不動産投資家の注目が集まっていた、海外の中古不動産を利用した節税を封じる対策が2019年12月、政府・与党の20年度税制改正で確定した。これにより、高額な海外の中古不動産への投資で生じる赤字を、日本国内の所得と合算して税負担を減らす「損益通算」が2021年から出来なくなる。
海外不動産の特徴の一つとして、不動産に占める建物の価格の割合が日本より大きく、減価償却費を多くして、赤字を出しやすいというものがある。そのことから、米国や英国などで高い投資用の中古不動産を買い、家賃収入を上回る減価償却費を発生させて不動産所得を赤字にした上で、日本国内の給与所得などと合算(損益通算)し所得を減らして節税するという方法が多く取られており、近年問題視されていた。
そこで今回の税制改正では、納税者が海外に持つ中古建物から生まれる不動産所得の損失額について、償却に相当する部分の金額は生じなかったものとみなし、海外中古不動産を利用した節税を認めないことが記載されている。これにより、政府は富裕層を対象とした課税を強化していく方針だ。
また、計5000万円超の海外資産を持つ居住者を対象に、資産の取引実態が分かる入出金記録や帳簿の保管を求めるといった内容も盛り込まれている。保管は義務化されないが、税務調査でそれらの記録を提出できない場合は、より厳しい調査を受け、高い金額の追徴課税を払わされることになる。
国税当局はこれまでにも、計5000万円超の海外資産を持つ居住者に対し、年一回保有残高の情報を申告するよう求めていたが、資産残高の情報だけでは税逃れの実態は把握しにくいという現状があった。そこで、入出金記録などの保管を求めることで、取引の実態をより透明にすることで課税逃れを防ぎたいと考えているようだ
【参照】https://www.kenbiya.com/ar/ns/tax/tax_system_amendment/3877.html
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