海外不動産投資において、東南アジアは注目のエリアです。しかし、一言で東南アジアと言っても、各国の不動産投資に関する法制度はそれぞれ違います。今回は、東南アジアの中でも特に注目を集めている、マレーシア、タイ、フィリピン、ベトナム、カンボジアにフォーカス。押さえておきたい、基本的な法制度などをご紹介していきます。

1 マレーシアの不動産投資に関する法制度

1-1 マレーシアでは、高額な物件しか購入できない

マレーシアでは、原則100万リンギット(約2,600万円)以上の物件しか購入できません。原則としたのは、マレーシアでは各州政府が自治権を持っているため、州によって不動産の最低購入金額や取得可能な物件の種類が違ってくるからです。

例えばクアラルンプールでは、土地の所有権付きで建物分譲部分の所有権のみでも関係なく、100万リンギット以上の物件でないと購入できません。また、セランゴール州の場合、そもそも外国人が土地の所有権を取得できません。

1-2 不動産を取得するためには行政への申請が必要

不動産の売買契約締結後は、物件の管轄エリアの行政に対して申請を行う必要があります。許可が下りるまでには、約3カ月かかります。手数料は3万円ほどかかりますが、物件を1件だけ購入するような場合は、許可が下りないことはほとんどありませんので安心してください。

1-3 登記はこの2種類を押さえる

1種類目が「フリーホールド」です。不動産購入時に土地と建物の両方の所有権を取得・登記できます。マレーシアの土地は行政が管理・所有していましたが、プランテーション事業のために、部分的に土地を譲渡しました。そのため、土地を永久的な権利として登記できるようになったのです。

2種類目が、「リースホールド」です。コンドミニアムなど、分譲されている建物部分の区分所有権だけを取得・登記することができます。土地は行政が管理・所有していますので、事業者がその土地を賃借するカタチになります。期限は30年、60年、99年とありますが、多くが99年の長期賃貸を結んでいます。さらに更新が可能ですので、実は「フリーホールド」と大きな違いはありません。

2 タイの不動産投資に関する法制度

2-1 タイでは、コンドミニアムを所有できる

「コンドミニアム法」という法律によって、外国人は区分所有の物件を購入・所有できます。しかし、外国人には所有制限が設けられており、コンドミニアム一棟に対するユニット総床面積の49%までの所有が認められています。

2-2 資金源証明書が必要

コンドミニアムを購入するには、購入資金に関する「資金源証明書」が必要となります。証明書は物件の購入価格以上の金額を海外の銀行口座から、タイの銀行口座に送金することで、タイの銀行から「外貨送金証明書」が発行されます。それが「資金源証明書」となります。

2-3 土地を所有するには4,000万バーツ(約1億4,000円)以上が必要

タイ国籍を保有しない外国人は、土地を購入することができません。しかし、4,000万バーツ(約1億4,000円)以上を投資資金として保有している外国人は、1ライ(1600平米)までの土地を購入する許可をもられます。

またタイでは、現地人名義で土地を取得することが「土地法」で禁止されていますので、充分に注意してください。

3 フィリピンの不動産投資に関する法制度

3-1 フィリピンでは、建物のみ購入できる

外国人でもコンドミニアムやタウンハウスなどが購入できます。ただし、「コンドミニアム法」によって、コンドミニアムやタウンハウスの土地がユニット所有者による共同所有の場合、所有するユニット数が全ユニット数の40%未満までの購入となります。購入後は外国人でも賃貸、転売を行うことができます。

3-2 住宅ローンも利用できる

少数ではありますが、外国人向け住宅ローンを用意している現地の銀行があります。フィリピンの住宅ローンは「ノン・リコース・ローン」が主流。これは、借り手が債務の全額返済責任を負わない方式で、途中でローンを返済できなくなると、物件を手放せば残額は免除されます。

ローン金利は変動し、7.5〜9%ほどと言われています。また、日本人が住宅ローンを利用する場合は、全額を借りることが難しく、物件評価額の60%〜70%の借り入れとなるでしょう。

3-3 土地は購入することができない

フィリピン国籍を持たない外国人は、土地を購入することができません。公有地・私有地に関係なく、資本の60%以上がフィリピン資本である法人のみ購入が認められています。戸建てに関しても、土地と同じルールが適用されます。

4 ベトナムの不動産投資に関する法制度

4-1 ベトナムでは、建物全体の30%を外国人が所有できる

国の総戸数の30%を超えて、外国人が所有をできません。コンドミニアム物件ですと、総戸数の70%をベトナム現地人が持っていなければならないのです。外国人は戸建て住宅も購入できますが、一つのエリアで最大250戸までが購入できる上限になっています。

個人で物件を購入すれば、賃貸付けすることも可能です。しかし、法人名義ですと賃貸が禁止されているため、物件は個人名義で購入した方がよいでしょう。

4-2 外国人が不動産を保有できるのは50年

不動産を外国人が保有できる期間は、最長で50年となります。途中で更新を行うと、最大100年に延長ができます。ベトナム人と結婚した場合は、長期間の物件保有も可能です。

また、外国人は中古物件の購入ができません。ただし、外国人が所有している物件であれば、使用権である50年の残り期間を引き継ぐカタチで購入することは可能です。

4-3 住宅ローンは金利が高い

現地の銀行でローンを組めますが、厳しい条件となる上、金利が約10%と高くなります。日本国内の金融機関の中には、ベトナムの物件でも条件によってローンを組める銀行がありますので、必要に応じてリサーチしてください。

5 カンボジアの不動産投資に関する法制度

5-1 カンボジアでは、外国人が土地の購入・所有ができない

外国人が土地の購入、所有をすることは禁止されています。そのため、外国人が戸建てや一棟まるごとアパートを取得することは非常に難しいのです。

カンボジア国籍を持った現地人と共同所有する。政府から非公認の状態で土地を所有する。など、外国人がカンボジアの土地を所有する方法は、いくつかあります。しかし、それらの方法はリスクが高い上に、法的に不透明ですので非常に危険です。

5-2 建物の2階から上の階のみ購入できる

外国人は建物の1階や地下の階は所有できません。建物の2階以上から購入ができます。アパートやコンドミニアムなどの集合住宅なら、2階より上層部分を購入して、所有することが認められています。

また、外国人でも不動産を購入後は、賃貸、転売などが可能です。そのため、賃貸付けや売却によって、収益を上げることができます。

5-3 建物全体の70%まで所有できる

建物全体の70%までを外国人が所有できます。そのかわり、残りの30%は必ず現地人が所有しなければなりません。コンドミニアムや集合住宅が100戸あれば、外国人は70戸まで購入が認められています。

6 まとめ

東南アジア各国の法制度には、共通点がいくつかありますが注意も必要です。例えば、東南アジアの法律が緩い一部の国では、「現地人の名義貸し」が暗黙の了解となっています。しかし、タイでは「土地法」により違法となります。そういった、この国ではOK、この国ではNGといった法制度が多くあります。だからこそ、各国の基本的な法制度をインプットした上で、投資を行うことをオススメします。