フィリピン不動産投資では、プレビルドの物件に投資するのも1つの選択肢です。しかし、日本では「プレビルド」と呼ばれる物件は販売されていないため、どんなメリットがあるのかわからないという人もいるのではないでしょうか。
フィリピン不動産投資でプレビルドの物件を購入するメリットや、注意すべきリスクについて解説します。
プレビルドの物件とは?
「プレビルド」は日本では使われていない呼称です。プレビルドの物件とはどういうものなのか解説します。
建設途中の物件のことをプレビルドという
フィリピンでは外国人による土地の保有が認められていません。フィリピン不動産投資では、建物のみの所有権を取得するコンドミニアムが主な投資対象となります。
なお、2021年時点では、フィリピンでは中古不動産市場の整備が道半ばなので、新築コンドミニアムが主な選択肢です。フィリピンの新築コンドミニアムは建設工事中に売り出されるのが通例で、工事中の物件のことを「プレビルド」と呼びます。
フィリピンでプレビルドの物件に投資するメリット
フィリピンでプレビルドの物件に投資する主なメリットは、申込時期によっては格安で物件を購入できることや、物件の引渡し前に転売してキャピタルゲインを狙えることなどです。
発売開始当初は特に安く物件を購入できる
プレビルドの物件は、発売開始から時間が経過するにつれて段階的に値上げされます。早い段階で物件を購入できれば、イニシャルコストを特に抑えた投資が可能です。物件価格が安ければ投資効率が上がるので、フィリピンのプレビルド物件投資は利回りの高い投資も期待できます。
なお、フィリピンで外国人が購入できるのは、コンドミニアム1棟あたり全戸数の40%までに規制されている点に要注意です。フィリピンには日本以外にも様々な国から投資マネーが集まってきます。早めに決断できないと、良い物件では外国人向けの枠が売り切れてしまうこともあるので要注意です。
引渡し前の転売でキャピタルゲインを狙える
プレビルドの物件は完成前の時点で段階的に値上げされていくため、デベロッパーの値上げに合わせて物件を転売すれば、キャピタルゲインを狙った投資も可能です。
日本をはじめとした先進国では、完成前の新築物件を短期間で転売して利益を得る投資法はあまり現実的ではありません。プレビルドの物件を転売する手法は、フィリピンなど新興国特有の投資法と言えます。
購入資金の分割払いが可能
プレビルドの物件を購入すると、売主によっては、資金の支払い方法について選べることがあります。選択できる支払方法は以下のいずれかです。
・工事の進捗に合わせた分割払い
・毎月一定額を分割払い
・手付金を除いた残金を引渡し時に一括精算
分割払いはローンと違って利息などがかからないため、あらかじめまとまった資金を用意できなくても安心して物件を購入できます。
ただし、ローンと分割払いとの勘違いには要注意です。新興国の新築物件では、売主のデベロッパーが買主に対して物件購入資金を融資する、デベロッパーローンという支払い方法を採用できることもあります。
デベロッパーローンは分割払いではないので利息がかかります。トラブルを防止するためには、売買契約書の内容などについて入念な確認が必要です。
プレビルドの物件に投資するリスク
プレビルドの物件にはキャピタルゲインや支払いの面でメリットがありますが、その一方で物件の工事が中止されて引渡しを受けられないなどのリスクに要注意です。
想定通り値上がりするとは限らない
すでに解説した通り、プレビルドの物件には、売主の値上げに合わせて転売することで転売益を狙えるメリットがあります。しかし、売主による値上げは必ずしも周辺相場を考慮したものとは限りません。
日本と海外とにかかわらず、不動産の売却を成功させるためには周辺相場を意識した価格設定が必要です。
売主による値付けが周辺相場と乖離していた場合は、転売しても当初想定していたほど値上がりしない結果となることもあります。また、フィリピンの首都マニラでは特に、都市開発が急速に進んでいるため、売り出されている物件が一等地のものばかりとは限りません。
プレビルドの物件で転売益を狙うのであれば、物件を比較して相場を見極めるなどの準備が必要です。
物件が完成せず引渡しを受けられないこともある
プレビルドの物件に投資する場合は竣工リスクに注意を要します。竣工リスクとは、物件の工事が中断されたまま引渡しを受けられないリスクのことです。プレビルドの物件の中には、買主から受け取った資金をそのまま工事資金に充当しているプロジェクトもあります。
自転車操業状態のプロジェクトでは、販売期ごとの売れ行きが芳しくないと、工事費用を補填できずに工事が中断されてしまうこともあるので要注意です。
プレビルドの物件を購入する場合は、売主の見極めが重要になります。物件を選ぶ際に、会社規模や既存物件の引渡し実績などを比較しながら売主を選ぶと竣工リスクを軽減可能です。そのほか、フィリピンを含む東南アジアでは、コンドミニアムのほかにも鉄道など公共工事を含めて工事の遅延が頻発します。物件購入当初の引渡し予定はあくまでも目安ととらえ、余裕を持った投資計画を立てることが重要です。
投資資金を寝かせることになる
プレビルドの物件は、完成予定の2~3年前などから売り出されることが少なくありません。物件が完成するまでは、投下した資金が塩漬け状態になるので要注意です。購入資金を分割払いで支払う場合は特に、他の投資も含めたポートフォリオのバランスをとることが重要になります。
フィリピンでプレビルドの物件を購入する手順
フィリピンでプレビルドの物件を購入する手順について解説します。取引のトラブルを避けるコツは、現地に進出済で経験豊富な不動産エージェントを選ぶことです。
不動産会社と物件を選ぶ
フィリピン不動産投資を進めるにあたり、物件の提案をもらうため最初に不動産会社を選びます。不動産会社を選ぶにあたっては、可能な限り現地に進出済の会社を選ぶことが重要です。
現地に進出済の会社であれば、物件購入後の賃貸管理も委託できる場合があります。海外不動産投資で空室リスクを軽減するためには、現地の不動産エージェントとコミュニケーションを密にすることも重要です。
物件選びから賃貸管理まで任せられる不動産会社であれば、物件の購入手続きを経て関係構築もできるため安心です。なお、物件選びにあたっては希望条件を可能な限り具体的に伝えることが重要になります。例えば物件購入予算のほかにも希望の利回りや特に軽減したいリスクなど、優先順位をつけて希望を伝えることで、自分に合った物件の購入に近づけます。
売買契約の締結と手付金の支払い
物件を選んだら売主と売買契約を締結します。フィリピン不動産の売買契約書は英語で書かれていますが、最低限キャンセル条項などについては投資家自ら把握することが重要です。また、売買契約の締結が完了したら手付金を支払います。手付金は物件価格の1%など少額に設定されることが大半です。
あらかじめフィリピンで銀行口座の開設ができていれば問題ありません。しかし、日本の金融機関からフィリピンへ送金する場合は、銀行を訪問する前に電話などで対応可否を確認する方が安全です。例えメガバンクであっても、対応した経験がないなどの理由で海外送金を断られることがあります。
ローンの申込
物件購入にローンを利用する場合は、売主と売買契約を締結したタイミングで金融機関へローンの申し込みをします。なお、フィリピン不動産投資ではローンを利用できるとしても、フルローンを利用できることは稀です。物件価格の30%~50%など自己資金を求められることもあるので、あらかじめ資金の用意が必要になります。
資金を分割払いする
購入資金の支払いについて分割払いを選択した場合は、売買契約の締結後に支払いをスタートします。なお、ローンを利用する場合はローン実行日の設定に要注意です。大半の場合はローン実行日が引渡し精算時となっているため、分割払いに関しては自己資金の投下が必要になります。
物件の引き渡し
物件の建設工事が完了したら、物件の引き渡しに移ります。なお、フィリピンを含む海外では、日本と違って家具家電付きの状態で賃貸するのが通常です。物件購入のオプションで家具家電を含めることもできますが、オプションを選択しなかった場合は、賃貸を開始する前に家具家電の選定と搬入が必要になります。
また、引渡し手続きの前に、物件の仕上がりについて現地確認するのがおすすめです。買主として現地確認することで、仕上がりに不具合があった場合に対応してもらえる確率が高くなります。
まとめ
フィリピンのプレビルド物件には、時期によっては物件を安価に購入できる点や引渡し前に転売を狙える点などにメリットがあります。その一方で、物件が完成しない竣工リスクや、完成まで資金を寝かせる点などに要注意です。
物件の購入手続きを円滑に進めるためには、現地に進出済の不動産エージェントを選ぶことが重要になります。また、日本の金融機関から資金を送金する場合は、窓口を訪問する前に対応可否を確認しておくとスムーズに送金手続きを進められます。