ロシア富裕層が外国不動産投資に熱い視線を注いでいることが話題になる一方、同国内においては、実は手堅い不動産市場が形成されています。

特にモスクワの不動産は現状、比較的リーズナブルとなっているため、ロシアの不動産購入を考えている方、ルーブル資産を築いてみようと検討している方にはチャンスと言えるでしょう。

今回は、そんなロシアの不動産について、同国の基本情報から不動産市場の動向、購入ポイント、おすすめのエリアなど、ロシア不動産投資に関するアウトラインを解説していきます。

日本の隣国。近いのに距離を感じる大きな国、ロシアってどんな国?


はじめにロシアの基本情報です。

面積約1,710万平方キロメートル(日本の45倍、米国のほぼ2倍。出典:ロシア国家統計庁)
人口1億4,680万人(2017年1月、出典:ロシア国家統計庁)
首都モスクワ
公用語ロシア語
宗教ロシア正教、イスラム教、仏教、ユダヤ教等
主要産業鉱業(石油、天然ガス、石炭、金、ダイヤモンド等)、鉄鋼業、機械工業、化学工業、繊維工業
通貨ルーブル、為替レート:57.26ルーブル/ドル(2018年3月30日)
在留邦人数2,696人(2017年)

(出典:外務省)

南米大陸全体の大きさに匹敵するという、世界最大の面積を持つロシア。日本国土の約45倍の広さに日本とほぼ同じ程度の人口が住んでいることを考えると、その人口密度の差に圧倒されるでしょう。日本が1平方キロメートルあたり336人であるのに対し、ロシアは8.2人となっています。

また、世界地図を見るとロシアの国土はヨーロッパ部よりアジア部の方が広いのが分かるでしょう。しかし、ヨーロッパ部に大都市や工業・農業地帯が集まっていること、さらにスラブ文化との関係も深いことからヨーロッパに帰属していると捉えられることがほとんどです。

ロシアと言えば寒いイメージの通り、国土の大部分は寒冷な気候です。夏は短くて涼しく、冬は長くて厳しい寒さが特徴。夏と冬の気温差は30~75℃に及ぶといいます。ヨーロッパに近いロシアの1~2月の平均気温は-10度前後程度である一方、シベリアでは-20~-35度、内陸部は-50度以下になるところもあります。

ロシアの経済動向と不動産市場


ロシア経済は石油や天然ガスなどの天然資源に依存しており、2015年に原油価格が低迷した際に通貨ルーブルが大きく下落したことは記憶に新しいでしょう。その後、対米ドルレートは原油価格の上昇とともに回復し、2018年1月には約3年半ぶりに半分強まで戻っています。また、株価やインフレ率も落ち着きを見せていることに加え、2017年は1.5%のプラス成長となりました。

(出典:外務省)


そんなロシアにおける不動産市場はどのような状況にあるのでしょうか?

2018年第2四半期の住宅価格は前年同期比で0.81%の下落となりましたが、2017年第2四半期が前年同期比で-7.58%だったことを考慮すると、現状は回復傾向にあると言えるでしょう。

また、以下のグラフは、1平方メートルあたりの平均住宅価格の推移を示しています。参考までに見てみましょう。2018年は53,164.31ロシア・ルーブル(約88,000円)となっています。


(出典:Global property guide)

ロシアの不動産は外国人でも購入できる?


結論から述べれば、可能です。ロシアでは、外国人でも不動産を購入することができます。

ただし、外国人の場合は建物について所有権登記が認められている一方、土地の所有権は認められていません。そのため、戸建て住宅を取得する場合は土地の定期借地権を49年とする必要があります。また、マンションは区分所有となり、外国人の所有権が可能となっています。

また、耕作可能な農地(レンタルは可)や国境地帯、石油・ガスの産地、軍施設内のエリア、国立公園などは購入が認められていませんので、注意が必要です。

ロシア動産を購入する5つのステップ


続いて、ロシアで不動産を購入する際のポイントを、そのステップごとに解説していきましょう。

1.不動産エージェントを選ぶ

不動産を購入をしたいエリアの目星をつけた段階で、まずは信頼のおける不動産エージェントを探しましょう。日本語に熟知した地元不動産エージェントが理想的ですが、少なくとも大都市では、英語でサービスを提供する不動産エージェントが数多くいます。

その際、不動産エージェントに知識や経験があるか、買手の希望をよく聞き理解してくれるか、連絡がつきやすいか、不動産取引の流れや注意点などを細かく説明してくれるかどうか、ということが重要なポイントとなります。

また、ロシアの不動産を購入する際には、不動産の登録書類をしっかりと確認することも重要です。売手以外の人に所有されていたり、抵当権の有無などをきちんと調べてくれる不動産エージェントを選びましょう。

2.物件を探す


最近のロシアのマンション事業は、まだ建設途中のプレビルド物件を販売することがほとんどです。このため、新築物件を購入したい場合はプレビルドとなりますが、建設完了まで待たなければなりません。

ただし、大手など信頼できる建設会社を選ばないと、建設期間が長引いたり、資金繰りに困り建設が放棄されたりという事態になることもあるため、物件を販売している建設会社選びは慎重に行いましょう。プレビルド物件の利点は、完成した物件よりも安く買えることです。

また、新築住宅はすべてスケルトン渡しで、買手が内装工事を手配しなければなりません。加えて内装工事を一括して請け負う業者は少ないうえ、工事代金も別途必要となるため、新築よりも状態の良い中古物件が選ばれる傾向にあります。このような背景からロシアの住宅は、新築よりも中古の方が高くなることがほとんどです。

3.銀行口座を開設する

ロシアで不動産購入するにあたって必要な費用や税金を支払うために、現地で銀行口座の開設が必要となります。例えばロシアの銀行最大手のズベルバンクでは、外国人の対応に慣れており、比較的簡単に銀行口座が開設できるのでおすすめです。

必要書類は、パスポート、出入国カード、そして、レギストラーツィアです。これは、ロシア国籍を持たない人がロシアに滞在する場合、その滞在場所を移民局に報告する義務があり、そのことを「レギストラーツィア(登録)」と呼んでいることに由来しています。

また、開設の際に保険料790~990ルーブル(約1,300~1,600円)が、モバイルバンク利用料として月額0~60ルーブル(約0~100円)がかかります。

このズベルバンクをはじめ、オンラインバンクの「Bank Tinkoff」など、他のロシア金融機関でも外国人向けの金融商品を扱っているため、住宅ローンなどのサービスについても確認しておきましょう。

4.購入手続き


不動産購入の契約を行う際に必要な書類は、パスポート、公印確認・アポスティーユ、そして、公証人の認証を受けたパスポートの翻訳です。これらの書類に問題がないかどうか、日本の内務省とロシア大使館の双方で確認を受けることになります。

5.ロシア不動産購入にかかる税金と諸費用

ロシアで不動産を購入した場合、外国人でも固定資産税が2.2%が課せられます。さらに、非居住者が不動産で売却収入を得た場合の所得税は30.0%となっています(居住者は13.0%)。ただし、日本とロシアとは日ロ租税条約があるため、日本できちんと確定申告の手続きを行えば二重課税を避けることが可能です。

また、ロシアでマンションを所有した場合は全額減価償却対象資産となるため、日本で償却分の損金計上ができる可能性があります。

さらに登記料が発生します。登記には約1ヶ月かかり、費用は3,000ルーブル(約393,000円)。 何らかの事情で迅速な登記手続きを行いたい場合は、倍の6,000ルーブル(約786,000円)を支払うことで2週間に短縮することができます。また、購入した物件が土地付きの場合、土地の登記について別途料金を支払わなくてはなりません。

不動産エージェント手数料は、不動産購入価格の約2.0〜5.0%です。

この手数料には、不動産探しから、不動産の所有権と使用権の確認、売買契約締結、最終的な不動産所有権の譲渡に至るまでのプロセスが含まれています。

ロシアで不動産を購入するのにおすすめのエリア


景観重視?新築マンションの建築が進む首都、モスクワ


ロシアの首都モスクワは、ヨーロッパ第1位の人口約1,200万人を抱えるメガシティです。

クレムリン宮殿やロシア正教の総本山ウスペンスキー大聖堂など歴史的建造物が多く所在するほか、各種行政機構やロシア科学アカデミーをはじめとする各種アカデミー、研究所、モスクワ大学、チャイコフスキー音楽院、トレチヤコフ国立美術館、プーシキン国立美術館、ボリショイ劇場などの世界的に有名な教育・文化施設が集中しています。

そんなモスクワでは、違法建築の撤去や景観美化などの都市環境整備が加速。近年、老朽化が進む5階建ての安価なつくりのマンション群が解体され、16万世帯、35万人が市の援助で新たな住居に移り住みました。

同市が主導する移住プログラムは今後も続区予定で、さらに対象が拡大される見込みです。旧マンション跡地には新シイタイプの低価格帯マンションが建設され、モスクワでは当面マンションの建設ラッシュが続きます。

アジアの貿易拠点として注目を浴びる港湾都市、ウラジオストク

ウラジオストクは日本に最も近いロシア、且つヨーロッパです。人口は約61万人(2017年)。冬でも凍らない稀有な港街としてロシアでは戦略的に重要視されてきた街で、かつては閉鎖都市だったため誰でもかれでも足を踏み入れることができる地域ではありませんでした。

そんなウラジオストクですが、2012 年に同市のルースキー島でAPEC が開催されたのをきっかけに、ホテルや空港、道路などが多額の予算を投じて近代的に整備されました。アジア進出に注力するロシアは、ウラジオストクを日本や中国、東南アジアとの貿易拠点とする計画です。

近年は建築費の高騰で住宅価格が上昇し、不動産市場が停滞しているウラジオストクではありますが、2016 年のロシア不動産価格ランキングでは、モスクワ、サンクトペテルブルクに次ぐ第3 位にランクイン。

2017年には電子ビザが開始され、ロシアの中でも気軽に訪問できる都市となり、今後もさらなる注目が集まる不動産市場の1つと言えるでしょう。

西洋の活気と開放感を感じる北の首都?サンクトペテルブルク

首都モスクワに次ぐロシア第2の都市で、人口は528万人(2017年)。国全体では人口増加が横ばいにあるものの、モスクワ、そして、このサンクトペテルブルクの2都市に限っては、毎年数万人単位で人口が増加しており、過去最高を更新し続けています。このため一定の住宅需要があるほか、消費者市場としてのポテンシャルも高く注目されています。

同市は中心部に当るネヴァ川左岸サイドが高級エリアで、ベッドタウンは右岸側や市の西部、南部に広がっています。

学生や駐在員が多いサンクトペテルブルクでは賃貸住宅も多く、1Kやワンルームの需要が高いのが特徴。その一方で、一戸建てやタウンハウスは都心から離れていることから、維持費と交通費が高くつくため、それほど需要が高くありません。

また、同市における住宅の取得目的は、86.4%が自分の居住用ですが、残りの13.6%は資産保全か投資目的となっています。

まとめ


電子ビザでロシア極東を訪問できる制度が導入されたことで、今までハードルが高かったロシアへの訪問が身近なもとなりつつあります。いずれは中国や韓国のように、ロシアと日本の間でもビザが免除されれば、さらに、ロシアへの旅や移住者なども増えていくことでしょう。

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