世界一の経済大国・アメリカ。日本の25倍もの土地に48の州(アラスカ、ハワイを加えると50州)があり、地域によって文化も風土も気候もさまざまです。また白人、アフリカ系、ヒスパニック系、アジア系、アメリカ先住民などあらゆる人種が暮らすことから、「サラダボウル」とも呼ばれる多様性が特徴です。

日系企業や日本食レストラン、日本人学校の数は世界トップクラス。約42万人(H30・外務省による)と、日本を除くと世界一多くの日本人が住んでいる国です。日本との時差は約14~17時間。そんなアメリカで永住権を取得する方法を紹介します。

永住権(グリーンカード)の基礎知識

1-1 永住権があればアメリカ人とほぼ同じ暮らしが可能

「グリーンカード」という言葉を聞いたことがありますか? これはアメリカの永住権のこと。LPR(Lawful Permanent Resident)あるいはPR(Permanent Resident)とも呼ばれるこのビザは、アメリカ国籍以外の人でも取得可能です。ちなみにグリーンカードとは、かつては色が緑色(現在は白)だったことが由来です。

グリーンカードがあれば、いつでもアメリカに出入りでき、無期限で滞在も可能に。職業も自由に選択でき、アメリカ人とほぼ同じ暮らしを送ることができます。一度取得しておけば、10年の有効期限ごとに更新すれば、半永久的に永住資格を得られます。移住を望む方はぜひ取得したい資格です。

1-2 市民権と永住権の違い

ただし、グリーンカードはあくまで永住権であって、国籍ではありません。アメリカ国民になるために必要な、「市民権」とは異なります。そのため永住権があっても、アメリカでは政治の投票権がなかったり、FBIやCIA、ホワイトハウス職員など一部の公的な職業や、陪審員に就けなかったりという制限が設けられています。一方で、日本国籍は有したままなので、日本人として自国の選挙に参加したり、社会保障を受けたりできます。

永住権を取得するための具体的な方

上記のようなことも理解していただいたうえで、「それでもアメリカの永住権を取得したい!」という方向けに、具体的な方法を解説していきます。幾つかの選択肢がありますので、自身に合ったやり方を見つけていただければと思います。

2-1 アメリカ国籍を持つ人と結婚する

アメリカ市民と結婚することで、グリーンカードが取得できます。結婚前の状況ごとに手順を説明します。

  • 二人ともアメリカ在住の場合
    ∟アメリカで結婚した後、アメリカの移民局で永住権を申請します。移民局では面接が行われ、偽装結婚でないかどうかの確認をされます。二人の関係性を示すために、一緒に撮った写真や、Eメールや通話記録の履歴、共有財産、同居していることがわかる書類などの提出が必要です。

また、生活保護が必要となる収入額の最低125%以上が必要です。もし経済力に不安がある場合、アメリカ市民や永住権を持っている人に、ジョイントスポンサー(いわゆる保証人)になってもらうことができます。

ちなみに発給されるまでの期間は、アメリカ市民との結婚の場合約半年、永住権所有者では約2年かかります。

  • 二人とも日本在住の場合
    ∟日本で結婚した後、アメリカ領事館でアメリカの永住権を申請します。①と同様に面接(ただし東京・沖縄のいずれか)が行われた後、渡航ビザが発給され、渡米が許可されます。その後、移民局で申請を行います。この際、労働許可証と渡航許可証の申請もできます。この二つがないと、永住権が下りるまで、働くこともアメリカから出ることもできないのです。
  • 日本とアメリカにそれぞれ住んでいる場合
  • ∟まず日本で、婚約者・配偶者ビザ(K-1/K-3ビザ)を取得します。このビザがないと、永住権を取得するまでアメリカへの入国ができません。取得後、アメリカに入国した日から90日以内に結婚をし、その後に移民局で永住権の申請を行います。

※補足:結婚後、最初に発給される永住権は、2年間の期限付きです。その後、結婚が継続的であるとみなされて、初めて期限なしの永住権を取得できます。

2-2 DV抽選権に応募する 

アメリカでは一年に一度、抽選によって、5万人に永住権を発給しています。毎年秋ぐらい、米国国務省が指定した期間に応募した人のなかから、コンピューターがランダムに抽選を行います。当選すれば、永住権を取得できる権利を得られるのです。

これは、世界をアジア、アフリカ、ヨーロッパ、北米、南米、オセアニアの6つに分類し、過去5年に移民ビザが発給された数が少ない国が対象となります。当選確率はエリアによって異なりますが、日本人が含まれるアジア地域では例年1%にも満たず、狭き門と言えるでしょう。また、当選後は自ら申請作業を行い、面接にも通過しなければいけません。

2-3 秀でた能力・実績を認めてもらう

これまでの活動やビジネスにおいて、高い評価や実績、名声がある方は、「EB-1」というカテゴリーで永住権を申請することができます。EB-1には3つの種類があり、それぞれ紹介していきます。

・EB-1-1 
ビジネスから教育、科学、芸術、スポーツなどの分野で才能を持ち、世界的に活躍している人物。

・EB-1-2 
世界的に著名な教授や研究者。

・EB-1-3 
企業の役員あるいは管理職を務める方。なおかつ過去3年のうち1年以上、役員か管理職として雇用されており、業務をアメリカ国内のグループ会社や支社に提供できる方。

上記のほかに、高学歴の方は「EB-2」、専門職、熟練技能職を持つ方は「EB-3」というカテゴリーで申請可能です。

・EB-2ビザ
修士号・博士号か、学士号と5年以上の職務経験を持つ方を対象としたものです。経済、科学、芸術などの分野で高い能力や知識を持ち、アメリカの経済や文化の発展に貢献すると認められれば、永住権が発給されます。

・EB-3ビザ
特殊技術が必要な職業で、2年以上の職務経験か、学士号を持っている方が対象です。雇用する方が、同様の能力を持つアメリカ人労働者はいない、ということを証明しなければなりません。

※補足:EB-1-2、 EB-1-3、 EB-3は米国でのスポンサーが必要です(例外あり)。

2-4 アメリカへ投資を行う

金銭に余裕のある方は、永住権を購入できます。「EB-5」というカテゴリーでは、アメリカの新規あるいは債権企業に、100万ドル以上の投資を行い、かつ2年以内に10名のアメリカ人を直接雇用することで、永住権を得られるのです。これは、アメリカの地域経済の発展や、雇用の創出が目的です。申請者は学歴、経歴、資格、語学力など一切問われず、また一回の投資により、配偶者と21歳未満の子ども全員の永住権申請を行えます。 

ただし、最初に下りる永住権は2年間限定。その間にもし会社が倒産してしまったら、永住権は取り消しになり、投資したお金も返ってきません。2年間、経営が順調にいけば、10年間有効の正式な永住権が下りるのです。

しかしこのプログラムは、投資金額も高額で、10名のアメリカ人を直接雇用しなければならず、この制度の利用者はほぼいませんでした。そこで、ルールが緩和されたパイロット・プログラムが制定されたのです。

このプログラムでは、雇用促進エリアと移民局が認めた地域センター内であれば、投資額50万ドルで永住権の申請ができます。また、アメリカ人を直接雇用でなく、間接雇用でも可能です。投資先も新規企業だけでなく、不動産なども認められており、投資先によっては資産運用も可能です。近年は「EB-5」と言えば、このパイロット・プログラムの方が主流です。

永住権を取得した後の注意点

ここまで、永住権を取得する方法について説明させていただきました。ただ、ルールも制度も違うアメリカでの新生活は、日本人にとって戸惑うこともあるかもしれません。具体的にどのようなことが起こるのでしょうか。

3-1 税金が日本より高い!?

アメリカで永住権を持っている外国人には、所得税が発生します。税率は課税所得の金額により10%~39.6%。課税所得400万円の夫婦の場合、日本では20%ですが、アメリカでは33%と高くなることもあるのです。

3-2 日本に戻ったら永住権はく奪の場合も

永住権を取得した後、一年のうち半分以上アメリカにいないと、はく奪されてしまう恐れがあります。これは、アメリカに永住するつもりがない、と判断されてしまうからです。仕事の都合で長期赴任したり、家庭の事情で日本に長期間帰ったりする際は注意が必要です。

3-3 扱いはあくまでも日本人

万が一、事件や戦争、災害に巻き込まれてしまったら。アメリカ政府は救助してくれても、どうしても優先順位は自国民より低くなってしまいます。この辺りは、アメリカ市民と永住者の大きな違いです。不測の事態があったとき、対応が後回しにされてしまう場合があることは肝に銘じてください。

まとめ

自国ファーストを掲げるトランプ政権は2019年8月、所得が基準に満たない人や、将来的に公的医療保険や住宅補助に頼る可能性のある人に対し、永住権の取得を制限する方針を発表しました。申請者の財務状況や語学力、教育、年齢なども考慮し、申請可否を判断していくとも話しています。社会状況によって、取得の難易度が変わることは避けられません。それでも、アメリカで永住権を取得したい方は、ぜひ本記事をヒントに、チャレンジしてみてください。