海外不動産投資が人気の理由の一つに、経済成長や人口増加に伴うキャピタルゲインを狙えることが挙げられます。投資国やエリアにもよりますが、不動産価格の上昇により比較的短期間で利益を出せるのが利点です。しかし、キャピタルゲインを狙うためには、海外不動産ならではの利益の出し方やリスクに注意することが大切です。

この記事では、そのポイントを詳しく説明しますので、海外不動産投資でキャピタルゲインを狙いたい方は、参考にしてみてください。

1 海外不動産投資で狙えるキャピタルゲインとは

不動産投資におけるキャピタルゲインとは、不動産を売却した時に得る利益のことを指します。具体的には、売却金額から購入に要した費用や、売却するまでに支払ったメンテナンス費用や税金などを差し引いて、残ったお金が利益となります。

1-1 海外不動産投資でキャピタルゲインが期待できる理由

日本は少子高齢化と人口減少により、国全体で見ると今後の賃貸需要が増加する見込みは厳しい状況です。供給される物件数に対して入居希望者が少なくなれば、家賃相場は下落に向かうことが想定されます。家賃が低下すれば利回りも低下し、物件価値も低下するのでキャピタルゲインを望むのは難しくなります。

一方、海外不動産の場合、人口増加が続く東南アジアなどの新興国を筆頭に投資用不動産の価格上昇が続いている国があります。日本とは異なり国民の平均年齢が若く、生産年齢人口の比率が高い国は、今後の経済成長も期待できます。

なお、東南アジアでは、マレーシアなどを除く多くの国で、非居住者である外国人は土地の所有権を取得することができません。そのため所有権の持てるプレビルド(=完成前の物件)のコンドミニアムを購入してキャピタルゲインを狙うスキームが人気です。エリアにもよりますが、不動産需要の上昇が見込めればキャピタルゲインを狙うことができます。

移民により人口増加を続けるアメリカも、不動産価格の上昇が続いています。アメリカはもともと不動産取引に関するルールがよく整備されている上、中古物件の流通量も多く、築古物件であっても価格がそれほど落ちないのが特徴です。日本と教育事情が異なるアメリカは、エリアにもよりますが、人気の学区内にある中古物件などでキャピタルゲインが狙えます。

2 海外不動産投資でキャピタルゲインを狙うときの4つのポイント

海外不動産投資では、日本国内とは異なる不動産事情や商習慣、リスクを知ることが大切です。海外不動産投資でキャピタルゲインを狙うためにチェックすべきポイントを見ていきます。

2-1 投資対象国を選ぶ

東南アジアなどで不動産投資を行う国を選ぶ時は、経済成長を見込んで多くの投資マネーが流入する国を狙うのがポイントの一つになります。例えば非居住者の外国人が土地を保有できないシンガポールは、東南アジア諸国の中でも特に不動産相場の上昇が著しい国です。2017年の対内直接投資額(=外国から流入する投資金額)は、圧倒的に高い金額になっています。

・東南アジア諸国の対内直接投資額(単位:100万ドル)

順位

国・地域

金額

1位

シンガポール

62,006

2位

インドネシア

23,063

3位

ベトナム

14,100

4位

マレーシア

9,543

5位

フィリピン

9,524

6位

カンボジア

2,087

(出典:日本貿易振興機構ジェトロ 2017年)

続いて対内直接投資額が多いのは、インドネシアとベトナムです。カンボジアの対内直接投資額は多くありませんが、安定して増え続けています。また東南アジアの各国の2018年におけるGDP成長率(2018年)は、次のとおりです。

カンボジア

7.3%

ベトナム

7.1%

フィリピン

6.2%

インドネシア

5.2%

マレーシア

4.7%

タイ

4.1%

シンガポール

3.1%

今後、不動産投資先としてキャピタルゲインが見込めるのは、高い経済成長率の続くカンボジアやベトナム、対内直接投資額の多いマレーシアやフィリピンが候補になるでしょう。

住宅価格が上昇しているアメリカ

アメリカは、非居住者である外国人も土地を所有することができます。そのため、コンドミニアムのほかに戸建住宅なども投資対象の候補になるでしょう。不動産需要の多いエリアであれば、中古物件も価格上昇が見込めるのでキャピタルゲインを狙った不動産投資ができます。

2018年は以下の主要都市で住宅価格が上昇しました。特に上昇率が大きいのは次のエリアです(2018年11月までの1年間の上昇率)。

ラスベガス

12.07%

フェニックス

8.10%

シアトル

6.33%

デンバー

6.22%

アトランタ

6.20%

(出典:Global Property Guide)

2-2 投資エリアを選ぶ

前述した通り、海外不動産投資でキャピタルゲインを狙うには、賃貸需要があってインカムゲインが期待できるエリアを選ぶのが基本になります。賃貸需要の強いエリアとは、生活の利便性が高い地域、あるいは周辺の開発によって利便性の向上が見込めるようなエリアとなります。

東南アジアであれば首都を狙うのがセオリーです。例えばタイの場合、首都バンコクの中でも利便性の高いBTSスカイトレイン駅付近は、地価の上昇率も相当高くなっています。さらにバンコクの高級住宅地である「ルンピニ」、ビジネス地区として人気の「シーロム」や「サトーン」は、海外駐在員の賃貸需要が見込めます。

これらのエリアは物件価格も高くなりますが、利便性の良さと安定した賃貸需要によりキャピタルゲインが狙えるエリアです。特に東南アジアでは、非居住者の外国人が購入するコンドミニアムは海外の駐在員に貸し出す場合が多いため、外国人投資家の目線で選ぶことが大切です。

2-3 資金調達をする

不動産投資でキャピタルゲインを狙う場合、金融機関からローンを利用すれば少ない元手でも利益を得ることが可能です。しかし海外不動産投資の場合には、このスキームを利用するのは難しいので注意が必要です。

国内金融機関は、基本的に海外不動産を担保に融資をしません。また、現地銀行から借りる場合も、現地に居住していること・現地で収入を得ていることなどを求められる場合があります。またアメリカのように、現地でのクレジットスコア(クレジットカードの使用履歴)が必要なケースもあります。いずれの場合も、日本に居住しながら条件を満たすのは難しいでしょう。

日本国内で海外不動産投資のための資金調達をする場合、日本政策金融公庫を利用する方法があります。ただし、日本国内ですでに不動産投資を事業として行っている場合に限るなど、投資初心者の方が利用するにはあまり向きません。

ほかにオリックス銀行でも海外不動産ローンを利用することはできますが、国内に保有する住宅を担保に融資を受けるという形になります。さらに担保にできる住宅のエリアは東京近郊や名古屋近郊などの都市圏に限定されます。

このように海外不動産投資ではローンを借りるのが難しいため、基本的には現金を用意する必要があります。東南アジアで手頃な価格の物件を購入する場合でも、税金の支払いや諸費用が思いの外かかる場合もあるので、現金は多めに準備しておきましょう。

2-4 為替の変動に注意する

海外不動産投資では為替の変動によって受け取る円が増えたり減ったりします。海外不動産を購入する場合、まず日本円を現地通貨に両替し、現地通貨で物件を購入します。そして時期を見て物件を売却した後、現地通貨を日本円に両替し直します。この時、現地通貨に対して円高に振れていれば受け取る円は少なくなり、円安に振れていれば受け取る円は多くなります。

世界経済の流れによって為替相場は常に変動しています。現在、アメリカに利下げ圧力がかかっており、FOMC(米連邦公開事情委員会)は2019年7月に10年半ぶりの利下げを決定しました。米中の貿易問題や今後の景気後退リスクを考えて、さらなる利下げも予測されています。利下げは通貨の下落につながりやすいため、今後は円高に進むことも考えられます。

一方、東南アジアの通貨は、米中の貿易摩擦に大きく影響される可能性があります。IMF(国際通貨基金)は、特に東南アジアの貿易収支に大きく影響するとしており、対米ドルで下落圧力がかかると予測しています。通常米ドルに対して通貨が下落すれば、日本円に対しても下落します。

このように不動産投資をする国の通貨に対して、購入時よりも売却時のほうが円安になっていれば為替差益が生じますが、円高なら為替差損になります。キャピタルゲインを狙った売却の時期には、為替相場の動向にも注意が必要です。

2-5 売却するまでの諸費用を確認する

キャピタルゲイン狙いでコンドミニアムを購入する場合、売却するまでにはさまざまなコストがかかります。特にコンドミニアムの維持管理には定期的な出費があり、管理状態の良し悪しもキャピタルゲインに影響します。

コンドミニアムには日本のマンションのような管理費用が発生することがあります。特に駐在員向けの豪華な共有施設が付属するコンドミニアムは、そのメンテナンス費用もそれなりにかかります。特に東南アジアのコンドミニアムでプールやテニスコート、コミュニティクラブハウスや公園といった豪華な共有設備が付属している場合は、管理費も確認しておきましょう。

なお、室内のメンテナンスに関しては管理費とは別にコストが発生します。特に水回りの不具合は後の売却額に大きく影響してくるので、きちんと対応しておくことが大切です。迅速に修理対応できる管理会社を見つけておきましょう。

また、不動産投資でキャピタルゲインを狙う場合、税金面にも注意が必要です。売却によって支払う税金の譲渡所得税は、保有期間5年以下(短期保有)または5年超(長期保有)によって税率が異なります(保有期間の計算は売却した年の1月1日時点で行われる点に注意が必要です)。支払う税金を少なくしたい場合は、5年超保有する必要があります。

3 まとめ

海外不動産投資でキャピタルゲインを得るためには、基本的にインカムゲインも見込めるエリア選びがポイントとなります。その上で、ローンの利用や為替変動リスクなどにも注意することが大切です。

物件選びや運用方法で不明な点があれば、不動産会社に相談したり、海外不動産投資セミナーで情報収集したりするのも効率的ですので、検討してみてください。