人口増加や経済成長が続く東南アジアの中でも、不動産投資先として人気が高い国の一つがフィリピンです。不動産相場の上昇が続いたことで一部エリアでは価格も高くなってきましたが、全体的に見れば先進諸国に比べて安く、高利回りを期待できる物件もあります。
そこでこの記事では、フィリピン不動産の特徴から平均利回り、今後の狙い目エリアについて詳しくご紹介していきます。フィリピン不動産投資を検討中の方は参考にしてみてください。
1 フィリピン不動産投資の特徴
まずはフィリピン不動産投資が人気の理由について、フィリピン不動産の特徴を紹介しながら見ていきます。
1-1 上昇が続く不動産相場
フィリピン統計局によると、2018年のフィリピン経済は前年比で約6.2%の拡大を続けています。2012〜2017年の平均年間成長率6.6%は下回っていますが、好調な経済成長を背景に不動産相場は上昇を続けています。
実際、フィリピン経済を牽引するマカティCBD地区の不動産価格は、2010〜2018年にかけて約132%上昇しました。直近の2018年のデータでは、3ベッドルームの高級コンドミニアムユニットの平均価格は15.55%上昇しています。1平方メートルあたりの価格は230,000ペソ(約46万円)で、東京の江戸川区や板橋区と同程度です。
しかし未だにフィリピンの住宅市場は、1997年〜2004年にかけてのアジア通貨危機による不動産相場下落前の水準に達していません。インフレ調整後の水準で比較すると、アジア通貨危機以前よりも、まだ9%ほど下回っている状態です。
今後の不動産価格と賃料の上昇比率によって利回りがどのように変動するかは不確定ですが、賃料金額も堅調に推移しているため、利回りは維持されることが予想されます。また、マニラ首都圏の人口も安定的に増えており、平均所得も上がっているので今後の不動産需要も期待できるでしょう。
1-2 投資対象はコンドミニアム
フィリピンでは外国人が土地を購入することはできないため、投資対象となるのは主にコンドミニアムになります(ただし現地の個人もしくは法人が60%出資すれば所有権の取得が可能)。コンドミニアムは外国人であっても賃貸に出すことが可能です。
また、フィリピンには不動産の登記制度があり、土地と建物それぞれが登記対象になります。コンドミニアムの所有者として登記することも可能です。ただし、外国人が所有できるのは、建物の全ユニット数のうち40%までとなります。
さらに、フィリピンのコンドミニアムを購入する際には、マレーシアのような最低購入価格制度がないため、数百万円程度の低価格物件の取得も可能です。
1-3 フィリピン不動産投資にかかる税金
フィリピン不動産投資では、税金などの出費が多い点に留意する必要があります。まず、不動産を購入する際には付加価値税がかかります(約320万ペソ以上の場合)。消費税のようなもので税率は12%、物件価格に乗じて提示されます。また、契約金額が1,000ペソ以上の場合、1,000ペソあたり15ペソの印紙税が加算されます。
次に、不動産を所有することで固定資産税が発生します。税率は自治体によって異なりますが、州の場合は1%、市・マニラ首都圏内の自治区は2%を超えない額となっています。ほかに、不動産評価額に対して1%が加算されます。固定資産税の課税標準となる不動産評価額は、公正市場価格に法定の倍率を乗じた数字となります。
また、賃貸運用で得た収入に対しては個人所得税が発生します。外国人居住者と滞在期間180日以上の外国人非居住者の場合、5〜32%の税金が課せられることになります。一方、滞在期間が180日未満の外国人非居住者に対しては、25%の税金が課せられます。
さらに不動産売却時には譲渡所得税がかかります。フィリピンの譲渡所得税は、譲渡所得に対してではなく、不動産売却価格に対して6%となることに注意が必要です。
2 フィリピン不動産投資の平均利回り
フィリピン経済の中心地であり、日本人も多く住むマニラ首都圏の利回りについて見ていきます。マニラ首都圏では、賃料の上昇と空室率の低下により不動産利回りは毎年上昇しています。Global Property Guideによれば、2019年4月時点の表面利回りは、45平方メートルで平均7.01%、80平方メートルで7.16%となっています。
2-1 エリアごとの物件価格と賃料の平均金額
フィリピンのエリアごとのコンドミニアム価格と賃料の平均金額は次のようになります(1ペソ=約2円)。
コンドミニアム価格 | 賃貸価格 | 表面利回り | |
マカティ | 7,305,097ペソ | 57,602ペソ | 9.46% |
ケソンシティ | 3,224,761ペソ | 21,753ペソ | 8.09% |
セブ | 5,104,329ペソ | 30,878ペソ | 7.26% |
ダバオ | 3,140,751ペソ | 24,283ペソ | 9.28% |
マカティはメトロマニラとも呼ばれるマニラ首都圏の都市であり、世界的にも有名な企業が集まるビジネス首都でもあります。そのため、コンドミニアムの平均価格は日本円で1,400万円を超えています。しかし東京やほかの先進国の首都圏と比べて平均利回りは高いのが特徴です。
ケソンシティはメトロマニラと呼ばれる16の都市の1つです。比較的新しい都市であり、治安の良さでも人気があります。セブはマカティに次ぐ大きな都市として有名で、コンドミニアム価格もマカティに次ぐ高さです。賃貸利回りはやや低いですが、不動産投資先・旅行先・移住先としても人気が高いので、不動産需要は期待できるでしょう。
ダバオはマニラ・セブに続くフィリピンで3番目に大きな都市となります。フィリピン南部のミンダナオ島にあり、同島の政治・経済・文化の中心地です。コンドミニアムの平均価格は日本円で600万円代とマカティの半分以下なので、投資額をできるだけ抑えたいという方でも購入しやすいでしょう。賃貸利回りも高いので収益性も見込めるエリアです。
3 フィリピン不動産投資で狙い目のエリア
フィリピンで人気のある不動産開発業者の1つであるDMCI HOMESは、コンドミニアム投資におすすめの条件として以下の要素を挙げています。
- 手頃な価格である
- 高い賃貸収入が得られる
- アクセスが良い
- 施設が便利である
- 静かな環境である
上記を満たす場所として、DMCI HOMESはマニラ首都圏のCBD(中央ビジネス地区)を除く地域を推奨しており、具体的には以下のエリアをピックアップしています。
- マンダルヨン市
- パシッグ市
- サンタ・メサ
- ケソンシティ
3-1 マンダルヨン市
マンダルヨン市は国内有数のショッピングモールと新興ビジネス地区があり、またBPO企業が多くオフィスを構えているのが特徴です。BPOとはビジネス・プロセス・アウトソーシングの略で、業務プロセスを外部企業に委託することです。同市はマニラ首都圏から多くの主要道路にアクセスできるため、高級コンドミニアムの賃貸需要も見込める好立地と言えます。
3-2 パシッグ市
パシッグ市には高層ビルが立ち並ぶオルティガス中央商業地区(CBD)やビジネス区があります。コンドミニアムを探すならグルメ地域として人気のカピトリョ、ショッピングモールや学校が多い中流階級の住宅地であるサンミゲルなどが狙い目となります。
3-3 サンタ・メサ
文化遺産が多く、観光地として有名なサンタ・メサは、商業地・官公庁・大学なども多いため賃貸需要も見込めるエリアです。
3-4 ケソンシティ
キューバオ・ディリマン・リビスといった新興ビジネス地区があることや、フィリピン大学など学校が多いため、賃貸需要が見込める注目のエリアです。さらにショッピングモールやレストラン、公園なども集まっているため、ファミリー層にも人気の住環境となっています。
3-5 その他おすすめのエリア
フィリピン不動産を扱うポータルサイト「Zip Match」では、独自に投資用不動産の価格・賃貸利回り・平方メートルあたりの単価などに基づいた「不動産投資に適した都市ランキング」を発表しています。上記の狙い目エリア以外でこのランキングで紹介されている都市の一部をご紹介しておきます。
ラスピナスシティ | 貿易港と製塩の町ですが、巨大なショッピングモールがいくつもあり生活面でも便利なエリアです。利回りは7%〜10%台となります。 |
マニラ | フィリピンの中心地であり博物館・図書館・劇場などが多く、一流大学が集まることでも有名です。賃貸利回りは4%〜13%と幅広く、物件選びが重要なエリアでもあります。 |
パラニャーケ | マニラ湾に面するエリアで、カジノ併設型ホテルが多く観光客に人気があります。賃貸利回りは4%〜8%です。 |
パサイ市 | カジノホテルが特に人気で観光客の多いエリアです。東南アジア最大のショッピングモールであるSMモールオブアジアもあり、活気溢れる雰囲気が特徴です。賃貸利回りは6%〜8%となっています。 |
4 フィリピン不動産投資の注意点
コンドミニアムを購入する際に完成前の物件(=プレビルド物件)を選ぶ場合は注意も必要です。プレビルド物件はデベロッパーが売り出すよりも安い金額で購入できるといったメリットはありますが、コンドミニアムの建設は計画通りに進むとは限らず、大幅に延期したり、最悪建設中止になったりする可能性もあります。
さらに売買契約書には明確な完成時期が記されているわけではありません。完成が遅れれば賃借人を付けることができず、キャピタルゲインを狙える転売時期を逃すこともあり得ます。そこで、コンドミニアムを建設するデベロッパーの調査が必要になります。
前述のZip Matchでは、デベロッパーの過去の実績や評判を数値化し、スコアの高い企業をランキングで公表しています。2019年10月時点で公表されている総合スコアの高いデベロッパーは次の通りです。
順位 | デベロッパー | 企業概要 |
1位 | DMCI HOME | 1954年創業のデベロッパーです。主に中流階級向けのコンドミニアムを建設しています。大都市のリゾート型コミュニティを構築しているのが特徴で、ケソンシティ・タギッグ市・パシッグ市・パラニャーケ市などを中心に開発しています。 |
2位 | Camella Homes and Communities | ルソン島などでコンドミニアム開発を行うフィリピン最大のデベロッパーです。米誌リーダーズダイジェストや、アジア地域で権威のあるフィリピンプロパティアワードからの受賞歴もあります。プレミアム感を出しつつ手頃な価格で物件を供給するデベロッパーで、低所得者から中所得者に向けたプロジェクトが多いのが特徴です。 |
3位 | Megaworld | 不動産業界の大企業の1つとしてセブのメトロマニラにおける中間所得者向けにハイエンドコンドミニアムを供給しています。イロイロ・ダバオ・イーストウッドシティ・ニューポートシティなどで主に開発しています。 |
4位 | Avida | フィリピン最大の複合企業Ayala Corporationの子会社です。2006年にAvidaは品質管理システムのISO 9001:2000認証を取得しています。アンディポロ・バタンガス・ラグナ・マカティ・セブといった都市を中心に若い世帯向けのコンドミニアムを開発しています。 |
5位 | SMDC | 銀行業・小売業・モール管理などを手がける複合企業傘下のデベロッパーです。手頃な価格でありながら高級感のあるコンドミニアムを開発しています。 |
海外不動産投資では物件探しから購入をサポートしてくれる不動産会社選びも重要ですが、キャピタルゲインやインカムゲインを狙うならデベロッパーに関する調査も大切です。目当ての物件を見つけたら即購入するのではなく、過去の実績や口コミなどの評判から信頼できるデベロッパーかどうかも慎重に判断しましょう。
5 まとめ
フィリピンの不動産は、エリアを選べば手頃な価格で賃貸利回りの高いコンドミニアムを見つけることもできます。ただし、購入時・保有時・売却時にかかる税金が負担となることもあるため、表面利回りだけでなく、維持費用を考慮した実質利回りによる評価も必要になります。
実際に物件を購入する際は、ビジネスパートナーとなる不動産会社のアドバイスを活用しながら、慎重に見極めましょう。