社を登記する必要があり、この時に登記した情報が公開されることになっています。つまり、自宅を会社住所として使っている場合は自宅住所が公開されてしまい、不特定多数の人から確認できる状態になってしまうのです。

「住所を借りるサービス」も存在しますが、そうした場合は別途維持費用がかかるので注意してください。

プライベートカンパニーの専門家が少ない

プライベートカンパニーの専門家がまだ少ないという現状があります。だからといって、独自にプライベートカンパニーを設立・維持して節税対策をするのは難度が高いため、「専門家が見つからない」という理由で設立に至らない方も多いでしょう。

とはいえプライベートカンパニーのメリットを最大限享受するには、専門家の知識・経験が必要になるため、設立を検討している方は、プライベートカンパニーに詳しく、信頼性の高い税理士を探して相談しましょう。

プライベートカンパニーを設立する5つのステップ

続いて、プライベートカンパニーを設立するための5つのステップをご紹介します。設立時の参考にしてください。

会社概要を決める

まずは、次のような会社概要を決定します(株式会社の場合)。

  • 会社の目的
  • 会社の商号
  • 会社の所在地
  • 資本金の額
  • 発行可能株式総数
  • 設立時に際して発行する株式の数
  • 株式譲渡制限の有無
  • 公告の方法
  • 事業年度
  • 発起人の氏名、住所

これらの事項は全て、次のステップである「定款の作成・認証を行う」で必要となりますので、必ず明確にしておきましょう。

定款の作成・認証を行う

定款(ていかん)とは、「会社概要を決める」のステップで決定した事項を、文書としてまとめたもののことです(根本原則を記した書面)。

株式会社の場合、定款を作成するだけでなく公証役場において、作成した定款が法令に基づいているかどうかの証明を受ける必要があります。これが「定款の認証」です。合同会社の場合、定款の認証は不要となっています。

資本金の払い込みを行う

プライベートカンパニーを設立する際の資本金を払い込みます。発起設立(発起人が株式の全部を引き受ける)場合は、発起人が払い込みを行います。

一方、募集設立(出資者を募って資金を調達する)の場合は、発起人または設立時取締役の銀行口座に出資金を払い込みます。

ちなみに、資本金の払い込みは定款の認証を受ける前でも問題ありません。

登記申請書類の作成を作成する

続いて、プライベートカンパニー設立のために必要な各種登記申請書類を作成します。主な書類としては次のようなものがあります(株式会社の場合)。

  • 定款
  • 登記申請書
  • 登録免許税納付用台紙
  • 発起人の決定書
  • 設立時取締役の就任承諾書
  • 設立時代表取締役の就任承諾書
  • 設立時取締役の印鑑証明書
  • 資本金の払込みがあったことを証する書面
  • 印鑑届出書

一方、合同会社では次のような書類が必要となります。

  • 定款(認証不要)
  • 合同会社設立登記申請書
  • 代表社員の印鑑証明書
  • 払込証明書
  • 印鑑届書
  • 代表社員就任承諾書(場合によって)
  • 本店所在地及び資本金決定書(場合によって)

これらの書類を用意し、登記申請書を提出すれば登記が完了となります。

各種届出を行う

プライベートカンパニーの設立後もやるべきことはあります。たとえば、次のような届出が必要です。

  • 税務署への届出
  • 各都道府県税事務所・市町村役場への届出
  • 年金事務所への届出
  • 労働基準監督署への届出

「資本金1円で法人を設立できる」ということで、多くの方がプライベートカンパニーの設立は簡単だと考えています。しかし実際のところ、これだけの作業を行わなければいけないので、やはり専門家の力は必要です。

プライベートカンパニーを設立するなら合同会社がおすすめ!登記費用が15万円も違う

プライベートカンパニーの設立方法として、主なものが2つあります。それが「合同会社」と「株式会社」です。このうちおすすめなのが合同会社による設立となります。

合同会社とは出資者と経営者が同一の事業形態を持つ会社のことであり、出資者全員が「有限責任社員」となります。

難しい説明は割愛しますが、法人を設立する際に発生する登記費用について、株式会社と合同会社では約15万円の差があります。プライベートカンパニーを設立する費用を抑えたい場合には、合同会社での設立がおすすめです。

合同会社であっても株式会社と同じ法人税が適用されるため、登記費用を抑えながら節税効果をしっかりと受け取ることができます。

会社を大きくしたいなら信頼性のある株式会社がおすすめ

一方で、「プライベートカンパニーの設立後に会社を大きくするかもしれない」と少しでも考えるのであれば、株式会社をおすすめします。

合同会社と株式会社では、現状として後者の方がまだまだ信頼性が高いというイメージです。合同会社には決算公告の義務がなく、閉鎖的な経営が可能なのでその分信頼性が低くなってしまうのです。

企業や金融機関によっては、合同会社とは取引しないルールが定められている場合があるので注意しましょう。

プライベートカンパニーの設立はこんな方におすすめ

それでは最後に、プライベートカンパニーの設立がおすすめの方についてご紹介します。

副業からそこそこの年収を得ている

副業によってそこそこ年収を得ているという方は、真っ先にプライベートカンパニーの設立を検討しましょう。副業収入を個人所得として計上するよりも、会社の所得として計上する方が節税できる場合があります。

1つの目安として「副業で800万円程度の所得を得ている」という方は、プライベートカンパニーの設立について、専門家に相談してみてください。

不動産投資に興味がある

不動産投資に興味がある、あるいは不動産投資を行なっているという方もプライベートカンパニーの設立を検討しましょう。

プライベートカンパニーで資産運用を行うことで、利益から差し引きける損失の範囲が大きく広がります。

損失として差し引ける金額が多いほど節税効果は高いため、プライベートカンパニーで不動産投資の節税対策が行えます。

そもそもプライベートカンパニーが必要かどうかを慎重に検討しましょう

プライベートカンパニーは大変魅力的な資産管理・節税対策の方法ですが、必ずしも万人にとっての正解とは限りません。

まずは、「そもそもプライベートカンパニーの設立は必要か?」を慎重に検討しましょう。自身での判断が難しい場合は、専門家に相談してみることをお勧めします。

まとめ

本記事では、プライベートカンパニーの基本やメリット・デメリット、設立のステップなどについてご紹介しました。

最近ではプライベートカンパニーを設立するサラリーマンも増えており、日常の中で見聞きすることが多くなっていると思います。

繰り返しとなりますが、失敗を避けるためにもプライベートカンパニーを設立する際は、ひとまず専門家へ相談してみましょう。その上でメリットが大きいと判断できれば、プライベートカンパニーを設立してどんどん節税対策を行なってください。