政情も不動産価格も安定した国内。経済成長著しい東南アジアなど、大きなリターンが見込める海外。不動産投資をこれから始めよう、さらに手広くしたいと考える時に、投資先は非常に迷うもの。今回は、国内・海外不動産投資の違いを、シンプルかつ分かりやすくご紹介します。

1 国内不動産投資のメリットとデメリット

超高齢化社会に突入する日本では、あらゆるマーケットが縮小傾向にあります。しかし、日本だからこその不動産投資のメリットが確かにあります。

1-1 日本で収益を出すなら、インカムゲイン

国内不動産投資では、インカムゲインで収益を上げることができます。なぜなら、日本の不動産価格は高額な反面、安定的に家賃収入を得ることができるからです。また、政治や経済のリスクが低いのも、インカムゲインが得られる大きな理由。国が安定しているからこそ、継続して家賃収入を得るインカムゲインが実現できるのです。

1-2 成熟した日本では、キャピタルゲインが難しい

リーマンショック後も日本の不動産価格は続いています。都心の新築マンションの利回りは3%台と高水準で、不動産価格のこれ以上の伸びは難しい状態です。

東京オリンピックも開催間近となり、価格を下支えする大きな要因がひとつなくなろうとしています。人口減少により、賃貸物件の需要も減少。空室リスクの増加も心配され、不動産の大きな値上がりが期待できません。そのため、日本の不動産は、キャピタルゲインが見込めないと言えるでしょう。

1-3 日本は低金利で融資を受けられる

手持ち資金が少なくても不動産を購入できる点は、国内不動産投資の大きな強みです。一定水準の年収や担保価値が高ければ、フルローンで組むことができますので、レバレッジを効かせた投資が可能。日本では低金利政策によって、ローン返済の負担額を抑えることができます。

しかし、いつ利上げするのか確実な予測はできません。変動金利でローンを組んでしまうと、わずかな利上げが返済額に大きく影響します。いつ利上げが起きても対応できるように、準備しておく必要があります。

1-4 自国という地の利を最大限生かせる

日本国内で不動産投資をするのであれば、賢い買い方をたくさん学べます。全国でセミナーが開催されていますし、多くの情報を集めて、比較検討することもできます。

また、日本の不動産に関わる商習慣を事前に理解していますので、ゼロベースから情報を収集する必要もありません。当たり前のことですが、日本語で直接デベロッパーや不動産投資会社とやり取りできるのも、海外不動産投資と比べて大きなアドバンテージになるでしょう。

2 海外不動産投資のメリットとデメリット

最近では経済成長が著しい東南アジアなどが、海外不動産投資先として注目されています。しかし、本当に海外投資は収益が出るのかをご紹介していきます。

2-1 海外ならキャピタルゲインで大きな収益が出る

海外不動産投資の最大のメリットは、キャピタルゲインにあります。特に経済成長が著しい、東南アジアに注目が集まっています。東南アジア各国のGDP成長率を見てみると、カンボジアが7.2%と非常に高く、フィリピン、ベトナムも6%台と続き、マーレシアは4%後半、タイは3%台の水準を保っています。そして、その成長率は下がることなく、上昇傾向にあります。

経済成長により物価の上昇が見込めるため、不動産価格も上がっていくことが予想されます。その結果、不動産を転売することで売却益が生まれ、キャピタルゲインを得ることができるのです。

2-2 高い金利によって、インカムゲインは期待できない

現金によって海外不動産を購入できれば問題ありませんが、ローンを組んで海外不動産を購入する方も多くいらっしゃると思います。海外でローンを組む場合は、日本国内よりも金利が高いことが珍しくありません。利回りが高いとしても、ローン金利で収益が出ないということが考えられます。

さらに海外では、信用できる管理会社が見つからないケースもあります。不確かな情報によって、ずさんな管理会社を選んでしまい、購入した不動産に空きが出てしまうことも。金利と管理会社の選択ミスによって、家賃収入つまりインカムゲインが得られないリスクがあるのです。

2-3 日本の金融機関も海外に目を向け始めた

日本の金融機関の中にも、海外不動産投資に融資できる銀行が増えてきました。スルガ銀行やオリックス銀行、西京銀行などは、海外不動産用ローンプランを提供しています。

ただし、先程も説明した通り日本国内よりも、ローン金利が高い場合が多くあります。さらに、融資のために頭金が何割か必要となることも。インカムゲインよりもローン金利が高くなり、収益が出ないというリスクが海外不動産投資では発生してしまいます。

2-4 海外不動産投資は節税対策になる

不動産収益への課税方法や税率は、各国で異なります。税制面で日本の条件より有利な国や地域を狙って、海外不動産投資を行うこともできます。海外からの不動産投資を活発にするため、税制を優遇している国もあります。情報を集めることで、海外不動投資で節税を行うことが可能です。

また、海外不動産は中古物件でも価値が落ちにくいため、短い期間で多くの減価償却費を計上できます。そのため、経費として毎年の収入から差し引くこともできるのです。

※減価償却とは、時間が経つごとに減少する資産価値をその資産の取得費を耐用年数で按分して、毎年費用計上することで表す会計制度。

アメリカやイギリスなどでは、木造の物件であっても資産価値が高いのです。そのおかげで、減価償却による税効果で減税しながら、価格を大きく下げずに売却できるメリットがあります。

3 国内外のこれからの不動産マーケット

3-1 国内は都市開発やインフラ整備に期待

今後、日本の不動産が急激に上昇するのは難しい状況です。その中でも、価格の上昇が期待できるエリアがあります。それは、訪日観光客が見込めるような、今後土地の需要が発生するエリアです。訪日観光客が増加するということは、ホテル用地などの需要が高まり、それに合わせて不動産価格が上がる可能性があります。実際に沖縄などの地価は、上昇を続けています。

また、福岡は訪日観光客の増加以外にも、2020年に地下鉄七隈線の延伸が予定されているため、不動産価格が上昇しています。名古屋はリニア新幹線が完成すれば都心へのアクセスがさらに向上しますので、不動産価格にもその期待値が見られます。都市開発を含めたインフラ整備によって、不動産価格の上昇は今後も期待できます。

しかし、多くの地方都市では、人口減少が加速していきます。東京都心や都市の活性化が期待できるエリアを除き、地方圏の不動産価格が上昇する要因を見つけるのは至難の業と言えるでしょう。

3-2 海外はチャンスが多いが、リスクも多い

アメリカやヨーロッパなどの先進国に比べ、現在は東南アジアがマーケトとして魅力的であると言えます。東南アジアは高度経済成長期を迎え、人口増加による経済発展によって、これからもマーケットが拡大していくでしょう。

その反面、国によっては不動産購入の規制や政情不安、為替レートの下落など、カントリーリスクが潜んでいるのを忘れてはなりません。海外不動産投資、特に新興国が集まる東南アジアの場合は、確かな情報を掴んでから行動を起こすのがベストです。

一方で、アメリカやヨーロッパなどの先進国はマーケットが安定し、不動産に関する法律も整っているため、安心して投資できるメリットがあります。ただし、投資へのリスクが低い分だけ、東南アジアのような大きなリターンは期待できません。

4 まとめ

低調な経済成長が続く日本では、不動産投資によって大きな収益が出にくい状況にあります。しかし、訪日観光客の増加などによって、不動産価格が上昇するエリアが確かに存在しています。そういった情報を得るためのアンテナを立てておくことが、国内の不動産投資には必要となるでしょう。

一方で、海外不動産投資は、大きな夢を掴むチャンスが多くあるように見えます。しかし、各国の政情や法規制、為替レートの変化によって、状況が一変する危険性が潜んでいます。国内よりもはるかにカントリーリスクが高いことを認識した上で、投資を行ってください。