オーストラリアでの不動産を購入する際、外国人が守らなければならないルールがあります。

そのルールにしっかりと従わない場合、不動産取り引きが行えなくなるだけでなく、ペナルティとして罰金を支払わなければならないため注意が必要です。

この記事では、オーストラリアで外国人が不動産を購入する方法と手順、そしておすすめのエリアについて解説します。

 

 

オーストラリアの不動産市場の動向は?

オーストラリアの住宅市場は、需給ギャップや政策変動を背景に上昇傾向を示しています。

全国的には、2025年9月時点で住宅価格は前年同月比+6.2%の上昇を記録しており、9か月連続の上昇圏にあります(※1)。また、2025年6月四半期時点で、国内の住宅資産の総額は 11,5640 億豪ドル に達し、前期比で+2138 億ドルの増加があったという統計も発表されています。平均住宅価格もこの四半期で 14,100 豪ドル上昇しました(※2)。

将来見通しを示す報告として、KPMG は 2025 年度の戸建住宅価格上昇率を 3.3%、ユニット(集合住宅)価格上昇を 4.6% と予測しています。ユニットの方が伸び率が高い見込みとされており、参入しやすい物件タイプの人気もあります(※3)。
Global Property Guide も、オーストラリアの不動産価格は依然として上昇傾向にあると報告しつつ、価格上昇のペースは「手頃性(affordability)の制約」によって抑えられつつあるとの指摘をしています(※4)。

政策面でも大きな変化が見られます。2025 年度連邦予算案では “政府支援住宅政策” に対する予算拡充が盛り込まれ、住宅取得支援策および供給増強が焦点となっています。

 

オーストラリア不動産は外国人でも購入できる?

オーストラリアの不動産は、外国人でも購入が可能ですが、2025年4月以降の法令改正により大きな制約が加わっています。特に「非居住者」や一部の「居住者」には、FIRB(Foreign Investment Review Board)を通した許可申請および定められた条件の適用が必須です。

非居住者:既存住宅の購入が原則禁止

2025年4月1日から、外国人(temporary residents や外国企業を含む)は 既存住宅(既に居住・取引された住宅、“established dwellings”) の取得が原則禁止となります。


この禁止措置には例外規定があり、以下の場合に限り許可が出る可能性があります(※5)。

  • 大規模な再開発で、住宅ストックを20戸以上増加させる計画を含む場合

  • 商業規模の住宅提供(たとえば学生寮や高齢者施設など)に資する取得

  • 太平洋諸国労働移住制度(PALM scheme)に関連する物件

  • 永住者やニュージーランド市民、オーストラリア市民と共同で購入する場合など

しかし、限定的な条件であるため、この改正により実質的に中古物件は購入できなくなりました。

新築・未使用住宅および更地は取得可能

非居住者が取得できるのは、新築住宅やオフ・ザ・プラン(建築前物件)、 または 住宅開発用更地 です。ただし、更地取得には、4年以内の建設完了義務 や 開発完成前の転売禁止 条件がつけられることが一般的です(※5)。
また、開発業者が事前に許可を取得している物件については、個別の申請が不要となる場合もあります。

居住者(永住権者または長期ビザ保有者)

永住者に関しては規制が緩和され、オーストラリア人と同様に中古物件も購入可能で、FIRB申請対象外です。一方、長期ビザ保有者(temporary residents) は、従来 “主たる住居用” として既存住宅の取得が許可されるケースがあったものの、2025年4月以降はこの例外も基本的に廃止され、禁止対象に含まれます(※7)。

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オーストラリアで不動産を購入するステップ

ステップ1.FIRB(外国投資規制審査機構)の承認取得

オーストラリアで外国人が住宅不動産を取得する際、多くの場合「FIRB 承認」が必要です。承認申請は オンライン(ATO の外国投資者ポータル) を通じて行います。申請には物件情報、購入目的、身分証明書などが必要で、申請手数料も物件価格に応じて変動します。

ただし、2025年4月1日以降、外国人(temporary residents や外国企業含む)は、既存住宅(既に居住/販売された物件/established dwellings)の購入が原則禁止となる新制度が導入されました(例外あり)。したがって、既存住宅を買いたい場合はまず例外要件を確認する必要があります。

なお、「新築住宅」や「未使用住宅」「空き地に建てる住宅(vacant land)」については、許可を得る条件下で購入可能なケースがあります。

ステップ2. INITIAL DEPOSIT(申込金)を払う

購入する物件が決まったら、申込書に必要事項を記入のうえ、INITIAL DEPOSIT(申込金)を支払います。この申込金は物件によって金額が異なるので、しっかりと確認してから払いましょう。

ステップ3. 売買契約を結ぶ

オーストラリアの不動産売買は、売主と買主がそれぞれ弁護士を雇って手続きを進めていきます。日本のように、契約書の説明を宅地建物取引業者が行うようなことはありません。

そのため、弁護士を雇う手続きと費用が必要となりますが、法律の専門家によって契約書が作成されるのは安心できる点でしょう。

ステップ4. HOLDING DEPOSIT(契約手付金)

売買契約が結ばれれば、HOLDING DEPOSIT(契約手付金)を支払います。物件価格の10%というのが一般的です。

契約成立後であっても、契約日から5日以内であればクーリングオフの行使が可能です。ただし、そのときには購入金額の0.25%をペナルティとして支払う必要があります。

ステップ5. 建物検査の最終確認

日本でいうところの内覧会が行われ、建物を検査していきます。弁護士と専門の業者に任せてしまうことが多いですが、報告書にはしっかりと目を通しましょう。

専門家による建物検査と害虫検査によって、欠陥などの不備をしっかりとチェックします。不動産会社によっては、引き渡し後に見つかった欠陥の修理を売主にしてもらうように、契約条項を設ける場合もあるようなので相談してみましょう。

ステップ6. 決済と引き渡し

残金の支払いが終われば、いよいよ引き渡しです。弁護士に登記の申請をしてもらい、所有権の移転が完了します。

 

 

オーストラリアで不動産を購入するのにおすすめのエリア

オーストラリア最大の都市シドニー

シドニーはオーストラリア最大の人口を誇る大都市です。市内では、電車、バス、路面電車、フェリーといった交通機関が利用可能。特にシドニー中心部であるCDBはどこへ行くにもアクセスが便利です。

観光地としても人気のボンダイビーチがあるエリアは、市内中心部まで電車やバスで30分ほどです。フラットやコンドミニアムなど用途に応じた物件が選べるでしょう。また、街の北部にあるアーターモンやチャッツウッドは日本人が多く住むエリアです。

メルボルン

イギリス誌「エコノミスト」が選ぶ「世界でもっとも住みやすい都市」に、メルボルンは7年連続で選ばれています。審査は、「安全性」、「医療」、「教育」、「インフラ」、「文化・環境」の5項目で行われ、メルボルンは100点満点中97.5点を獲得しました。すべての項目が高いレベルで保たれているといえるでしょう。

メルボルンの中心部であるメルボルンCBDは、交通アクセスが便利で、ビジネス、観光、そして住むのにも人気があるエリアです。また、ブライトンビーチのあるエリアは、海沿いに別荘が並ぶ高級住宅街として知られています。

ブリスベン

オーストラリア第3の都市ブリスベンは、人口が200万人弱とシドニーに比べてコンパクトな都市です。

実際、2025年6月のデータでは、ブリスベンの住宅およびユニット価格が前月比 +0.7% 上昇したとの統計が報告されています。 また、年間ベースでの成長率も堅調で、全国平均を上回る動きを見せる傾向があります(※8)。

中心部であるブリスベンCBDは、家賃や住宅価格がもっとも高い人気のエリアです。中心部から南西にあるセント・ルシアは、治安もよく、大きな公園などもあり、家族で住むには適したエリアでしょう。

まとめ

オーストラリアの不動産投資について解説してきましたが、いかがでしたでしょうか?

不動産市場に変化はありましたが、同国の不動産はいまだ魅力的な投資候補といえます。不動産売買のルールをしっかりと把握してチャンスを見逃さないようにしましょう。

 

出典一覧:

※1 realestate.com.au『PropTrack Home Price Index - September 2025

※2 Australian Bureau of Statistics『Total Value of Dwellings

※3 KPMG『Residential Property Market Outlook

※4 グローバルプロパティガイド『Australia's Residential Property Market Analysis 2025

※5 Foreign Investment in Australia『Residential land | Foreign investment in Australia

※6 Foreign Investment in Australia『Guidance Note 6: Residential Land

※7 Foreign Investment in Australia『Changes to foreign purchases of established dwellings

※8 NAB『Brisbane Property Market Insights

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